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<インタビュー>THE BEAT GARDENがファンに届ける最高傑作『余光』



THE BEAT GARDENインタビュー

 3ボーカル、1 DJによる4人組グループ・THE BEAT GARDENが、2021年8月4日に3rdアルバム『余光』(よこう)をリリースした。前作『メッセージ』から約2年5月ぶりとなる今作は、8月10日に行われる「音庭部屋」の生配信をもってグループを脱退するSATORUが在籍する現体制最後のアルバムとなる。ファン待望の久々の有観客ライブでツアー中の4人に、それぞれが抱いている今作への様々な胸の内を、楽曲への思いと共に語ってもらった。

左から:SATORU (DJ), REI (Vo.), MASATO (Vo.), U (Vo.)

――現在、約2年ぶりの全国ツアー【The Beat Garden one man live tour 2021「Afterglow」】を開催中ですね。後期公演がスタートしたところですが、ここまでのツアーにどんな感想を持っていますか?(取材は7月中旬に実施)

U:僕らTHE BEAT GARDENは、3ボーカル・1 DJというスタイルで、ダンスの振付があったり楽器を持っていたりするわけでもないので、ボーカル3人は立ち位置もあんまり決めずに、結構自由にステージを走り回ったりしているんです。なので、今までのライブではファンの人も同じように自由に声を出したり、踊ったりする感じだったんです。今回のツアーは声を出せず、ソーシャルディスタンスを守らないといけないということで、最初は不安がありました。ただ、後期まで走ってみて、声を出すことはできなくても、僕らが届けることやお客さんが僕らに届けてくれる熱量はそれほど変わらないというか。もちろん、物理的に声がないということはあるんですけど、目線とかでちゃんと届くものがあるなっていうのはすごく感じています。セットリストも、ただ盛り上がるということができない分、1つのショーのパッケージで見せるということではなく、1曲1曲を丁寧に、思いを乗せて歌うことができていると思います。それが結果的にすごく良かったと思いますし、お客さんもそう思ってくれているんじゃないかなっていう肌感はありますね。

――この状況だからこそのステージングの工夫というか、コール&レスポンスの代わりになるものとかも考えてやっているんですか?

U:最初は、ツアーのリハーサルをしてみて「みんなが声を出せなくても楽しめるセットリスト」を作っていたんですよ。例えばお客さんが足踏みをする音にハマるようなライブトラックをREIが作ったり。でもそうじゃなくて、絵的に盛り上がっているように見えなくても、MCで伝える言葉をゆっくり喋ったり、アップテンポでもバラードでも、曲を丁寧に届けていったりと、メッセージを届ける方がいいんじゃないかなって。そのことにリハーサルの真ん中あたりで気が付いて、セットリストを作り直して、ツアー自体は最初からメッセージを届けるセットリストでやっています。

MASATO:お客さんが声を出せないことを全然ネガティブには考えていなくて、それこそ拍手1つ取っても、手を前に出して拍手する思いを伝えてくれる人がいたりして、何か言葉以上のものをすごく感じます。ただMCでは基本スベってるみたいになっちゃうんですけど(笑)。

U:自己紹介は、お客さんが大きな声で笑えないので、だいたいスベってますね(笑)。

MASATO:心の中で笑ってくださっていると信じてます(笑)。少しスベり芸的な感じが定着しつつあるんですけど、これは声が出せるようになったらとんでもないことになるなって。「あ、本当にスベってたんだ!?」っていう(笑)。

U:初めて見る人が、スベり芸と捉えているか、マジでスベってると捉えているかはちょっとわからないですけど(笑)。

――そこは声を出せるようになったときに明らかになる、と(笑)。REIさんはどんなことを考えてツアーを回っていますか?

