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BOOM BOOM SATELLITES 『BACK ON MY FEET』インタビュー

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BOOM BOOM SATELLITES 『BACK ON MY FEET』 インタビュー

 前アルバム『EXPOSED』でひとつの終着点に辿り着いたBOOM BOOM SATELLITES。ネクストステージには何が待っているのか楽しみにしていたファンも多いと思うが、そこには実に人間くさい、日々の営みすらをも匂わせる音楽があった。新たな世界の片鱗。というか、もしかしたら核そのものかもしれない新作『BACK ON MY FEET』について、川島道行と中野雅之のそれぞれに話を訊いた。

◎川島道行
正直言って「負けたくないな」と思っていたんです

--約2年ぶりのインタビューになるんですが、前アルバム『EXPOSED』がBOOM BOOM SATELLITESの中でどのような位置づけの作品になったと感じているのか、今改めて聞かせてもらえますか?

川島道行:2005年のアルバム『FULL OF ELEVATING PLEASURES』は、東京にスタジオを構えて作り出したんですけど。ロンドンから戻って。そこから試行錯誤してきた道の、ある種ひとつの終着点的なアルバムが『EXPOSED』ですね。「自分たちがやってきたことに対する落とし前をつけて、次へ行こう」っていう考えは、もう2006年の『ON』のときからあって。

--『EXPOSED』までの道程の中で目指した音楽っていうのは、具体的に言葉にするとどんな音楽だったんでしょう?

川島道行:「とにかく感じてほしい」っていうのは一貫してあったと思うんですよね。字面を追いながら聴く音楽ではなく、体感できる音楽を。で、とかくヘッドミュージック的な扱いをされていた時期だったと思うし、自分たちもそういう音楽を作っていったし。けど、そういうのをもっとオープンな感じにしたいと思っていて、ライブのセットにしても『FULL OF ELEVATING PLEASURES』を作るちょっと前ぐらいの頃から意識的に変えていって、伝わりやすくしていった。本来どんな音楽であれ、感じるモノであって、体感するモノであると思うんだけど、その中でエンタテインメント性も含めて「一気にかっさらっていきたいな」っていうところはありましたね。野心的な意味でも。そこを目指したことで離れていってしまう人もいたと思うんだけど、でも良かったんじゃないかなって。ライブにしても、フォーマットで楽しむ感じより、結構サバイバルな雰囲気の中で楽しんでもらえるようになったと思うんで。

--『EXPOSED』リリース以降のBOOM BOOM SATELLITESのライブをいくつか観させて頂いているんですが、ステージングがそれまでにも増して躍動感のある内容になったと感じました。2人並んでステージの最前に向かってくるアクションなども含め、そこは意識的に変えていったモノだったりしたんでしょうか?

川島道行:音楽がそうさせてる部分がほとんどだと思う。もちろん意としてやってる部分もありますけどね。「こういうセットだったら……」みたいなことを試行錯誤して、サービス精神的な部分も含め、いろんな面から形作っていくので。

--個人的にとても印象に残っているのが、昨年の夏に野音で行ったゆらゆら帝国との対バンだったんですが、中野さんはベースをブンブン振り回してるわ、川島さんは今までにも増してとんでもないハイトーンでシャウトを咬ましてるわで、音以外の部分でも感じられるエモーションがすごく増えた気がするんですが、自身ではどう思われますか?

川島道行:去年の夏はこれまでで一番多く夏フェスに参戦したんだけど、それの一発目だったんじゃないかな。で、まぁ正直言って「負けたくないな」と思っていたんです。以前にもゆらゆら帝国とは対バンしたことがあって、坂本慎太郎(g,vo)さんとコミュニケーションを取っていた時期もあったりして。その後も音楽自体はすごく好きですし、人間的にもすごく興味深いと思っていたんです。とは言え、一緒のステージに立つとなると「ゆらゆら帝国に負けない良いステージをしないとな」ってなる。でもあの日それは実現できなかったかな。むしろ悔しい想いをして帰ったと記憶しています。ただ、そこで学んだことも逆に多いし、ああいう相手でもない限り、僕らはそうそう負ける気がしないバンドなんで。だからゆらゆら帝国みたいなバンドがいてくれるのは、すごく心強い。これからも一緒にやりたいと思っているし。

--では、あの日のイベントはひとつの分岐点でもあったと?

