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LOVE PSYCHEDELICO『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I&II』インタビュー

LOVE PSYCHEDELICO『LOVE PSYCHEDELICOTHE BEST I&II』 インタビュー

「やっぱり音楽は死なないと思うから」
「5年や10年じゃミュージシャンになれない」

 200万枚ヒットを記録したデビュー当時から「音楽はバトンだから塞ぎ止めたくない」と、真摯に音楽を紡いできたLOVE PSYCHEDELICOと音楽シーンの15年を辿りながら、音楽の本質に迫った。全音楽人必見のインタビュー。

「Freedom」で爆発した音楽の力~200万枚セールスの1stALがくれたもの

--アルバム『IN THIS BEAUTIFUL WORLD』(2013/04/17 RELEASE)以来のインタビューになるんですが、この間はどんな日々を送っていた感じですか?

※LOVE PSYCHEDELICO - Beautiful World (Short Version)
※LOVE PSYCHEDELICO - Beautiful World (Short Version)

NAOKI(g):アルバムリリースした後は、レニー(レニー・カストロ/TOTOの初期から後期までサポートを務めたことでも知られる世界トップクラスのパーカッショニスト)たちとツアー廻ってね。その後は……うーん、何してたっけ?

KUMI(vo):ツアーが終わった直後はまとめて休みを取って、ハワイに行ったりして(笑)。その年の後半はのんびりしてましたね。で、去年は「そろそろ曲作ろうか」って感じで動き出して。

NAOKI:「Good times, bad times」(プロテニスプレーヤー錦織圭出演ジャックスCMソング)とかね。あと、アコースティックライブを始めたよね。

KUMI:そうだ! その曲作りしている最中に「ライブやりたい」ってなって。前々から2人でアコースティックライブをやるっていうアイデアはあったんだけど、なかなか実現しなくて。

NAOKI:自分たちで企画したんだよね。

KUMI:そう。それを突然夏に始めて。

NAOKI:いつもの6人のLOVE PSYCHEDELICO(堀江博久(key)、高桑圭(b)、白根賢一(dr)、権藤知彦(マニピュレーター)のバンドメンバーを含む6人)。そこにレニーを加えた7人のLOVE PSYCHEDELICOになったんだけれども、一転して2014年は一番ミニマムな2人で出来る楽器を会場に持っていって、「さぁ、何が出来るか」みたいな。そういうところに一回戻ったことでLOVE PSYCHEDELICOの曲もビートもメカニズムも見つめなおすことができて。それでボブ・ディランじゃないけど、「あ、そっか。この俺たちの音にドラムとベースとキーボード、みんながついてきてくれればいいんだ」っていう新たな発見があったよね。

NAOKI:うん。アメリカではやってたんだけど、日本のちゃんとしたコンサートで2人は初めてだったから。

NAOKI:楽しかったよ!

--僕は最後に観たライブは『IN THIS BEAUTIFUL WORLD』を引っ提げたツアー、渋谷公会堂での最終公演で。ラストナンバー「Freedom」でKUMIさんの声が突如出なくなって、観客が一斉に「Freedom!」と歌い叫ぶ場面は今でも忘れられません。

NAOKI:凄かったね、あれは。

※LOVE PSYCHEDELICO - Freedom(Short ver.)
※LOVE PSYCHEDELICO - Freedom(Short ver.)

KUMI:よく憶えてる。私は体調的にキツかったから、精神的にもわりとしんどいステージだったんだけど……でも結局みんなのそういう想いに支えられて、無事終えることができて。それまではやっぱりね、自分がどうにか頑張らなきゃって、ステージに立つときはそういう想いがあったんだけれども、あの経験をしてからは良い意味でみんなに委ねられる。そういう場になったかな、ライブが。ひとりで背負おうとする感じが無くなったというか。本当にみんなに支えられて、みんなの愛をすごく感じたから。それまではある意味孤独な場面もあったんだけど、そういうのはもうなくなかった。「あ、孤独じゃないんだ」って。

--ひとつの曲があって、それをミュージシャンもリスナーも一緒になって歌い奏でるというのは音楽本来の形であり、魅力であると思うんですが、LOVE PSYCHEDELICOでそれを体現できていることにはどんなことを感じますか?

