親も僕らの看板を記念撮影しに行ったみたいで（笑）

▲Chicago Poodle「タカラモノ」Wedding篇　MUSIC CLIP

－－泣けるPVと共に話題となった前作『タカラモノ / 君の笑顔がなによりも好きだった』リリース後の日々は、3人にとってどんな期間になりましたか？

花沢耕太（vo,piano）：前作をきっかけに改めて全国のいろんなところへ行きまして、インストアライブやフリーイベントを実施して、また新たにいろんな人と出逢えたなって。ちょっと停滞していた2012年を経て、再びエンジンが回り始めた感じがしましたね。2013年は飛躍の1年でした。

山口教仁（dr）：飛躍の年でもありますし、新しい種が蒔けた年かな。それを咲かせられるかは、今後の僕ら次第だと思いますけど。

辻本健司（b）：やるだけやった1年。とにかくやった。その結果「ここはよかったから、こうしていこう」みたいなものが見えたんで、2014年に繋がる1年になったと思いましたね。

－－渋谷でデカイ広告が出ていたり、おそらく今までで一番派手な展開をしていましたよね。どんな気分でした？

花沢耕太：周りの人。例えば、自分の家族だったり、友達だったりが「看板、見たで」ってわざわざ報告してくれたりして（笑）。ファンの人たちもすごく喜んでくれていた。それをツイッターとかブログとかアンケートを通して感じられたので、僕ら的にも嬉しかったです。

辻本健司：ウチの親も僕らの看板を記念撮影しに行ったみたいで（笑）。ウチのばあちゃんは東京に住んでて、もう86か7ぐらいなんですけど、ひとりで渋谷まで行って見てきたらしく。それは嬉しかったですね。僕たち的には、発売週前ぐらいからインストアライブみたいなものをすごくたくさんやって、機材も自分たちで運んだりしながら。ハードだった分、凄い経験値になったかなって。これができるんだったら、もっとやれるんじゃないかって感じたんで。あとは「君の笑顔がなによりも好きだった」を『名探偵コナン』のエンディングでかけて頂いたりとか、メガネのタナカさんのCMで「タカラモノ」が流れていたりしたので、あの2曲を演ると全国どこでも反応があるんですよね。広がってる実感があった。

花沢耕太：「タカラモノ」は言葉がしっかり伝わる曲だし、あの曲を聴いて本当に涙流してくれている人を見かけたときは、冥利に尽きるというか、届いてるなって感じましたね。

▲Chicago Poodle「君の笑顔がなによりも好きだった」MV

山口教仁：『名探偵コナン』のエンディングを担当したこともあって、新しい層も開拓できたんじゃないかな。やっぱりお子さんの数が増えていて、サイン会とかにも親御さんと一緒に来てくれるんですよ。

－－広がってる実感は、外から見ている僕にもあったんですが、逆にそれだけ良い状況を揃えられると、プレッシャーにもなりますよね？

花沢耕太：プレッシャーとかは「ない」って行ったら嘘ですけど、僕らの音楽を聴いてくれる人がたくさん増えていることは、やっぱり素直に嬉しかったし、さらに良い曲を作ろうと。もっともっと深い良い曲を作りたいなって想いが強くなりました。

▲花沢耕太

－－前回のインタビューでは「もう賭けには出てるんですよ。そこに向かって今何をするべきかという段階」「馬車馬のごとく！」と仰っていましたが、実際、今は馬車馬モードになってるんですか？

