2014/11/19
ジェイミー・カラムが11月18日(火)19日(水)に来日公演を開催。六本木・ビルボードライブ東京にてプレミアムなステージを披露した。
スタンダード・ナンバーの数々を中心にレコーディングしたアルバム『Interlude』をリリースし、早々に実現したビルボードライブでの来日公演。ビルボードライブ東京のみの2夜、計4ステージというプレミアムなショウであり、チケットはもちろんソールド・アウト。その初日1st Stageの模様をレポートしたい。『Interlude』のボーナス・トラックに収められていた「Come and Get Me」が鳴り響く場内に、10名を越える現地調達ホーン・セクションや女性ピアノ奏者らがバー・カウンター前の通路を進んでステージに到達すると、ジャケットにタイ、足元はスニーカーというお馴染みの出で立ちで、ジェイミーも階上から現れ大喝采を浴びていた。
本格スタンダード・ジャズに寄せる愛と思い入れが全編に溢れていたアルバム同様、まずはスタンド・マイクを握りしめてタイトル曲「Interlude」の節回しに専念するジェイミー。そして拳を振り翳し、ビッグ・バンドの強烈なスウィング感を導いてみせる。「アリガトウゴザイマス、オゲンキデスカ!」と挨拶すると、今度はキャノンボール・アダレイ作「Sack O’ Woe」でオーディエンスのクラップを巻きながら賑々しく盛り上がってみせる。スタンダードだからといって、ただお行儀良くかしこまったりはしない。上質にしてゴージャスなサウンドが、エキサイティングに展開する。これがジェイミー・カラムのビッグ・バンド・ライヴだ。
「どれだけ日本が好きか、分かるでしょ?新しいジャズ・アルバムを作って、帰って来たよ」とあらためて挨拶すると、古典のみならずスフィアン・スティーヴンスの「The Seers Tower」や、自らファンキーなピアノを奏でて跳ね上がるファレルの「Frontin’」もプレイし、現代のポップと歴史あるスタンダードを一繋ぎにしてゆく。ジャケットを脱ぎ捨てて狂おしいメロディを歌う「Don’t Let Me Be Misunderstood」は、音源ではグレゴリー・ポーターとのデュエットだったけれども、今回はジェイミー渾身のソロ歌唱が、楽曲の素晴らしさを引き立てていた。
前夜に新宿で焼き鳥を堪能した、という話題も振り撒くと、華々しくジャイヴする「Don’t You Know」では、ハンド・マイクで客席エリアに突入。プレゼントを手渡す女性オーディエンスの頬にキスしたり、或いはハグを交わしたりとエンターテイナーぶりが全開になった。スタンダードという合言葉を鍵に現地で出会ったミュージシャンと熱く対話する一幕もあれば、彼自身の3ピースでぽっかりと歌声を浮かび上がらせる「Losing You」もある。そしてステージの終盤は、「You and Me Are Gone」や「When I Get Famous」といったお馴染みのレパートリーで、高揚感の赴くままにスティックを振るってはドラムスを叩き、ピアノの上に乗り上がって大ジャンプ。雄弁な音楽を通じて辿り着く問答無用の熱狂は、今回も健在だ。
「Mixtape」ではもはや場内が総立ちになり、「もっともっと、歌い続けて!」と煽り立てるジェイミーの声に、盛大なシンガロングとクラップが巻き起こる。もう1曲やろうか? といった仕草を見せて、バンド・メンバーが立ち去った後にソロのピアノ弾き語りで披露されたのは「What A Difference A Day」である。そのままピアノのブルースを奏で、ジミ・ヘンドリックス「The Wind Cries Mary」に繋ぐと、オフ・マイクでその曲を歌い続けながら、ジェイミーは登場時と逆に、階上へと立ち去っていった。まったく心憎い、しかし確かに満ち足りた、音楽の時間であった。
Text:小池宏和
Photo:Masanori Naruse
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