NAOKI:体現というか、僕らも一緒に体感している感じだからね。自分たちが率先して何かそういうことを出来ているかと言ったら、そんな自信はなくて。あの日の会場でも「Freedom」というみんなが大好きで僕らも好きな曲を一緒にああいう形で体感させてもらった感じだよね。客席のみんなだけじゃなくバンドメンバーもスタッフも一丸となって、あの「Freedom」という楽曲ですらみんなに支えられて成立していた感じは感動的でした。

--そんなLOVE PSYCHEDELICOがデビュー15周年を迎えました。15周年を迎えたこと自体にはどんな感慨をお持ちですか?

KUMI:今のライブの話じゃないけど、15周年って自分たちだけが頑張って続けられたものではないなってすごく思う。いろんな公演といろんな出逢いと、そういう流れがあって、私たちも音楽家としてその流れの中で生きているって感じる。そこにいれることに感謝。

--15年前と今のLOVE PSYCHEDELICOの違い、挙げるとしたらどんなところにあると思いますか?

KUMI:なんだろうなぁ? 本質的には変わってないと思うんだよね、あんまり。曲の作り方にしても向き合い方にしても、やろうとしていることは本質的に変わってないと思う。でもいろんな出逢いや経験があって感じ方が深まってるし、きっと豊かになってるから、それに伴って自分たちの表現も豊かになってればいいなと思うけど、明らかな違いってあるかな?

NAOKI:自分たちはそんなに変わらないけど、環境的には仲間が増えた。バンドのメンバー、ミュージシャンの仲間も増えたし、スタッフにしてもそうだし、そういう変化はあるね。でも良い意味で変わらない部分を大切にしているところもあって、音楽への接し方は変わらない。何を表現するかとか。それは大きな意味で愛だと思うし、自由だと思うし、夢だと思うし、希望だと思うし、そういう形のないモノをどうやって形にするか、音楽の中で形にするか。そういうものは変わらないよね。でも何の仕事でもそうだと思うけど、経験重ねると手際は良くなったりするじゃん。そういう熟練によって時間が短縮されることで、もっとたくさんのことを知る時間が増えた。それは自分たちの中ではちょっとした変化かもしれないね。

--LOVE PSYCHEDELICOの1stアルバムは200万枚をセールスしました。今の音楽シーン的にはあり得ない数字ですけど、今振り返るとあの一気に広まっていく現象は何だったんだと思いますか?

KUMI:フフ。何だったのかな?

NAOKI:あのときは分からなかったよね、そんなのね。

KUMI:当時は「あ、自分の信じているものが本当に世の中に伝わった」っていう実感、純粋な嬉しさしかなかったからね。今振り返ってもあの現象が何だったのか自分たちでは……うーん。シーンから見てどうとか、時代がどうとか、そういう見方はあんまりしないからなぁ。

NAOKI:ただ、ミリオンってさ、10年経っても、15年経っても、その影響力というか、波及効果は凄いなって思う。だって自分よりも曲のほうが有名なんだもん。自分の顔なんてテレビに出ないから全然誰も知らないけどさ、曲は知ってるじゃん。それは不思議な感じもするし、そういう音楽の神様がいるんだとしたらスタートの時点で助けられたというか。その後も続けていく為のさ、勇気とさ、確信とさ、そういうものはあの現象の中から受け取っていたんだろうね。「ああでもない、こうでもない」って音楽に対して、世の中に出てきてから迷ったことが一度もないから。「そのままでいいんだよ、信じた道を行きなよ」って、そういう音楽人生にしてくれたよなって思う。それはラッキーと言えばラッキーだし。

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15年前と今のシーンの違い「アルバムで聴かせたい」とか別にない(笑)

--では、15年前と今の音楽シーンの違いはどんなところにあると思いますか?

