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ロード 初来日インタビュー&ライブ・レポート
ポップ・カルチャーの現状を鋭い視点で描写したデビュー・シングル「Royals」が、同世代から圧倒的な支持を受け、米ビルボード・シングル・チャートにて9週連続1位という異例の記録を打ち立てたニュージーランド出身17歳のシンガーソングライターのエラ・イェリッチ=オコナーことロード。13歳でレコード契約を結び、デビュー作『The Love Club EP』が、本国ニュージーランドで1位を記録。2013年9月に海外リリースされたデビュー・アルバム『ピュア・ヒロイン』は、現在までに全世界で250万枚近くを売り上げ、今年1月に開催された【第56回グラミー賞】では、史上最少となる17歳でグラミー年間最優秀楽曲賞を手にした。
そして今年2月に待望の日本デビューを果たした彼女が、【FUJI ROCK FESTIVAL '14】へ出演する為に初来日。新人とは思えぬ完成度の高いパフォーマンスで、レッド・マーキーに集まった満員の観客を魅了した今最も注目を浴びる音楽界の新星へフジロックでのライブ翌日にインタビューを決行。東京・品川ステラボールに行われた初単独公演のライブ・レポートとともにお届け!
あのような場所で歌えて、とても幸運だと思ってるわ
――初めての日本はいかがですか?昨日の【FUJI ROCK FESTIVAL '14】でのMCでは、“ビッグ・モーメント”と語っていましたね。
ロード:本当に最高よ!フジロックでのライブは、心から楽しめたわ。その大きな要因となったのは素晴らしい環境ね。会場が、とても美しい場所だったから、私自身も穏やかでハッピーな気持ちになれた。あのような場所で歌えて、とても幸運だと思ってるわ。
――ライブ終盤で「Royals」の最後の詞を観客が歌い返した後に、少し時間をとって観客のことを見つめていましたが、ああいった瞬間にはどのようなことを感じているのですか?
ロード:そう!あれは本当にアメイジングだったわ。私が15歳の頃に書いた曲を、テントいっぱいの日本の観客が歌うことが出来るなんて信じられなくて…。だから、ああいう瞬間ではそう言ったことを自分なりに飲み込もうとしているの。1つの曲がここまで来たんだ、こんなにも遠くまで来ることが可能なんだ、って。すごくクールよね。
――そして歌っている時はもちろん、観客に話しかけている時にも、一つ、一つの言葉、その表現方法にもパワーと重みがあるのが印象的でした。ロードにとって“正直”であるということは、大切なこと?
ロード:ありがとう!もちろん。“正直”であることは私にとってすべて。ミュージシャンとしての自分に多くの人々が共感するのは、常に正直な視座を持つことを心がけているからだと思ってる。たとえ、それが聞きたくないようなことでも、その部分に親しみを感じ、評価してくれている。私自身がソングライターを評価するのは、その部分でもあるから。
――とは言え、自分の感情を曝け出すことで傷ついたり、不安になることもあると思います。
ロード:もちろんよ。とても変な感じよね。でも正直に真実を語った曲の方が、自分自身にとってより意味がある。たとえば、フィクションだったり、何かから盗んだようなものを書くことを正しいと感じることは出来ないの。自分にとってリアルなことを書くことによって、自分の中で何かが噛み合うのよね。
――ここ1年間で、これまでの頑張りが報われたと感じた瞬間はありましたか?
ロード:うん。まさに今回の来日がそれよ。たとえば、【コーチェラ・フェスティヴァル】のような素晴らしいフェスに出演できるのもそうだけど、ここ日本や、ポルトガルのリスボンで出演した【ロック・イン・リオ】も素晴らしかった…英語が母国語でない国で、大勢の人々がパフォーマンスを観に来てくれることが、報われたと感じる瞬間ね。
――これまで世界中の音楽フェスティヴァルで演奏して、一番クレイジー、または印象に残っている国は?
