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Nao Yoshioka『The Light』インタビュー

沖仁

 世界照準の新人ソウルシンガーNao Yoshioka。アポロシアターのアマチュア・ナイトでは準優勝まで上り詰め、アメリカ最大級のゴスペル・フェスティバルでは4万人の中からファイナリストに選ばれるなど折り紙つきの実力で話題を呼んでいる彼女がどのように音楽に目覚め、ソウルミュージックを発信しようと思ったのか。アメリカでの経験、レーベルとの出会い、デビュー・アルバム『The Light』に込めた思い、そして関西初ワンマンライブとなる4月30日(水)ビルボードライブ大阪公演への意気込みを語ってくれた。

2年間全く歌わない時期を経験して、結局たどり着いたのは"歌"だった

??音楽はいつごろ始められたんですか

Nao Yoshioka:歌うことは小さなころから大好きで、よくお風呂で歌っていたり…笑
人前に立って歌い始めたのは高校の軽音楽部の時で、当時流行っていた、アヴリル・ラヴィーンの楽曲をコピーしたり、アルバムにも収録したゴスペル曲「His Eye Is on the Sparrow」を歌ったりと幅広く色んなジャンルの曲を歌っていましたね。これが15歳ぐらいの時ですかね。

??本格的に始めようと思ったのは

Nao Yoshioka:16歳の時に専門学校主催のCDデビュー・オーディションというのがあり先輩の勧めもあってそれに出場したら、そこで優勝してしまって…そこからヴォーカル・トレーニングを習い始めて本格的に音楽を始めようと。

??そこからはどのように音楽活動を進めていったんですか

Nao Yoshioka:基本的にはソロで活動していて、そこにバンドをつけたり、時にはダンサーを入れて大所帯でライブをやったりしていましたね。色々と試行錯誤しながらやっていたのですが、その時はうまくいかずで、、、一旦、19歳頃から2年ほど歌うことを一切やめてしまったんです。

??そうなんですね。。。

Nao Yoshioka:ただ2年間全く歌わない時期を経験して、結局たどり着いたのは"歌"だったんです。私には歌うことしかないと改めて気づきました。

??そこからどんな行動を

Nao Yoshioka:アメリカに行こうと。初めは結構行き当たりばったりで行ったんですけど、2年間歌っていなかったのもあって無性に歌いたくなって。それでアメリカに渡って5日目にはハーレムでヴォーカル・トレーナーと出会い、そこからマンツーマンのレッスンの日々でした。

??歌は上達しましたか

Nao Yoshioka:声の出し方自体が大きくかわりましたね。そして喉を潰さなくなって音域も広がりました。

??アメリカではアポロ・シアターのアマチュア・ナイトにも出場されたとか

Nao Yoshioka: そうなんです。そのヴォーカル・トレーナーの勧めもあって出場しました。

??アポロ・シアターのアマチュア・ナイトはオーディエンスが厳しいことでも有名ですよね…

Nao Yoshioka:そうですね。30秒も歌えずブーイングと共に舞台袖に消えていく人を何人もみたりで…

??楽曲は何をチョイスされましたか、そしていざ大舞台にたってみてどうでしたか

Nao Yoshioka:エタ・ジェイムズの「At Last」にしました。3か月ずっとこの曲ばかりを練習して。数々のスターたちがこの舞台に立って歌ってきたということを考えるだけでとても緊張したのですが、3か月のストイックな練習で積み上げてきたことや今まで自分が音楽と向き合って培ってきたものをすべて出し切りました。

??反応はどうでしたか

Nao Yoshioka:歌い切った直後に、大きな歓声に包まれて。ステージ上に居る私に賞賛を送ってくれている客席の光景があまりにも美しく感動的で。あの醍醐味は忘れられないですね。

??それでアポロ・シアターのアマチュア・ナイトで準優勝まで勝ち上がってと。その後4万人規模のゴスペル・フェスティバルのオーディションでファイアナリストになってますよね。

Nao Yoshioka:これはマクドナルドが主催するフェスのオーディションで、イベントにはロバータ・フラックが出演してたりと、米国でも最大級のオーディションなんです。ハーレムのマクドナルドで「Amazing Grace」を歌いましたね。それでするすると気づけば上位6人に入ることができました。

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??アメリカの濃厚な音楽シーンを目の当たりにして感じたことは