※LOVE PSYCHEDELICO - Dry Town ~Theme of Zero~
※LOVE PSYCHEDELICO - Dry Town ~Theme of Zero~

KUMI:音楽の楽しみ方は増えたなって思うよね。

NAOKI:「増えた」って良い言い方だね。

KUMI:音楽をジャンル分けするのもアレだけれども、いろんな音楽をみんな個性豊かにやってるし、それで聴き方もいろんな聴き方があるし、音楽にとっては面白くなってると思うかなぁ。そういうバラエティが増えているという意味では。

NAOKI:CDを輸出しなくてもいろんな国で音楽聴いてもらえるし、しかもすごく身近になってるし、お金がない人でも手に入れられるし(笑)。

KUMI:楽しみ方がいろいろあるのはいいよね。創るのもみんな自由に表現しやすくなってるし、その中でお金も時間もかけてレコーディングするっていうスタイルも相変わらずあるし。

NAOKI:だからそんなにネガティブに捉えてはない。大きな会社が大きなお金を動かしにくくなって音楽業界が困ってるだけの話だから。それで音楽自体が無くなる訳じゃないし、「キャンプファイアーの火は消えないぜ」って感じ(笑)。

KUMI:みんなの日常により溶け込んでる感じがするよね。前はヒットがあって、それをみんなが受け止める感じだったけど、今は個人個人に自分の生活の中で音楽を等身大で楽しんでる。それはすごく良いなって思う。

--今のほうがナチュラルに音楽を楽しめていると。

NAOKI:「今のほうが」じゃなく「今」のナチュラル。だからさ、出逢い方変わったじゃん。アルバムじゃなく1曲と出逢うじゃん、みんな。自分たちがベストアルバムを今回2枚出そうと思った理由はそこにもあるんだよね。配信とかで1曲と出逢う。みんなそういう出逢い方になったので、その点と点を線で結びたいというか、何かで1曲か2曲知ったのをきっかけに、今の若い人たちも含めてLOVE PSYCHEDELICOと改めて出逢える作品があっても良いんじゃないかなと。自分たちだってスタイル・カウンシルとかレッド・ツェッペリンとかベスト盤で巡り会った人たちがたくさんいるから、同じように。だから区切りというよりは、出逢いのきっかけ。

--1曲1曲を楽しんでもらえればいい考え方の一方で、しっかりオリジナルアルバムを聴いてもらいたい欲は今もあるんでしょうか?

NAOKI:元々あったかな? そういうの。

--あー、なるほど。そもそも「アルバムで聴かせたい」感覚はなかったと?

KUMI:「アルバムで聴かせたい」とか別にない(笑)。常に向き合うのは1曲1曲の楽曲で、それが溜まったからアルバムになるっていう。基本がそういう発想なので。なんとなく創っている途中でアルバム全体の感じはイメージするけれども、基本的には1曲1曲。だから「アルバムで聴いてもらわないと」みたいな考えは全然ない。アルバムをどっぷり楽しみたい人にも楽しんでもらえるものは創ってると思うんですけど。

--ちなみに、2015年現在気になるアーティストや音楽トピックって何かあったりしますか?

※NovemberDecember - Save Yourself (Official Video)
※NovemberDecember - Save Yourself (Official Video)

NAOKI:KUMIはね、今一番気になってるミュージシャンはね、ボブ・ディランだと思う。

KUMI:いつでも好き(笑)。でもそういうタイプだね。常に好きなものを時代に関係なく聴き続けてるタイプかな。

NAOKI:あと、あれも好きだよね? ヘルメットの人たち。

KUMI:ダフト・パンク(笑)? 好きですよ。最近だとNOVEMBERDECEMBER(フォークポップを奏でるデンマークの5人組)が格好良かった。好き。

--NAOKIさんは?

NAOKI:結構いろいろ聴いてるんだけど……聴き手は自由に聴いていいと思うんだけど、作り手に対して気になるのは、音源の制作が手軽になりすぎて。それも時代と言えば時代なんだけれども、そういう音が欲しければいいんだよ? だけれども「まぁいっか」って手軽に仕上げたものが増えたのはちょっとだけ心配。世の中への影響力という意味で。音楽が力を失わないでいてほしいから。最近のCDを聴いてると、そういうことを感じる。

--つい先日、ブンブンサテライツにインタビューをしたんですが、彼らは音楽で「何かを想ったり、何かが頭に浮かんだり、自分の記憶が蘇ってきたり、そういう音楽を聴くその時間を過ごすことで起きえる、いろんなものを僕たちは引き出したい」「言葉で全部説明しきってしまう一元的なイメージを与えるんじゃなく、100人いたら100人全員違うストーリーを組み立てることが出来るような音楽が好き」と言っていて。僕もそれは音楽の醍醐味だと思うんですが、そこを追求しない人だらけになったら怖いですよね。

