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GARNET CROW 『Nostalgia』インタビュー

GARNET CROW 『Nostalgia』 インタビュー

“音室(音質)育ちのGARNET”語る。

 もう長いこと音楽業界不況が囁かれる中で、新しいシステムを作り出そうと必死になっている人々。計算に計算を重ね、少しでもセンセーショナルな仕掛けを構築しようとする人々は年々増えているが、そんな時代において、あくまで“楽曲至上主義”を突き通すGARNET CROWは稀少な存在になりつつある。

 何故に彼らはスタンスを変えず、ヒットチャートの上位に在り続けることができるのか。迷いなく音楽活動を継続することができるのか。その真相を探りたく、今、トップクラスの傑作と呼べる新作『Nostalgia』を生み出した“音室(音質)育ちのGARNET CROW”に接触。インタビューを敢行した。

ファンの人がビール呑んでて「おかもっちぃ~」

動画タイトル
▲DVD『GARNET CROW livescope 2012 ~the tales of memories~』

--今回はアルバム『メモリーズ』リリースタイミング以来のインタビューになるんですが、この間はGARNET CROWにとってどんな期間になりましたか?

岡本仁志(g):今年の夏は、音霊 OTODAMA(神奈川県逗子海岸)でライブしたんですけど、現場に着いたらファンの人がビール呑んでて「おかもっちぃ~」って酔っ払ってるんですよ。「ええなー」と思いました(笑)。

中村由利(vo,songwriting):GARNET CROWのタオルを敷いて、海パン姿で寝ている人もいたんですけど、こちらからしたら「そろそろライブ始まるけど!」みたいな。「起こしてあげた方がいいかな?」とか思いつつ。

--3月には【GARNET CROW livescope 2012 ~the tales of memories~】もありましたが、どんなライブになったなと感じていますか?

中村由利:盛り沢山。ストリングスもカルテットが入ることによって、音圧とか音の温もりがいつもと違って、その効果で映える曲もあったし、世界観を広げて皆さんに聴いて頂くことができたと思います。ただ、私とカルテットだけで歌うコーナーがあって、それは合わせるのが大変でしたね。バンドだと一拍目が鮮明に分かるんですけど、ストリングスの場合はむわーんと立ち上がっていくので、グルーヴに慣れるまでは歌が走り気味だったり、遅れ気味だったりして。最終的には何とか合格ラインは越えられたと思うんですけど、DVDで見直すとすごく緊張した顔が映っています。で、歌い終わったらホッとしている感じがすごく出てる(笑)。今度はもっと大所帯のオーケストラをバックに背負って歌ってみたいです。

岡本仁志:気持ち良いもんね。ライブ中、イヤモニでストリングスが入ってくるんですけど、ギターを弾いてしまうと聞こえにくくなるので、手を休めて聴いていたかったぐらい。まぁそういう訳にもいかないので。

--そりゃそうです。

中村由利:(笑)。生で観てみたいよね、客席から自分たちのステージを。

--岡本さん(SUPER LIGHT)のコーナーもありまして、「海鳴り」を披露されていましたが。

岡本仁志:いつもはGARNET CROWの曲を僕が歌うコーナーなんです。まぁ良いクッションじゃないですかね。衣装チェンジの時間を稼ぐ為の、長めのトークと……あ、DVDではバッサリとカットされているんですけど、それと演奏フル尺+オマケのエンディング。10分強ぐらいかな。

--そのライブのDVD『GARNET CROW livescope 2012 ~the tales of memories~』にはどんな印象を?

岡本仁志:衣装チェンジが思ったより効果的だなと。衣装チェンジがあったり、ストリングスだけのセクションがあったり、僕が冷やかしで歌ったり、画が変わるというのは必要なんだなと改めて気付きました。あと、本当はくだらないMCが結構面白かったりするんですけど、そこがバッサリ切られちゃうのはね、ちょっと残念。

中村由利:本当にくだらないんで。

一同:(笑)

岡本仁志:でもおもろいで、あれ!

中村由利:そこはもう実際にライブへ来てくれた方とのお楽しみであって、お茶の間で改めて聴いて頂くほどの内容は喋っていませんので(笑)、DVDはお歌でいいかなと。

--あのライブって実際にはどれぐらいの時間だったの?

中村由利:3時間弱かな。……ということは、どんだけカットしてるんだ!?っていう。結構喋っています(笑)。

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敢えてGARNET CROWっぽくない曲をチョイス

動画タイトル
▲シングル『Nostalgia』Music Video

--続いてニューシングル『Nostalgia』について。個人的にはGARNET CROW史上トップクラスの傑作。鋭く響くアレンジに半端ない熱量のボーカル、圧倒されました。自分たちの中ではどのような印象や評価を?