REI:これまでと状況が違う中でライブをするのって、自分がどういう気持ちになるんだろうって、始める前はすごく考えてました。ただ、やっぱりBeemer(THE BEAT GARDENのファンの総称)に会うこと自体2年ぶりなので、会えただけ、顔が見えただけで幸せですし、拍手で声援を表現してくれていて、声が出せる・出せないって良い意味で関係ないって思いました。みんながちゃんと届けたいものを受けとめて、持って帰ってくれているというのは、ライブ後の反応を見てもすごく伝わっています。言葉が出せないが故に、それ以上のつながりを感じています。

――SATORUさんは今回のツアーでグループを卒業することになります。

SATORU:そうですね。ライブ自体もこのツアーが始まる前はオンライン・ライブ以外だと2020年1月の新木場STUDIO COASTが最後だったので、いろんなルールがある中のライブ開催にちょっとした不安もあったんです。始まってみたら、僕らの熱量とか気持ちはしっかり届いていて。みんなも僕らと同じ時間分だけ待っていてくれたので、返ってくる熱量もすごかったですし、僕自身も最後のツアーなので、やっぱり今までと一緒かと言えばそうではないです。個人的には1公演1公演、大切に思いを込めていますし、これを最後まで続けていきたいと思います。

――3rdアルバム『余光』は、曲順などどんなことを考えて作りましたか?

U:THE BEAT GARDENのことを、「マリッジソング」(ドラマ『社内マリッジハニー』エンディング・テーマ)などドラマのタイアップ曲で知ってくれたりしている人がライブやSNSなんかで少しずつ現れるようになってきました。「THE BEAT GARDENと言えば~」というものがちょっとずつ生まれ始めているんです。そういったものと、昨年からのこの期間でリリースしたデジタル・シングルを入れています。それと「エピソード」は僕ら4人の曲なので、今までの感謝を込めて入れました。

――『余光』という言葉には、どんな意味を込められているのでしょう?

U:ツアーを発表したとき、僕らはSATORUの卒業をわかっていたので、4人に会いに行けるライブがみんなの心に残ってほしいし、これから3人体制になったとしてもSATORUがいてくれたTHE BEAT GARDENは消えるものではないっていうメッセージを込めて「Afterglow」という言葉を考えてツアータイトルにしたんです。アルバムもそこにリンクさせていくことで、アルバム自体のお客さんの捉え方もそういったものになると思いますし、僕ら自身にとってもこれから歌い繋いでいくアルバムにできるんじゃないかなと思って、ツアーから意味を引き継いで『余光』というタイトルにしました。

――ジャケットの写真、手書きのタイトルがとても印象的です。この写真の撮影場所ってどこなんですか?

U:これは、アー写を撮影したお台場です。THE BEAT GARDENには、「エレクリック・ダンスロック」っていう自分たちが呼んでたジャンルがあるんですけど、インディーズでそこから始まって、たくさんの出会いを経て、僕らもTHE BEAT GARDENというものがわかってきました。いろんなことに気が付いて、今は等身大の思いで歌えたり歌詞や曲を書けたりするようになってきたんです。このアルバムは特にそういう思いがあるので、ジャケットも文字体も、そういうことを感じてもらえるような柔らかさが出たらいいなと思って作りました。

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「Everglow」は次の未来を
目指していけるような願いを込めた(U)

――現体制最後のアルバムとなると、新曲の2曲がこの先のTHE BEAT GARDENの音楽がどうなっていくのかを想像させるものになる気がします。まず、「好きな人がいる人を好きになった」について教えてください。作曲はUさんとMASATOさん、作詞はUさんとシンガーソングライターの落合渉さん名義になっていますが、これはどんな成り立ちでできた曲なんですか?

MASATO:曲が先にできたんですけど、このコロナ禍で何をするにも退屈に思えちゃう時期があったんです。自分が作った曲にあんまりそういう思いは持たないんですけど、1コーラス作ったときに、何かちょっと満足いかなくて。「ヴァースの部分をこうしてみよう、ああしてみよう」っていう、素直じゃないことをしてしまったんです。それでも満足いかなくて、全部ヴァースを取っ払って、Uさんに「なんかわからなくなっちゃったので、何かここに化学反応を起こしてください」ってお願いして。そこから2人でイメージをしつつ、ああいうジャジーポップな曲になりました。

――イントロからして他の曲とはテイストが違いますけど、サビの入り方、歌い終わりのコード感とかがすごく最初から耳に残りました。

MASATO:サビは最初に作ったときから残していて、歌い終わりの部分はこだわりました。いつもは爽快に終わっていくんですけど、燃え切らない不完全燃焼さ、すっきりしない違和感を残そうと思ったんです。

