Special
Light Mellow ~和モノの世界~
“今”の感覚で楽しめる70年代以降のシティ・ポップス、ニューミュージック、フォーク、フュージョン、歌謡曲、J-POPなど“Light Mellow”な感覚を持つ珠玉のナンバーを多数収録した金澤寿和氏選曲のコンピレーション・アルバムをご紹介。
今年に入ってから、何度目かの和モノ・ブームが到来している。きっかけは、昨年末に出版されたディスクガイド本『Light Mellow 和モノ Special -more 160 items-』だ。これは10年前に発売されたものの改訂版なのだが、長らく絶版が続いていたこともあり、待望のリイシューとなった。
この本で紹介されているのは、70年代以降のシティ・ポップス、ニューミュージック、フォーク、フュージョン、歌謡曲、J-POPなど。ただたんに名盤を紹介しているのではなく、“今”の感覚で楽しめるメロウ・グルーヴやジャパニーズAORや和製ボッサ、そして昨今流行りのブギーといったサウンドに特化し、楽曲単位でレコメンドしているのが特徴だ。
そして、本書の監修者である音楽ライターの金澤寿和氏が選曲したコンピレーション・アルバムも、各社から続々と発売されて話題になっている。書籍同様に、70年代から最新サウンドまでの有名無名問わない選曲は、幅広くはありながらも一貫した“Light Mellow”感覚を持っている。ここでは、このコンピレーション・アルバムを聴きながら、“Light Mellow 和モノ”の世界を堪能してもらいたい。
『Light Mellow Rainbow』 (日本コロムビア)
第一弾はコロムビア編。まずは2000年に発表された堂島孝平の「センチメンタル・シティ・ロマンス」から華々しくスタート。ベテランから若手まで数多くの共演歴を持つシンガー・ソングライターのグルーヴ・チューンは、この企画の象徴といえるかもしれない。ここから曲名に引用されたセンチメンタル・シティ・ロマンスに続く構成が憎い。ブレッド&バター、佐藤博、斎藤誠といった職人系ミュージシャンから、いしだあゆみ、しばたはつみといった歌謡曲畑のメロウ・ナンバーが交わり合うのも興味深い。また、90年代からfrasco、ゼロ年代からキリンジと、新しめのスパイスが効いているのも効果的だ。佐藤奈々子「キッシング・フィッシュ」から黒住憲五「Losing You」へのアンニュイかつ涼しげな流れは、これからの季節にぴったり。
『Light Mellow Dream』 (ポニー・キャニオン)
ポニー・キャニオン編は、時代の振り幅の大きさがポイントだ。古いものだと1974年発表の沢チエ「恋人たちの夜(Lover's Evening)」。新しいところでは2010年発表の南波志帆「Bless You, Girls!」。これらが違和感なく並ぶのが、Light Mellowの醍醐味だろう。Char、尾崎亜美、古内東子、ORIGINAL LOVE、JILL-Decoy associationといったいわゆるメジャーなアーティストによる隠れ名曲がセレクトされているのも絶妙。PARACHUTE、松原正樹、ザ・ラストショウといった名手たちも活躍する一方で、冒頭に置かれたラテン・フュージョン風のサウンドをバックにした高橋拓也「COAST-LINE」や、アーバン・メロウ・グルーヴの小島恵理「Lonely Feelin'」といったレアなナンバーが聴けるのもポイントだ。
『Light Mellow Paradise』 (ユニバーサル・ミュージック)
ユニバーサル編は2枚同時にリリース。一枚はデイタイムのイメージで、80年代らしいグルーヴ感の岩崎元是 & WINDY「胸いっぱいのマーガレット」がオープニングを飾る。尾崎亜美「マイ・ピュア・レディ」やORIGINAL LOVE「接吻」といった誰もがどこかで聴いたことのあるキラー・チューンがアクセントになっている。また、山下達郎関連曲ということで、ザ・キングトーンズ&マリエ「LET'S DANCE BABY」、マザー・グース「貿易風にさらされて(シングル・ヴァージョン)」というレアなナンバーの収録も嬉しい。湿っぽいフォークのイメージが強いシグナルや佐藤公彦(ケメ)によるメロウな一面を発見できるのも貴重だが、アリスの矢沢透による「ボッサ・デ・スー」の洗練された世界は本作のクライマックスだ。
