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インタビュー:八神純子 「走り続けること、それは『生涯現役』でいたいから」



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 数多くのステージで魅惑の歌声を届けている八神純子さんが、2019年3月29日、ビルボードカフェ&ダイニングの1周年アニバーサリー・プレミアム・パーティーに登場。かねてから親交の深い「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフと共に素敵な一夜を演出してくれる。2011年の活動再開以来、自身のツアー、ビルボードライブでの「The Night Flight」シリーズ、ビルボードクラシックスでのオーケストラとの共演など精力的にライブを続ける八神純子さんに、「生涯現役」で歌い続ける姿勢とその悦びを語ってもらった。

人生の新しいステージへ向けて

——昨年はプロ・デビューされて40周年を迎えられましたが、その心境は?

八神純子:デビューの頃から私の音楽を聴いてくださるファンの方と一緒に年月を重ねてきたなと思います。キャリアの途中にお休みをしていた時期もあったので、40周年の特別なイベントはしなかったんですが、今は毎日でも歌っていたいくらい本当に気持ちが充実しています。私と同年代の方々は、ちょうど人生の区切りにさしかかるタイミングだったりしますよね。人生100年と言われていますが、60歳、65歳でリタイアする人もいらっしゃる。私としては、2011年に音楽活動を再開してからは、「生涯現役」を目指していこうと思ったんです。最近はファンの皆さんとは同志のような感覚があって、共に人生を歩んできた皆さんの心にしっかり届く歌を歌いたいと、以前に増して思うようになりました。

——近年、全国ツアーを精力的に行っているのも「生涯現役」の一環なんですね。

八神純子:2013年に『Here I am ~Head to Toe~』、2016年には『There you are』をリリースして、今、私のコンサートに来ていただいているお客さまは、有り難いことに以前のヒット曲だけでなく最近の曲でも盛り上がってくれるんです。昔を懐かしむだけでなく、「生涯現役」の姿勢を今の私の音楽から感じてくれるのはすごく嬉しいですし、私もファンも新たな人生のステージを感じることができる。こうしてコンサートを続けるうちに若いリスナーの方も増えてきて、音楽が世代を超えてゆくことも実感しています。今、またライブが見直されているということも大きいと思います。


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ライブからもらう感動の糧

——ビルボードライブでの八神純子 with 後藤次利「The Night Flight」も2月のステージでトータル6回目となりました。

八神純子:そもそもの発端は、私の活動復帰のきっかけにもなったビッグバンドとのステージで後藤次利さんと再会したことからでした。そのステージで「夜間飛行」(1979)を歌ってほしいという要望があったので、作曲・編曲を手がけてくださった次利さんをゲストにお呼びしたことがはじまりでした。最初は1度だけのつもりだったんですが、私もメンバーの皆さんもとても楽しくて、お客さまにも好評だったので、毎年ビルボードライブで開催することに。

——後藤次利さんは、八神さんの『素顔の私』(1979)、『Mr.メトロポリス』(1980)『夢みる頃を過ぎても』(1982)などのアルバムに参加。40年来のおつきあいになるんですね。

八神純子:そうですね。「The Night Flight」のメンバーの村上“ポンタ”秀一さん、佐藤準さんも私のアルバムに参加していただいた方々です。皆さん当時からバリバリの売れっこスタジオ・ミュージシャンでしたから、私はその眩しい存在感にドキドキしていました(笑)。あの頃も一流のミュージシャンとレコーディングさせていただきましたが、「The Night Flight」も次利さんと相談しながら曲を決めて、デモの音源をつくり、丹念にリハーサルを重ね、贅沢に時間をかけて本番に臨んでいるんです。ある意味、ライブの理想形でもありますね。

——八神さんのヒットソングも新たなアレンジで聴けるのも新鮮ですね。

八神純子:次利さんが「ここでしか聴けない音楽」になるように心を砕いてくれるおかげですね。私はケーキの上のイチゴみたいなとてもおいしい思いをさせていただいていますが(笑)、このシリーズを年に1回やることによって自分のナットやボルトを締め直すような、ミュージシャンとしての大切な場所にもなっています。

——「The Night Flight」では名曲のカヴァーも披露されています。

八神純子:去年は「君の瞳に恋してる」をカヴァーしましたし、プリンスが亡くなった年には「パープル・レイン」と私の「パープル・タウン」を続けて歌ったり、今年は映画が話題となったクイーンの「ウイ・ウィル・ロック・ユー」「アイ・ワズ・ボーン・トゥ・ラブ・ユー」、チャカ・カーンの「アイム・エヴリ・ウーマン」を歌いました。カヴァーを歌うのも「ここでしか聴けない」ことを意識しているからで、私にとってシンガーとしての新しい挑戦の場にもなっていますね。

——最近は「キミの街へ」というツアーでは全国各地でライブを開催。その原動力は?