U:僕は今回、落合渉君と一緒に歌詞を書かせてもらいました。メロディーができた段階でテーマは決まってなかったんですけど、もともとアルバムをリリースする前からメロディー自体はできていて、いつかリリースしたいという思いがあったんです。僕はYouTubeで落合君の曲を知ったんですけど、落合君は自分の実体験を良い意味で狭い範囲で、だけどすごく共感するような歌を書いていたんです。それを聞いて、僕から連絡を取って「アルバムを出すから、一緒に曲を作らない?」ってオファーしました。THE BEAT GARDENは3人ボーカルがいて、僕が歌詞を書くときには「他の2人には似合わないワード」があって、すごく選びづらいという思いがあったんです。ただ、そういう曲を書いて歌ったときも、お客さんはそういうことを感じずに、1人のボーカルが歌っているかのようにちゃんと曲として捉えてくれているという、インディーズ時代から積み重ねてきた自信があるんです。落合君は1人でシンガーソングライターとして歌っているので、良い意味で共感しない人がいるかもしれない。でも、この毒々しさというか……結構ひどいことを歌っているんですけど(笑)。

――きれいごとを歌っていないところに共感します(笑)。

U:そうですよね(笑)。そういう歌をTHE BEAT GARDENが歌ってもいいと思って、一緒に歌詞を書きました。もともとラブソングを書くときも、自分たちが割とカッコいい感じの面構えでやっていると、「失恋とかしたことないでしょ?」っていう言葉をもらったり、「そういう角度で見られてるな~」って思ったりすることがあったんですけど、これまでも意外とそうでもない曲を書いていて。そこに落合君のエッセンスが入ることによって、もう一歩、その先に行けたというか。自分ひとりで書いた曲だったら、ひどい言葉も自分の責任になるんですけど、落合君がいることで責任転嫁できるというか(笑)。書いていてすごく楽しかったですね。結果、半々ぐらい書いてます。

――<付き合ってもすぐ別れるだろ>というのは……

U:う~ん、それはどっちが書いたか覚えてないですね(笑)。

一同:(笑)。

REI:歌詞で言うと、たぶんTHE BEAT GARDENの4人だけだと、まずこのタイトルになってないと思いますし、僕たちの曲の中では一番毒づいているんですよ。だから今Uさんが言ったように、まさに一歩先に行けたっていう感覚で、自分たちの幅がもう一回り膨らんだ感じはあります。トラックに関してはMASATOさんとUさんのデモが上がってきた段階で、アレンジャーさんを決めるミーティングがあったんです。僕は普段からHaruhito Nishiさんが作る曲をよく聴いていて、打ち込みと生楽器、J-POPなんだけど少し尖った要素を曲の中に落とし込んでいらっしゃる印象があったので、今回オファーさせていただきました。もともとメロディーにジャジーなところがあったので、生ピアノやウッドベースを生でレコーディングして、豪華なトラックになったと思います。

SATORU:たぶん、メンバー4人の中で僕が一番この歌詞に共感できると思っているんですけど。

一同:はははは(笑)。

SATORU:ストレートですし、「わかるなぁ」っていう部分も僕の中であります。ライブで何度かやってるんですけど、どんどんハマっていくというか、歌詞も深くわかっていきますし、ライブでお客さんの感情も良い意味でハッキリ見えますし、ライブ映えする曲だなって思います。ただ、最初に歌ったときはお客さんも「あれ?」みたいな感じだったよね?

U:そうだね。思ったよりもジャジーに始まったなっていう感じで。今までのTHE BEAT GARDENの曲がエレクトロ・サウンドだったりして、こういうおしゃれなイントロの曲がなかったので。「意外な感じで始まったな」から、歌詞がひどいっていうので、みんな「えっ? 大丈夫?」っていう感じはありました(笑)。でも、こういうちょっとひねくれているような曲もTHE BEAT GARDENは書いてきたので、それを好きなリスナーも喜んでくれていると思います。

――終盤にストリングスが入ってきて、また生ピアノとウッドベースに戻るようなところが、堂々巡りしている複雑な心情が表れていて面白い曲だと思います。

MASATO:ありがとうございます、嬉しいです。

――もう一方の新曲「Everglow」は作曲をUさんとREIさん、作詞をUさんが担当されています。アップテンポなダンスチューンでラップも入っていて、このアルバムで一番ノリの良さを感じます。

REI:最近の自分たちは、よりメロディーにフォーカスを当てた歌をリリースしていて。今回4人最後のアルバムというのもあって、自分の中でどこか原点に戻れるような、でも成長した僕らも落とし込みたいと思い、アップテンポで、かつインディーズでラップもやっていたので、ラップにもトライしています。過去も振り返りつつ、新しさも感じてもらえるような作品になればいいなと思って作りました。


――とてもポジティブなエネルギーを感じる曲です。この先の未来も見据えた曲にもなっていますか?