川島道行:そんなに具体的に何が変わったとは言えないんですけど(笑)でも出来ることだけをするんじゃなくて「出来ないこともやる」ぐらいの意気込みが更に強くなってステージに立つようになったんじゃないかな。去年の夏はゆらゆら帝国に対しても刺激を受けたし、ELLEGARDENと一緒にやっても刺激は受けたし、なかなか良い経験をしましたね。

--で、そんなBOOM BOOM SATELLITESの歯止めが効かない、どんどん激しくなっていく爆発ぶりを感じながら、あの頃はエレクトロミュージックがシーン的にムーブメントを起こしていた時期で。今もそれは続いていると思うんですが、そうした盛り上がりによる影響や刺激みたいなモノはライブに限らず、BOOM BOOM SATELLITESにあったと思いますか?

川島道行:何が盛り上がっていたんですか?

--例えば、ジャスティスとか。

川島道行:あぁ~、盛り上がってましたね。セバスチャンとか。僕もああいうフレンチエレクトロは楽しんで聴いてました。ただまぁ如何せん、ハッピーアンセムだったりパーティーミュージックが多いんで、ちょっと食傷気味ではあったりするんですよね。でも僕らはダフト・パンクと一緒に東京でライブをやったりとかして、あれは結構ショウアップされたライブだったし、やっぱり本物を見るっていうのは、さっきのゆらゆら帝国の話と同じような感覚になりますね。ダフト・パンクのライブ盤とか買っちゃいましたからね。

--では、どちらかと言うと最近のムーブメントの中で鳴っているエレクトロミュージックは、リスナーとしては聴くけれども……みたいな?

川島道行:いや、新しいのでも面白いなと思った人たちはいますよ。サウス・セントラルとか。ニューレイブっていうシーンもあったと思うんだけど、ザ・クラクソンズとかは良いと思いました。ああいう初期衝動とかアイデア一発勝負、その瞬発力っていうのはそれはそれで刺激的ですからね。それはエレクトロ系のモノに限らず、そういうアーティストが次にどういう展開をしていくのか?っていうところにもう興味は行っていたりして。ホラーズのファーストを聴いたときも「こんなのやっちゃって、次どうするんだろうな?」って思ったりしてて、でも彼らはその要らぬ心配を他所に、見事な方向転換でもって次もすごく良いアルバムを作って。そういうのは「俺もやんなきゃな」っていう子供っぽい動機付けには繋がります。

--そうした存在と接触してライブをしたいと思ったりは?

川島道行:そうですね。そういうバンドが集まるフェスティバルとかに出れば、僕らの音楽を思いがけず聴いてもらえる機会が得られるので、そこには臆せず出ていきたい。モービーのツアーをオープニングアクトとして一緒に廻ったときもそうなんだけど、行く前に心配していたことが、実際に行ってみるとその逆のモチベーションというか、結構盛り上がったりするので、そこは自信にもなるし。なのでこれからも「面白そうだな」と思えばどんどん出ていきますよ。

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◎川島道行
明日、世界の終わりでも風邪をひくな

--これはすごく個人的な提案なんですが、BOOM BOOM SATELLITES主催のフェスとか毎年やるようなことになったら、そのフェスの注目度は非常に高いモノになると思うんですが、どうでしょう?

川島道行:やりたいです(笑)。そういうお祭りを考えること自体もすごく楽しそうだし。自分が観たい、行きたい、遊びたいモノを想像してみると……やっぱり楽しいよね!それは。なので想像し合う会を開きましょう。実際にはやらずに(笑)。

--いやいや、やってくださいよ!