八神純子:以前は、私はレコーディング・シンガーだと思っていた時期もあったんです。ライブでもレコーディングで歌った感覚を再現したいと思っていましたが、今はその逆でライブの感覚をレコーディングに活かすようになりましたね。やはり、ライブでお客さまからいただくエネルギーが糧になっているんだと思います。今まで行ったことのない場所にも私の歌を聴いてくださる方がいる、その悦びを私自身がいただいているという思いがありますね。活動を再開した2011年に東日本大震災が起きて、東北の支援やライブを続けてきた経験も大きかったと思います。

——ご自身のツアーに加え、ビルボードクラシックスの【PREMIUM SYMPHONIC CONCERT】などコンサートの幅も広がりっていますね。

八神純子:オーケストラとの共演は、自分の歌唱をあらためて見直すきっかけになりました。オーケストラのあのスケールの中で私の声を響かせるためにはどういう歌い方をしたらいいか研究をして、ヴォーカリストとしてとてもやり甲斐のあるステージになっています。【billboard classics festival】で、仲良しの杏里はもちろん、福原美穂さん、Salyuさん、小柳ゆきさんたちとガールズ・トークをしたり、シンガーとしてどう生きてゆくかなど色んなお話ができたのも楽しかったですね。

「生涯現役」のために続けること

——アメリカに移住されてから、日本で歌うことに変化はありましたか?

八神純子:日本にいる間はずっと旅に出ている状態なので、全国どこでも行けるという感覚なんです。昔は長い間家を空けるのは苦手だったんですが、アメリカの友人の「今日は1度しかないのよ。時間を無駄にしないで人生を楽しまなくちゃ」という姿勢に影響されて、気がついたら私もそうなっていました(笑)。毎朝のジョギングはこの30年間どこにいても続けていて、私のライフスタイルのベースになっていますね。ジョギングしていると自分のことがよく分かるんです。年齢を重ねても楽な方に逃げないで続けていると、体も頑張ろうとするみたいで、それは声も同じだと思うんですね。今も以前と同じキーで歌えているのはそのおかげもあるかもしれません。「生涯現役」を目指すためには「少し強気でいかなくちゃ」と自分に言い聞かせています。

——3月29日には1周年を迎えるビルボードカフェ&ダイニングのプレミアム・パーティーが控えています。どんなステージになりそうですか?

八神純子:オープン以来、こちらは私も取材などでよく利用させていただいていて、音楽と美味しいお食事やお酒が楽しめるお気に入りの場所なんです。今はヘッドフォンでストリーミング配信の音楽を聴く時代ですが、私たちミュージシャンがスタジオでこだわりながらつくった音楽をこういう空間で聴いていただけたら素敵だろうなと思っていたんです。そういう意味でもビルボードカフェ&ダイニングは、新しいライフスタイルを発信できる場になり得ると思うんです。以前もエレピだけでカフェライブをした経験があるんですが、お客さまとの距離が近くて、自由な空気が流れる感じも好きです。


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——お料理を担当する奥田政行シェフとは以前から親交を温めてきたそうですね。

八神純子:はい。東日本大震災以来、東北や様々な場所で食と音楽の時間を一緒につくりあげてきました。その経験を経て、私たちの生活の中で音楽を聴くことがとても贅沢な時間なんだとあらためて思うようになりました。この機会に、「その時間」「その場所」ならではの私の歌を、ホールとは違う密接な距離感で、おいしいお料理とともに味わっていただけたらと思っています。ディナーショーより気軽に、カジュアルに楽しめる1stアニバーサリー・パーティにしたいですね。仕事のスイッチはオフにして、人生を楽しむスイッチをオンにして、ぜひいらしてほしいです。私自身も皆さんと一緒に楽しみたいと思っています。


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