2017/12/13
毎年、恒例となっているhide Birthday Partyが、今年も12月10日に川崎のCLUB CITTA’で盛大に開催された。
近年は、hideに憧れるジャンルレスな若い世代のアーティストも参加し、おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかなイベントとなることが多かったが、今年はhideとゆかりの深いアーティストが大集合。まさにチーム「hide」組ともいえるラインナップで、 それぞれのバンドの持ち時間もたっぷり。じっくりとバンドの演奏を、堪能できる構成になっていた。出演バンドは全9組、6時間半の長丁場のイベントだったが、ロビーにはたくさんの出展ブースがあったり、バーやカラオケのお楽しみコーナーがあったりと、来場者は存分にhideワールドを満喫していた。
13時半。まだお昼すぎという早い時間ではあるが、ステージ前は熱心なファンでいっぱいである。オープニング映像が流れた後、一番手のheidi.の登場である。SEに乗ってステージに出てきたメンバーは、「トップバッターheidi.、思い切りいきます!」と叫んで、エッジの効いたギターのイントロで始まる「レトロエレクトロ」をプレイ。ポップなノリのいい曲で、「手拍子!」と1曲目から観客を盛り上げる。hideのダンスチューン「Beauty & Stupid」、観客に拳を上げさせるスピード感あふれる「サンセットブルー」と続けて演奏して、ラストはhideの「ピンクス パイダー」でさわやかな疾走感にあふれたステージを締め括った。
2番手は、全員が宇宙服を着たアー写がインパクトのあるSPEED OF LIGHTS。hideに見いだされたことがデビューのきっかけとなったバンドshameのヴォーカルのCUTT が、昨年、結成した宇宙型エレクトロバンドである。この日はオレンジ色のつなぎに身を包み、まずhideに捧げる「BIRTHDAY SONG」を演奏。CUTTが歌うようなMCで、Zilchの「INSIDE THE PERVERT MOUND」を紹介し、怒濤の演奏が始まる。CUTTは両手から客席に向かってレーザー光線を放射しながら、エネルギッシュに会場を盛り上げる。一番新しい曲で元気いっぱいの「Fu_sen Asteroid」、観客と一緒にタオルを回す「Weightless Flight」、みんなに歌わせる歌モノの「Summer Stars」と続き、最後は「この曲をハッピーに歌いたいと思って、こんなアレンジにしてみました。一緒に歌おう!」と、hideの「HURRY GO ROUND」を演奏した。
続いて、11月29日にニューアルバム『TO THE GALAXY』をリリースして、全国ワンマンツアー中のdefspiral。ツアーの勢いを感じさせる重々しく激しい「AURORA」から、演奏がスタートした。ストレートに音の直球が飛んで来るような迫力ある1曲目が終わると、hideの声が会場中に響き渡り、「DICE」のカバーが炸裂。hideのROCKミュージカル「ピンク スパイダー」やホログラフィックライブ「hide crystal project presents RADIOSITY」に参加したり等hideとの絆の深い彼らだけに、まるで自分たちのレパートリーであるかのように自然体で演奏している。全6曲のうち、ライブで盛り上がる「SILVER ARROW」とこの「DICE」を除く4曲がニューアルバムからという攻めのセットリストで、充実しているバンドの雰囲気が十二分に伝わってくるステージだ。疾走するドラムス、ゴリゴリしたベースライン、トリッキーなギター、あやしいヴォーカルとdefspiralの新しい一面を魅せる「PULSE」で会場を圧倒し、彼らはステージを下りた。
2011年に再結成したZEPPET STOREは、「BLUE」でスタート。しかし、木村のギターの調子が悪く、2曲目が終わったところでライブが中断してしまう。「本当は3曲続けて演奏するところが、2曲で終わってしまいました。リハーサルのない現場なんで」と、苦笑いをする木村。現在、彼らは5人で活動しているのだが、この日はギターの赤羽根が怪我のため、4人編成での登場となった。そんないきさつもあることから、「何かあるよね、hideさんのバースデーって」といいながら、バースデーソングを歌ったり思い出話をしながら必死に場をつなぐ4人。結局「リハでは音が出ていた」木村のギターが使えなくなり、CUTTからギターを借りてライブを再開した。「いい意味でも悪い意味でも、今日のZEPPET STOREは印象に残ったと思います」との言葉通り、アクシデントはあったものの、ZEPPET STOREの真摯な音楽性を観客に印象づけるステージとなった。
幕が上がり、DJ-INAのステージが始まった途端、バースデーソングが流れ、TAKA(defspiral)やCUTT(SPEED OF LIGHTS)、義彦(heidi.)等が、バースデーケーキを持ってステージに乱入してきた。hideと誕生日が一日違いのINAへの、サプライズのバースデー企画である。照れくさそうに「53歳になっちゃいました」といいながらロウソクを吹き消すINAに、会場中からあたたかい拍手が沸き起こる。そして、始まったのはhideの楽曲で観客を踊らせるDJタイム。INAはブースの中で機械を操作するのみにとどまらず、ステージ前面に出て観客をあおったり、マイクを持って客席に下りたり、アクティヴに動き回る。ゲストに桃知みなみが参加し、「子ギャルダンサーズを募集したいと思います」といって、フロアの観客をステージに上げる。それぞれ華やかにコスプレしたダンサーズが自由にステージの上をダンスしまくり、DJ-INAのステージはたくさんの笑顔に包まれて終了した。