花沢耕太：そうですね。前作をリリースしてから3ヶ月ぐらいは、毎週金土日はどっかに行ってましたね。

辻本健司：何日間も遠征みたいな。

山口教仁：車での移動の記録も作りましたし。大阪－青森間を車で走破できたので、すごく自信……自信っていうか（笑）、もうどこでも行けるなって。

－－感覚としては、ある意味、背水の陣だったりするんですか？

辻本健司：それはずっと前からありますね。

花沢耕太：毎回そうです。一回一回が勝負というか、そういう気持ちで臨みたいとも思ってますし。

「夫を亡くしたんですけど、これで前に進めそうです」

－－ただ、2013年は、1月～12月までライブしなかった月がないぐらい、常にライブしていましたよね？ これまでにも増して動きが精力的だなと。

山口教仁：インディーズの頃にもそれぐらいやった年はあると思うんですけど、メジャーデビューしてからは一番やった年かもしれないですね。

－－印象に残っているライブは？

▲Chicago Poodle 『タカラモノ』MV ～家族愛 篇～

山口教仁：青森に行ったとき、年輩の女性の方が「タカラモノ」を聴いて僕らのサイン会に並んでくれて、涙を流しながら「先日、夫を亡くしたんですけど、これで前に進めそうです」みたいなことを言ってくださって。それが一番印象に残ってます。初めて僕らの音楽を聴いた人にそこまで伝えられたことは、自信にもなりましたし。

辻本健司：京都の法然院とか、東京のウェディングパークさんとか、そういうお寺や結婚式場でやったライブも印象に残ってるんですけど、個人的に「一生忘れへんやろうな」と思うのは、広島の【SOUND MARINA'13】です。スキマスイッチさんと一緒のステージに立てたっていうのは……僕、スキマスイッチさんの大ファンなんで。ひとりで勝手に楽屋へ挨拶しに行ったり（笑）。常田（真太郎）さんとはイベントでご一緒したことがあったんですけど、憶えてくれてはって。あの日は、ひとつの目標が達成できたかなって。

花沢耕太：あと、どのライブも思い出に残ってるんですけど、全国いろんなところでライブを出来たこと自体が大きくて。「タカラモノ」を歌っているときには、どの場所でもみんな静かに聴き入ってくれたり……そういう光景が甦る。改めて歌というものは人の心に届くということを感じられました。

－－そしてシカゴプードルは2014年でメジャーデビュー5周年を迎えます。まずメジャーで5年活動してこれたこと自体にはどんな感慨を持たれていますか？

花沢耕太：メジャーデビューしてからも山アリ谷アリだったんですよ。でもここまで出来たっていうのは、僕らのお客さんがすごく長く応援してくれるというか、インディーズ時代から10年ぐらい追い掛けてくれている人もいるし、そういう人たちの存在が一番の原動力で。あとは、昔に比べてメンバーともケンカしなくなりましたし（笑）、それぞれの役割を客観的に見ることができるようになってきたというか。だから続けられたんだろうなって。

－－この5年で「メジャーに来てよかったなぁ！」と思った出来事をそれぞれ教えてください。

辻本健司：ぶっちゃけちゃっていいんですか？

▲山口教仁

－－もちろん。

辻本健司：いや、それはもう、ご飯食べさせて頂けることです。

一同：（笑）

辻本健司：インディーズ時代はどこ行くにも何を食べるにも自腹でしたから。それ以外は何も変わってない。インディーズの頃からレコーディングとかは今の事務所とやらせてもらってるので、あんまり変わってないんですよね。だからキャンペーンのときに弁当代が出るようになったのが、一番大きい変化（笑）。

山口教仁：僕が一番よかったなと思うのは「メジャーデビューしてます」って言えることですね。周りの人から「何やってんの？ 自分」って聞かれるときってあるじゃないですか。そのときにただ「バンドやってます」だけじゃなく「メジャーデビューしてる」って言えるのは……

－－インディーズだとバイト感あるけど、メジャーって言うと社員感が出る。

山口教仁：そうです、そうです（笑）。

－－花沢さん。他にないんですか？

花沢耕太：そうですねぇ……でもやることは変わってないんでね。

辻本健司：でも関わってくれはる人は明らかに増えました。だから曲を聴いてもらえるチャンスもすごく増えましたし、テレビのCMでかけて頂けるのも、ちゃんとデビューしてなければなかった訳で。おかげで良い出逢いがたくさんあった。

－－では、逆に「メジャーって厳しいなぁ」と思った出来事をそれぞれ教えてください。

▲Chicago Poodle「桜色」PV

花沢耕太：2011年3月9日にシングル『桜色』をリリースしたんですけど、その2日後に震災があって。僕らも例に漏れず思い悩んで、音楽の意味とか改めて考えているうちに時間ばかりが過ぎていって。でももうデビューしてるんで、お客さんたちは「次のリリースはいつなの？」「なんで私のところに来てくれへんの？」って求めてくるし、そういう声が多くなればなるほど苦しさも出てくる。僕らもいろんなことを考えてるんですけど、やっぱり待ってはくれないんで。結果、待たせることになってしまって、申し訳なかったなと思ったりしましたね。