岡本仁志:細かく言えば、今までありそうでなかった。新鮮な曲なので、早くライブでやりたいな。

中村由利:敢えてGARNET CROWっぽくない曲をチョイスしたというか、2曲目「風の中のオルゴール」もシングル候補だったんですけど、今回は“らしさ”よりも「おっ!」って思ってもらえるような変化球を出したくて。GARNET CROWっぽくないデジタル仕様。イントロのシンセとか、四つ打ちのディスコチューンな感じとか、まずサウンドが面白いなと思ったので、疾走感とか突き抜け感、前へ前へ進んでいく感じを歌でも表現して。かなり強くてクールなGARNET CROWを聴いてもらいたかったんですよね。PVも無機質な、メタリックな感じを表現しているんですけど、そういう格好良さを感じてもらいたかった。

--前回のインタビューでは、「タブーを無くす。今まではあり得ないこともやる」と仰っていましたが、今回もそういう意思が強くあったと?

中村由利:そうですね。自分の中でNGは作らないようにして。元々デモの段階では、もうちょっと普通のエイトビートで、ポップスや歌謡曲寄りの哀愁が全面に出ていたんですけど、それをギュッと引き締めて、デジタルサウンドにして、四つ打ちにすることによってクールさ、疾走感を敢えて前に出すことにしました。

岡本仁志:やっぱり自分たちが新鮮な気持ちで音楽活動を続けていく為にも、こういう意外なところをA面に持ってくることが必要なんですよね。そうやって鮮度を保つ。すると、いつかの、この先の、ド王道のシングルが出たときに振り幅が生まれて、「待ってました」と言われればいいなっていう……まぁフリですね。

中村由利:前フリ!? これ。

--これも本気の1曲ですよね?

岡本仁志:本気の前フリ!

一同:(笑)

--なんでも“本気の”付けりゃいいってもんじゃないですよ!

中村由利:前フリじゃありません!

--新しいことに挑戦していくスタンスは、個人的には大肯定なんですけれども、リスナーに受け入れられないかもしれないというリスクも伴いますよね。そこはどう考えていますか?

中村由利:そこは冒険していきたい。メンバー4人とも“迷ったらやろう”という姿勢なので、あんまりそこで慎重にはならないです。迷ったら、面白そうな冒険を選んでしまう。マンネリや予定調和じゃ面白くない、そういう意識はみんなの根底にあるから、常に新しいものを取り入れていきたい。

岡本仁志:結果、それをファンの方々に受け入れてもらえているのも大きいですね。「今回はやっちゃったかな?」と思っていても、意外と大丈夫だったりする。

中村由利:最近はライブでこういうデジタル系のものを披露していて、レスポンスがすごく良かったりするので、その手応えが「こういう曲を作ってみよう」という流れを生んでいくこともあります。まぁ冒険とかチャレンジは、どちらかと言うと好んでやっちゃう方ですね。

--また、この曲にある“Nostalgia”は少し切ないというレベルじゃないですよね。苦しさすらある。中村さんはこの歌詞をどのように解釈しましたか?

中村由利:今回は、アレンジが上がって最初に聴いたときの驚きとか、新鮮さ。歌詞を最初に読んだときのファーストインプレッションを大事にして、素直にニュートラルな形で歌いました。読み込んで読み込んで自分なりに解釈することで、メロディを変えるぐらいの癖が出ちゃうのは嫌だったので。聴き手の方がいろんな捉え方のできる歌にしたかったんです。

--その結果、真っ直ぐでエモーショナルなボーカルが収められました。岡本さんは今回のボーカルにはどんな印象を持たれていますか?

岡本仁志:ロングトーンが気持ち良いですね。繰り返しますけど、メロディの節回しとかを崩していない、何の犠牲もない、サウンドとして耳に気持ち良いボーカルだと思います。

--街で鳴っていたら反応しますよ、この声とメロディは。

岡本仁志:そうかもしれないですね。

--この曲に限らず、GARNET CROWファン以外のリスナーも振り返らせる為には……みたいなことって考えたりしますか?

岡本仁志:「ギターで」っていうのは難しいので無いですけど、希望はありますよね。みんなで作った曲がファンの方々以外の人にも振り向いてもらえたらなって。今までGARNET CROWを聴いたことがなかった人も「あ、良いじゃん」って言ってもらいたいとは思います。

中村由利:それに対して具体的に何ができるか?ってなると難しいんですけど、常にひとりでも多くの人に聴いてもらえるキッカケがどこかで生まれればいいなとは思います。

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音の室で音室(音質)育ち。上手い。

--個人的には、GARNET CROWって自分たちが良いと思える楽曲を創る。それ以外のところには比較的無頓着なイメージなんですけど。

中村由利:……無頓着ですか。

--実際のところ「もっと売れたい、その為には何をするか」みたいなことを思ったり考えたりします?

