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Hostess Club Weekenderが、楽しい。
毎回インディー・ロック・ファンを狂乱させるラインナップが魅力の【Hostess Club Weekender】。2月15日と16日には第7回目の開催が控えている。本特集では、その出演ラインナップの魅力に加えて、SoundCloudに公開されているオススメの楽曲を紹介。また、昨年11月30日と12月1日に恵比寿ガーデンホールで開催された第6回目のレポートも出演アーティストごとにお届け。
Live Photo:古溪 一道(コケイ カズミチ)
初日のトップバッターには2月にいよいよデビュー・アルバムをリリースするテンプルズ。4人のメンバーは細身のパンツを履いてばっちり“ロックンロール”な佇まい。更にフロントマンはカーリーヘアでなんともアシッドだ。そして鳴らされる音はサイケデリック。筋が通ったバンドだ。ビンテージなサイケサウンドをヌメっとした照明が引き立てて、ほどよく酔う。バンドのグルーヴは一聴するとズレており、「へたうま系か」と感じてしまうが、一定のタイミングでバシっと合わさる。このぶつかりが心地よい。リズムではなく、グルーヴのポリリズムのようだ。この手のバンドは一回りも二回りもして新鮮に映るのか、新人バンドにも関わらず注目度は高い。フロアもみっちりオーディエンスが入っている。クールな雰囲気から客と絡んだりはしないのかと思いきや、後半には手拍子を要求し、ラストは投げキッスまで飛び出したりと既にロックスターの心意気もきちんと理解しているようだ。
当日のライブ映像が公開中!
バルセロナからやってきた4人組、デロレアン。“ドリーム・ポップ”と評される彼らだったが、ライブは凶暴でした。音源がとってもライトだっただけに驚いた。前のテンプルズとは打って変わって打ち込みサウンドが中心。フレーズとリズムが抑揚をつけて繰り返され振動を増幅させる。それに共振するようにフロアも揺れる。バンドのサウンドも凝った趣向で多彩な彩りを魅せる。単調な楽曲たちがどんどん生々しくなっていくのが面白い。暴れるようなステージパフォーマンスと変則的なグルーヴに「どこが“ドリーム・ポップ”だ!」とツッコミを入れながら乗せられる。彼らは変幻自在に楽曲を操り、オーディエンスを魅了する。瞬間、気づかされる。この夢見心地な今こそ“ドリーム・ポップ”なのだと。
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以前このイベントでダイナソーJr.の出演に感動させてもらったが、セバドーまで呼んでくれるなんて。まぁ、ぼちぼち来日はしているが、今回は約14年ぶりの新作『ディフェンド・ユアセルフ』のリリース直後。バンドとしてがっつり機能しまくっているタイミングなのだ。ステージに現れた彼らは一発目目からパワフルでラウドにかます。重めのサウンドにも関わらず軽やかに演奏する彼らに、佐川急便のドライバーさん達を重ねてしまう(笑)。ジャッキジャキのテレキャスターの音が会場内にいっぱいに広がり、ドラムとベースがど真ん中を突き抜ける。ちょっとドラムの音が大きすぎるなと感じて目をやれば、手首ではなく腕を思い切り使ってスティックを振り下ろしているのを見て笑ってしまう。後半はルーとジェイソンが入れ替わり楽器を交換し、ヴォーカルもチェンジ。変わらずエッジの効いたパフォーマンスにファンたちを魅了していた。
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既に10年以上のキャリアを積んでいるオッカーヴィル・リヴァーだが、なんだかんだで今回が初来日公演だ。この日のデロレアンにも驚かされたが、彼らも音源とライブではイメージが異なる。フロントマンのウィルはステージを動きまわってメガネを飛ばすほど元気。カントリー的なメロディを見事にもう一段階上のポップソングにスケールアップさせる。その才能もさることながら、そのステージングには脱帽。軽快なポップ・サウンドに凶暴なギターを絡ませて痺れさせ、ウィルがドラマチックにソロ・パフォーマンス。決して演奏は上手くないが、オッカーヴィル・リヴァーでないと鳴らせない音があると思わせてくれる。彼らの素晴らしい楽曲たちは彼らでないとダメなのだ。ラストで盛り上がり過ぎあウィルが転がっているマイクに寝転んで叫んでたのは笑えた。
