2016/12/21
ドローン兵器を用いる現代のリアルな戦場の裏側を描いた映画『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』が2016年12月23日より全国公開される。11月中旬、全米メディアが大絶賛した本作のプロデューサーを務めたジェド・ドハティ氏が来日し、Billboard JAPANのインタビューに答えてくれた。
実はドハティ氏、ソニー・ミュージックUKの元会長兼CEOでありながら、オスカー俳優コリン・ファースと共同で映画製作会社レインドッグ・フィルムズを設立した異色の経歴の持ち主である。音楽業界の重鎮とも言える彼とコリンの出会いは、「2002年、当時私が担当していたダイドに、彼が国際協力団体活動の為にエチオピアに一緒に行こうと誘ったのがきっかけ」だったそう。大の音楽好きであるコリンと意気投合し、コリンの奥さんが大ファンだというブルース・スプリングスティーンの楽屋に招待したりして交流を深めていったようだ。
ちなみに、会社名はコリンが一番好きなアルバムであるトム・ウェイツの『レイン・ドッグ』に由来しているのだが、実はトム本人から了承は得ていないようで、「俳優ロバート・カーライルがレインドッグ・シアター・カンパニーという劇団を持っていて、彼には了承を得ているから大丈夫じゃないかな(笑)」と冗談交じりに話してくれた。
さて、本作は名女優ヘレン・ミレン演じる英軍司令官キャサリンと、アラン・リックマン演じる会議室から干渉する国防相のベンソン中将、アーロン・ポール演じる米軍ドローンパイロットのワッツ中尉、そしてそのドローンが狙うケニアのテロリストの隠れ家付近にフォーカスしてストーリーが進んで行く。それぞれの立場から作品を描き、観る者に罪なき少女を犠牲にしてまでテロリストを攻撃するべきか否かを問いている。ドハティ氏は「観客に登場人物の目を通して、この問題を考えてほしかった。一番大切なのは、“もし自分だったら、どうする?”と観客に考えてもらうこと。ギャヴィン・フッド監督は、どのキャラクターも正しいと思えるように見事に表現していて、私も何百回とこの作品を観たが、観るたびに意見が変わってしまったよ」と、作品が伝えたい要素を語った。
全米で評論・興行ともに成功を収めた本作だったが、当初その衝撃のラストをよく思わない出資者が多かったとのこと。しかし、制作陣は内容変更を断固として拒否。コリンは「エンディングを変えるのであれば、クレジットから名前を外す」とまで言った程だ。ドハティ氏は「私たちはストーリーを最重視している。芸術性を大切にすれば、商業的な成功は後から付いてくるものだ。これは映画も音楽も一緒」と自身が考えるヒットの定義を明かした。
ストーリー性を大切にしているレインドッグ・フィルムズは、プロデュース2作目としてアメリカで異人種間結婚禁止法と戦った白人と黒人の夫婦の実話を描いた『ラビング 愛という名前のふたり』を制作。2017年3月に日本公開が控えているこちらも、既に公開されているアメリカでは高評価を得ており、【第74回ゴールデン・グローブ賞】の主演男優賞と主演女優賞の候補に挙がっている。両作品とも観客の心に訴えかける作品となっているので、ぜひ注目してほしい。
最後に、彼がおすすめする音楽作品を訊いてみると、マイケル・キワヌーカの『Love & Hate』を挙げた。音楽を知り尽くしている彼が推薦するのだから、一聴の価値がありそうだ。
Text & Photo: Mariko Ikitake
◎『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』予告編
https://youtu.be/2JoemJhJkiI
◎公開情報
『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』
2016年12月23日(金)よりTOHOシネマズシャンテ他全国公開
監督:ギャヴィン・フッド
プロデューサー:コリン・ファース、ジェド・ドハティ、デヴィッド・ランカスター
出演:ヘレン・ミレン、アーロン・ポール、アラン・リックマンほか
配給:ファントム・フィルム
(C)eOne Films (EITS) Limited
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