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楽園おんがく Vol.9:ポニーテールリボンズ インタビュー
旅と音楽をこよなく愛する、沖縄在住ライター 栗本 斉による連載企画。今回はポカ=ユイチンとリトル=コフスキーによる謎の2人組ユニット ポニーテールリボンズを直撃インタビュー!
君はポニーテールリボンズを知っているか?!
思わずそう声を大にして叫びたくなってしまうのが、彼らの魅力だ。
ポカ=ユイチンとリトル=コフスキーの二人によるこの男性2人組ユニットは、沖縄で2003年に結成。デビュー前にすでにワンマン・ライヴを成功させ、2010年に満を持してCDおよびDVD『濃ピンク濃ライフ』でデビュー。翌年にはBEGINのトリビュート・アルバムに参加し、2012年にはセカンド・アルバム『モアイの夜明け』を発表。テクノ、トランス、ハードコアからディスコやワールド・ミュージックまでを取り入れたミクスチャーなサウンドをプログラミングを駆使してごちゃ混ぜにし、馬鹿馬鹿しいながらもディープなメッセージの歌詞を乗せてベーッと吐き出すように音楽を作り続けている。
ライヴだけでなくローカルな祭りにまでも引っ張りだこの彼らが、いよいよサード・アルバム『ベリーグッド』をリリース!自画自賛かよ、と突っ込みたくなるそのタイトル通りに、濃厚でクオリティが高くそれでいて脱力してしまいそうな名曲と迷曲がたっぷり収められている。
今回はそんな謎の2人に直撃インタビューを試みた。
変わったユニット名の由来は、他人の解釈から?!
――まずは自己紹介をお願いします。
ポカ=ユイチン(以下ユイ):(元気に)ポカ=ユイチンです!
リトル=コフスキー(以下コフ):(小声で)リトル=コフスキー・・・・・です。
――ど、どうも。ではまず、それぞれのルーツから聴いていきたんのですが、まずはユイチンさんからいってみましょうか。
ユイ:(自慢げに)僕はいい家庭で育ったんでね、両親の愛情を受けてピアノを6歳から始めたんですよ。でも、ピアノだけじゃ自分を表現できない。だからスイミング・スクールに通ったんですよ。でも違うなと。それで、中学2年生からギターを始めたんです。
――なぜまた急にギターを?
ユイ:最初はビートルズと親が聴いていたフォーク・ソングのコピーから始めたんですが、高校生になるとエレキ・ギターを買って・・・・・。(焦り気味に)いや、ギター買ってないわ。いとこがお年玉でギター買ったんですよ。それをちょっと貸してっていって、そのままずっと借りてます。
――その頃はどういった音楽を目指していたんですか?
ユイ:LUNA SEAあたりのヴィジュアル系です。よくいわれるんだけど、僕たちもビジュアル系ですからね。そこから入っていって、パンク聴いたりヘヴィ・ロックやったり、今やってるのとは全然違うことやってましたね。あと、ギターだけでなく、ヴォーカルもキーボードもドラムも一通りやりましたよ。
――マルチ・プレイヤーですね。
ユイ:ま、そうっすね。でもひとつ言えるのは、平均的にどれも上手じゃないってことかな。
――(苦笑)で、その後はどうしたんですか?
ユイ:自分探しの旅をするために中国へ行ったんですよ。むこうでもバンド組んで、ライヴやったり楽器屋さんでセッションしたり。中国って意外に過激なんですよ。ミュージシャンも「北斗の拳」の雑魚キャラみたいな奴がいっぱいいるし、ライヴ中にビール瓶飛んだりしてましたから。それで、中国から帰ってきてから、コフスキーと知り合ったんですよ。
――なるほど。では、コフスキーさんのルーツは?
コフ:・・・・・。
ユイ:(沈黙に堪えかねて)まあ、僕とほとんど一緒ですよ。彼もバンドをやってて、彼から誘ってくれてポニーテールリボンズを組んだんです。
――ずいぶんアバウトですが・・・・・。では、2003年結成当初のポニーテールリボンズはどんな感じだったんですか?