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そして、初日のヘッドライナーはニュートラル・ミルク・ホテル。「もう見れないと思ってた!しかも15年ぶりのオリメンで!それも日本で!!」と来日決定のニュースだけで、感動のあまり泣いてしまった人もいるのでは?いよいよ登場となったオリジナル・メンバーでのステージはオーディエンスを熱気という言葉を通り越して燃やし尽くした。髭面になってしまったジェフを中心にバンドが様々な楽器を使って音楽を紡ぎだす。フォークで、ノイズで、パンクで、サイケで、会場にいる音楽ファンが愛して止まない音楽要素が詰まっている。カラフルなポップスを真っ直ぐプレイする姿にフロアも熱を帯びる。それは空白の時間を埋めるリユニオンのありがちな空気ではなく、今を削り取るヴィヴィッドな生き物だった。
2日目のトップバッターは、カナダはトロント出身のヴォーカリスト兼プロデューサー、ケイティ・ステルマニスを率いるアウストラ。妖艶なシンセ・オルガンの音色と体にズシズシと響く極上の重低音の中、それを裂くように放たれたケイティの魅惑のハイトーンヴォイスに会場がどよめく。リバーブを巧みに使い歌声を残響させ幻想的に演出したかと思えば、自由奔放なダンスでステージ上を舞いオーディエンスを魅了した。アウストラの混沌としたダークネスなサウンドが、Vo.ケイティの美しく煌びやかな歌声をより一層際立たせる。ケイティは自身を輝かせる最高の形を、見事に体現する圧巻のパフォーマンスで2日目のオープニングを飾った。
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次に登場したのは、ビョークやトム・ヨークも絶賛するシリアのスーパー・スター、オマール・スレイマン。今回のイベントでの大本命と口にするオーディエンスも多々見られ、会場の期待値も既に最高潮。そんな中、鳴り響きだした「ダブケ」と呼ばれる中東の民族音楽をダンス・ミュージックへと昇華させた革新的なサウンドが会場に衝撃を与える。すかさず、クーフィーヤ&サングラスのお馴染みの姿でオマールが登場すると、会場は一気にダンス・クラブへと変貌。呪文のように発せられるオマールの歌声に、見事かかってしまったかのように会場は揺れまくっていた。とはいえ、オマール自身は大半、手拍子や掛け声でオーディエンスを煽るばかりで、エスニカルでノリの良いダンス・ビートが単調に繰り返されていくステージ展開のような印象がのこった。だが、Hostess Club Weekenderでも珍しいほどのダンサブルで革新的なステージであったことには間違いないであろう。
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3番手で登場したのは、リミクサーとしての活躍や、先のオマール・スレイマンの『ウェヌ・ウェヌ』をプロデュースするなど、音作りに関しては達人級のフォー・テットが、会場の空気を洗練された艶やかな雰囲気に引き戻す。一人ステージの中央に立ち、ズラリと並べられた音響機材を、まるで遊び道具かのようにいとも簡単に扱う姿は流石としか言いようがない。次から次へと追加されていくエレクトロ、ハウス、テクノなど、様々なジャンルの多彩な音を絶妙にブレンドし、曲を形作っていく様が目に見えてくるようで、なんとも気持ちの良い空間であった。彼はこのライブの音源をSoundcloud上にてフルで公開している。
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続いては、アルゼンチン音響派の筆頭、フアナ・モリーナがステージ・イン。しっとりとした雰囲気の中スタートとなった。そんな会場空間に漂い続けるかのように感じるほどの生々しくブルージ―な歌声と、エレキ、アコギ、鍵盤、さらにはライドシンバルを巧みに奏で、オーディエンスを終始魅了するあたりはお手の物。ラストには一人ステージに残り、アコギの弾き語りから始まり、曲中に作り出していく表現豊かなコーラス、多彩なエレクトロ・サウンドを打ち込み音として次々と投下しループさせていく。曲の後半になるにつれて重厚さ、深みが増していき、まるで点と線を結ぶかのように曲が紡がれていく劇的なアクトで幕引きし、音響派の真髄を余すとこなく魅せつけてくれたアクトであった。
