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Special

DUBFORCE Special Interview DUB MASTER X × いとうせいこう



DUBFORCEインタビュー

 ニューウェーヴ/パンク/レゲエ/HIP HOPを昇華した、唯一無二の音楽を紡ぐDUBFORCEが、元ちとせをスペシャル・ゲストに迎えた公演を8月に行う。注目の公演を控えた7月某日、ダブマスター・Xといとうせいこうによる対談が実現。結成について、「ダブ」について、そして公演について、濃密な話を訊くことができた。

Interview & Text: 宮内健

 ダブは誰のためにあるのか/ダブは現実に抗議をするためにある/快楽をむさぼるためにある/ダブ・ミュージックは我々が誰のものでもないと示すためのもの/自由のための器/君を超えるエコー(「Dub Fire」より抜粋)

 ことのはじまりは、交通事故で意識不明の重体となり長期に渡り療養中だったミュージシャン/プロデューサーの朝本浩文にエールを送るべく、2015年3月に開催されたチャリティ・イベント「Asamoto Lovers Aid」。彼が所属した伝説のライヴ・ダブ・バンド=MUTE BEATのメンバーをはじめ、朝本に所縁のあるミュージシャンたちが集い演奏を繰り広げた。この日のセッション・バンドが母体となって結成されたのが、このDUBFORCEである。

 元MUTE BEATの屋敷豪太(Drums)、DUB MASTER X(Mix)、増井朗人(Trombone)を核に、朝本のユニットRam Jam Worldにも参加していた會田茂一(Guitar)、COLDFEETのプロデューサーWATUSI(Bass)ら腕利きのベテランたちによって始動したDUBFORCEは、2015年11月に行われた初ワンマンからライヴ活動を開始。翌2016年3月に開催されたセカンド・ワンマンには元ちとせが客演。また、これまでゲストとしてポエトリー・リーディングでのコラボを展開してきた作家/クリエイターのいとうせいこうがバンドに電撃加入を果たし話題を集めた。2016年9月には待望の初音源『DUBFORCE』を発表。現在は上記の面々に加え、オレスカバンドのSAKI(Trumpet)、KEMURIのコバヤシケン(Sax)、かせきさいだぁ&HUGTONESなどでも活躍する龍山一平(Keyboards)を含めた9名で活動中だ。

 レゲエ/ダブを軸にしながら、ニューウェーヴ、スカ、パンク、ロック、ヒップホップ、ファンクと、様々なキャリアを積んできたミュージシャンたちが持ち寄る多彩なエッセンスが、混ざり合い溶け合って、比類なきバンド・サウンドを生み出していく──鮮やかでいてズシリと身体を直撃するリズム、華やかな迫力とメランコリックな余韻を備えたホーン、胸を突き刺すラジカルなダブ・ポエット、そして圧倒的なクオリティの音響空間の中で、オーディエンスの身体をグワンと揺らしながら意識を遥か彼方まで飛ばしてしまうダブワイズ──そんな美しくも刺激的なライヴを展開してきたDUBFORCE。今回はBillboard Live TOKYOでの単独公演を前に、80年代半ばから様々な形で活動を共にしてきた盟友同士でもあるDUB MASTER Xといとうせいこうの二人に、バンドのなりたちから、ダブという表現の自由さ、そして公演にかける意気込みまでたっぷり語ってもらった。

グッとくることが起これば、何をやってもいい(笑)。

――DUBFORCEが結成されたのは、交通事故に遭い療養中だった朝本浩文さんのベネフィット・イヴェント(2015年3月開催「Asamoto Lovers Aid」)にミュージシャンたちが集まったことがきっかけでした。

DUB MASTER X:朝本があんなことになったので少しでもサポートしたいと思って、MUTE BEATの面々を中心に、所縁のある人に声をかけていって。

いとうせいこう:そのイヴェントで何曲かセッションをして、俺もポエトリー・リーディングで参加したんだけど、やってみたらすごく面白かったし手応えがあったんだよね。自分たちでも演奏しながら「これ、すごくいいバンドだな」って思った。

