Text：杉山仁

　2023年は配信シングルをリリースする傍ら、初のリクエストツアー【1st SELECTION TOUR】や、趣向の違う2つのテーマで行うライブツアー【Billboard Live Tour 2023】を開催。そのすべてが即ソールドアウトしたことも記憶に新しい4人組バンド、I Don't Like Mondays.。

　彼らは7月以降も、前述のライブツアーをパワーアップした追加公演【“Billboard Live Tour 2023 Special Encore” Powered by JBL】を開催したほか、夏のフェスへの出演や夏から始まるワールドツアー、10月からの新たなツアーも既に決定。今年は精力的なライブイヤーになりそうな雰囲気だ。そこで今回は、I Don't Like Mondays.のライブの魅力についてまとめてみたい。

　I Don't Like Mondays.のライブでまず外せないのは、バンドのアイデンティティのひとつでもある“華やかで踊れるバンドサウンド”だろう。その雰囲気はもともとバンド名にも表われている。「I Don't Like Mondays（月曜日は好きじゃない）」と聞くと、中には銃撃事件をもとにしたブームタウン・ラッツの同名曲を思い浮かべる人もいるかもしれないが、彼らの場合は“週末のバイブス”への共感や愛着が伝わるような雰囲気。羽目を外して仲間や恋人と楽しむ“日常とは違う特別な瞬間”や、そんな時間を彩る音楽への愛情が伝わるような感覚があり、この雰囲気がグルーヴ感のあるバンドの音楽性にもつながっている。

　楽曲の基本となるのはメンバーが愛してやまない洋楽ルーツのバンドサウンドで、メロディの節々にソウルやファンクからの影響が滲んでいる。そのため、縦ノリではなく、横ノリのグルーヴが印象的な楽曲が非常に多く、これが洒脱で踊れるバンドサウンドに繋がっている。そのうえで、EDMの要素をモダンなロックサウンドと融合させた「TONIGHT」などクラブミュージック／EDMの要素を加えた楽曲や、トラップ風のフロウが顔を出す「MR.CLEVER」のようなヒップホップ／ラップからの影響を加えた楽曲など、同時代の様々な音楽のトレンドも楽曲に取り込んでいる。そのうえで、最大の特徴は“ポップできらびやかであること”。そういった意味ではThe 1975のようなバンドとの共通点を感じるほか、甘く洒脱な雰囲気はフランスのロックバンド、フェニックスなどを思わせるようでもある。

　音楽性だけでなく、ハイブランドを中心としたファッションへの造詣の深さもこのバンドならではだ。彼らの衣装は、ミュージックビデオなどの映像作品はもちろんのこと、ライブでもスタイリッシュなもので統一されており、観客もお洒落をして向かうことが恒例となっている。そのため、会場の様子はバンドのライブというよりも洒脱できらびやかなパーティといった雰囲気で、観客としてアーティストのライブを見るというよりも、まるで彼らが主催するパーティに様々な人々が集まってきて自由に音楽を楽しんでいるような雰囲気がある。

Photo: Yuta Tsunoda

　また、ライブでは音源以上にタイトな演奏で演奏の基盤を支えるKENJIとSHUKIのベース＆ドラム、カッティングを多用するCHOJIのギター、時にマイケル・ジャクソンやプリンス、ブルーノ・マーズあたりを思わせるファルセットやシャウトも披露するYUのフロントマンとしての華のあるステージングも特徴となっている。楽曲によってクラップを促したり、観客と息を合わせるように体を揺らしたり、演奏のキメ部分を全員で合わせたりする演奏中の細かなやりとりに加えて、場合によっては演奏をシームレスに繋いで次の曲に移行する、生演奏での人力DJ的な演出で盛り上げることもある。「TONIGHT」や「LEMONADE」といった初期からの人気曲の、ライブ映えするアンセム感も印象的だ。

　近年はそこに新しい魅力も加わっている。ひとつは、キャリアを積むごとに追求されてきた日本語詞やJ-POP的な要素の広がり。なかでも2022年１月にリリースされたTVアニメ『ONE PIECE』の主題歌「PAINT」は、作品に寄り添うことを第一にしつつ仕上げられた王道のロックアンセムとなっている。日本語詞を突き詰めたことで、一見華やかに見られる彼らが、実は様々な壁を乗り越えながら進む熱い男たちであることが伝わるような雰囲気も印象深い。お洒落なだけではない、深みのある表現やテーマ性のある楽曲も近年は増えている。

　また、2021年8月リリースの4thアルバム『Black Humor』はもともとコロナ禍でのホームリスニングを想定して制作されたということもあり、「ノラリ・クラリ」や「MOON NIGHT」、「全部アナタのせいなんだ」など以前より落ち着いたグルーヴの楽曲が増えた作品となっていた。その結果、以降のライブではバンドの表現の幅がさらに広がっているような印象だ。踊って盛り上がれるピークタイムを演出する楽曲に加えて、セットリストに緩急をつけてくれる楽曲が増えたことで、全体を通しての盛り上がりがよりダイナミックに感じられる。

　今年行われた【Billboard Live Tour 2023】では、1stステージを“スパイシーでエネルギーのある楽曲”、2ndステージを“甘くメロウでリラックスできる楽曲”をそれぞれ中心にして披露するなど、ライブ自体のテーマもバラエティに富んだものが増えている。

　こうした様々な変化と、持ち前の華やかでポップな楽曲の数々によって、I Don't Like Mondays.のライブは今まさに脂が乗り切った状態にある。

　最近では海外に向けての活動も活発化しており、今年は10月からはじまる国内ツアー【2023 A/W TOUR "RUNWAY"】に加えて、海外フェスをまわるワールドツアーも発表。既に発表されているバルセロナの【BUBBLEPOP】とマカオの【OH! MY ROCK】への出演に加えて、今後も様々な公演への出演が予定されているという。今後も音楽、ファッションを筆頭に様々なカルチャーを繋いでますます色々な層にファンを広げていきそうだ。気になる方はぜひ、どこかの会場で彼らのライブを体験していただきたい。

Photo: Yuta Tsunoda