『Light Mellow Voyage』 (ユニバーサル・ミュージック)
ユニバーサル編のもう一枚は、ナイト・クルージングのイメージで。とにかく冒頭の上田正樹「小さな宇宙」のメロウネスこそ、Light Mellowの真髄といってもいいだろう。ラストを飾るAORバラードの中村きんたろう「シーサイド・ハイウェイ」で締めるまで、大人っぽい選曲でじっくり聴かせてくれる。稲垣潤一のミディアムAORの傑作「ロング・バージョン」、ソウルフルな歌声で身体を揺らしてくれる大橋純子「テレフォン・ナンバー」、スタイル・カウンシルを思わせる伊藤銀次のグルーヴ・チューン「DESTINATION」と、今なお現役のベテランたちの名曲は格別。野口五郎「スマイル」や寺尾聰「CINEMA HOTEL」といったいわゆる歌謡曲からのアーバン・メロウなアプローチも、新鮮な驚きがある。
『Light Mellow Breeze』 (ワーナー・ミュージック)
ワーナー・ミュージック編は、もしかしたら最もフレッシュな印象があるかもしれない。それは、今シリーズ中ではいちばん新人であろう指田郁也のマイケル・マクドナルドを思わせるAORチューン「パラレル=」で始まるからだ。他にも、キリンジ、Nona Reeves、森大輔といった比較的若手のナンバーが目立つ。とはいえ、名門ムーン・レーベルを擁するだけあって、芳野藤丸のギターが唸るパワー・グルーヴ「夏の女」、村田和人のソフトなトロピカル・ポップ「電話しても」、松下誠がクールかつファンキーに繰り広げる「FIRST LIGHT」といった達人がメイン。加えて、先日亡くなった松岡直也が吉田美奈子とコラボレートしたレアなラテン・ディスコ・ナンバー「Lovin' Mighty Fire」が聴けるのも貴重だ。
『Light Mellow Summer』 (キング)
キング編は、歌謡曲やフォークのイメージが強いレーベル・カラーを生かした選曲が特徴。前者でいえば、元ブルー・コメッツの井上忠夫によるきらびやかなポップ・チューン「ビロード色の午後」やカラオケでもおなじみ布施明とゴダイゴの奇跡的邂逅「君は薔薇より美しい」、後者では男性デュオのBUZZによる奇跡のフォーキー・グルーヴ「まちのうた」や伊勢正三夫人でもある古谷野とも子が鈴木茂にプロデュースをまかせた「Air Pocket」など。またレア度も高く、横浜発アイランド・ミュージックを奏でるスーパー・パンプキン、大滝詠一もコーラス参加している職人集団HOLD UPから、信田かずおと松下誠によるミルキー・ウェイやアーバン・ソウルを歌う楠木恭介までヴァラエティに富んだセレクトが見事だ。
Writer:栗本 斉
ライト・メロウ レインボー
2014/03/05 RELEASE
COCP-38451 ¥ 2,420(税込)
Disc01
- 01.センチメンタル・シティ・ロマンス
- 02.歌さえあれば
- 03.PINK SHADOW
- 04.ひとり旅
- 05.あの日のように微笑んで
- 06.レインボー・シーライン
- 07.中央フリーウェイ
- 08.天気予報図
- 09.僕のルウ
- 10.キッシング・フィッシュ
- 11.Losing You
- 12.stay with me
- 13.残像-AFTER IMAGES
- 14.バイバイ・ジュエル
- 15.クリスタル・アイズ
- 16.SEXY ROBOT
- 17.FRIDAY NIGHT
- 18.君のことだよ
- 19.恋のやりとり
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