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そして、2日目のヘッドライナーを務めたディアハンターが満を持しての登場。「Earthquake」でスタートし『Blue Agent』など、徐々にディアハンターらしい、Vo.ブラッドフォード・コックスの叫びにも似た鮮烈な歌声と、歪みまくった独特のリズムから強烈に繰り出される爆音ロックンロールで会場を煽っていく。圧巻であったのが、全オーディエンスの目を釘付けにするほどの、圧倒的に美しすぎるロング・バンド・アンサンブル。メンバー全員の確かな演奏力から放たれる音が、複雑に絡み合い、凄絶なるバンド・ユニゾンを生みだし会場を昇天させてみせた。ラストには『Back to the Middle』を披露。流れそのままのに、ブラッドフォードのギター・ノイズが鳴り響く中、アンコールに突入し『Cover Me (Slowly)』、『Agoraphobia』までの怒涛のアクトで今回のHostess Club Weekenderを大円団に導いた。
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Errors
2004年にグラスゴーで結成したポスト・エレクトロ・バンド。活動を開始するや否や早速その個性的なダンス・サウンドが注目を集め、モグワイが主宰するレーベル<Rock Action>と契約。2007年には、アルバム・デビュー前にも関わらずアンダーワールドの前座に大抜擢された。これまでに4枚のアルバムと数枚のEP及び7インチをリリース。モグワイやザ・トワイライト・サッドのオープニング・アクトを務めるなど、グラスゴー音楽シーンを中心に注目を集めている。
Asgeir
アイスランドの人口40人余りの集落、ロイガルバッキ出身のシンガー・ソングライター。 2012年9月にリリースした自身のデビュー・アルバム『Dyrd i daudathogn』が数々の記録を更新し、アイスランド史上最速で売れた国内アーティストによるデビュー・アルバムとなる。2013年にはアイスランド音楽賞2部門(「最優秀アルバム賞」「新人賞」)を受賞したほか、Nordic Music Prize(北欧版マーキュリー的なアウォー ド)にノミネートされるなど一躍国内音楽界のスター・シンガー・ソングライターとなり、今では21歳という若さにしてアイスランドの全人口の10人に1人が彼のアルバムを所有している売り上げを誇る。2014年には英語ヴァージョンのアルバム『In The Silence』をリリース予定。
Daughter
2010年にヴォーカルのエレナ・トンラを中心にロンドンで結成した3ピース・ロックバンド。2012年、新人アーティスト発掘音楽フェスSXSWでのライヴが話題となり、セイント・ヴィンセント、グライムス等を世界的にブレイクさせた英名門レーベル<4AD>と契約。デビュー前から米人気テレビ番組デイヴィッド・レターマンに出演するなど、注目新人として話題を呼び、2013年3月にデビュー・アルバム『イフ・ユー・リーヴ』をリリース。同年7月にはフジロックフェスティバル '13で初来日を果たす。
CHVRCHES
グラスゴー出身のローレン・メイベリー(Vo)、イアン・クック(Key,B,Vo)、マーティン・ドハーティ(Key,Vo)で結成した3人組バンド。注目新人を選ぶBBCサウンド・オブ・2013で5位を獲得し、レーベル契約前からネットを中心に人気が爆発。さらに、デペッシュ・モード、トゥー・ドア・シネマ・クラブのサポートを務め、同年7月には日本独自企画盤『EP』で日本デビュー。8月にはサマソニで初来日を果たし話題をさらった。9月、待望のデビュー・アルバム『ザ・ボーンズ・オブ・ワット・ユー・ビリーヴ』をリリース。全英チャート初登場9位(10/5付)、全米チャート12位(インディー1位) (10/12付)を記録した。
Mogwai
1995年にスチュアート(G)、ドミニク(B)、マーティン(Dr)、バリー(Vo,G, Key)、ジョン(G)で結成されたポスト・ロック界で最も影響力を持つ重鎮バンド。1997年のデビューから現在までに7枚のスタジオ・アルバムを発表。フジロック'06でのトリや、メタモルフォーゼ'10では圧巻のステージを披露し話題に。2011年2月の日本公演では2公演をソールドアウトにし、また同年のフジロックフェスティバル'11ではグリーンステージに出演。変わらぬ人気の高さを証明した。2014年2月、スタジオ・アルバムとしては通算8枚目となるニュー・アルバム『レイヴ・テープス』をリリース予定。