これまでやったことがない大きい規模の会場でライブ

山口教仁：メジャーデビューがスタートラインってよく聞きますけど、本当にその通りだと思って。メジャーの世界は凄い人たちの集まりなんで。僕らがドラフト何巡目で引っ掛かったのかは分かんないですけど、その舞台に立ってからが勝負なんだなと思わされるようなことがたくさんあって。例えば、チャートのこともそうですし、自分らが思っているように浸透しないなって思った時期もありましたし。とてもシビアだなと。

辻本健司：あと、インディーズの頃と比べて見え方を気にするというか、プロとしての自覚を持たなきゃいけなかった。そこにちょっとした戸惑いはあったかもしれない。今は別に何とも思わないんですけど、メジャーデビュー当時はそんなこともありましたね。

－－そんな苦難も超え、2014年は、ある意味、集大成的なトピックが満載だと思うんですけど、まず新作『シナリオのないライフ』。自分たちでは仕上がりにどんな印象や感想を？

▲Chicago Poodle「シナリオのないライフ」MV

花沢耕太：2013年はバラードの印象が強かったと思うので、2014年の一発目はアップテンポの曲で弾みをつけたくて。なので、僕ら的には元気な楽曲が出来たと思います。

山口教仁：デモの段階である程度ピアノとかストリングスは乗ってて、爽やかで疾走感のある曲にはなっていたんですよ。前向きな曲だったので、歌詞も僕のノートから「シナリオのないライフ」というフレーズを引っ張って……

－－「シナリオのないライフ 君になってほしいよワイフ」っていうフレーズ、これはフックとして強いなと思って。確実に耳に止まる。

山口教仁：これは結構ね、爆弾というかね。

一同：（笑）

山口教仁：どう爆発するかわからん。これはもう遊び心というか、韻も踏んでみようと思って。まぁでも引っかかりとしてはアリなんかなって。正直、どっちに転ぶかは僕も分からなかったんですけど、無難な歌詞を置きにいくよりかは、もう振り切ったところで勝負していかなアカンかなって最近思ってまして、何か引っかかりが欲しかったんですよね。まぁこの曲は全体的にそうなんですけど、プロデューサーから「わりと面白い、ハッとするようなフレーズを入れたら、この曲のポップさとか軽快さが際立つんじゃないか」というアドバイスも頂きまして。それでこういう歌詞にしたんです。

▲辻本健司

－－あと、この曲は「タカラモノ」とも繋がってるというか、あの曲のエピソードゼロ的な解釈もできるなと。

辻本健司：たしかにそうやな。

山口教仁：なので、現状カベにぶつかってて「どうすればいいかわからん」っていう人にも聴いてほしいですし、それこそ幸せで大切な人がすぐ隣にいる人にも聴いてほしいというか。いろんな人に聴いてほしいなって思ってます。

－－そんな新作を携え、5周年ツアーの開催も決まっていますが、どんなツアーにしたいなと思っていますか？

花沢耕太：本当に細かくいろんなところを廻りたいなと思ってます。2013年に各地でインストアライブやフリーイベントをやってきた訳ですけど、そこからどれだけの人が足を運んで下さるのか。そういうのを知りたい。で、このツアーで次のリリースとかを発表できたらすごく綺麗な形になるのかなって。そして2014年の終わりか、2015年の始まりぐらいに、これまでやったことがない大きい規模の会場でライブをやる。それを目標に掲げて、その為に何をするべきか考えながら動いていきたい。

－－2014年、シカゴプードル史上最も熱い1年になりそうですね。

辻本健司：人生で一番最高の1年にするように頑張ります。

山口教仁：重複しちゃうんですけど、2013年に蒔いた種をどこまで咲かすことができるのか。同時にまだまだ種を蒔いていきたいと思ってます。

花沢耕太：大きな目標に対して「そこに絶対行くんだ」という意思を持って、その為にひとつひとつのことをちゃんと考えながら形にしていきたい。目標を達成する為の1年です。