ユイ:最初はバンド編成で始めて、しかも遊び感覚だったんです。ライヴもほとんどせずに、のんびり曲作ったり自分たちでPV作ってYouTubeに上げたりとか。それでパソコンでも音楽作れることがわかって、TKサウンドみたいなことをやってみたらこれが面白くて。僕らはずっとロックやってたから、ああいうのはちょっとバカにしてたんですよ。でも、実際に打ち込みを始めてみると、どうしても着地点をバンド・サウンドに持っていってしまうので、ただのチープな音になってしまうんです。スカスカで。
コフ:ダフト・パンク・・・・・。
――わっ!びっくりした。コフスキーさん、どうしたんですか突然。
ユイ:ああ、彼はダフト・パンクの『ディスカヴァリー』を聴いて、ポニーテールリボンズのひとつの目標が見えたって言ってるんですよ。ああいう曲を作ってるわけではないんですが、影響は受けましたね。
――そもそもこのポニーテールリボンズっていう変わったグループ名はどういう意味なんですか?
ユイ:これは当時やってたバンドのヴォーカルに付けてもらったんですよ。ライヴハウスに出ることになってどうしてもグループ名が必要になるじゃないですか。長くやるつもりもなかったし。
――にしては、長く続けましたね。
ユイ:一度カフェでライヴをやった時にそこの人が、「ポニーテールってリボンで結ぶし、君たちもいろんなジャンルを束ねているからこういう名前にしたの?」っていわれて、「よし!」と思って。だからグループの名前の由来はそこですよ。
――って、全然他人の解釈じゃないですか。でも、定期的にライヴ活動やCD-R作ったりして活動してたんですよね。そこからどういう流れでCDを作ったんですか?
だって僕たち、ヴィジュアル系ですからね。
ユイ:そんなに長く続けるつもり無かったのに、どんどんライヴのお誘いが増えて、大きなイベントに出させてもらったりして。そしたらMEGARYUと対バンしたときに気に入ってもらって、所属事務所の社長に「絶対観た方がいい!」って薦めてくれたんです。そしたら次の月に社長とディレクターがやって来て「いっしょにやりましょう!」っていう展開になって、それからじっくり時間をかけて『濃ピンク濃ライフ』っていうDVDとCDを作ったんですよ。
――デビューがDVDってなかなか無いですよね。
ユイ:(自慢げに)だって僕たち、ヴィジュアル系ですからね。あの映像はワンマン・ライヴがメインだけど、作曲風景とか海に向かって発声練習しているシーンとか、アイドルっぽくてなかなか見応えがあるんですよ。
――ああ、じゃあ機会があったら観てみます。でもデビューもしてないのにワンマン・ライヴってお客さん来たんですか?
ユイ:(鼻息荒く)それが、北谷のSALT & PEPPERというライヴハウス(現在は沖縄市に移転)にお客さんが280人くらい集まって、それでも入りきらないくらいでしたよ。
――わ、ほんとにすごいですね。BEGINのトリビュート・アルバムにも参加したり、セカンド・アルバム『モアイの夜明け』を出したりとか、順調じゃないですか。実際の曲作りはどうやってるんですか?
ユイ:ほとんど2人でセッションしながら作ります。面白いキーワードが出てきたらそれを膨らませたりとか。まあ、レノン=マッカートニーみたいなものですね。
――比較対象がそこですか・・・・。で、アレンジは?
ユイ:ある程度曲が出来てから、どういう音がはまるかなとか。これはテクノかなとか、これはロックかなとか。
コフ:ロック・・・・・。
――わっ!コフスキーさん、またびっくりするじゃないですか。ロックがどうしたんですか?
ユイ:(コフスキーをさえぎって)僕らはロックがルーツだから、バンドの時にはロックにこだわってたんですよ。でもポニーテールリボンズだと、テクノでも演歌でもありなんですよ。そこがこのグループのいいところなんですね。
コフ:・・・・・(深く頷く)。
――じゃあ歌詞のこだわりは?
