2022/09/02 11:00
【セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)】の一環として、沖澤のどか指揮、ロラン・ペリー&ローリー・フェルドマン演出による『フィガロの結婚』が、8月21日から27日まで3公演おこなわれた。本記事では、8月24日公演の模様をレポートする。
ブザンソン国際指揮者コンクールの優勝者である沖澤の指揮による『フィガロの結婚』となれば、注目の的であることは言わずもがな。今、世界の劇場を席巻しつつある実力者揃いの歌手陣と、サイトウ・キネン・オーケストラにはトップレベルの奏者達が3年振りに集い、『セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)』30周年を飾るに相応しい公演となった。
クラシックファンなら一度は聴いたことがあるであろう歌の旋律が、全幕に色とりどり散りばめられている『フィガロの結婚』。コミカルでポップな印象がある一方、演奏家はソロ、アンサンブルの歌い手として高次の発声技巧を求められ、また芝居としての“語り”の説得力も求められる。
スザンナ役のイン・ファンは、速く細かいパッセージをよどみなく、まるで星のように輝かせ軽々と転がしてのけ、伯爵夫人のアイリン・ペレーズはあふれ出るほどの声量を理性的にコントロールしながら、豊かさと厳粛さを大ホールの隅々まで届ける。フィガロ役のフィリップ・スライは“語り”と“歌”を軽快なテンポで見事に融合させ、“芝居”として表現しきっていた。
そして更に、もうひとつの“歌手陣”として、沖澤が振るサイトウ・キネン・オーケストラが在った。楽曲構造が明快に聞こえてくる、室内楽的なオーケストラによる“対話”は、楽器同士のそれに留まるものではない。“声”と同じように発声され、絡み合い、何度も聴いているはずのアリアから、聴いたことがないオブリガートが立ち現れてくる喜びは、沖澤の歌心にオケが呼応して創出されたものであろう。
3公演あったが、それぞれ歌手陣のコンディションにより毎回少し舞台のバランスが変化していたようだ。同じ演目でも不思議と違う“ドラマ”が立ち現れる。更に、最終日は体調不良のバルバリーナ役に代わり、経塚果林が急遽出演した。「全公演に来ても、もしかしたら全く別の楽しみに立ち会えたのではないか」──そう、観客を悔しがらせるような魅力が、今回の『フィガロの結婚』にはあったように思う。
オペラ公演は8月27日に終わり、またオーケストラ コンサートも終え、一般向け公演は終わりを迎えるOMFだが、スケジュールはまだ続く。『小澤征爾音楽塾オーケストラ』などによる若い音楽家の教育プログラムも大きな軸となっている本フェスティバル、9月は『子どものための音楽会』公演を開催し、“地元”である長野県内の小学生約8,500人を招待する。
本年はOMF30周年を記念し、SKOブラス・アンサンブル公演が東京、水戸でも行われる。また秋には特別公演が長野県松本市と長野市で開催予定となっている。これらは一般向け公演として現在チケット発売中となっている。Text:yokano Photo:山田毅_2022OMF/大窪道治_2022OMF
◎公演情報
セイジ・オザワ 松本フェスティバル(OMF)
モーツァルト『フィガロの結婚』
2022年8月21日(日)
2022年8月24日(水)
2022年8月27日(土)
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