岡本仁志:そこは無頓着かもしれない。

中村由利:他のアーティストさんって、もうちょっとそういうこと考えてます?

--その為の戦略を自ら練っている人はいます。

中村由利:そっかぁ~。

岡本仁志:それはないね。

中村由利:オンシツ育ちですから(笑)。

--温室? 音質?

中村由利:音の室で音室(音質)育ち。上手い。

--自分で「上手い」って言っちゃった(笑)。では、GARNET CROWの活動を続けていく上での原動力ってどんなものだったりするんでしょう?

中村由利:自分が飽きないことですね。新鮮な曲を作ること。ライブとかいろいろあるけど、まずは曲作りに飽きないこと。惰性で作るというのは一番よくないですから。まだまだ「面白い」と思えたり、「今度はこんな曲を作りたい」「こうしてみたい」と思えることが大事なのかなって。あとは、1曲1曲に新鮮さを覚えられるかどうか。

--それがある故にGARNET CROWは継続できていると。

中村由利:惰性で作ってないですからね。これだけやってますけど、まだまだ新しい発見とか、「面白いな」「楽しいな」って思う部分があるので。原動力はそこですかね。「売れたい」とかは原動力じゃないな。それは「そうなったらいいなー」ぐらい。わりと楽観的ですね。曲を作っている渦中にいる人は“台風の目”にいるので、あんまりそういうところは分かんない。スタジオワークが中心なので、そういう意味では外野の声がそんなに届かない、良い環境で曲作りをさせて頂いているっていうのもありますよね。だから左右されずに自分たちの作りたいものを作れている。

--ただ、GARNET CROWの音楽に新しい要素を入れるときというのは、今世に鳴っている音もひとつの選択肢になる訳ですよね?

中村由利:それは結構あります。巷で鳴っている音楽って、聴こうと意識しなくても耳に入ってくるじゃないですか。やっぱりその中から「お、これは」「なんだこれ?」と思うものはちゃんと聴くし、面白いなと思えば取り入れようとするだろうし、それは普通にありますよ。もちろん最新の流行音楽だけじゃなく、クラシックや民謡やカンツォーネやシャンソン、どんな音楽に対してもあります。わりと雑食。何でも良いと思うものは取り入れる。それをGARNET CROWとしてのオリジナルに昇華できるかどうかはまた別の話になるんですけど。

岡本仁志:すごく自然にテリトリーは増やしてます。繰り返しになっちゃいますけど、自分たちの新鮮な気持ちを維持していく為にはテリトリーを増やさないと。

--10周年タイミングのインタビューでも、解散の危機や深刻なピンチに見舞われたことがないと仰っていたんですけど、活動に迷いが生じることって一切ないんですか?

中村由利:ないですね。

岡本仁志:そうですね。自分たちよりも、環境の影響の方が気になりますかね。いつまで今の音楽業界におけるシステムが成り立つのか、とか。どこもなかなか音楽を続けるのが難しくなっていると思うので、今は純粋な気持ちで音楽をやらせて頂いていますけど、それをいつまでも続けていけるのか。そういう心配事はありますけど、GARNET CROWの在り方そのものに迷いが生じることはないです。

--今日のお話を聞いて思いましたが、どこまでも楽曲なんですね。4人がこの仕事をしていく上で考えることは。

中村由利:第一は楽曲ですよね。良い楽曲が出来るからこそ、それがプロモーションに繋がったりとか、たくさんの人に聴いてもらいたいと思えてライブに繋がったりとか、次の作品にも繋がったりする。だから楽曲ありきでないと、いくら自分たちが前に出て行こうと成立しない。要は「あ、良い曲だな」って思ってもらえるかどうかが、GARNET CROWの評価の分かれ目だと思っているので、そこを崩しちゃうと全部が崩壊する。なので、楽曲のクオリティだけは絶対に落とさない。その辺はシビアですし、妥協はしないですね。どの曲も自信を持ってお届けできるからこそ、堂々と取材も受けられるし、ライブもできるし、スタッフさんも頑張ってくれるし、そのスタッフさんの想いを受けて「もっと良い曲作らなきゃ」と思えるし、そこを崩すメリットはない。

--あくまで音室育ち。

中村由利:それ、キャッチコピーにしちゃおう!“音室育ちのGARNET CROW”って収まりもいいじゃん!

--分かりました、使わせて頂きます!

中村由利:サウンドは甘くないぜ! …………これは載せなくてもいいです(笑)。

Music Video

GARNET CROW「Nostalgia」

Nostalgia

2012/09/26 RELEASE
GZCA-4136 ¥ 1,320(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.Nostalgia
  2. 02.風の中のオルゴール
  3. 03.Happy swallow
  4. 04.Nostalgia -Instrumental-

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