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映画『アイム・ソー・エキサイテッド!』公開記念 特集
ペドロ・アルモドバル監督最新作『アイム・ソー・エキサイテッド!』は、機体トラブルで空中旋回を続ける機内を描いたコメディ映画。オネエの客室乗務員たちやイケメンパイロット、一癖も二癖もある乗客たちがブラックな笑いに満ちたドラマを繰り広げる。タイトルは、80年代に活躍したポインター・シスターズのヒットソングから名付けられている。なぜ…?作品の5つのポイントを紹介したい。
ペドロ・アルモドバルほど「鬼才」と呼ぶに相応しい監督はいないだろう。人間の性、深層心理、真実が複雑に絡まった難しいテーマをドラマテッィクな演出で描写し、商業的にも成功させる巧みさも持ち合わせている。代表作である『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999)や『トーク・トゥ・ハー』(2002)では、重厚感のあるドラマを描き、アカデミー各賞に輝いた。今作では、賞取りレースから距離を置き、「面白いものを作る」という映画作りの原点に回帰したかのような鮮やかなブラック・コメディに仕上がった。
自身もゲイを公言しているアルモドバルの作品では、昔からゲイの登場人物は重宝されている。ストーリーの繊細さを表現するためだったり、シリアスな場面を中和させる配役であったり、『バッド・エデュケーション』(2004)が思い出されるように作品の重要なテーマに据えることもあった。今回、アルモドバル自身が「私の作品で最もゲイっぽい映画」と言っている通り、全てにゲイ(主にオネエ)の要素が詰め込まれている。まるで、CAのコスプレをしたオネエにポインター・シスターズを踊らせるために、ストーリーを逆算したかのように作りこまれていて面白い。
▲ 「アイム・ソー・エキサイテッド("Solid Gold" TV Show)」 / ポインター・シスターズ
タイトルである『アイム・ソー・エキサイテッド!』は、ポインター・シスターズの80年代のヒットソングから由来している。ドリーム・ガールズのような自伝映画ではないことはお分かりだろうが、それにしてもポインター・シスターズ自身と物語は全く無関係というのが興味深い。「アイム・ソー・エキサイテッド」は、3人のオネエCAたちが乗客を落ち着かせようと踊るシーンで初めて流れる。3姉妹になりきってダンスをするシーンは、本家とは似ても似つかない怪しい雰囲気であるが、歌詞と物語が見事にマッチしているのがポイントとなっている。「コントロールを失う寸前よ、そしてこの感覚が好きだわ!」と、80年代に3姉妹が踊って歌っていた言葉が、そっくりそのままこの映画を象徴しているのだから…。
映画冒頭部分で、ペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスが空港の地上係員役で登場し、その豪華カメオ出演に驚かされる。また、『トーク・トゥ・ハー』(2002)で難しい看護師役を見事に演じたハビエル・カマラが主演している他、ロラ・ドゥエニャスやセシリア・ロスなどアルモドバル作品の常連役者が脇を固め、息のあった演技がテンポの良いリズムを生んでいる。
CAたちが踊るダンスは、ビヨンセやDAFT PUNKなどにも振付をした振付師ブランカ・リーによるもの。毒気のコメディとオネエという要素にぴったりな小悪魔風GOGOダンスがじわりじわりウケている。本国スペインで行われた完成披露試写会では、観客が振付けを一緒に踊り大きく盛り上がった。
作品情報
『アイム・ソー・エキサイテッド!』
- 監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
- 出演:カルロス・アレセス、ハビエル・カマラ、
- ラウル・アレバロ、ロラ・ドゥエニャス、
- セシリア・ロス、ブランカ・スアレス他
- 2013年/5.1ch/ビスタ/スペイン/90分/R15+
- 配給:ショウゲート / 協力:松竹
- 1月25日 新宿ピカデリー他全国公開
- オフィシャルサイト:http://excited-movie.jp/
関連リンク
ベスト・オブ・ポインター・シスターズ
2002/10/02 RELEASE
BVCM-37335 ¥ 1,980(税込)
Disc01
- 01.ファイア
- 02.内気なボーイ
- 03.スロー・ハンド
- 04.ハピネス
- 05.夢かしら
- 06.ホワット・ア・サプライズ
- 07.涙のパーティ
- 08.オートマチック
- 09.ニュートロン・ダンス
- 10.ソー・エキサイテッド
- 11.ツイスト・マイ・アーム
- 12.デア・ミー
- 13.ゴールドマイン
- 14.ベイビー・カム・アンド・ゲット・イット
- 15.ジャンプ
- 16.アメリカン・ミュージック
- 17.恋のかけひき
- 18.アイ・ニード・ユー
- 19.フリーダム
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