2021/11/13 12:00
巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督がザ・ローリング・ストーンズのレコーディング風景を撮影した伝説の音楽ドキュメンタリー『ワン・プラス・ワン』が、2021年12月3日より全国順次リバイバル上映する。
本作にも登場するストーンズの名ドラマー、チャーリー・ワッツは現地時間2021年8月24日に80歳で亡くなった。世界的ドラマーの死を偲び、多くのアーティストが追悼し、その功績は今後も語り継がれることだろう。彼を追悼して、1978年11月1日に日本劇場初公開された『ワン・プラス・ワン』が緊急上映されることが決定。その上映を前に、彼とバンドの名曲「悪魔を憐れむ歌」が誕生した背景を紹介しよう。
ローリング・ストーンズが1968年に発表したアルバム『ベガーズ・バンケット』は、ストーンズが考案したトイレの落書きのジャケットがレコード会社から不採用となり、デザインを巡ってリリースが遅れたのは有名なエピソードだ。本作では、紆余曲折を経て発表された同アルバムの1曲目「Sympathy for the Devil」こと「悪魔を憐れむ歌」のレコーディング風景を映し出している。キース・リチャードは当時ゴダールとの仕事について「俺たちの曲作りと共通するものを感じる」と語っており、ミック・ジャガーは「制作過程をよく記録している」と評価していたという。ゴダールが手がけるドキュメンタリーめいたフィクション映像が交差しながらも、ロック史上に残る名曲と言われる「悪魔を憐れむ歌」誕生の瞬間が、克明に描かれている。
本作は、ミックとブライアン・ジョーンズが向かい合い音を合わせているところから始まる。ボブ・ディラン調のフォークソングから始まり、着々と音ができてくるなか、ドラムが刻むリズムはなかなか定まらない。ミックから「まともに叩いてくれよ!」と言われながらも、試行錯誤を繰り返し、ドラムのリズムが徐々に変化していく。最終的にたどり着いたのは、ジャズとサンバが合わさった独特のリズムだ。ここに呪術的な歌詞や叫びなどが重なり、いつ聞いても褪せることのない名曲が誕生した。
チャーリーのドラムスのルーツはジャズにあり、ドラマーを目指すきっかけとなったのは、サックス奏者ジェリー・マリガンがチコ・ハミルトンをドラムに迎えて演奏した1952 年の「Walking Shoes」だったという。14歳でドラムセットを親に買ってもらい、16歳からは街中で演奏をしていた。80年代後半にはストーンズで演奏する傍ら、スケジュールが許せばジャズのソロ・アルバムを出すなど、精力的に活動を続けていた。
メンバー内では控えめな存在で、ライブのメンバー紹介の時に、隠れてしまいドラムセットだけがそこにある、というほどシャイだったというチャーリー。しかし、本作で奏でる唯一無二のドラムのグルーヴ感は圧倒的な存在感を放ち、メンバー内の核となる存在だったことは一目瞭然だ。
ロック史に残る名曲 「悪魔を憐れむ歌」のレコーディングの舞台裏と、偉大なドラマー、チャーリー・ワッツのリズムをスクリーンで体感できる貴重なチャンスを、ぜひお見逃しなく。
◎公開情報
『ワン・プラス・ワン』(PG-12)
監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール
出演:ザ・ローリング・ストーンズ(ミック・ジャガー、キース・リチャード、ブライアン・ジョーンズ、チャーリー・ワッツ、ビル・ワイマン)、アンヌ・ヴィアゼムスキー
配給:ロングライド
(c) CUPID Productions Ltd.1970
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