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中山美穂『Neuf Neuf』インタビュー ~20年ぶりのアルバムを掲げ、再び音楽家としての道へ



 2019年にデビュー35周年イヤーを迎えた中山美穂が、1999年にリリースした『Adore』以来、約20年ぶりとなるアルバム『Neuf Neuf』をリリースした。自身の作詞曲「時計草」を含む新曲3曲、セルフ・カバー4曲、そして自身が作曲したインストゥルメンタルが1曲収録されている。近年、海外でも注目されている80年代シティ・ポップに通じる作風も感じられるが、あくまで中山自身の感性や表現が軸として貫かれていることが、今回のインタビューから読み取れる。また、中山美穂の音楽に対する距離感に関しても、垣間見ることができる内容だ。

歌詞にすごく意味を込めているわけではない

CD
▲『Neuf Neuf』

――まずは20年ぶりにアルバムを作ることになった経緯を教えてください。

中山美穂:この20年間も「音楽活動をやりたい」という思いは持ち続けていたんですよ。もしチャンスがあるならライブやアルバム制作ができたらいいなって。でも、なかなかきっかけがなくて実現しなかったんです。そんな中、2019年3月に浜崎貴司さんのライブ・イベント【GACHI】にゲスト出演させていただいた時、今回のアルバム『Neuf Neuf』にも収録されている「君のこと」という曲を披露したんですね。そのライブにはレコード会社の方も見に来てくださっていて、そこからアルバム制作をやってみようかという話になりました。

――長らく表立った音楽活動をしていなかった中山さんですが、もともと曲があったということは曲作り自体は行われていたんですね。

中山:そうですね。発売とか全然関係なく曲を作ってもらったり、自分で作ったりもしていました。あと、ライブの予定もないままバンドのメンバーを集めてリハーサルをしたり。

――浜崎さんとの親交はどういうところから始まったんですか?

中山:1994年のドラマ『もしも願いが叶うなら』で共演したことがきっかけです。そこから私のアルバムで曲を作ってくれたり。付き合いが長いんです。私自身もFLYING KIDSやソロ・デビュー以降の浜崎貴司さんが大好きで、コンサートを見に行ったりしていました。それで2018年の暮れの頃、浜崎さんに「美穂ちゃん、やらない?」って【GACHI】に誘われて。「すごくやりたいけど、私できるのかな?」と思いつつ、「こんなチャンスない!」と思って引き受けました。ライブは基本的に弾き語りでやったんですけど、泣きながら一生懸命ギターを練習しました(笑)



――今回のアルバムでは高田漣さんが全曲プロデュースしていますが、高田さんとは以前からお付き合いがあったのでしょうか?

中山:同じレコード会社ではあったんですけど、特にお付き合いがあったわけではないんです。きっかけはKING RECORDSの方からの提案でした。今回はどこか懐かしさを感じられて、なおかつ新しいものを作ろうと制作前からイメージしていたんですけど、高田さんの新しいアルバム『FRESH』を聴いた時に「これだ!」と思ったんです。高田さんも最初からシティ・ポップみたいな感じでやりたいと言っていました。


▲中山美穂 New Album『Neuf Neuf』全曲試聴トレーラー

――アルバムに収録されている8曲(新曲3曲、セルフ・カバー4曲、インストゥルメンタル1曲)の構成はどのような話し合いのもと決まったのですか?

中山:最初からガチガチに決めて作ったわけではなくて。1曲1曲を選びながら、同時並行で流れを作っていきました。

――浜崎さんとのライブでは披露されていますが、アルバムには収録されていないセルフ・カバーもありますよね。

中山:「世界中の誰よりきっと」とか入ってないですよね。収録するにはマストな感じですけど。でも、あえて入れないでおこうと思って。

――新曲「時計草」では作詞も担当しています。先ほどライブをやるわけではないのにリハーサルをしていたと仰っていましたが、歌詞も普段から書き溜めているのでしょうか?

中山:書き溜めてはいましたけど、今回そういうのは一切使っていないです。このアルバムの制作期間中に作った歌詞を採用しました。

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柴田さんを見ているとお母さんみたいな気分になっちゃって

――「時計草」の歌詞は美穂さんの“今“という、すごく深読みを誘うものに感じます。

中山:いいんです、それで。特にすごく意味を込めているわけではないので、そう捉えていただけると嬉しいです。

――そんなに歌詞に意味を込めているわけではない?

中山:すごくメッセージ性のあるものは避けたかったんです。音として気楽に楽しめるものがいいなと思って。

――「時計草」は詞が先にできて、あとに曲ができたのでしょうか。

中山:そうです。

――自分の書いた歌詞に高田さんの曲がついた時、どのような印象を持ちましたか?

中山:たくさんの可能性が見えて、すごくいい感触でした。実は「時計草」の歌詞を書いて高田さんに送ったあと、私が「ごめん、詞を書き直したい」と言ったんです。そしたら高田さんが「美穂さん、ちょっと待って」って言って、すぐに送られてきた曲が本当によくて。なので、そのままにしようということになりました。

――時計草というのは珍しい植物ですよね。何か思い入れがあったのでしょうか?

中山:好きな花ということもあるのですが、花言葉とかを調べると色々出てくるんですよ。それを見てるだけでイマジネーションの沸く花だなと。

――「君のこと」ができあがった経緯も聞かせてください。この曲は柴田隆浩(忘れらんねえよ)さんが作詞・作曲を務めています。柴田さんとは以前から接点があったのですか。

中山:直接はないのですが、舞台をやっていた時、ずーっとSEでかかっていた曲が「忘れらんねえよ」で、聴いてるうちに大好きになっちゃったんですよ。舞台が終わる頃には全部覚えていて(笑)。それからライブを見に行ったりしていました。


▲中山美穂「君のこと」

――柴田さんにはどんな印象を抱いていましたか?