川島道行:そうですね。でもちょっと前に【Front Chapter】というイベントをやっていて、THE BLUE HARBとかと対バンして。あれはすごく楽しかった。で、クリスマスイヴの渋谷にTHE BLUE HARBとBOOM BOOM SATELLITESを観に来たんだけど、ライブハウスに入りきれなくて若い子たちが外に並んでいる景色を見たときは「何とか入れてあげてよ」って思って。

--では、今度は規模を広げてぜひフェスを。

川島道行:はい。

--それでは、そろそろニューシングル『BACK ON MY FEET』の話にも触れていきたいんですが、まず自身では今作の仕上がりにどんな印象や感想を持たれていますか?

川島道行:今回のタイミングでのインタビューを受け出してから2日目とかなんですけど、インタビュー後に家帰って聴いたりして「あ、良いなぁ」って(笑)。考えなきゃいけないことがあったりするから、そういう場合は他人事として聴いたりするんですよ。それで「こういう音楽を出してくれるバンドがいてくれたら良いのにな」っていうのが、自分たちだったって感じて不安が和らいだり。何のムードも時代のブームも……最近何が流行ってるのかよく分かんないんだけど(笑)そういう匂いみたいなモノは一切感じさせないし、ミュージックインダストリアルのフォーマットにあまり支配されてはいないけれども、ルールだけは守っている。その中でのアートフォームっていうところでは、面白いモノが出来ているんじゃないかなっていう感覚です。

--『BACK ON MY FEET』ではどんな内容を歌っているんでしょう?

川島道行:『EXPOSED』のツアーが終わって、ちょっと休んでから、一番最初に作ったのがこの曲で。僕はいつも主軸をひとつ決めてからいろんなストーリーを書いていくんですけど、戦いとか戦争とか破壊とか、そういう退廃的な言葉がバァ~って出てきて。その中でも感じられるロマンチシズムだったりを書いてみようと思ったんです。で、『BACK ON MY FEET』について語ると、まず女の子に勝る存在はないと思うんですよね。結構、神様に近いっていうか。何でも出来るっていう意味じゃなくてね。人類を増やせるのは女の子だし、男の人は女の人をすごく強く意識しがちだと思うし。とどのつまり、決定権は女の人にあるっていう。この先も人類が増えていくことを仮定した場合。そう考えると、いつも隣に神様がいる感じがして。何でも出来る訳じゃないけど、子供を生んで育ててくれる。それは凄いこと。ただ、その反面で人は地球を終わらせることもできる。それは別に偉い人にならなくても、ここで飲んだ2本の水が100年後の地球を滅ぼす理由になるかもしれないし。そのアンバランス感を書こうと思って。

あと僕は「世界が壊れ果てるときにでも自分の足で立っていたい」っていうのが理想としてあって。好きな詩人の一説に「明日、世界の終わりでも風邪をひくな」っていう一説があるんですよ。僕が何かをしてるとき、その言葉が常にあるんです。明日が世界が終わる日でも、炊飯器のタイマーを掛けて、歯を磨いて寝たりとか。そういう絶望の中に希望の種を残しておく、その力強さが欲しくて。自分が普通に生きていてもね。そんな願望を、物を壊して進んでいくようなスタイルを取りそうなバンドが表現していく。で、それが『EXPOSED』以降の舵の取り方になりそうだなとも感じていたから「BACK ON MY FEET」というフレーズが出てきたんだと思うんですよね。

--音の渦みたいなモノが襲い掛かってくるアルバム、それが前作だとしたら、今のBOOM BOOM SATELLITESはとても立体的な世界を創造した上で、そこに熱や意思を注入する、そんな音楽であると感じます。

川島道行:そう感じてもらえるのはすごく有り難いことで。曲を作るにあたって、僕は中野を客観的に見る訳なんですけど、何かフォーマットに従ってやることによって音楽が生まれている訳じゃないんです。直情的な部分をすごく大事にしていて、かつその感情をテクニックで、更に人に伝える音楽として録音している。なので、そこが聴いてもらった人に伝わるっていうのは、音楽を作る者としては幸せなことだし、そういう聴き手が居てくれることは有り難いことだなと思います。

--そんな今のBOOM BOOM SATELLITESがこの先に発表するのであろう、次の作品はどんな内容になっていきそう?