DUB:なので、これはバンドとして続けたいと思ったんだけど、そういうイヴェントがきっかけで集まったものを、また動き出そうよっていうのにも躊躇があったんだよ。そもそも朝本のために集まったんじゃないんかい?みたいな葛藤はあったけど、やっぱり自分たちがやってて楽しいものは続けたいよねってことで、僕と増井(朗人)と(屋敷)豪太、そして石井さん(註:OVERHEAT代表・石井志津男氏。かつてMUTE BEATのマネジャーを務めていた)を含めて話をして、あらためてメンツを集めはじめたんです。その中には、もちろんいとうくんも入ってた。

いとう:実は俺も同じタイミングで、あのバンドは絶対にやりたいって考えてたんだよね。ダブのバンドでポエトリー・リーディングをやりたい、リントン・クウェシ・ジョンソンみたいなことがこのバンドで出来るんじゃないかと思って。勝手に〈is the poet〉って名前まで決めて、ダブちゃんにメールを出してたんだ。そうしたら、「いや、DUBFORCEやるんだよ!」って聞いて。えっ、そうなの!? だったら一緒にやっちゃうかと。

DUB:本当に同時進行で同じようなことを考えたっていうね。それで一緒にやりはじめたら、言葉の力と音の力がプラスされてかなり面白いことになった。

いとう:すごいんだよ、みんなの演奏が。俺はポエトリー・リーディングをする時、どの部分のどの言葉を読むかは前もって決めずにアドリブで語ってるんです。だけど全員腕っこきの面々だし、しかもそれぞれと昔からセッションした経験がある。とくにダブちゃんなんかは本当に昔からやってるから、俺の言葉をものすごくよく聴いてくれて、その言葉の意味をもとにダブをかけてくる。それと同じように他のメンバーも、俺の言葉の意味を聴いて、それに対して反応して演奏に変化をつけたり、(演曲の長さを変えて)サビにいくかどうかを決めてるんだよ。そんなバンド、他にないからね。

DUB:「ここはいとうくんのパートだから、16小節なんか喋ってね」とかいう単純なことではないんです。セッションする上では、相手の音を聴いてないとセッション出来ないじゃない? 楽器は相手の音を聴いてるし、当然ポエトリーや歌もその1つであって。たとえば予想だにしない言葉が出てきたことに対して、豪太がウッと感じ入ってドラムを叩くのを止めたら、それがダブになる。

いとう:その変化を感じた俺も「ドラムが抜けた。じゃあ言葉を選んで静かにいこうか」とか、その場その場で考えて言葉を発する。すると今度は、それに合わせてベースがグンって入ってくるから、「あ、ここからはリズムでいけって言ってるな」と感じて、リズムを強調して言葉を言ったり。

DUB:そうなると、俺はヴォーカルに何かしらのエフェクトを勝手にかけたくなる……そういう綱引きがあるんだよね。

いとう:しかもホーン隊も入ってるのに一斉にサビにいくって、なかなかあることじゃないよ。ドカーンと出た音を聴きながら、「俺のこの言葉でサビにいったんだ? だったらさらに上の音でもっと言葉をリフレインしよう」と。そしたら、さらにまたダブがかかってくるっていう……そうやって意識の交感をしあって、演奏がダイナミックに変化していくわけ。ものすごくレベルの高い、レイヤーの多いセッションになってる。DUBFORCEでライヴをやったら、それが急に出来ちゃったんだよ。何なのこの人たち?ってお互いに感じたと思うよ(笑)。

DUB:でもね、実はMUTE BEATも、もともとそういう考えでやってたバンドだったの。

いとう:えっ!? そうなの?

DUB:MUTE BEATの初期は特にそうなんだけど、ライヴでも前もって決まってることといえば「ここからはダブ・パートで、それぞれ勝手にやりましょう」とか「演奏のいいところでフィル入れてサビにいくよ」ぐらいな感じで、他は何にも決まってなかったもん。で、一連の流れの中で必然性があるところで豪太がフィルを入れるなりしてサビにいくぞっていう、それぐらいしか決め事がなかった。MUTE BEATって、実はそういうセッション性が高いバンドだったんだよ。豪太がいた頃は特にね。