※BOOM BOOM SATELLITES 『A HUNDRED SUNS』
※BOOM BOOM SATELLITES 『A HUNDRED SUNS』

KUMI:そこの意識は違うだろうね、今の世代とは。

NAOKI:ロックンロールを芸術と考えるならだよ? 壺を創るのと一緒だと思うんだよね。「どんどんどんどんラクな方法で」じゃなくて、その人のその手の形じゃないと創れない何かってあるじゃん。今の彼らの話ともリンクすると思うんだけど、芸術としてさ、変化していってもいいけど、守り通さなきゃいけないものは守り通して次の世代に伝えていく。っていう作り手の想いはあっていいよね。ただ、時間をかけなきゃいけないという訳ではない。

KUMI:そうじゃないと創っちゃいけないってことでもないし。

NAOKI:でも芸術として捉えるなら、僕も芸術だと思ってるけど、彼らの話はすごくよく分かる。

--今は「100人いたら100人が同じ印象を持つ」ものが多いですよね。

NAOKI:だからマイクを立てて音を録るってすごく重要だと思うんだよね。そこで鳴ってるフレーズに耳が行く人もいれば、マイクと楽器の距離によってノスタルジックな気持ちになる人もいたり、いろんな角度で音楽って楽しめたのが、ラインで繋いで、コンピューターでギターアンプの音をジャーン!って録って終わっちゃうと、それはもうラインで繋いでそこで作った音色を聴く以上の情報は入ってこないじゃない? でもマイクを立てれば音を拾うだけじゃなく、その時を拾うし、その部屋の雰囲気を拾うし、聴き手のイマジネーションやアンテナさえあればいろんなことに気付けるものが生まれる。レコード技術ってそういうことだよね。時間をかければいいものではないけど、手間がかかることを怖れちゃいけない。

--LOVE PSYCHEDELICOの音楽はどういうものになってると思いますか?

NAOKI:まぁでもそんなに崇高な芸術みたいな感じではレコーディングしてなくて。

KUMI:でもとっても温もりのあるものだと思う。ハンドメイドだし、丁寧に愛情込めて創ってます。

--今回のベスト盤『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I』『LOVE PSYCHEDELICO THE BEST II』は、制作に関して拘った面はありますか?

LOVE PSYCHEDELICO THE BEST [MUSIC VIDEO]ダイジェスト映像
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST [MUSIC VIDEO]ダイジェスト映像

NAOKI:曲順。それはマスタリング含めてなんだけど、昔の作品も最近の作品も同じ2015年のLOVE PSYCHEDELICOとして楽しめるようなリマスターはしましたね。

--IとIIの収録曲はどういったコンセプトで分けていったんでしょうか?

NAOKI:いや、コンセプトで分けたんじゃない。単純に二枚組にしちゃうと敷居が高いからさ。これも自分たちで決めたことなんだけど、さっきの点と点を線で結ぶ話で言うと、LOVE PSYCHEDELICOの何か1曲と出逢った人が「LOVE PSYCHEDELICOをもうちょっと知りたいな」って思ったときのきっかけになるものを用意したかったのに、1曲知ったら「はい、2枚組買ってください」ってそれは違うだろと思って(笑)。まぁ自分たちの中では2枚でひとつのベストアルバムだとは思ってるけれども、気軽に出逢ってほしいから。全曲押し付けたいとも思ってないし。

--自分の好きな曲が入ってるほうを選んでもらえればいいと。

NAOKI:そう。それで良いと思う。それで十分ライブも楽しめるじゃん。

--IのジャケットはKUMIさんの顔だからKUMIさんの好きな曲が入ってるとか、そういうことではないんですね?

NAOKI:そういうことじゃない。でもIIから買う人は心配なんだけどね。ジャケットが俺だから「え、男が歌ってたの?」ってなっちゃうと(笑)。本気で心配してたよね?