川島道行:この4曲を作っている間にも、ラフスケッチみたいな形で何曲かはすでに作っていて。それらも含めて総合的に考えると……どうなるんでしょうね?この4曲だけで26分でしょ。さっきちょっと思ったんだけど、プロのミュージシャンになって、お金を稼ぐためにリリースをしなきゃいけなかったりする。もちろんそれは音楽を作りたいから作って、それが仕事になってるからなんだけど、そこにはルールがある。何分以内はシングルで、それ以上はアルバムで。ただ今作『BACK ON MY FEET』はシングルとして作っている意識はもちろん強かったんだけど、でも形になって聴いてると「シングルっぽくないな」「これはもしかしてアルバムなんじゃねーかな?」って思ったりして。そうなってくると「もうどっちでもいいかな」って(笑)。CDっていうフォーマットが出てきて、みんなあくせくとカラオケ入れたりとか、7cmのシングルで出してみたりとかしたけれども、そういう流れの中で4曲26分っていう円盤が出るっていうのは面白く感じるし。これは別に決まってることでも何でもないんだけど、こういう作品を同時に2枚、3枚出したり、その後にまた普通のアルバム構成に戻ったり、そういう展開は可能性としては考えられる。常に面白がってやりたいし、面白がってもらいたいし。やっぱり手に取れる音楽作品を残していきたいなと思ってますね。

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◎中野雅之
人生を共に過ごせるような音楽にしたかった

--これは個人的な見解なのですが、ジャスティスの1stアルバムなどが誕生した、BOOM BOOM SATELLITESの歴史で言えば『EASY ACTION』をリリースした2007年夏頃から、エレクトロミュージックが世界的に過去例を見ない勢いでオーバーグラウンドシーンで鳴り響き出した印象があるんですが、昨今のそうしたシーンについてどんなことを思いますか?

中野雅之:どっちかって言うと、距離は置いていたところもあるんですよ。好きですけど、フレンチエレクトロとかは昔っから。今はリバイバルっぽいのが多いですけどね。ダフト・パンクが出てきた頃は他にも格好良いフレンチハウスがいっぱいあったし。でもジャスティスはコンポーズドセンスとか素晴らしいし「相変わらずフランスからは面白いのが出てくるなぁ」って思って。共感までは行かないんだけど、リスナーとしては楽しめる音楽。だからBOOM BOOM SATELLITESをやっていく上では、距離を置いてる感じですね。嫌な話だけど、あの時期流行ったのってもうこの数ヶ月で「ちょっと古いかな」って感じさせるようになってるから。それだけ早いんですよ。だから僕らはもうちょっとどっしりと構えて取り組める、純粋で良質な音楽を作りたい。

--確かにこれだけのムーブメントが起きても、BOOM BOOM SATELLITESは未だに孤高な存在の印象を受けます。それは何かに寄り添うことなく、常にスーパーオリジナルを目指してるからだと思うんですが。

中野雅之:そうですね。結果として、これまでもどこかのシーンに属することがなかったから、シーンもろとも大きくなっていくような流れに乗ったことも当然無かったし。ビッグビートって最初に紹介されたときとかも、敢えてそういうモノにアンチテーゼを示すような音楽を作ろうとしていたし、何かに括られることがとっさに嫌になるんです。だから、白と言われれば「白じゃない」と言いたくなるし、黒と言われれば「黒じゃない」と言いたくなるような性格は元々あったかと思うんですけど、今はもうちょっと大人になって周りをちゃんと見渡せてて、自分たちの本質的な部分を理解した上でやろうとしてるし。

エレクトロってフォーマットが強いじゃないですか。フォーマットにまず乗らないことにはその音楽を作ることができないんで、不自由なんです。それに対して、例えばレディオヘッドが元々エレクトロニカの人間ではないのに、ある楽曲を表現するためにエレクトロニカをある意味軽く使った。そんぐらいの感覚でも曲自体が良ければ勝つっていうか。つまり、本業のエレクトロニカの連中よりもレディオヘッドの方が結果的に良い曲を作ってしまったとしたら、レディオヘッドの勝ちじゃないかと僕は思っちゃう。だからもし僕たちが何かあるフォーマットに傾倒していくことがあったとしても、多分良い曲を作るための道具にしかしないと思うんですよ。そこが大きいんだと思う。

--そんなBOOM BOOM SATELLITESの最新形『BACK ON MY FEET』。自身では仕上がりにどんな印象や感想を?