いとう:ということは、セッション性が高かった時代のMUTE BEATで行われていたものが意外な形で表出したというか……。

DUB:僕はMUTE BEATを30年ぐらい前にやってたわけでしょ? いとうくんとも、ヤン富田さんと僕といとうくんの3人で即興性の高いライヴをやってて。だから今やってることも、その当時と同じようなことなんだよね。インプロビゼーション的に、この人がこの言葉を出してきた時にどう解釈するかっていう。出てきた言葉に対して、スクラッチをどう入れるのかみたいなこともそれぞれやってきてるから。だから今DUBFORCEでやってることも、俺にとっては普通のことなんですよ。

――現場で鍛えられて細胞に染み付いたものだから、何年ぶりで久々に集まったとしてもふと感覚が蘇ってくる?

いとう:びっくりするぐらい蘇っちゃった。忘れてたっていうより、こんなことが可能なんだって、異次元空間に飛び込んだような感じだったよね。

DUB:たとえば豪太だったら藤井フミヤとか槇原敬之のツアーに行ってたり、僕も誰かのツアーについてPAをやったり、いとうくんはいとうくんでいろいろな仕事もやって、さらには能とか狂言もやって……みたいな。ヤンさんの言うところの「日々の鍛錬」というかさ、いろんなところで培ってきた経験みたいなものが、DUBFORCEで集まった時にポッと出てくる。みんなこのバンドで集まる時には、裸の状態でくるから、その場その時で出てくる音を聞いて反応していく。そういうことが出来る人たちの集まりだから。

いとう:絶対にその日の一度しか起きない、絶対に最高のものを作りたいって思ってる腕っこきの人間たちが集まって音楽を生み出していくのを目撃出来たら、その人にとって一生の思い出になるみたいな。DUBFORCEのライヴはそういうものなんだよね。

DUB:劇団四季のようにキャストが変わっても同じクオリティのものを見せますみたいな、毎回同じことをやるっていう美学もあるけど、一方で毎回違うものが観られるっていう美学もある。MUTE BEATもそうだったけど、同じ曲をやってても終わりにたどり着くまでのアプローチが全然違う。そういうことが楽しいっていうかね。

いとう:それに演奏しているうちにいろいろ思いついちゃうんだね。思いついたことがあったら、全員何でもやってよし。

DUB:そう、グッとくることが起これば、何をやってもいい(笑)。

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その自由さこそが、音楽なんだよ。

――メンバーにはMUTE BEATで活動した面々の他にも、會田茂一さんやWATUSIさんのようにジャンルを横断する感覚を持ったミュージシャンが参加していて。彼らのセンスも重なっていくことで、さらにDUBFORCEでしか生まれ得ない音楽が奏でられてますよね。

DUB:ミュージシャンを選ぶ時に、音楽性では選んでないのよ。豪太と前に話したのは、クラブ・ミュージックとかリミックスの感覚とか、それぞれが持ってる人たちが集まらないとフリーのダブなんて絶対に出来ない。ダブ・エンジニア的な音の抜き差し加減やアレンジ感覚も自分で持ってる人じゃないと、とてもじゃないけど好きにやってって任せられないじゃないですか。だから音楽性よりも許容力で選んでる感じはあるね。

いとう:みんなプロデューサーも出来る人ばっかりだもんね。だから対応が出来るんだろうね。

DUB:レコーディングにおけるダブっていうのは、エンジニア主導で自分の欲だけで作るわけでしょ? 自分のイメージだけでミュートしたり飛ばしたり。でも、ライヴはそれが出来ない。エンジニアがいくらミュートしたって、楽器の生音が出てるよね。それが聞こえちゃうから、音の抜き差しに関してはミュージシャンに任せるしかない。そこでダブ・エンジニア的な感性を持って、自分がここで抜けたらカッコイイだろうなっていうのを、自分で判断出来る人が集まらないとダブ・バンドは出来ないですよ。

いとう:なるほど、そういうことか。

――それはMUTE BEATというバンドが残した発明とも言えますよね。

DUB:日本の音楽界にとっては異質だと思うよね。なんで抜けたんだって普通は怒られることでしょ? 