ユイ:やっぱり言葉遊びにこだわったり、MCの内容も含めて言葉にはこだわりはありますよ。とんちが効いてないと。音楽はもちろんだけど、ライヴも含めてトータルでショーをするグループですから。
リンゴ・スターでなくて、沖縄ならマンゴ・スター。
▲ニューアルバム『ベリーグッド』
――なるほど。ではこのへんで、ニュー・アルバム『ベリーグッド』を一緒に聴いていきましょうか。ガチャッ!(っとCDプレイヤーのスイッチを入れる)。1曲目は「アンチエイジング」。テクノ・ポップっぽいですね
ユイ:バンドと打ち込みの融合で、ファミコンがキーワードです。世の中の矛盾を突いたメッセージを軽い感じで表現してみました。
――表面的には面白いけど、よく聴くと社会派です。
ユイ:ライバルはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンですから。
――(苦笑)。ま、確かにその流れの2曲目「寿司忍者フジヤマ」はハードコアっぽいですね。
ユイ:けっこう意識してます。フフフ。
――3曲目は結成当初に作ったという「ぽっちゃりゴルバチョフ」。って、このタイトル大丈夫なんですか?!
ユイ:調べたんですけど、ゴルバチョフっていうのは、ロシアでの鈴木さんや田中さんみたいなものなんですよ。コフスキーにちなんでロシアをテーマにしました。この時、僕は中国へ行ってたこともあって「ぽっちゃり毛沢東」って曲も作ったんですが、さすがにフルネームなのでアウトでしたよ。
――4曲目は「おっぱいディスコ」。これ、タイトル言うの勇気要りますね。
ユイ:(ニヤリとして)それも狙いです。「隣の芝は青く見える」っていうのがテーマですね。本当は近くにいいおっぱいがあるんだよっていう。
――5曲目は「マンゴスター」。昔のディスコで流行った「ジンギスカン」みたいな雰囲気ですけど。
ユイ:リンゴ・スターでなくて、沖縄ならマンゴ・スター。ま、タイトル先行です。マンゴーを夜の蝶に例えてみました。
――6曲目は「さよなら草食系男子」。これも社会派ですか?サウンドはトランスで。
ユイ:バブルの頃っぽいでしょ。景気のいい頃って草食系なんていなかったはず。僕たちは肉食系を自称してますからね。男らしく生きろ、ただ目の前の女を守れ!ってことですよ。
――意外にマッチョですね。お二人はそういうタイプだと。
コフ:はいっ!!
――わっ!コフスキーさん、反応早いですね。
ユイ:ホンダのカブって、本田宗一郎さんが奥さんのために作ったスクーターらしいんですよ。当時のバイクは女性には乗りにくかったのを改良して。だから僕たちは平成の本田宗一郎なんです。
――志が高いですねえ。その流れで7曲目は「アッシー君メッシー君」。こっちもトランス調で。
ユイ:サウンドもメッセージも、今の主流とは違うことを目指したいんです。
――8曲目の「おじさんおばさん」は、NHK-FMの「インディーズファイル」という番組で、年間1位を獲得したそうですね。とてもキャッチーで耳に残ります。
ユイ:前作のアルバムにも入ってるんですけど、アレンジを変えてみました。人って歳を取ると性別なんて関係なくなるじゃないですか。神様みたいだなあと思ってね。ビートルズの「レット・イット・ビー」みたいなものですよ。
――なんだかよくわかりませんが・・・・・。次行きましょうか。9曲目の「さるそば」。これはなかなかの名曲じゃないですか?メロウなミディアム・ナンバーですね。
ユイ:これは珍しく、デモ音源そのままです。2人でハモってます。
コフ:嬉しかった・・・・・。
――わっ!コフスキーさん、そんなにコーラスできて嬉しかったんですね。
ユイ:最近の偽装表示じゃないけど、何が本物かはわからない時代ですからね。そんなメッセージを込めてみました。
僕らの音楽って「宝の地図」みたいなものですね。
――10曲目の「ピザにタバスコ」も、ミディアム系のポップスですね。
ユイ:そうそう、もう一曲バラードっぽいのを入れたかったんですよ。ラブソングではありますけど、これも深いメッセージが隠されているんですよ。
――11曲目はモータウン・ビートに乗ったソウル風の「一緒にトゥギャザー」。
ユイ:ちょっとYMO風を目指したんですけど、できませんでした(笑)。好きな人に歌われたら最高なんでしょうけど、そうじゃない人だったらかなり怖い内容の歌です。同じことやってても、視点を変えると違うんだよっていうことですね。