Nao Yoshioka:生活と音楽が密着しているというのが印象的でしたね。今まで自分のなかで音楽とは生活から少し離れていて、どちらかというと娯楽に近い感覚であると捉えていた部分もあったんです。でもいざアメリカで、例えば教会で自分の感情を解放して歌っている人たちの姿をみると、この人たちにとって歌は生活の重要な一部であり必要不可欠なものであるように感じました。そんな光景を目の当たりにして"歌"は人をたすけられるものであり、さらには自分をもたすけてくれるものであると確信しました

??アメリカでは"歌"というものの価値観がガラっと変わったわけですね。 その後ヨーロッパも回られてますよね。これはどのあたりに

Nao Yoshioka:ロンドン、ロッテルダム、パリをまわりました。ロンドンでは夜な夜なジャム・セッションに飛び入りして、BluesやSoulを歌いまくってましたね。ロンドンのBluesバーはどこもかなりの盛り上がりで、20代ぐらいのいわゆる'今風'の男女がバンバン踊っているんです。それが少し意外で面白かったですね。
オランダのロッテルダムでは私が尊敬する憧れのミュージシャンである、シャーマ・ラーズに会いにいきました。そしてオランダのJazzフェスでは彼女と共演でき、本当に色々と勉強になりましたね。最後はパリだったんですが、旅の疲れや言葉の壁もあったりで、、、ここではのんびりゆっくりと景色をみたりして過ごしていました。

??日本から飛び出して色々な発見があったんですね。少し話は変わりますが、Naoさんが所属しておられるSWEET SOUL RECORDとの出会いを教えてもらえますか

Nao Yoshioka:SWEET SOUL RECORDSからリリースされた、日本人アーティストが70年~80年代のSoul,Jazzをカバーしたコンピレーション・アルバムがあって、それを聴いた時に度肝を抜かれたんです。それでひょこっとそのリリース・パーティーに行ったら、レーベルの方から「Naoさんですよね」と声をかけられて。

??それからリリースに向けてどのように発展していったのですか

Nao Yoshioka:その後、SWEET SOUL RECORDSの方が私のライブに来て下さって、レーベルの方がつれてきてくださった方の目の前で、「好きな音楽を歌って世界に発信したい。言語という理由で私が歌うべきものではないものを歌えないのならば、別に日本にいる必要はないと思う」という尖がった発言をしていました。そんな強気なことを言いながらも実際手は震えていたりで…笑
SWEET SOUL RECORDSも日本から世界にアーティストを輩出したいというコンセプトを持ったレーベルであったので、そこでお互い意気投合して。さらにそのライブでサム・クックの「A Change Is Gonna Come」という曲を歌っていたのですが、そのタイトルを日本語にすると'変革はいつか訪れる'というような意味で、ライブでも、「私にもいつか変化がくるといいなー…」とMCで話していたのですが、レーベルの方から、'変革(変化)は自ら起こしていかなければ'とお言葉を頂いて…それがまさに「Make the Change」という楽曲になっていくのですが。

??なるほど、その「Make the Change」、自身初、レーベル初のオリジナル楽曲となるわけですが、どんな心持ちで収録されましたか。

Nao Yoshioka:初めて自分の声がCDに乗るということを考えただけでとても緊張はしたんですが、逆にメラメラとみなぎるものがあったりで、気づけば自分のすべてを出し切っていました。

??そしてそれがSWEET SOUL RECORDSのレーベルベストコンピレーション『WORLD SOUL COLLECTIVE VOL.1』に収録されるわけですね。

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??そして少し期間は空きますが、ついにフルアルバムの制作に取り掛かるわけですが…

Nao Yoshioka:水面下では早い段階からこの企画は動き始めていて、構想にかなりの時間を要したんです。初めはBluesアルバムになる予定で話が進行していったり…。ただ「Make the Change」をいざ歌ってみて、自分が理解して表現できる領域は思っている以上に広く、狭義のカテゴリーにとらわれずにアルバムを作りたいという思いが強くなってきて。

??なるほど

Nao Yoshioka:帰国後色々と考えていて、自分の長所を最大限に生かして、それを精一杯表現することが自分にとって一番必要であると考えていて。それで自分の長所はと考えた時に、メッセージ性のあるSoulミュージックを歌うことであると気づかされたんです。Soulミュージックには自分が苦しい時にたくさんたすけられてきて、それの持つ力の大きさということは身を持って体験してきたので、今度は自分がそれを発信したい、欲を言うならば人の支えになれるような音楽を発信したい、という思いがすごく強くなりました。その思いもこのアルバムに込められていますね。

??Soulミュージックからインプットされたものを次は逆にアウトプットしていく、そういう感じですかね。ここからはアルバムの具体的な内容についてお聞きしたいのですが、まずアルバムのタイトル曲でもある「The Light」について、作曲は福原美穂さんとなっていますが