いとう:音をマイナスしちゃうっていう大発明だからね。そもそもダブってそういうもんだけど、それをライヴでやるってことの異質さ。プレイヤーが弾かないってことの凄さだから、ある意味日本的な面白さとも言えるよね。

――またメンバーにはオレスカバンドでも活躍する女性トランペット奏者SAKIさんがいたりと、世代や性別もまたがっています。

DUB:「あの女の子上手いよね!」っていう目で見てくれたら、いいね。彼女がいることで救われる部分がいっぱいあるよ。親父ばっかのバンドでさ。

――もうひとつ興味深いのは、ここ数年でラップ表現が一般的になりつつある中で、ラッパーとしても活動してきたいとうさんが、ダブ・ポエットっていう手法に行き着いたのも興味深いところがあります。

いとう:音楽として成り立っていて、なおかつ主張もしたいっていうのは自分の理想でもあって。ダブのバンドでポエトリー・リーディングが入って、政治的なことも歌うっていうのは、日本の土壌にはあまりにもなかった。イギリスではリントン・クウェシ・ジョンソンをはじめ、あんなにカッコいい表現スタイルなのに、なんでこの分野だけなかったんだろうってずっと思ってた。

DUB:どうして日本ではなかったんだろうね?

いとう:わかんない。ある意味「歌」に囚われちゃってた部分は大きいかもしれないね。俺は歌もヘタだし、歌わないじゃない? だから言葉で勝負するようになっていったんだけど、歌わなきゃならないと、どうしても決まりごとの中に入らざるを得なくなる。ラップにも同じようなことが言えて。俺が『MESS/AGE』(89年)をリリースした頃、自分たちでライヴをやった時になんかダブちゃんとヤンさんで1曲40分ぐらいの自由なインプロがはじまるんですよ。そこで、俺は何をやってもいいよって投げられてて。だけどラップって縛りがあるじゃない? 4小節ごとに区切りがあったり、脚韻があったほうがいいとか、もちろんそうじゃなくてもいいんだけど、やっぱりリズムには乗ってなきゃいけない。そこで俺は音楽的にセッション出来ないなって限界を感じて、一度ラップを辞めちゃったんだけどね。それから何年か何もやらずにいたんだけど、数年前からダブちゃんや(須永)辰緒、(高木)完ちゃんとかと一緒に、音を変調してもらってその上で朗読をするっていうのを、小さいところではじめたんだよね。その時、ものすごい自由だったの。リズムに乗せようと思えば乗せちゃえばいいし、別に乗らなくてもいいっていうね。

DUB:リズムに縛られる必要がないってことはデカいんだよね。その「リズムに乗らなくてもいい」っていう選択肢が、ものすごく表現を自由にする。今ってみんな打ち込みで音楽を作るけど、あれはビートやタイムコードに縛られてる音楽なわけで、それって、なんか管理されてるような気持ちになるんだよね。だけどタイムコードを気にしないで、ビートを入れるにしても人間の時間軸で入れていく。そういうところに戻りつつあるんじゃないのかな。

いとう:能や狂言みたいな古典芸能も、テンポなんか決まってないんだもん。誰かのテンポに合わせてすすんでいって、急にそれが遅くなったり、もっと言いたいことがあるから早くなったり。古い人たちのように言われるけど、あの人たちのほうがよっぽど自由なんだよね。

――いとうさんにとって、ダブ・ポエットはより自由にメッセージを伝えられるって表現方法であると。

いとう:やっぱり自由を求めるようなメッセージを発信してる人間が、一番不自由だっていうのはおかしいわけだから。せめてこっちは自由じゃないとって想いはあるわけよ。DUBFORCEのメンバーも、それをわかった上で演奏してる。時にはビートを刻むのをやめちゃう人もいるし、でも誰も気にしない。このバンドが一番自由なんだよ。ラップも面白い表現だけれども、それは自分もいろいろやってきたしね。

――さて、今回のビルボードライブ公演はどんなものになると思いますか?

