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<インタビュー>“TikTok新女王” メイ・スティーブンスが明かす大ヒット曲「If We Ever Broke Up」の裏側



Mae Stephensインタビュー

Photos: Yuma Totsuka

 泣き顔や失恋の割れたハートを手で作るダンスがTikTokを中心にバズり、Billboard JAPANが発表するTikTok上における楽曲人気を測るチャート“TikTok Weekly Top 20”で19週にわたってトップ10にチャートインするメイ・スティーブンスの「If We Ever Broke Up」。元カレの復讐劇を痛快に歌うこの曲は、メイが短時間で書き上げたとい逸話も。

 日本のカルチャーが大好きだというZ世代の“TikTok新女王”が7月中旬にプロモーション来日。大ヒット曲ができるまでの経緯、そして同じくTikTokの楽曲人気が高い憧れのシンガー、メーガン・トレイナーとのコラボ曲「Mr Right」についていち早く教えてくれた。

――今日の衣装、とても素敵ですね。

メイ・スティーブンス:ありがとうございます。ふわふわで可愛いですよね。私のスタイリストが最高で、私が絶対に欲しいと思うようなドレスをいつもたくさん用意してくれるんです。このドレスは、私が日本で着るために彼女がアメリカから輸入してくれたんです。

 10月にまた日本に来る予定なんですけど、その時はたくさん買い物ができるようにお金をお財布に詰めてきます(笑)。日本や東京をもっとじっくりと見て歩きたいですね。ここ数日間で日本に移住したいと思うほど気に入りました。パスポートを手放して、日本で一生過ごしてもいいくらいです。

――色々なキャラクターのタトゥーを入れていますが、日本のアニメや文化が幼い頃から好きだったのでしょうか?

メイ:はい、日本のファッション、文化、ストリートスタイル、食べ物、すべてに夢中で、日本語が話せるようになりたいです。幼い頃は、ハローキティが大好きでした。でも10代になったら女の子らしいものを嫌うようになったんです。ピンクが大嫌いで、髪を青く染めて黒ずくめの洋服を着ていました。そこから成長して、自分のことを知るにつれて、キティちゃんやアニメへの愛が再熱しました。好きなものがなんであれ、やや変わっていたのは間違いないですね。

――そして「If We Ever Broke Up」の大ヒットおめでとうございます。曲がリリースされてから「こんなことが自分に起こるなんて信じられない」と思った瞬間はありますか?

メイ:まず、曲の動画が拡散されているのを知った時ですね。大晦日に投稿したのですが、その晩すごく酔っ払い、あまりいい時間を過ごせたわけでもなかったんです。でも、翌朝起きたら1,100万回も再生されていました。その時、ボーイフレンドと一緒にいたんですが、2人ともすごくビックリしましたし、忘れられない瞬間になりました。

 最近だと、2週間前にアン・マリーと行ったライブでそう思う瞬間がありました。父とは本当にいい関係を築けていて、彼のおかげでいろいろなことを乗り越えてきました。私の音楽活動のために8年以上かけてデータの分析やSNSの運営方法など、あらゆることを学んでくれました。私の最大のサポーターで、何があっても常に私の側にいてくれました。ライブのサウンドチェックで、私が子供の頃に経験したいじめ、私のメンタルヘルスについてのとてもエモーショナルな曲を歌っていた時、会場の巨大なフィールドの真ん中で、父が膝をついて涙を流していた光景は忘れられません。大きなステージに立つ私の姿を見ることが彼の夢で、2週間前にそれを達成することができたのは、一生記録に残る思い出の一つです。自分が今、人生において正しい場所にいるような気がしていますね。


――昔からアーティストになりたいと努力してきたんですね。

メイ:音楽はずっと私にとってセラピーでした。学生時代に辛い経験をたくさんしたのですが、音楽を通じて感情を解放していました。次第にそれが私の情熱となり、フルタイムでやりたいと思い始めました。両親も「音楽があなたの特技だとわかったから、やってみよう」と言ってくれました。そして本格的に活動を始め、自分のことを知ってもらおうと、あらゆるライブやフェスティバルに出演したんです。父も大きな力添えとなってくれました。自分がやりたいことはこれだ、頑張ってやってみようという感じでしたね。

――「If We Ever Broke Up」は、今年4月にBillboard JAPANのTikTok Top 20チャートで1位になって、その後15週にわたってチャートインするという偉業を成し遂げています。

メイ:そんなに長くチャートインしているとは知りませんでした! それも「こんなことが自分に起こるなんて信じられない」瞬間に追加していいですか? 信じられないです!

――日本を含む世界中の人々がこの曲を使って投稿したり、歌詞に共感したりしていることをどう受け止めていますか?