――これまた深いですね。12曲目の「たーがしーじゃか」っていうのは沖縄の方言ですが。
ユイ:「誰が先輩か?」っていう意味なんですけど、沖縄だともめ事があったらこの言葉を言えば収まったりするんですよ。先輩を敬いつつ、世代が寄り沿うことも大事かなって思います。でも、この曲を作ってしまったがために、夜中に先輩に呼び出されても、お前「たーがしーじゃか」って歌ってるじゃねえかって言われて逃げられないんですよ(笑)。
――それは自業自得ではないでしょうか。でも、ソカのリズムがかっこいいですよ。
ユイ:ライヴでタオルを回したかったっていうのもありますね。
――13曲目は「ちょめちょめクラブ」。なんともいかがわしいタイトルですね。
ユイ:昭和というかバブルというか。でも、若い子には新しく感じるんじゃないかな。古き良き時代への思いというか。もともとはインドっぽいテイストの曲だったんですけど、三線やお囃子を取り入れてみたら面白くなりました。
――14曲目は「サインコサインタンジェント」。TMNを思わせるポップな曲ですね。
ユイ:今までにない軽い感じの曲調です。最初作った時はどうかなあと思ってたんですが、ライヴでのウケが抜群によかったんですよ。アルバムに入るとさらにバランスがいいっていうか。恋の魔法の言葉みたいでいいでしょ。
――15曲目の「デオドラントラブ」もポップですね。冬にリリースのアルバムに、あえて夏の歌っていう。
ユイ:これもライヴで盛り上がりますよ。MCで「汗かいてきたなあ、この曲歌おうかなあ」といって、最前列のお客さんからデオドラントをシュッシュしてもらうんですよ。それが照明にあたるときれいなんです。匂いはすごいですけどね。
――最後の曲は「モアイ大好き金城さん」。モアイ(模合。沖縄の風習。寄り集まって金銭を貯め、順番に受け取る助け合いシステム。たんなる飲み会として使われる場合も)って、沖縄の人以外にはあまり通じないですよね。
ユイ:モアイって平和の象徴だと思うんですよ。お隣さんと助け合って手をつないでいけば、戦争なんて起こらないし。まあ、本土では通じないんですが、フレーズがキャッチーだしダブステップ風にアレンジしたんで、これも盛り上がりますよ。
――そういえば、今回のアルバムはゲスト・ミュージシャンはいないんですか?
ユイ:完全に2人だけでレコーディングしています。
コフ:ミックス・・・・・。
――わっ!コフスキーさん。また急に。
ユイ:ああ、録音もミックスもほぼ自分たち、いやコフスキーがやったんですよ。徹底して手作りです。
――それにしてもなかなかボリューム感のあるアルバムですね。
ユイ:今のポニーテールリボンズをコンセプトにしたくて、削って削って16曲でした。それでも「ちょっと多くない?」っていわれて。だからボツの曲もけっこうあるんですよ。ある意味ベスト・アルバムに近いですね。でもまだまだやれるぞって想いも込めて『ベリーグッド』なんです。僕たち、まだまだ伸びしろありますから!
――たしかに、まだまだ引き出しはありそうですね。
ユイ:ある人に言われたんですけど、300人に向けて曲を作ってたらライヴハウスが限界だけど、2000人に向けて曲を作ればもっとたくさんのお客さんが集まるよって。だから、沖縄だけでなくもっと多くの人に届けられればいいなと思ってます。
――表面的にはふざけているような歌詞だけどそれぞれにメッセージがあるし、サウンドもヴァラエティに富んでかなり凝ってるし。音楽としてちゃんと成立していないと、面白さは伝わらないと思うから、そういう意味でもポニーテールリボンズは凄いですよね。
ユイ:そういってもらえると嬉しいです。ある人はハハハッと笑って終わりかもしれないけど、違う人にはその曲の中から音楽的なものやメッセージを見つけてもらう。聴く人によって楽しみ方も変えられるっていう。 だから、僕らの音楽って「宝の地図」みたいなものですね・・・・・。あ、今いいこと言ったかも。
コフ:(深く頷く)
ユイ:でも、最終的には音楽が好きな人に聴いてもらいたいし、面白いところと音楽性のギャップも楽しんで欲しいですね。女の子ってギャップが好きですからね。
――え、そこですか?
ユイ:はい!やっぱりモテたいですから。そこはまったくぶれてません!
コフ:(もう一度深く頷く)
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