REI:やっぱり、コロナ禍で何をしても何も手につかなくて、すごく焦りだけが募っていく感覚がありました。そういった中でも僕たちが歌えているのは、Beemerのおかげだし、次にまた会える希望とかも意識しています。

U:歌詞は、まさしくコロナ禍の期間を歌っているんですけど、SATORUの卒業が決まり始めたのが1年半ぐらい前で、ファンの人たちに言えない期間がずっとあったんです。それと、毎週末にライブがあって、リリースがあればイベントで全国を回るというのが僕らの中で当たり前になっていたので、それがなくなってしまったというのもあって、ポジティブに歌詞を書くのがすごく苦しかったんです。でも、ずっと後ろ向きでもいられないっていう思いがあって。REIからメロディーが届いたとき、ライブでみんなと歌っている絵が想像できたのと、ツアーができるかもしれないっていう可能性が出てきたタイミングだったんです。Beemerには、次会ったときに、「THE BEAT GARDENと一緒に未来を描いていけるんだ」っていうのを感じてほしかったし、会えたとしてもまだそこは完全な夜明けじゃなくて、一緒にこの曲を聴きながら歌いながら、次の未来を目指していけるような願いを込めて書いていきました。

SATORU:やっぱり、ライブでみんなが声を出せないという現実に僕の中ですごく違和感がありました。でも、この曲はこのツアーが終わった後もTHE BEAT GARDENがライブでずっと歌っていく曲だと思うので、こういう状況じゃなくなったときに、僕もこの曲をライブで聞ける日を楽しみにしてます。

SATORU:「Everglow」は、本音や希望を詰め込んでいる曲だなって思います。人って、ちょっと弱音を吐いちゃうと崩れちゃう自分、みたいなものがあるじゃないですか? それこそエンタメって、生きて行く上では絶対必要じゃないかもしれないけど、でも音楽がないと生きていけないTHE BEAT GARDENがいて。それを救ってあげたいというファンの人たちの気持ちや、それを言ったら反社会的に思われるんじゃないかみたいな葛藤もあると思うんです。そんな中でこの曲をライブで歌ったときに、アッパーチューンだし笑顔で聴いてくれているのに少し涙ぐんでいるような人たちの目を見て、たぶんその勇気を代弁できている1曲になっているって感じたんです。その本音みたいなものをシリアスに歌うのではなく、ちゃんと希望を持ってアッパーチューンで歌えるというのは、これからのTHE BEAT GARDENにとっても良かったなと思います。

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ツアーを最後まで全力疾走して
しっかり駆け抜けていきたい(SATORU)

――では、それぞれにとって『余光』がどんなアルバムになったのか、特に聴いてほしい曲を挙げつつ、教えてください。

REI:僕は「Snow White Girl」について。「Snow White Girl」以降の「光」からはデジタル・シングルに切り替わってリリースしているんです。「今までCD盤で出していたシングルがデジタルになるのってどうなんだろう」という気持ちもありつつ、この「Snow White Girl」以降、リリース・イベントで全国のBeemerに会えていないんですよ。イベントはその都市のBeemerに会って、気持ちも心もより繋がっていく期間で、「また会おうね」っていう約束をする場でもあったんです。ツアー後期ではようやく「Snow White Girl」がセットリストに入って歌っているんですけど、やっぱりそのときの気持ちや感覚がよみがえってくるし、1年半待たせてしまったけど、少しずつでも前に進めてこうして会えていることの喜びを、歌っていて感じました。このアルバムは4人最後の作品で、今の僕たちのベストなものだとも思っています。どの曲もそのときの情景があるので、いつ聴いてもその感覚に戻れるというか。「そのときの僕たちはここにいる」っていう感覚はありますし、そういうアルバムになればいいなって思います。