KUMI:ずっと気にしてた(笑)。

NAOKI:まぁ2枚買ってくれれば……

--結局どっちも買ってと(笑)。今回のベスト盤、完成したものを聴いてどんな印象や感想を持たれましたか?

KUMI:いつの時代の曲も変わらずに愛してるなぁって。今もどの曲に対しても同じ気持ちで演奏できてるし、それはすごく幸せだなって思いますね。

NAOKI:あんまり時を感じさせないところが好きかな、どの曲も。「あの頃はよかった」とか「あのとき、大変だった」とか、そんなことは曲を聴いてて全然思わないというか、すごく時を超えて「Your Song」や「Last Smile」すらついさっき生まれた曲みたいにキラキラしてるように感じるので、それを普遍性と言うなら成功したのかもしれないし、どの曲もそんなに歳取らないなと思って。そういう曲たちと巡り会えたのは嬉しいなって思いますね。

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--こうして様々な音楽を発信してきているLOVE PSYCHEDELICOの役割、使命って何だと思いますか?

※LOVE PSYCHEDELICO - Shadow behind (Short ver.)
※LOVE PSYCHEDELICO - Shadow behind (Short ver.)

NAOKI:真摯な気持ちで音楽を創るっていうこと。僕らもバトンをルーツミュージックから受け取っていたりするので。ミュージシャンってみんなそうだと思うんだけど、真摯な気持ちで音楽と接して作品を創るっていうことが、次の世代への一番のバトンになると思うので、自分たちの信じた音楽を自分の為でも誰の為でもなく、それを残すっていうのが一番大切なのかなって思います。

--だからこそそのバトンやタスキをちゃんと受け取る人たちがたくさんいてほしいですよね。どこかで断ち切らないでほしい。

NAOKI:まぁでもどうあっても曲は自ずと残っていくから。50年、100年、今の時代はテープのように風化することはないから、その中で受け取ってくれる人がいればいい。それはLOVE PSYCHEDELICOだけじゃなくてね。やっぱり音楽は死なないと思うから。どれが本物でどれが偽者かは自分たちには分からないけど、音楽というか、ロックっていろんな文化の集合体じゃん。音だけじゃないじゃん。ファッションやスピリットやいろんなものがあって。LOVE PSYCHEDELICOだって僕らは音を創るけれども、ジャケットを創ったりとか、どういう作品にするかスタッフのみんなとも考えながら創っていって、大きな船が動いていく訳じゃん。そうやって考えると、LOVE PSYCHEDELICOっていうカルチャーからバトンを受け取って、物書きをする人が出てくるかもしれない。絵描きも生まれるかもしれない。どんな形かは分からないけど、目に見えないところで音楽の力ってもっと信じられるものだと思うんだよ。目に見えて分かりやすく……

--「我こそがLOVE PSYCHEDELICOの継承者である」じゃないけど。

NAOKI:そうそう、そういうことじゃない(笑)。だからそういう意味では音楽の力はもっと信じても大丈夫なんじゃないかな。もうこの世のどこかで自分たちとリンクして繋がっている人がいると思うし。

--そんなお二方だからお聞きしたいんですが、音楽とリスナーの関係性は今後どうなっていくと思いますか?

NAOKI:まぁ変わってきてるよね。ソフトひとつで簡単にレコーディングできる時代になってしまったので、きっとそのうち目線が一緒になっちゃう。

KUMI:私もそれは感じてるかな。

NAOKI:ネットが始まった頃さ、1億3000万人総アーティスト化みたいな言葉があったじゃん。みんなが表現者みたいな。そこまでは行ってないにしても、低予算でモノを録音や撮影することが簡単になってきてしまったので、その目線はどんどん近づいていくとは思うけれども、でもそういう時代こそ世の中にいるアーティストが、パワーを持っている人たちが、愛とか勇気とか希望を形にすることができる芸術を扱う人たちがちゃんとバトンを渡せるように、真摯に向き合って表現していくことが大切になっていくと思うんだよね。ぶっちゃけさ、録音ボタン押せば音なんて誰でも録れるけど、例えばロックンロールだったらルーツってすごく大切。その解釈をもって、それを自分の哲学を通して録音するということはすごく大変。そこに辿り着くのには10年、20年、30年ってかかる。5年や10年じゃミュージシャンになれないのと一緒で。そういう意味で表現者に責任ってすごくあると思う。芸術で人の心が豊かになって、その心が豊かになった大人が子供を育てていく訳じゃん。だからこそ本物の芸術って必要だよね。

--「5年や10年じゃミュージシャンになれない」と思うのは?