Buke And Gase
アローン・ダイヤーとアロン・サンチェスによって結成され、NYブルックリンで活動する男女デュオ。自ら制作/改造してつくられたオリジナル楽器 を自在に操り、パワフルなロック・サウンドを生み出すという、ユニークな演奏スタイルを確立。2009年、ザ・ナショナルのアーロン&ブライスのデスナー兄弟が共同運営するレーベル<Brassland>と契約し、2010年に全米デビュー。2013年、ニュー・アルバム『ジェネラル・ドーム』をリリース。
King Krule
ロンドン出身、アーチー・マーシャルによるプロジェクト。2011年にガールズ等を送り出してきた<True Panther Sounds>からリリースしたデビューEP『キング・クルー』の革新的なサウンドが話題となり、国内外の媒体が大絶賛する等注目を浴び、BBC“サウンド・オブ・2013”にもノミネートされる。アデル、ヴァンパイア・ウィークエンド擁する<XLレコーディングス>からデビュー・アルバム『シックス・フィート・ベニース・ザ・ムーン』を9月にリリース。次世代UKシーン期待の新星として注目を集めている。
Youth Lagoon
米アイダホ州ボイシー出身のマルチ・インストゥルメンタリスト、トレバー・パワーズのソロ・プロジェクト“ユース・ラグーン”。高校時代に様々なバンドを渡り歩く中で、ソロ・プロジェクト“ユース・ラグーン”をスタート。2011年のデビュー・アルバムが国内外メディアで軒並み絶賛された。2013年3月、セカンド・アルバム『ワンダラス・バグハウス』をリリースすると、米音楽サイトであるピッチフォークにて8.7点&ベスト・ニュー・ミュージックを獲得するなど、ベッドルーム・ポップ界話題の新鋭として注目をされている。
Warpaint
米ロサンゼルス出身の女子4人組バンド。2009 年、自主製作EP「Exquisite Corpse」でデビューすると、地元ロサンゼルスでいきなり話題となる。その後英名門レーベル<Rough Trade>と契約し、2010年にデビュー・アルバム『ザ・フール』をリリース。元レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテをはじめとした多くのアーティストやセレブが彼女らをフェイヴァリット・バンドに挙げている。
The National
1999年ブルックリンにて結成。アーロン・デスナー(G, B)とブライス・デスナー(G)、スコット・デヴェンドーフ(G, B)とブライアン・デヴェンドーフ(Dr)兄弟と、マット・バーニンガー(vo)からなる5人組。2001年デビュー・アルバム『ザ・ナショナル』をリリース。2010年の5thアルバム『ハイ・ヴァイオレット』は、全米チャート第3位、全英チャート第5位を記録。2011年に行われた初の単独来日公演はソールド・アウトとなり、多くの観客を魅了しました。2013年5月、ニュー・アルバム『トラブル・ウィル・ファインド・ミー』をリリース。全米・全英チャート第3位を記録し、ロラパルーザやボナルー・フェスティバルといった大型フェスにも軒並み出演するなど、アメリカを代表するバンドに。
関連リンク
【Hostess Club Weekender】
2014年2月15日(土)東京・新木場スタジオコースト
2014年2月16日(日)東京・新木場スタジオコースト
info:http://www.ynos.tv/hostessclub/
レイヴ・テープス
2014/01/15 RELEASE
HSE-30324 ¥ 2,608(税込)
Disc01
- 01.HEARD ABOUT YOU LAST NIGHT
- 02.SIMON FEROCIOUS
- 03.REMURDERED
- 04.HEXON BOGON
- 05.REPELISH
- 06.MASTER CARD
- 07.DEESH
- 08.BLUES HOUR
- 09.NO MEDICINE FOR REGRET
- 10.THE LORD IS OUT OF CONTROL
- 11.BAD MAGICIAN 3 (日本盤ボーナストラック)
- 12.DIE 1 DISLIKE! (日本盤ボーナストラック)
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