2017/10/30
まず驚くべきは、ブーツィー・コリンズが未だ新作をリリースできる“現役”であるということ。1951年に米オハイオ州シンシナティで生まれたブーツィー(2017年現在66歳)。10代の頃にPファンク・バンドを結成し、JB'sとしてジェイムス・ブラウンのバックバンドを経て、ジョージ・クリントン率いるファンカデリックに参加。Pファンクバンド=パーラメントは、ブーツィーのベースなしでは語れない。ブーツィーズ・ラバー・バンドやソロ作品のクオリティも高く、90年代にはスヌープ・ドッグをはじめとしたラッパーたちにサンプリングされるなど、再び注目を集めた。
2000年代に入ってからも、『Play with Bootsy』(2002年)や『Living on Another Frequency』(2008年)など、時代にとらわれない名盤をコンスタントに発表。新作『World Wide Funk(ワールド・ワイド・ファンク)』は、2011年の前作『Tha Funk Capital of the World (邦題:魔法の未来都市=ファンクと「U」な仲間たち)』からおよそ6年振り、14作目となるスタジオ・アルバムで、全曲、自身が制作・プロデュースを担当し、故郷のシンシナティにあるブーツィーのスタジオでレコーディングされた。カラフルなアート・タッチのジャケットにも、ブーツィーらしさが表れている。
キレの良いホーンが飛び交うタイトル曲で幕を開け、ヴィクター・ウッテンがベース唸らす「Bass-Rigged-System」、パーラメント直結のPファンク・チューン「Snow Bunny」、バーニー・ウォーレルが参加した不敵な電子音が絡みつくスペイシー・ファンク「A Salute To Bernie」など、全盛期の70年代ファンクが炸裂する本作。グニョグニョしたベースも健在だ。特にすばらしいのが、ラストの「Come Back Bootsy」~パブリックエネミーのチャックDが参加した「Illusions」の2曲。本能をそのまま音にしたような絶倫ファンクは、これぞブーツィーの真骨頂といえる。
しかし、本作は単に70年代ファンクを再現したものではない。たとえば、オークランド出身のラッパー=ドゥルー・ダウンが参加した「Pusherman」や「Hi-On-Heels」は西海岸ヒップホップだし、「Heaven Yes」は90年代R&Bを彷彿させるメロウ・チューン。新人女性R&Bシンガーのカリ・ウチースのミステリアスなボーカルがフィーチャーされた先行シングル「Worth My While」も、70年代ファンクを現代風にアレンジしたようなナンバーだ。ミュージック・ソウルチャイルドとビッグ・ダディ・ケインがコラボした「Hot Saucer」や、MCエイトが参加した「Ladies Nite」~「Candy Coated Lover」など、エレクトロ・サウンドを主張した80年代風ディスコもあり、バラエティに富んでいる。しかし、それぞれの時代の音を自己流にアレンジしてしまうのが、ブーツィーの凄いところ。
ここ最近では、ファレル・ウィリアムスの「ハッピー」やマーク・ロンソン&ブルーノ・マーズの「アップタウン・ファンク」が大ヒットしたこともあり、70年代ファンクが再燃している。本作は、JB'sやパーラメント、ブーツィーズ・ラバー・バンド世代のリスナーが納得できる出来栄えであることはもちろん、現代版ファンクにハマった若層にも楽しめる内容になっている。本作について、「流行の音に左右されず、ファンクするやり方を教えている」とコメントしているブーツィー。そのコンセプト通りのアルバムになったと言えるだろう。
Text: 本家 一成
◎リリース情報
『World Wide Funk』
ブーツィー・コリンズ
2017/10/27 RELEASE
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