中野雅之:どういう風に受け止められるのか不安な部分もあるんですけど、自分たちとしてはそんなに不自然なこともしていないし、物凄く挑戦したことも実は無いんですよ。自分たちの作曲能力の範囲で作っているので、曲作りとかレコーディング自体はコツコツ無理なくやっていて。だから結果として時間は掛かったけど、試行錯誤ではなかった。ただ『ON』とか『EXPOSED』とか、ダンスミュージックのフィジカルな部分が強いモノを作ってきて、ライブでもそういうモノを求められていたんですけど、今回はそうではないメンタリティ重視の音楽になっている。ナイーブな時代なので寄り添える音楽を作りたくて。常に傍にあって、人生を共に過ごせるような音楽にしたかったんです。こう言うと誤解を生むかもしれないけど、優しさみたいなモノは必要なんじゃないかなって。強さとか快楽とかっていうところで片付けきれない雰囲気があると思うので、それを引き受ける音楽っていうのを作らなきゃいけない。だから今回はそこを感じ取ってもらいたいなって。

--『BACK ON MY FEET』はあらゆる音がその音だけでも十分にドラマティックなストーリーを紡げるほどの存在感を放っていて。で、それだけの存在感をどの音も放っていながら、曲全体の印象としてはとても爽快というか、クリアーに聞こえるという。簡単に言うとうるさくない。

中野雅之:今までで多分一番クリアーなミックスなんですよ。クリアーなモノを良しとしない、もっと混沌としていたりノイジィだったりするモノを出していきたいときもあるんだけど、今回は見通しの良いサウンドスケープみたいなモノがこの曲に合ってるんじゃないかなと思ったと思うんです。大体そういうのって無意識のところで起きてるから。で、その流れに乗って、結果的にこうなったっていう感じなんです。

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◎中野雅之
『EXPOSED』とか『ON』とは全く違うモノ

--また、今作はリードトラック以外の楽曲も、というかむしろそっちの方が明確に新しいBOOM BOOM SATELLITESを感じることができるんですが、まず『ALL IN A DAY』。この曲で表現したかった世界ってどんなモノだったりしたんでしょう?

中野雅之:まずコード進行から作曲は始まっていて、何かピアノで弾いたときの半音でぶつけていく感じだったんですけど、暗くて切ないムード、それでいて神妙で神聖な雰囲気まで感じられるコード進行にして。で、川島が乗せてくるリリックっていうのは、そういうときに浮世離れしたモノではなくて、生活とか人生に基づいたところで書かれるので、それをちゃんと生活レベルのドラマみたいなところに繋げていった感じですね。でも何かスローガン的なモノを掲げている感じではなくて、今回はどの曲もムードを共有したいとか、空気感とかサウンドスケープでもって伝わりたいとか、ユニティを感じたいとか、そういう想いが強いんです。だから「伝えたいことは何ですか?」って聞かれたときに意外と困っちゃうんですけど。でも意思のある音楽であることには間違いないんで。

--これまでのBOOM BOOM SATELLITESはグルーヴの凄まじさ、熱量が他の追従を許さない、そんな印象だったんですけど、今回は熱量というよりもどれだけ新鮮な、これまでに体感したことのない世界やグルーヴを感じさせるか?というところに焦点を当てている気がしたんですが、実際のところはどうですか?

