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2021/12/09

SHE’S、地元大阪で結成10周年ツアーファイナル「これからも忘れられない一日をたくさん渡せるように」

 SHE’Sが2021年12月5日、大阪・Zepp Osaka Baysideで【SHE’S 10th Anniversary Tour「So Close, So Far」】ファイナル公演を開催した。

 昨年開催された全国ツアー【SHE’S Tour 2020~Re:reboot~】では、緊急事態宣言発令によりファイナル公演のみ無観客開催に。今年は奇しくも同じ日程・同じ地元大阪で、有観客&生配信でツアーを締めくくることとなった。ソールドアウトとなった会場が青い光と大きな拍手に包まれる中、巨大なバックドロップが舞台上に掲げられると同時にメンバーが登場。井上竜馬(Vo. / Key)の「大阪SHE’Sです、よろしく!」の第一声を合図に、冒頭の「追い風」から楽曲の起伏とシンクロした照明ともども、結成から10年の時を重ねてもみずみずしさを失わないバンドサウンドを響かせる。オリエンタルなビートに心躍る「Masquerade」を経由し、「本日のスペシャルゲストはサックス、永田こーせー!」と井上が呼び込み、ここからは華やかなホーンの音色で躍動感に色付けた「Over You」に加え、服部栞汰(Gt.)の艶やかなギターとの絡みでも魅せた「Do You Want?」と立て続けに披露していく。

 「大阪のみんな、ただいま! 地元大阪で、初めてのZepp Osaka Baysideでファイナルを迎えることができて、とてもうれしいです。ここにいる皆さんと、配信を見ている皆さんと一つになって、最高の思い出を作って帰りましょう!」と、服部が約2か月にわたる旅路を経てたどり着いた終着点の景色に万感の想いを告げ、広瀬臣吾(Ba.)のずっしりとしたベースラインが導くアーバンでアダルトな「Ugly」、エレクトロなフレイバー漂う「Delete/Enter」で大胆不敵に攻め立てかと思えば、「Night Owl」のはかないピアノが切なさを増幅させ、見る者を一気に心の深淵へと連れていく荘厳なサウンドスケープで圧倒。「If」や「So Bad」では自ずとクラップが沸き立つ温かなムードがフロアを埋め尽くすなど、緩急自在の楽曲群でZepp Osaka BaysideをSHE’Sの世界観に染め上げていく。

 「最近はすっかり寒くなって、今日も入りのときから何人かお客さんが並んでくれてたけど大丈夫かな、寒くないかなって思いながら。大阪ってどこがライトアップしてるのかな?」と井上がZepp Osaka Baysideの近隣にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパンについて触れ、ライトアップが好きという木村雅人(Dr.)を「全国のライトアップ、ほぼ行ってるんちゃう? 光、好き過ぎひん(笑)?」とからかうほほ笑ましい光景は、学生時代から人生を共にしてきた4人ならでは。その後も、TVドラマ『ラブコメの掟~こじらせ女子と年下男子~』のエンディング・テーマとして書き下ろした「Spell On Me」に息をのむほど引きつけられ、そのままとろけるように豊潤なサックスがいざなった「月は美しく」、続いては「Letter」と、SHE’Sのメロウサイドを存分に発揮するゾーンに、オーディエンスも心地良さそうに肩を揺らす。

 「今年は2月に我々の地元の大阪・吹田市文化会館 メイシアターで初めてワンマンをやって、大阪と東京の野外音楽堂でライブをしたり、こうやって9か所ツアーで回ったり、そのたびに当たり前じゃなかった10年間を実感しました。10年間やってこれたのは、たった1日でも俺たちのことを好きでいてくれた人たちの力で。たった1回でも、初めてでも、何年前からでも変わりなく、この1回のライブが俺たちをつないできたとすごく実感してます。どれだけ人がいようと、どれだけ小さいライブハウスであろうと、あなたからもらった愛情につながれて一歩一歩、歩いてきたと思います。だから10周年は、ありがとうをいっぱい伝える1年にしようと決めてやってきました。これから先も、もらってきた愛情をどんどんつないで、俺たちもあなたも笑って生きられるように。」