Nao Yoshioka:この楽曲のメロディーに関しては、世界中からコンペで募集していたんです。そこに「Make the Change」でも関わったHIROYUKI MATSUDAさんを通して福原美穂さんの楽曲をご提供頂いて、それを聴いてみるとエッジが効いたとても素晴らしい曲だったんです。すぐに是非この楽曲を採用させてほしいということになりました。

??作詞に関してはNaoさんも携わっておられますよね、どんなイメージで

Nao Yoshioka:アルバム・ジャケットにもあるように暗闇の中にほんの小さな光が差していて、その一筋の光さえあれば、それに向かって進んでいくことができるんだというイメージで作りました。実は私大きく落ち込んでいる時期があって、それが暗闇のような状態だったんです…。その暗闇の中から、試行錯誤しながら音楽という希望の光を求めて進み続けてきたその自分の姿と重ね合わせて歌詞にしたところはありますね。

??前述のエタ・ジェイムズの「At Last」、サム・クックの「A Change Is Gonna Come」もやはり印象的ですね

Nao Yoshioka:「At Last」は先ほど触れた、アポロ・シアターでのアマチュア・ナイトでも歌いましたし、人生で一番歌ってきた曲で、アメリカでもみっちり勉強した曲だったのでどうしても入れておきたかったんです。自分にとっての大事な場面で歌う曲だったので。
アメリカでもずっと順風満帆というわけではなく、結果が出ない時はひたすらチャレンジが続いて…そんな自分をアゲていく必要がある時には必ずこの「A Change Is Gonna Come」を歌っていて。自分自身の支えとなる曲であったのでこの曲も外せませんでした。苦しんでいた時に歌い続けてきた「A Change Is Gonna Come」と日本に戻ってきて考え方を転換して作った「Make the Change」、この曲が1枚のアルバムに入っているという'妙'も感じ取って頂ければ…笑

??アメリカで話題を呼んでいる、ヴィンテージ・ソウルマンと称されるブライアン・オウエンズの参加もひとつの目玉ですよね。

Nao Yoshioka:まさに'Real Soul Man'という感じで。とにかく存在感があって、全身全霊で歌う姿は圧巻でした。セント・ルイスでマーヴィン・ゲイのトリビュート・ライブがあり、そこで「Ain't No Mountain High Enough」をデュエット(アルバム収録曲)したのですが、マーヴィン・ゲイが乗り移ってるかのようでした。本当に感動的な瞬間の連続でした。

??オランダでも共演したというシャーマ・ラーズも今回のアルバムに参加してますよね

Nao Yoshioka:SWEET SOUL RECORDSからリリースされているシャーマ・ラーズの音源を聴いた瞬間とりこになってしまって。元を辿れば彼女の熱烈なファンだったんです!笑 それで是非ともお願いしますということになりまして。オランダ人アーティストはすごくクリエイティブで才能の豊かな人が多く、彼女もまさにそんな感じで。音楽面での懐の深さとセンスには脱帽でしたね。

??様々なアーティストの支えもありつつ、国境を越えNaoさんが吸収してきたものを全開に表現できたこのアルバム。聴く人にどんなところを感じ取ってもらいたいですか

Nao Yoshioka:全曲英詞で日本語に比べて伝わりにくい部分も多少あるかもしれないのですが、歌っている曲の雰囲気や感情を感じ取ってもらえると嬉しいですね。大きなメッセージとしては、私自身完璧主義なところがあって、それもありすごく落ち込んだ時期があったので、'完璧じゃなくてもいい'ということであったり、'苦境に立たされても小さな光さえあればそれに向かって頑張っていける'ということを伝えたかったのでそのメッセージを感じ取ってほしいのと、あとは'人間臭さ=暖かさ'みたいなものも感じて頂けると嬉しいです。

??そしてこのアルバム『The Light』を携えたライブがありますが、どんなライブになりそうですか。

Nao Yoshioka:私は大阪出身で大阪の方には'ただいま'というのと同時に大阪でのライブが初ということもあり、'初めまして'でもあるのですが…笑 アルバム『The Light』の世界を存分に楽しんでもらえるようなライブにしたいと思います。そして私の中にある可能性を全て出し切りますので楽しみにしておいてもらえると嬉しいです。あとバックをつとめるメンバーもMISIAさんや久保田利伸さんのバックをつとめているトップクラスのミュージシャンなので、私の歌とその融合も是非楽しんでほしいです。