ロード:そうね~。ブエノスアイレスはアメイジングだったわ。(スタッフに向って)あれは2万人だっけ?4万人だっけ?4万人もの観客の前で演奏したのよ。観客もとてもラウドで興奮していて。みんなダンスして、すっごく盛り上がってたわ。
――1つの国の中ですら、観客の動向は様々ですからね。
ロード:そう!見ていて、驚かさせられるわ。変な言い方だけど、観客にとってはライブを見慣れてるって感じる時もある。でも日本の観客は良かったわ。礼儀正しいんだけど、ちゃんと盛り上がっていたから。きちんと両立してて素晴らしかったわ。
――デビュー・アルバム『ピュア・ヒロイン』のリリースから約1年となりますが、ライブで演奏することで、曲共々成長していると感じますか?
ロード:確実に成長してると思う。ライブで私が心掛けているのは、アルバムとは一味違った曲のプレゼンテーションなの。そうすることによって、私自身にとって、そして観客にとっても新鮮であり続けるから。今そう訊いてくれたことでふと思ったんだけど、あの頃から私の人生は大きく変わった。アルバムのいくつかの曲は、夏に書いた曲なんだけど、あれ以降ニュージーランドの夏をちゃんと味わえていないの。だから、当時を再び生きている感覚に陥って、その時の思い出や心象が思い起こされるわ。
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Photo: Billboard JAPAN
変わっていても、1位になることは可能なんだから(笑)!
――これまで歌ってきた世界が手に届く距離にある現状は、今後どのように曲作りに影響すると思いますか?
ロード:わからない。でも興味深いわ。私が曲を書き始めた頃はアウトサイダーで、遠くからポップ・カルチャーを批評していたけれど、今はその一部でもあるから。
――でも完全になじんでいるわけではなく、その中でも少し浮いた存在というか…。
ロード:うん、そう思うわ。そういったものからは、意識的に少し距離を置くようにしているから。とにかく今は周りに感化されず、曲作りを行い、みんなの為に演奏することに焦点を置いているの。
――ロードの存在は、ポップ・カルチャーに多大な影響を与えましたが…、
ロード:そういってくれると嬉しいわ(笑)!
――現代のポップ・ミュージックにおいて、考えさせられたり、従来の在り方に挑戦するような音楽に居場所はあると思いますか?
ロード:もちろんよ!私がこれまでやってきたことで、それを証明できればいいと思ってる。変わっていても、1位になることは可能なんだから(笑)!今は、そういったアーティストもより増えてきている。スウェーデン人のアーティストで、Tove Loという子がいるんだけど、彼女は大好き!曲も素晴らしいし、これからますます成功すると思うわ。
――ポップ・ミュージックにおいて、共感するアーティストは他にいますか?
ロード:サム・スミスは素晴らしいよね。ヴォーカルは天下一で、詞を聞くと、実体験に基づいた真摯なもので、最高にクールだと思うわ。
2014.07.27 Lorde @ Fuji Rock Festival '14
――以前インタビューで、自分の思い通りになるのであれば、取材は一切受けないし、アーティスト写真も1枚しか出回ってないと語っていましたが、メディア露出に対する気持ちは変わりましたか?
ロード:ある意味、少し変わったと言えるわね。今となっては慣れたし、大分応対も上手くなったと思うから(笑)。でもすごく変な気分よ。急に色々な人に興味を持たれて、自分のことについて質問されたり、記事を書かれたりするのは…。当時は、それに慣れてなかったのもあるけれど。
――メディア用のトレーニングは受けたりしたのですか?
ロード:ノー!
――単純に自分らしくしている?
ロード:そう、ありのままの私よ(笑)!
――今でも同年代のティーンたちが、メディアから理解されていないと感じますか?
ロード:そうね。メディアは、色々な手法を使って物事をごまかしたり、単純化する術を持ってるから。最近、特にティーンエイジャーについて、世間が理解し始めているのは、彼らが熱意と才能に溢れているということ。ティーンエイジャーで成功するには、多くの野心と運が必要。だから遊んでぼんやりしてるなんて、思われがちだけど、そんなことは全然なくて、何かきっかけになるプラットフォームをきちんと探しているの。
――音楽を作り始めてから、普段の生活での音楽との接し方に変化はありましたか?
