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2017/11/30

シネマ・スクリーンで見られるロイヤル・バレエ、第1弾は『不思議の国のアリス』リハや舞台裏映像も満載

 バレエ、オペラともに世界最高の名門歌劇場、英国ロイヤル・オペラ・ハウスの人気公演の舞台映像をシアターで観劇できる『英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン 2017/18』がこの秋スタート。バレエ第1弾演目は『不思議の国のアリス』だ。

 誰もが知っているルイス・キャロル原作『不思議の国のアリス』の世界観を、イギリスらしいマッドなジョークと正統派クラシックの狭間で表現する手法は、さすが英国のバレエ団と思わせるウィットに富んだもの。原作から飛び出てきたような、チョッキを着こなした白ウサギ、暗闇に浮かび上がる巨大なチシャ猫、タップダンスとクラシックを融合させた独自のダンスで踊り続けるマッド・ハッター、すぐに首を刎ねたがる真っ赤な衣装のハートの女王など、一人一人がみんな違ってみんなおかしい、どこまでもシュールでチャーミングなキャラクターばかりだ。

 主人公のアリスは終始スミレ色の衣装をまとい、子供とも大人の女性とも言えない透明感を感じさせる。アリス役のローレン・カスバートソンは1幕の頭からカーテンコールの幕が下がるまで、一時も緩みの無い、しかし柔らかでしなやかな、気品のあるパと動きで、観客の目を惹きつけて離さない。そしてこのバレエの演劇性の高さは、ダンサーが完全にその役になりきり、その狂気を表現し尽くしているところからも明らかだ。だまし絵のような視覚的工夫を凝らした舞台美術、映像、そして何より一人一人の表情や細かい仕草が細部までよく見えるのは、映像での舞台鑑賞限定の特典、とも言えるかもしれない。

 人気振付家クリストファー・ウィールドンによる振付は、クレイジーなキャラクターたちによるダンスやマイムはもちろんのこと、アリスとハートのジャックが踊るクラシックなパ・ド・ドゥと、横断的に楽しめることにあるだろう。人間とは思えないような跳躍力を動物達が披露してくれるのも、人間離れした身体能力の高さを誇るダンサーが多数在籍するバレエ団からこそ。改めてロイヤル・バレエのダンサーの層の厚さに脱帽したショーだった。

 本シリーズのオペラ演目と同様、本作も、スクリーンの前に座ってすぐに演目が始まるのではなく、案内役であるプリンシパル・ダンサー2人の導きで、作曲家やダンサー達から『アリス』の内容や見所を教わることが出来る。またアリスやマッド・ハッターのリハーサルの様子が見られるのも嬉しいところだ。そして、是非、面白いと感じたり、驚いたりしたら、是非拍手をして客席に「参加」して欲しい。きっと見ているうちに、あなたも、アリスの世界に入り込んでしまっているはずだ。『不思議の国のアリス』は12月1日より、TOHOシネマズ日本橋ほか、全国順次公開。Text:yokano

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