NAOKI:そうじゃない? 5年ぐらいじゃギター弾けるようにならないしさ。

KUMI:私たちも最近だもんね。音楽やって生きているのが自然になってるのは。

NAOKI:デビューしてしばらくは……

KUMI:「プロです!」みたいな風にはなかなか言えない。

NAOKI:武道館でワンマンやったりしても「いやいやいや、まだまだですから」みたいな。だから最近ですよ。音楽を表現する立場で日常を過ごしているって、それを受け入れられるようになったのはここ数年。

--LOVE PSYCHEDELICOがこれからも音楽を通してやっていきたいことって何なんでしょう?

NAOKI:次の曲を創る。

KUMI:そうだね。やっぱり曲を創ったり、演奏したりするのが私たちなりの愛情表現だから。そうやって世の中に愛を変わらず投げかけたい。

--その愛情を我々が味わう場は近々あるんでしょうか?

KUMI:アハハハ! ツアーが初夏にあります。5月から。

NAOKI:今回は高橋幸宏さんと一緒に廻るんですよ。それも楽しみだね。

--どういった経緯で一緒に廻ることに?

※LOVE PSYCHEDELICO - LADY MADONNA~U-UTSU-NARU
※LOVE PSYCHEDELICO - LADY MADONNA~U-UTSU-NARU"SPIDER"(Short ver.)

NAOKI:前からお願いしたいなと思っていて。勇気を出して手紙を書いた、みたいな(笑)

KUMI:そしたら快諾してくださって。

NAOKI:バンドメンバーはみんな幸宏さんと交流があって、僕らは【WORLD HAPPINESS】にお誘い頂いて面識はあったんですけど、またそのときに格好良いドラム叩いてて、「あー、幸宏さんの「LADY MADONNA」観てみたい!」と思って。それからずっとそんなこと考えてて、まさか本当に実現するとは思わなかったんだけど、楽しみだよね?

KUMI:うん。

--この15年間、そしてこれからも音楽仲間として共に歩んでいく2人ですが、KUMIさんはNAOKIさんのことをどんなミュージシャンだと思ってますか?

KUMI:どんなミュージシャン……とても熱量が高いですね。情熱的ですね。音楽に対して本当に真摯だし、真面目だし、真剣に命を燃やしてます。それは変わらないね、15年前から。それが第一印象だったから、彼の。音楽の生命オーラが見えるような人で、それは今でも変わらず、むしろどんどん深くなってると思うし。

--NAOKIさんはKUMIさんのことをどんなミュージシャンだと思ってますか?

NAOKI:すごくフィジカル。声って楽器だけど、肉体を震わせて声を発するだけでLOVE PSYCHEDELICOというカルチャーを人に伝える。武器も鎧も持たずに。これって凄いことだと思うんだよね。コンピューターにも何にも頼らずに独特な言葉を発して、それが人の叫び以上にカルチャーとして届けられる人。日本の宝だと思います。

--そんな2人にとってLOVE PSYCHEDELICOはどんな存在になってると思いますか?

NAOKI:カジュアルに接してるよ、結構。日常に溶けてるっていうかさ、大それてない。音楽って意味とLOVE PSYCHEDELICOって意味が同じかどうか分からないけど、さっき「ようやくミュージシャンになれた」って話があったように、最近ようやく音楽にしてもLOVE PSYCHEDELICOにしても放っておいても自分たちのそばにいてくれるし、逃げなくなった。自然と日常にあるもの。乗りこなさなきゃいけないものではないかな。

KUMI:そうだね。もうそこにある大きな船みたいな感じ。私たちはそこの音楽家として乗り込んでるし、そこにはスタッフだったり、バンドの仲間だったり、みんながいて。そのみんなで一緒に人生を旅する船。すごく楽しい乗り物です(笑)。

--良い船ですね。

KUMI:フフフ! 良い船でしょ!?

Interviewer:平賀哲雄
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