 バンドを代表して井上がそんな感謝と願いを捧げた「Chained」が、心の隅々にまで沁み渡る。場内が胸いっぱいの雰囲気の中、「去年は直前で大阪のライブが配信だけになってしまって……こうして一緒にライブができて本当に楽しいです! ここからライブも後半戦で、皆さんと一つになって盛り上がっていきたいんですけど、楽しむ準備はできてますか?」と木村。ここで口数の少ない広瀬に井上があおりを促すものの、「いけます?」という広瀬のそっけない反応に、「いやそれ、居酒屋に入るときのやつやん(笑)」と笑う井上と、MCでは終始和やかな空気が流れる。かと思いきや突如、井上が「たこ焼き食べたいな♪ 1・2・3でいきますよ大阪!」と、大阪×たこ焼きというスベる危険極まりないワードに手を出しながらも見事に「Take it Easy」へとなだれ込み(笑)、「Blowing in the Wind」ではハンドマイクで軽やかにステップ。ひときわエモーショナルに歌い上げた「Imperfect」の熱量を受け、「Dance With Me」では満場のZepp Osaka Baysideに手のひらが舞う絶景を生み出す。そして井上が、「今日の大阪、忘れられへん日になるぞ。これからも、あなたにとって忘れられない一日をたくさん渡せるように」と「The Everglow」へ。胸を突き上げるような高揚感と疾走感に満たされつつ、いよいよライブはクライマックスを迎える。

 「中学高校の頃から、思い返せばずっと音楽に救われてきたと思うんですよね。何か孤独を感じてしまう、独りな気がする、不安が押し寄せる、そういう夜が俺にはいっぱいありました。そのときにホッとしたり、元気付けられたり、一緒に悲しんでくれたり……自分にとって音楽は、お守りのように持ってるだけで安心するものやったんやなって。SHE’Sの音楽が、たった1分でも1時間でも、願わくば1年、10年、息絶えるその日まで……とは言わないですけど、できるだけ長く、これだけ人間がいる中で俺たちを見つけて、顔を合わせて、音楽を共有するあなたの、そんな存在になればいいなと思って。その全ての決意をアルバムの最後に歌にして入れたので、今日はそれを歌って終わろうと思います」

 井上の熱いメッセージと共に、10月6日にリリースした最新アルバムの表題曲「Amulet」を切々と届けたドラマチックなエンディングで、4人はステージを後に。程なくして始まったアンコールでは、服部が「ファイナルが地元大阪で良かったです。もっと大きくなって帰ってきますので、これからもSHE’Sをよろしくお願いします!」、広瀬が「僕ら全員大阪の吹田出身で。そんな4人が来年、日本武道館でやります。よいお年を!」、木村が「また来年もいっぱい大阪に帰りたいと思いますので、そのときはぜひライブに遊びに来てください!」と来年への意気込みを述べ、故郷での再会を約束。溢れ出す感情のまま「歓びの陽」で大いに盛り上げ、最後に井上がこう語る。

 「中学高校からの付き合いの友達とバンドをやれて、幸せやなってすごい思います。15周年、20周年を目指して、一緒に楽しくなったり、落ち込んだり、悲しくなったり、そういう音楽を作れるように頑張りますので。俺が本気でバンドを辞めようと思ったとき、たくさんのお客さんの声で、手紙で、続けようと思った。『俺たちはまだまだ何も残せてないな』と思って、踏ん張って書いた曲を最後に歌おうと思います。ありがとうございました!」

 現場で、配信で、4人とかけがえのない時間を過ごした人々に湧き上がる感動を残したラストの「Curtain Call」を含め、全21曲2時間。宣言通り、忘れられない一日を作り上げたSHE’Sだった。

 なお、本公演のアーカイブ映像は、Streaming+で12月11日23:59まで配信。2022年2月24日には、初の東京・日本武道館公演【SHE'S in BUDOKAN】が開催される。

Text by 奥“ボウイ”昌史
Photos by Hayashi Maco

◎ライブ概要
【SHE’S 10th Anniversary Tour「So Close, So Far」】
2021年12月5日(日)大阪・Zepp Osaka Bayside

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