2018/06/13
北欧ジャズ・ヴォーカルを代表するデンマーク・レムヴィ出身の歌姫、シーネ・エイが約1年ぶりにビルボードライブ大阪に登場。2003年、自身の名前を冠したアルバム『Sinne Eeg』でデビュー。2007年の『Waiting For Dawn』と2010年の『Don't Be So Blue』で母国デンマークで最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞。ワールドツアーも度々行い、今やデンマーク国内のみならず世界で注目されている彼女。今月初めより横浜、盛岡、東京、金沢、名古屋、鈴鹿と日本各地でコンサートを行い、この日が日本での最終公演となった。
拍手と歓声の中、チャーミングな笑顔を浮かべ、手を振りながらステージに立つシーネ。まずは来場への感謝の意、そしてこの日が日本における最後の夜であることを告げる。2年ぶりのアルバム『Dreams』を携えての登場となる今回は、これまでアルバム制作を支えてきたピアニスト、ヤコブ・クリストファーセンとのデュオ編成。ステージにあるのは、歌とピアノのみ。シーネの織り成す、ハスキーなベルベット・ヴォイスと、表情豊かにピアノを奏でるヤコブの伴奏。シンプルな編成だからこそ、二人の歌唱力・演奏力の素晴らしさがダイレクトに伝わってくる。
スタンダードカバーの「Happy Talk」では、ピアノのスイングに合わせて、マイクを手に軽やかに歌うシーネ。更に間奏ではヤコブの演奏を笑顔で見つめる姿も。そしてヤコブもまた、シーネが歌う背中を笑顔で見守りながら、鍵盤の上で指を走らせる。長年共に音楽を奏でてきたからこその、絶対的な信頼感とリスペクト。それこそが二人のステージの根底にあるものなのかもしれない。
昨年リリースされた『Dreams』からは「The Bitter End」が披露される。叙情的なピアノの旋律にのせて、どこまでも伸びる甘い歌声。マイクを離れ、優雅に宙を舞う指。メロディを紡ぐ合間、零れ落ちる吐息。そんな彼女の所作のひとつひとつまでもが、音楽を奏で出す。
終盤では、彼女自身も好きだという映画『サウンド・オブ・ミュージック』より「My Favorite Things」のカバーを演奏。原曲のイメージを覆す情熱的なピアノプレイと、愁いを帯びた艶やかな歌声が、フロアの空気をグッと濃密なものに変えていく。曲間の伴奏でピアノに手をかけ、遠くを見つめるシーネ。その端正な横顔に、円熟しつつある女性の美しさと、可憐な少女のような愛らしさという両面を見た気がした。「Time To Go」では、「Don't be shy…」とフロアに呼びかけ、静かなハミングのコール&レスポンス。会場から、そして自身の唇から紡ぎ出される哀愁のメロディが、別れの予感を色濃く滲ませて、切なさで胸が締め付けられる気がした。
「明日はもうデンマークへのフライトがあるから」と、2週間近く滞在した今回の来日公演を惜しみつつ、登場したときと同じように、チャーミングな笑顔を浮かべ、手を振りながらステージを去るシーネとヤコブ。ビタースイートな歌声と、色彩豊かなピアノが生み出すハーモニーに心奪われた夜だった。
Photo by Kenju Uyama
Text by 杉本ゆかり
◎公演情報
【シーネ・エイ with ヤコブ・クリストファーセン Duo】
ビルボードライブ大阪
2018年6月11日(月)※終了
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