メイ:こんなにも遠い国でヒットするとは想像もしていませんでした。大好きな日本を含む世界中の人々が聴いてくれて本当に嬉しいです。日本で人気が出ていると聞いたのは、特に思い出深い瞬間です。日本で作られた楽曲のコンテンツや、昨日出会った日本のクリエイター、様々な人々がこの曲を自分だけのものにしてくれています。いろいろな日本のクリエイターの動画を見てきましたが、常に独自のクリエイティビティが注入されていて、本当に特別なことだと思います。他の国とは全く違っていますね。曲に合わせるコンテンツへの気遣いがあって、とても喜ばしいことです。

――日本では、まず曲に合わせてダンスする動画がバズって、その後日本語訳入りのリリック・ビデオが公開されたことで、より詞に焦点を当てた動画が増えていった気がします。

メイ:この5日間で何度もダンスをしました。すごくキュートで、とっても気に入っています。イギリスだと、曲をリップシンクして最後に変顔するというのが定番で、こういうダンス・スタイルがないんです。なので、すごくキュートなダンスが誕生したことは、本当に嬉しいです。そういうちょっとした瞬間が大好きで、私のキャラにもあっていると思います。ひび割れたハートは、曲のアートワークにも使われていますしね。

@maestephens_ The Misfits made such a cute compilation of the mini dance trend for IWEBU!! You guys are so creative, I love it!! 💕🫶🏻 #maestephens #newmusic #vibe #dancetok #コムドット #singertok #funkalicious #ifweeverbrokeup #breakupsong #japan #dancetrend ♬ If We Ever Broke Up - Mae Stephens

――どのように誕生した曲だったか教えてもらえますか? すぐに書き上げたんですよね。

メイ:はい、3時間で出来上がりました。アムステルダムでの長い1週間の最後のセッションで書き上げました。その後、急いで飛行機に乗らないといけなかったので、書けたらいいし、もし完成できなかったら、今度続きを書こうと思っていました。

 実は、この曲は私が書いた初めてのファンク・ナンバーなんです。それまでは主にバラードを歌っていたので、ファンキーな曲の作曲に関しては今も実際にやりながら学んでいます。書いていた時の感覚や感情が、それまでと全く違いました。歌詞の内容やエモーションにおいては、過去の曲にひねりを加えた感じですが、メロディーとプロダクションは今後の方向性を示しています。

 「何について書きたい?」と聞かれた時に、すぐには思いつかなかったのですが、「私が過去に経験した恋愛とそこから立ち直ることを書こう」と思いました。曲はすぐに書けて、デモを作りました。でも投稿するまで、半年くらい聴くことはありませんでした。新しいことにチャレンジしたかったし、それがうまくいくかわからなかったけど、結果が出て嬉しいです。

――別れた元カレのお父さんに電話して、ひどいところを暴露するというキャッチーな歌詞がありますが、他にも候補はあったんでしょうか?

メイ:(スタッフに向かって)私のスマホを持ってる? ここにドラフトが入っていて……いくつか他にもアイデアがありました。実は誰にも見せたことがなくて、いい機会かなと思って。さっきも見せようか考えていたんです。これが2022年6月16日にレコーディングされた「If We Ever Broke Up」のオリジナル・コーラスです。(デモ音源を流す。「あなたには嘘をつきたくない、でも元から大嫌いだった」「あなたと付き合うのは時間の無駄とネットでみんなに言いふらす」など辛辣な詞が続いている)

 だから、もう少しライトな内容にして、より普遍的にする必要がありました。でも、“元カレのお父さんに電話する”というメインの歌詞は、多くの人が実際にやってみたいことですよね。親の目から見れば、自分の子供は大人になっても天使です。私の交際相手は、真実を暴露するのに値するようなひどい人だったから、彼の両親に明かしてしまう寸前でした。自分を傷つけた相手を破滅させたいという密かな願望。ただ言っておきたいのは、私は復讐心が強い人間では全然ないです(笑)。いろいろなアイデアがありましたが、多くの人が共感してくれるのは、この歌詞だと思いました。

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――貴重なデモを聞かせてくれてありがとうございます。ちなみにメイが失恋した時の克服法は?