ロード:もちろん。今は、すべての要素を総体的に取り入れるようにしている。昔は、アルバムを聴く時に、曲をスキップしたりしていたけれど、今はちゃんと作品を通して聴き、ミュージック・ビデオを視聴して、アートワークやパッケージを見て、そこから物語りを導き出そうとするようになった。自分がやってみるまで、アルバムやアートワークなどを制作するプロセスが、どんなに大変で時間がかかるものかわかっていなかったから、みんなにも私の作品で同じことをしてもらえたら嬉しいな。
――では最後に、音楽史において、今はどんな時期だと思いますか?
ロード:すごーく難しい質問ね!特にポップ・ミュージックにおいては、現状色々な道や方法が見いだされている。だから今起こっていることが、5~10年後に出てくるミュージシャンたちが、より冒険的で大胆になるための道を切り拓きつつあると思うわね。
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Photo: Billboard JAPAN
ロード初単独公演@品川ステラボール ライブ・レポート
2014.07.28 Lorde @ Shinagawa Stellar Ball
7月25~27日にかけて開催された【FUJI ROCK FESTIVAL '14】で初来日を果たしたロードが、7月29日に東京・品川ステラボールにて、初単独公演を行った。
待望の初来日ということもあり、ライブはソールド・アウト、会場には17歳の若き歌姫の姿を一目見ようと幅広い年齢層の観客約2000人が集まった。19時を少し過ぎ、会場が暗転すると、ダフト・パンクの「Doin' It Right (feat. Panda Bear)」とともに、キーボード/シンセ/プログラミング担当とドラマーの2名のバンド・メンバーがステージへ。
曲がフェードアウトすると大歓声の中、黒い衣装を身に纏ったロードが登場し、そのまま「Glory And Gore」へ突入。17歳とは思えないほど妖艶な歌声と全身全霊のパフォーマンスで、一気に会場を彼女の世界へと惹き込んでいき、1stアルバム『ピュア・ヒロイン』から「Tennis Court」、「Buzzcut Season」を立て続けに披露。デビューEPとなった『The Love Club EP』からは、自身の内向的な性格と音楽業界との間の葛藤を描いた「Bravado」を力強く歌い上げ、インダストリアル・ミュージックばりの強靭なドラム・ビートが印象的な「Easy」へと続く。
▲ Lorde @ Shinagawa Stellar Ball
初めての日本については、「日本へ来たのは初めて。ここへ来ることは本当に長らく楽しみにしていたの。様々な国のライブで、よく観客に彼らの国はアメイジングだ、と言うけれど、日本にはそれとはまた違ったアメイジングさがある。いつもならホテルから出ないけれど、渋谷、原宿、表参道へ足を運んで、この都市のどんな小さな部分も吸収して、捉えたいと感じさせてくれるから。東京のような場所に来れるなんて本当にアメイジング。そしてこの火曜の夜を2000人の皆さんと過ごすことができるのは素晴らしい気分で、自分がとてもラッキーだと感じるわ。本当にありがとう。」と語り、その一言、一言に拍手が沸き起こった。
そして史上最年少でグラミー賞年間最優秀楽曲賞を受賞し、彼女の名を世界へ知らしめた大ヒット曲「Royals」のイントロが流れると、会場の盛り上がりは最高潮に。続く「Team」で、ゴールドの衣装へ着替え、ロードのイラストが描かれた白と黒の紙吹雪が頭上を舞うと、一体となった会場はこの上ない幸福感に満たされる。そしてフィナーレを飾る「A World Alone」では、ラストの「Let them talk!」という詞でビシッとセットを締め、深々とお辞儀をし、大喝采を浴びながらステージを去っていった。
70分という短い時間ではあったものの新人とは思えぬ完成度の高いライブを披露し、その圧倒的な歌唱力と気迫溢れるパフォーマンスからは揺るぎないアーティスト魂が伺えた。早くも新作の制作に着手しているとのことだが、これからどのように進化していくか、心から楽しみなアーティストだ。
【SET LIST】
2014.07.28 @ Shinagawa Stellar Ball
01. Glory and Gore / 02. Biting Down / 03. Tennis Court / 04. White Teeth Teens / 05. Buzzcut Season / 06. Swingin Party / 07. Still Sane / 08. 400 Lux / 09. Bravado / 10. Easy / 11. Ribs / 12. Royals / 13. Team / 14. A World Alone
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Photo: ユニバーサルミュージック
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