中野雅之:今回は最初から地下のスタジオに入らないで、家でデモを作ることから始めて。アコースティックギター1本で曲を作るぐらい、ちょっとフォーキーなイメージで。家でちょこちょこと打ち込みをコンピューターに向かってするんだけど、それがアコースティックギターを弾いてメモを取る作業と多分近かったと思う。そこでやるのは大したことじゃなくて、簡単なモチーフを探していく感じなんだけど、それをスタジオっていう非日常的な空間じゃなくて、普通の生活の場でやる。そこからスタートできた曲が結構あるので、そこで出てくるヴァイブっていうのは、やっぱりこれまでと違ったと思う。サウンドの中に怒りさえ感じさせるような、要はパンク的な姿勢から生まれてくる曲が僕らは多いんですけど、そうではないところからスタートしている曲がある、っていうところが今までと違う印象を与えるのかもしれない。窓からの景色がすごく良くって、バァ~って街がよく見渡せて、そこでイメージするんですよ。人の営みとかを。会社に朝向かう人の姿を見たり、東京の灰色の風景にすごく寂しさを感じたり、でも夕陽がすごく綺麗だったりとか、そうした人々の日常をなんとなく見てるとやっぱり感傷的になったりするんですよね。で、そこでちょっとコンピューターに向かって作ってみる曲って、1からスタジオで作る、ある意味音楽のための音楽みたいなモノとは違っていて。

--また、3曲目『SPELLBOUND』は完全にこれまでのBOOM BOOM SATELLITESのイメージを覆すインストゥルメンタルになっています。今回こうした曲を作ろうと思ったのは?

中野雅之:『SPELLBOUND』に関しては、今回『BACK ON MY FEET』『ALL IN A DAY』と続いて『CAUGHT IN THE SUN』で終わるってことが決まっていて、そこにもう1曲フルボリュームな感じの曲を入れることが、塊としての作品として相応しいか?って考えたときに「違うよな」って思って。それで『SPELLBOUND』は作った曲なんですよ。でも、後から作品をまとめるためにピンポイントで作った曲ではあるんだけど、今作の核とも言える、この作品の体を表している曲になったなって。あと、この曲もサウンドスケープを連想するというか、最も風景を連想させるシネマティックな内容になってると思う。

--今までもリアルな街並みの風景が顕著に音楽へ反映されるようなことはあったんでしょうか?

中野雅之:ロンドンに居ればロンドンで生活する中で生まれてくる気持ちが出たりはします。『Umbra』を作っている頃の自分の心情はやっぱり激しかったと思うし、いろんなモノに対する憤りがあったと思うんですね。それがサウンドに如実に表れている。今自分が大人になって振り返って聴いてみると「なかなか骨のある面白い若者だなぁ」って感じるんだけど(笑)。あと『OUT LOUD』を作っているときは、あのアルバムでもって世界中の人たちとコミュニケーションを取ろうとしてて、東京っていう情報に溢れた大都市の疾走感みたいなモノを表現したんです。それも自分が東京で生活していて感じているヴァイブから来てるモノ。やっぱりそのときそのときの状況が反映されていく。でも今作に関しては、より生々しい生活観、そういう手触りがあるところまで寄せている。

--今作には収録されていない、現在制作中の楽曲もそうした感触のモノが多いんでしょうか?

中野雅之:まだ何とも言えない。曲単位で切り取ると『BACK ON MY FEET』はタイアップがあったりして、結構ポップでキャッチーな曲なんですよね。だけど僕らが表現したかったのはその前後にくっついているモノだったり、アウトロのロングテールだったり、そこに重きを置いたモノで。その部分は丁寧に丁寧に時間を掛けて作っていって生まれてくるモノなので、だからこれからアルバムに入れようとして作っている曲たちがこれからどんな変化を遂げていくのか、まだまだ未知数なところがある。ただ、流れの良いアルバムを作るってすごく難しいし、ある意味文章みたいなところがあるんですよね。そのとき出てきた自分の曲がとても運命的な流れを生んだり、逆にどう頭を捻ってもその流れが生めなかったりすることもあったりするんで、その部分に今回は恵まれたいですね。

--前アルバム『EXPOSED』とはかなり匂いの違うアルバムになりそう?

中野雅之:そうですね。『EXPOSED』とか『ON』とは全く違うモノになると思います。

Interviewer:平賀哲雄

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BACK ON MY FEET

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  1. 01.BACK ON MY FEET
  2. 02.ALL IN A DAY
  3. 03.SPELLBOUND
  4. 04.CAUGHT IN THE SUN

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