DUB:ビルボードのときは、ダブミックスのために専用の機材を入れるんですよ。2階の正面カウンターのところに卓を作って、そうするとお客さんと近いところで俺がダブをやってるところが見られるっていう。

いとう:ダブミックス・ショーが観られるってのは、お客さんにとっても絶対面白いよね。本当は手元の部分だけ映像でずっと流しておきたいぐらいだよ。

――今回は、以前にも共演された元ちとせさんがふたたびゲストとして参加されますね。

いとう:彼女の歌が入ることで、また違う世界を作ってくれるよね。

DUB:ゲストに呼ぶきっかけは、増井が元ちとせちゃんが入ったらいいよねってアイディア出してきて。「ワダツミの木」もダブにしたらカッコいいだろうってところから実現したんだけど、一緒にやってみたら、やっぱりものすごく面白かったね。だけど本当の元ちとせっていう歌手のポテンシャルは、まだ誰も引き出せてないんじゃないか?とも思ってて。島の女だし、もっと爆発力があるはずだと。スライ&ロビーとのリミックスもあるけど、いや、俺たちのほうがカッコよく出来る!って思ってやったら、やっぱりカッコよかったね(笑)。

いとう:それでもまだ、ちとせちゃんは俺たちに気を使ってるんじゃないかな。歌い手としてちゃんと2番にいかなきゃいけないかなとかさ(笑)。だから、俺たちが彼女をもっとシェイクして、ダブの最中に子どもの頃に歌った奄美の島歌が出てきちゃう、みたいな展開も全然いいよね。そういうコラボレーションにしたいし、DUBFORCEと元ちとせがやるダブは、もっとインターナショナルなものになるなと思ってるから。

DUB:ライヴ本編の内容については、曲目を入れ替えるぐらいの数は用意してるけど、同じセットリストでやってもまったく違うものになるのは確実だよね。

いとう:同じものにはなりようがないからね。クラブ・ミュージックに出会っていろんなミックスやヴァージョン違いを聴き比べることの楽しさを知って、音楽をもっと好きになっていった人間としては、こういうのが一番自然な感じもあるね。なんていうか、集団組手みたいなもんでさ。その場その場でみんなが判断して、次の一手を繰り出していく。すげえことが起こってるんだなっていうのを見てもらうのがDUBFORCEのライヴだから。それにしても、このメンバーが今頃集まったっていう面白さね。今までやっててもよかったはずなのに、今頃になって集まってる。

DUB:それもまさに、ヤンさんが言うところの「必然性のある偶然」だったのですよ。朝本のためにああいう人たちが集まってセッションが出来て、そこで何かを感じ取って、やっぱり続けたいよねって思った人たちがいて……そこに作為的なものはひとつもない。

いとう:このバンドの一番いいところはさ、曲がバーンと終わって、凄みだけが残るんじゃなくて、みんななんかニコニコしてるんだよね。「よくあそこ乗り切ったねー、エッヘッヘ」みたいな。やさしさみたいなものが付け加わったあの感覚は、若い頃には出来なかったんじゃないかな。

――そういう意味では、ベテランたちが集まったとはいえ、すごくフレッシュな感覚でやってるのがDUBFORCEの素晴らしさでありますよね。

いとう:そうそう。僕らは新人バンドのつもりでやってるからね。ある意味、自分たちがやってるすごいことを、全員があんまり認識してないんじゃないかな。手探りでやってるつもりで演奏してて、だけどめちゃめちゃ楽しいっていう気持ちだけで集まってる。

DUB:子供返りしてるような感じで、純粋に楽器を演奏するのが楽しいとか、ミックスするのが楽しいっていうところにいるんだね、このバンドの面子は。

いとう:だから飽きることがないよね。それにセッションみたいな感じでやってるから、一日じゅうやろうと思えばずっとやっていられるんだよね。ダブってすごい形式だなって言わざるを得ない。でもまあ、とりあえず1曲目がはじまってみないとなんとも言えないね(笑)。ただ、ダメってことがないだけのキャリアがある。俺たちに関しては、絶対にあるレベル以下にはならないから。

DUB:ステージ上に豪太といとうくんが残って、PA卓に俺がいれば、それだけでもダブが出来るからね。同じような感じで、他のメンバーそれぞれでもやれる。だからまったく平気だね。最後の一人が倒れるまで(笑)。

いとう:それが音楽なんだっていうメッセージだね。その自由さこそが、音楽なんだよ。

Interview & Text: 宮内健



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