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2015/09/08

サントリー【サマーフェスティバル2015】開催 ツィンマーマン、ハインツ・ホリガー、芥川作曲賞 他

 サントリー芸術財団が主催する【サマーフェスティバル2015】が、8月22日から30日まで、東京・サントリーホールにて開催された。1987年の初回開催以来同時代の音楽を中心に紹介してきたシリーズ・コンサートだ。

 サントリーという、誰もが知る大企業が、何故ここまで現代の音楽家、特に作曲家に対して深い思い入れを持ち、長い年月フェスティバルを開催してきたのだろうかと不思議に思う向きもあるかもしれない。創業者の鳥井信治郎は、赤玉やウイスキーもクラシック音楽と同様に外国から伝えられたもので、その性質において一脈通じると思ったという。日本ならではの洋酒を作り日本人に飲んでもらいたかったサントリーが、日本人の作る西洋音楽を聴いて欲しいという作曲家・芥川也寸志の思いと共鳴した。その縁から長きにわたり、日本の現代作曲家を支える力となっている。

 今回ひとつの見所となっていたのは、音楽学者の長木誠司氏を迎え企画された、「声」をテーマにした2つの作品である。総勢200名という巨大な編成で演奏されるツィンマーマンの「ある若き詩人のためのレクイエム」は、大野和士の指揮による日本初演、シュトックハウゼンの「シュティムング」は1970年大阪万博以来の再演である。「声」という原始的なメディアの多義的な音響、抑揚、意味性、そして言葉や言語そのものに至るまで多くの示唆を聴衆に与える、希有な体験を伴った公演となった。

 サントリーホールが1986年の開館以来続けてきた国際作曲委嘱シリーズとして、今年は世界的なオーボエ奏者であり、指揮者、作曲家として現代音楽界を牽引してきたハインツ・ホリガーを迎え、室内楽楽曲ならびに管弦楽曲が日本初演も含め披露された。新作となる委嘱作品「デンマーリヒトー薄明ー」は、ホリガーが1991年の大晦日に東京で作ったドイツ語による俳句による作品となっている。

 現代の作曲家とその音楽世界への誘いを提案するシリーズとして、2010年より毎秋、大阪で開催されてきた「TRANSMUSIC音楽のエッセンツィア“現代音楽の楽しみ方”」。5年間で新作委嘱してきた西村朗、中川俊郎、伊左治直、野平一郎、三輪眞弘の作品を、一挙に東京初演するという特別公演が行われた。普通は素人では手出しが出来ないような作品に「一般のファンでも家に持ち帰って演奏できる、やさしい内包曲を作る」という縛りのあるユニークな委嘱となっており、東京公演でもこの内包曲を別に演奏することで曲の真髄に迫る体験と共に現代曲を楽しめる演奏会となった。

 最終日の30日には芥川作曲賞選考演奏会が行われ、第23回の受賞者・酒井健司による新作委嘱作品、ヴァイオリン協奏曲「G線上で」が世界初演された。続いて第25回の受賞候補者の作品が演奏され、第25回芥川作曲賞は坂東祐大氏の「ダミエ&ミスマッチJ.H:S」に決定した。同氏には新たにサントリー芸術財団よりオーケストラ新作が委嘱され、完成後に初演される。サントリーによる熱い現代音楽の祭典は、多彩な顔ぶれと共に今年も幕を閉じた。来年の夏のプログラミング、そして委嘱される新作にも、益々、注目していきたい。text:yokano

more info: http://suntory.jp/summer/
写真:大野和士(C)Haruki、B.A.ツィンマーマン(C)Schott Promotion

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