SATORU:自分は11曲目の「エピソード」について。この曲は4人のことを歌っていて、この曲ができた瞬間、すごくうれしかったんです。こんな風に自分たちの曲を書くミュージシャンってそこまでいないのかなっていう気がしていて。歌詞を振り返ってみると、そのときの苦しかったこと、楽しかったことが全部思い出としてよみがえってきます。僕らは六本木のライブハウス「morph-tokyo」(2020年11月30日に閉店)に昔からお世話になっていたんですけど、そこの楽屋からステージに向かう階段の音をキックで入れていて、この曲には深い思い出が詰まっているんです。今後初めてTHE BEAT GARDENを聴いてくれる人にも、昔のTHE BEAT GARDENとこの先のTHE BEAT GARDENが、この曲でしっかり伝わるんじゃないかと思いますし、とても大事な曲です。アルバムとしては、今の僕たちのすべてがこの11曲に詰まっていますし、良い曲ばかりなので本当に聴いてもらいたいです。

MASATO:僕は「遠距離恋愛」について。この曲は恋愛対象だけでなく、僕たちとBeemerや、アーティストとファンの方々の関係性など、本当に大切な人とか、会いたくても会えないこの状況を綴っていて、「Everglow」とは違う本音をここに綴れたと思います。ライブをやってみて、自宅やスタジオで夢見て作ったものが、やっとみんなに直接生の声で伝えられると実感できた曲なので、すごく大切な曲になりました。この曲を作曲したときに正直言って「来た!」って思ったんです。曲尺とか難しいことを意識せずに、とにかく離れている距離と、思い合っている者同士だからこそ思う本当の片思いみたいなものもイメージして作ったので、トータルしてこの期間を総括する1曲になったと思います。アルバムとしては、この期間やデビューしてから8年の苦楽を経て完成した1枚ですし、1枚目(『I’m』)からたくさん形を変えた今のTHE BEAT GARDENを聴いてもらっているので、どこにも嘘はなく、どこから聞いても好きになってもらえる可能性のあるアルバムになったと思います。


U:僕は、10曲目の「スタートボタン」という曲についてなんですけど、この曲はもともと『劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』という映画の挿入歌として書き下した曲なんです。ゲームの中で強い敵に立ち向かっていく主人公のアキオは、普段はサラリーマンをやっていて、そこでも見えない敵と戦っている、というストーリーで、当時はその世界観に合わせた曲を書きました。<何度負けても それでも生きることを選んだ僕は 君は 本当に負けたのかな>という歌詞のフレーズがあって、コロナ禍でまだ会えないファンの人もいますが、実際に会ったときに、「きっと頑張って生きてきたんだろうな」って思ったんです。会えない人もSNSで言葉をくれて、とにかく生き続けてくれていることに「ありがとう」って思うし、きっと僕らだけじゃなくてみんながいろんな思いを抱えて必死に生きていると思うので、新たな気持ちを込めて歌える1曲だなと思っています。ライブでも曲を聴いていても、自分自身、感じる部分が違うなって思う1曲です。アルバムとしては、やっぱり「4人で作れるのがこれで最後なんだな」って思うし、正直言ってすごく寂しいです。THE BEAT GARDENはこれからもっと知ってもらえる存在になりたいと思っているんですけど、今、THE BEAT GARDENを応援してくれている人がいるっていうことが、本当にすごいと思うんです。自分自身、まだ名前が知られていないミュージシャンをずっと追いかけていた経験がないので。今の僕たちの「寂しい」とか「悔しい」っていう気持ちも、今の僕たちを知っている人たちしか感じることができないものなので、だからこそ、4人で作ったアルバム、この11曲を僕たちは歌い続けて、みんなと振り返っていきたいと思うし、『余光』というアルバムを聴いたとき、ジャケットを見たとき、やっぱりみんなSATORUのことを思い出すと思うし、僕らもそうだと思うんです。このアルバムに入っている曲は4人のことを感じ続けられる曲だと思うので、この作品を振り返るときはもっと大きな存在になっていられるよう、頑張っていきたいです。僕らがめちゃくちゃ売れた後にSATORUが自慢できるようなアルバムになればいいなって。今の自分たちの代表作であることは間違いないですし、新しく僕らを知ってくれた人たちにも聴いてもらいたいです。


――では、SATORUさんから最後に一言いただけますか?

SATORU:今、THE BEAT GARDENを卒業した後のことはまったく考えてなくて。ツアーファイナルまでもう少しなんですけど、このツアーを最後まで全力疾走して、しっかり駆け抜けていきたいです。無理かもしれないですけど、笑顔で終われるようなツアーにしたいなっていうのが、一番大きな気持ちです。

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