メイ:多くの場合、すぐに切り替ることができます。私は長い間、特に10代の頃はあまり感情的ではありませんでした。今のようにうまく感情を処理することができなかったのですが、ある時に心がバラバラになるような大失恋を経験しました。その人には、初めてディズニーランド・パリを訪れた時に傷つけられました。なので、ミッキーマウスとともにディズニーランドで3日間泣き続けました。すごく辛かったです。その時に初めて、失恋がどんなものかを本当に理解しましたね。

 フランスから帰国して、私はすぐにピアノに向かいました。くる日もくる日も、数え切れないほどのエモーショナルな楽曲を書き続けました。そうやって感情を処理していったんです。今でもピアノは私にとってセラピーで、今後もセラピーであり続けると思います。ストレスが溜まっている時、躁状態の時もピアノに向かっています。

――悲しみやネガティブな感情をクリエティブにアウトプットできるのはいいことですよね。

メイ:アウトプットすることで、間違いなく何度か命を救われました。子供の頃、私はとてもダークな場所にいました。いじめを受けたり、ほとんど不可能に近い夢を追い求めたりしていたので、これ以上無理だと挫折してしまいそうなこともありました。それもあって文章を書くことを感情の源としている人たちをとても尊敬しています。

――曲作りは主にピアノで行っているのでしょうか? 他にも演奏できる楽器はありますか?

メイ:ギターを少し弾けます。今日のこの爪では無理ですが(笑)。やはりピアノがメインですね、一番エモーショナルな楽器だと思うので。

――元々バラードを歌っていたとおっしゃっていたので腑に落ちますね。

メイ:代々受け継がれてきた110年前のピアノが家にあるんです。なので、真っ先にピアノに惹かれました。家のピアノからは他とは違う独特な音色がして、やはりしっくりきます。その特別な音が自分にとってのセラピーなのかもしれないです。

――今をときめくFifty Fiftyやジェイクなど、TikTokやSNSを機に注目を集めるアーティストが現在の音楽シーンを賑わせています。これからどんなアプローチで音楽活動、アーティスト活動を広めようと考えていますか?

メイ:ライブですね。今、ライブシーンをとても楽しんでいます。私に会いに来てくれたり、話しかけてくれたりする人たちと直接交流できるので。ライブの後、できるだけ多くの人と話して質問に答えたり、挨拶したり、写真を撮ったりする時間を設けるよう努めています。私の住む街では、小さな女の子たちも「あなたのこと知ってる。あの曲の人だよね」ってよく声をかけてくれるんです。様々な人々ともっともっと交流できればと思っています。

 でも悲しいことに、多くのファンにとって唯一交流できるのがSNSです。だから次のシングルでは、できるだけ多くのファンの意見を取り入れ、グッズやみんながカスタマイズできるものを提供して、ここ6、7か月の間に出来上がったつながりをさらに構築していきたいです。本当に楽しみです。次は私ではなく、ファンに焦点を当てたプロジェクトになります。

――その次のプロジェクトというのは、メーガン・トレイナーとのコラボ曲「Mr Right」ですよね?

メイ:はい、リリースが待ちきれないです。メーガンがこの曲に参加してくれると知った時、嬉しくてお漏らしそうになりました(笑)。彼女が「オール・アバウト・ザット・ベース~わたしのぽちゃティブ宣言!」をリリースした頃、私は身体醜形障害を患っていて、学校でいじめられていたのはそれが理由でした。彼女の存在は、私が自分に自信を持つための大きな助けとなりました。身体醜形障害との闘いを経て、自分という人間を受け入れ、自信を持つ自由を手に入れました。そして20歳になって、彼女が自分の曲に参加してくれることになりました。彼女と話すことができましたし、FaceTimeで泣いてしまいました。まさにメーガンらしいバースになっていて、すごく気に入っています。私たちは、お互いをうまく補い合っているような気がしますね。自分のマネージャー以外に頼れる人になりましたし、「ここで行き詰っているのですが、助けてくれますか?」とお願いすると、彼女は喜んで手を差し伸べてくれます。

 本当にクールな曲ですよ。自分が今、地球上で最も幸運な人間だと純粋に感じています。まだキャリアをスタートして1年も経っていないのに、メーガンと一緒に曲を作れるなんて、本当に恵まれていると思います。


――曲についてもう少し詳しく教えていただけますか?

メイ:ちょっとしたシチュエーションに焦点を当てた、これまであまりなかったような曲になっています。出会い系アプリ上での失敗談や、デートで誰かが大きなおならをしてしまうなど、気まずいけれど、ちょっと笑えるような、見過ごされがちな小さな瞬間を明るみに出せればいいなと。出会い系アプリでスワイプしていくことを揶揄したり、服にシミや口臭のある人や思わず「いやだ」と思ってしまうような些細なことを歌っています。

 ファンやリスナーにデートや出会い系アプリでの失敗談を送ってもらい、「みんなが思う“Mr. Right”(理想の男性)ってどんな人?」って問うことで、人々を引き込んでいければいいですね。メーガンが参加するのにまさにぴったりなキャンペーンです。ユーモラスでありながら、同時にインクルーシブで。本当に楽しいものになりそうです。

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