中山:柴田さんを見ているとお母さんみたいな気分になっちゃって。ライブも見ていると涙が出ちゃうんです。「頑張れ柴田―!」って。それで「曲を書いてくれる?」って何となく言ってみたら、3日も経たずに書いてくれて。それを聴いた時にすごく感動して、またお母さんみたいな気持ちになっちゃって、そういう温かさみたいなものを曲に入れたいなと思いました。

――中山さんが歌う曲としては、また新しい感じだなと思いました。

中山:でも、妙に合っているんですよね。意外なんですけど、マッチしていると思います。

――高田さんが書き下ろした「カーテンコール」は対照的で、中山さんのイメージにしっくりくるように感じました。シングル・カットしてもいいのでは、と思ってしまいます。

中山:今回はどの曲もそうなんですよね。だから、どれをメインにするか全然決められなかったです。

――セルフ・カバーを歌うことに関して、昔と今とでは何か変化などあるのでしょうか?

中山:リカバーというより、全くの新曲をやっている気分でした。懐かしいという気持ちは全然なかったです。

――アルバム・タイトル『Neuf Neuf』に関してですが、“Neuf”はフランス語で“新しい”という意味です。このタイトルに決めた理由は何だったのでしょうか?

中山:なんとなく(笑)。別に“新しい私”みたいな意味ではないんです。“ヌフ”って言ってみたくなりません? しかも2回続けて言ったら楽しいですよ。絶対みなさんが人生で言ったことのない言葉だと思うので。



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基本、音楽は“ある”ので

――2018年には『FNS歌謡祭』にも出演しましたよね。どんな心境で臨んだのでしょうか?

中山:あの時は出演できること自体が嬉しかったですね。「また歌えるんだ」と奇跡のように感じていました。ずっと歌いたいという気持ちはありましたけど、環境がなかなか整わず。待ってくれている方がたくさんいることを思うと切なくて、なんとかして歌いたいなと。だから、自分で勝手に人のライブに出させてもらったり、曲の制作をお願いしたりしていました(笑)。

――やはりレコーディング時も歌うことの幸福感を感じていたのでしょうか?

中山:作品が完成した時は充実感がありましたけど、レコーディング中は大変でしたね。久しぶりのレコーディングでしたし、スタジオの環境も昔とは全然違っているので、戸惑いばかりでした。

――いかにしてその戸惑いに打ち勝ったのでしょうか。

中山:なかなか難しかったです。レコーディングはブースで行うので、歌手は孤独じゃないですか。何とも言えない閉塞感というか。だから、意味もなくスタジオの中にいたり、とにかく力を抜いたり、そういうことを意識してやっていました。

――全てのレコーディングが終わって、完成した作品を聴いた時、どのような感想を持ちましたか?

中山:描いていた雰囲気とピッタリのアルバムができあがったと思いました。もしこれが私のアルバムじゃなかったとしても聴きたくなると思います。

――音楽以外の活動をしている時の中山さんは、「誰かの期待に応えたい」という思いで仕事をしている印象です。ですが、音楽となると掻き分けて何かを掴もうとするような、自分の想いを軸に活動しているように感じます。

中山:そうですね。昔は音楽と芝居でそういう風にバランスをとっていたんだと思います。音楽活動となると活き活きするんですよね。音楽はなくてはならない存在だと思っています。大げさなことではなく、自然に存在していてほしいという感じです。

――その一部になれることが喜びなのでしょうか。

中山:特にライブではそうですね。一度ライブを経験すると、ずっと歌っていたいなって思います。

――中山さんの誕生日である2020年3月1日には中野サンプラザ公演も決まっています。ただ、アルバムのリリースを記念したものではないんですよね?

中山:そうです。バンドのリハを定期的に行っていた時、昔からコンサートをやらせて頂いていた状態の中野サンプラザが建て直しでなくなっちゃうことを聞いて。だから最後にもう一度、あの会場で歌いたいって言い続けていたんです。そしたら、たまたま2020年3月1日が空いていて。そこからまたみんなのモチベーションが上がりまして、すでにリハーサルも本格的に始めています。


▲中山美穂 / 2020年3月1日 BIRTHDAY CONCERT 開催決定!!

――やはり今回のアルバムに収録されている曲も披露するつもりなのでしょうか?

中山:披露すると思いますけど、基本的にはお誕生日パーティーというか、お祭り的な感じでやりたいと思っています。みなさんが聴きたい曲をできるだけ披露したいと考えていますね。

――デビュー35周年ということについては、どのように受け止めていますか?

中山:びっくりですよね(笑)。そのタイミングでデビュー曲をセルフ・カバーするという。

――デビュー当時のことは覚えていますか?

中山:覚えていますけど、懐かしいという気持ちは全然ないです。当時は恥ずかしい気持ちもなかったですし、不安もなく、とにかく無我夢中でした。分からないことばかりでしたし、デビューしてうまくいかなかったら辞めようと、早い段階で思っていましたね。

――今後、音楽活動は積極的にしていきたいと考えていますか?

中山:できたらいいですね。リリースは分からないですけど、ライブはやりたいです。

――今回のように本格的に音楽と関わることで、中山さん自身の日常に変化はありましたか?

中山:変わらないです。基本、音楽は“ある”ので。

写真

中山美穂「Neuf Neuf」

Neuf Neuf

2019/12/04 RELEASE
KICS-3873 ¥ 2,750(税込)

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.時計草
  2. 02.ただ泣きたくなるの
  3. 03.君のこと
  4. 04.カーテンコール
  5. 05.You’re My Only Shinin’ Star
  6. 06.C
  7. 07.色・ホワイトブレンド
  8. 08.Neuf

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