次は、hideバンドやhide with Spread Beaver のメンバーとしておなじみのDIEとドラマーMAD大内率いるポジティヴロックユニットKISS THE WoRLDの登場である。ライブは、1曲目からめちゃくちゃ明るく元気なテーマソング「KTW」でスタート。DIE、MAD、ギターのオカヒロが短く歌いながらつないでいき、先程メンバーから「こんなに困った顔の木村くんは見たことがない」といわれていたヴォーカルの木村(ZEPPET STORE)も笑顔で歌っている。hideのカバー「ピンク スパイダー」では、ゲストヴォーカルにTAKA(defspiral)とCUTT(SPEED OF LIGHTS)が参加。この2人は今年の夏に開催された「MIX LEMONeD JELLY 2017」でもKISS THE WoRLDに参加していて、ファンにとってはおなじみの光景である。残念ながらあと2本のライヴで活動休止が決まっているKISS THE WoRLDだが、ポジティブな大人のロックパワー全開のステージは、観客を巻き込んでの楽しい時間となった。
続いて登場したのは、hideバンドやhide with Spread Beaver を重低音で支えて来たCHIROLYN。もともとサポートベーシストとして活躍して来た彼は、現在、ソロ名義でシンガーソングライター、弾き語りのライブ活動も行っている。この日のバンドはスリーピースで、のっけから「DIE or GREED」「Do me favor」と、ゴリゴリのロックサウンドを披露。2曲終わったところでベースを持ち替え、うがいをしたCHIROLYNは、「今日、ちょっと声が出ねーの。弱音を吐いても、いい? 一昨日、病院行ったの。今日は死ぬ気でやるから、よろしく」とMC。後半は歌モノで、声が枯れてはいるものの、その熱い歌声からは彼の伝えたいメッセージがじわじわと伝わってくる。「人間はみんな孤独。これをロックンロールと呼んでます」とCHIROLYN流人生哲学を話した後、「そういう曲を書きました」という代表曲「君は変わっちまった」を熱唱して、ライブは終了した。
バンドとして最後のステージを飾るのは、MADBEAVERS。hideバンドやhide with Spread BeaverのギタリストKIYOSHIとドラマーJOEが結成したスリーピースバンドである。KIYOSHIがギターを持ちながら歌い、ライブは「幻想のイマジネーション」で幕を開けた。独特のヴォーカルと、タイトな演奏スタイルが印象的なバンドである。2005年の結成当初はベースにCHIROLYNが参加していたが、2007年からは現メンバーのEBIが参加。「SMOKING KILLS」ではEBIがヴォーカルを担当し、KIYOSHIとの息のあった掛け合いも聞かせた。「MADBEAVERS、来年、EBIちゃんが入って10年経ちます。ハッピーバースデー、hide!」とKIYOSHIがMCをして、ラストはミディアムテンポの「半透明の君へ」で締め括り、3人はステージを下りた。
そして、最後は恒例のセッション。幕が上がるとステージ上には、KIYOSHI、CHIROLYN、DIE、JOE、INAの5人が立っている。CHIROLYNが「一人足りないと思わない?」と観客に問いかけると、間髪入れずにPATAコールが沸き上がる。下手からPATAが手を振りながら出てきて、hideバンドのメンバーが揃った。「ROCKET DIVE」のイントロが始まると、銀テープが会場に放射。バックのスクリーンからhideの映像と歌声が聞こえてきて、ステージ上の6人とスクリーンのhideがシンクロして、会場を盛り上げている。さらに、銀テープと赤い髪のhide人形を振る観客も加わって、会場はあたたかい一体感に包まれた。
「もう一曲聞きたい? もう一曲だけだよ」とCHIROLYNがいって、出演バンドのメンバーを全員呼び込む。サインボールを会場に投げながらメンバーが登場して、「TELL ME」の演奏が始まった。フロアには、カラフルなハート形の風船が落下してくる。スクリーンのhideが歌い、hideバンドのメンバーが演奏し、その他のメンバーは思い思いに踊ったり歌ったり観客をあおったり。hideに見守られながら、それぞれが好きなように楽しんでいる……まさに、hideと仲間たち関係を、ステージ上に具現化しているような微笑ましい光景だった。
ライブがすべて終了した後、hide永眠後20年を振り返るヒストリー映像の上映と、hideマネジメント事務所である株式会社ヘッドワックスオーガナイゼーション 代表取締役 松本裕士氏の挨拶で、来年のhide 20th Memorial Projectの一端が発表になった。「2018年4月28日・29日にお台場野外特設ステージにて、hide with Spread Beaver他の出演で野外イベントを開催」「ドキュメンタリー映画の制作」「声と映像によるメモリアルボックス」「初のI.N.A.執筆本の出版」等である。さらに、その他にもメモリアルな企画がいくつも進んでいるという。来年につながる壮大なプロジェクトの幕開けで、2017年hide Birthday Partyは華やかに幕を閉じた。「2018年。こんな年はもうないと思うので、みなさん、楽しみにしていてください」(松本氏談)Text:大島暁美、Photo:nonfix creative(HIROYUKI UENO/HITOMI KATADA)
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