2016/08/24
何とモダンでノーブルな佇まいなのだろう――。
たゆたう更紗のようなナチュラルで涼しげなメロディ。まるで5月に来日したKINGのルーツと言っても差し支えないほど、ゆったりとした心地好さが漂うナンバーを、リラックスした雰囲気で聴かせてくれるニューヨーク出身のヴォーカル・グループ=SWV(シスターズ・ウィズ・ヴォイセズ)。1991年にデビューし一世を風靡しながらも、98年からは活動休止状態だった彼女たちが、再び動き始めたのは2005年。その後も無理のないペースで、まさに自分たちなりのスタンスを守ってきたSWVが、この春に発表した紛れもない傑作『スティル』を引っ提げて、久々に『ビルボードライブ東京』のステージに還ってきてくれた。
今回は、すっかり夏の風物詩になった『SUMMER SONIC』の「Billboard Japan Party」にも出演した彼女たち。麗しいコーラス・ワークの基本はそのままに、さらに成熟し、洗練された艶を身に纏った待望のステージ。新作をゲットしたファンにしてみれば、聴きたい曲が目白押しなのに違いない。いわゆる“ヒップホップ以降”のリズム感覚をナチュラルに溶け込ませた20世紀の名曲「ライト・ヒア」や「ウィーク」はもちろん、新作のタイトル曲や「オン・トゥナイト」「ミス・ユー」など、新しいスタンダード候補の曲もライブで聴いてみたいはず。果たして彼女たちは、どんな選曲で僕たちをもてなしてくれるのだろう――。
余白たっぷりのエレガントなサウンドにシンクロするように発せられる、上品で都会的なコーラス・ワーク。決して押しつけがましさのない彼女たちの歌は、渇いてささくれがちな都市生活者のメンタリティにやさしく寄り添い、潤いを与えてくれる。その湧き水のようにサラサラとしていてクールな質感は、酷暑でくたびれた身体を優しく包んでくれる。
ミニマムなバンドが叩き出すモノトーンのビートに吸い寄せられるかのようにステージに3人が上がり声を重ねていくと、あたりがパッと華やかになり鮮やかな色彩感が溢れていく。瑞々しいコーラス・ワークを駆使して「エニシング」が会場に響きわたると、ゆったりとした空気が満ちていく。初っ端から名刺代わりの1曲である「ライト・ヒア」を筆頭に、名曲が矢継ぎ早に繰り出されてくる。中盤には「みなさんを懐かしいナンバーの旅にお連れしたいの…」と説明しながら「ウィーク」や「ラヴ・イズ・ソー・アメイジング」を披露し、観客を心地好いグルーヴに巻き込んでいく。それにしても彼女たちの存在感と言ったら! ベテランとしての説得力と、あくまでもフェミニンな佇まいが絶妙のバランスを保っていて、とても華がある。途中、新作のタイトル曲を挟み、終盤にはヒップホップ・ビートに乗ってロバータ・フラックの「やさしく歌って」を、フージーズを彷彿させるノリでカヴァー。コール&レスポンスをていねいに繰り返しながら、会場を1つにしていく。そのナチュラルな盛り上がりは、まさにSWVの真骨頂と言っても過言ではないスマートさ。
終始、優雅でありながらも瑞々しく躍動するコンテンポラリーなステージを展開しながら、僕らが待ち望んでいたヒット曲をたっぷり聴かせてくれた。これほどまでに後味の爽やかなライブは、本当に久しぶりだった。SWVというグループの貴重な存在感を肌で感じた晩夏の宵になった。
東京では今日(24日)、大阪では25日にライブが予定されているSWV。過ぎ行く夏に思いを馳せ、来るべき秋へ心を整えながら、彼女たちの麗しくもエモーショナルなコーラス・ワークに身体を委ねたい。きっと、あなたにとっても、そしてパートナーにとっても、今年の夏の「いい思い出」になるはずだから。
◎SWV公演情報
ビルボードライブ東京
2016年8月23日(火)~24日(水)
詳細はコチラ>
ビルボードライブ大阪
2016年8月25日(木)
詳細はコチラ>
Photo:Yuma Totsuka
Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。メイヤー・ホーソーンのときにもお伝えした通り、この夏のヨーロッパではキンキンに冷やしたロゼ・ワインが大流行。料理の守備範囲も広いので、食欲が減退しがちな晩夏の今は、まさにピッタリ。ここはストラクチャーのしっかりした南仏・プロヴァンスのロゼがオススメ。狙いどころはブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが所有するワイナリーで造られた『ミラヴェル』あたりか? 専門家の評価も高いこのロゼなら、トレンディな話題としてもうってつけ。今が“旬”のロゼをぜひ!
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