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福原美穂【BJMA2013 スペシャルパフォーマンス】インタビュー
いよいよ12月14日に放送となる音楽アワード『Billboard JAPAN Music Awards 2013』(テレビ東京系列)。今年のスペシャルパフォーマンスのテーマは「50年前、世界を変えた歌。今、私たちが歌う未来」。50年前の1963年、全米ビルボードチャートNo.1を獲得した坂本九「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」を歌うのは、デビュー5周年のアニバーサリーイヤーである2013年、精力的なライブ活動で国内外の注目を集めた福原美穂。スケール感溢れる歌声で不朽の名曲を未来へと繋ぐ【BJMA2013】の放送を前にスペシャルインタビューが到着!
悲しい時に「上を向いて歩こう」を思い出すと、
なんとか笑顔になれる
▲[YouTube]「ライジング・ハート」Music Video
――「上を向いて歩こう」との出会いは覚えていますか?
福原美穂:だいたいの曲は、小学生の時に習ったな、とか、あの時に初めて聴いたな、とか、なにかしらの記憶があるけど、「上を向いて歩こう」に関しては全くないですね。気付いたら歌っていたというか…
――いつ覚えたのか分からないけど絶対に歌える、「上を向いて歩こう」は多くの日本人にとってそういう曲ですよね。
福原美穂:そうですね。はじめての出会いは、お母さんのお腹の中にいる時だったのかもしれなくて、生まれた時点ですでに歌えたのかもしれない(笑)。それくらい、私たち日本人には自然と染みついている曲ですよね。
――福原さんは、今年6月に日本テレビ『行列のできる法律相談所』で「上を向いて歩こう」をアカペラで披露して出演者を涙させ、それが大きな反響を呼びましたが、もともとレパートリーだったんですか?
福原美穂:人前で歌うのはテレビで歌ったあの時が初めてでしたね。「スタンド・バイ・ミー」と、あともう1曲なにか日本の曲を、ってことになって…その時、ちょうど中村八大さんについての本を読んでいたこともあって、それで歌いたいなって思ったんです。その後、夏のライブでも歌わせていただいて。
――この曲を歌うのは、シンガーとしてどういう心境ですか?
福原美穂:「上を向いて歩こう」という曲は、落ち込んで泣いてしまった時になんとか笑おうとする、そんな時の自分の感覚にとっても似ていて。だから、自分の背中を押してくれる一曲でもありますね。悲しい時に「上を向いて歩こう」を思い出すと、なんとか笑顔になれる。そうやって、私だけじゃなく色んな人のそばにある、心に寄り添う曲なので、歌う時には、悲しいことや、その時の自分の感情を思い出しながら歌うようにしていますね。
――【BJMA2013】スペシャルパフォーマンスでは、オリジナルの日本語詞と英語詞、両方で披露されるそうですが、それぞれの言語で歌う上での違いや新たな発見はありましたか?
福原美穂:改めて日本語の繊細さを感じましたね。今回歌わせていただく英語詞は、テイスト・オブ・ハニーのバージョンではなく、永六輔さんの日本語詞に基づいたものなんですが、それでも日本語はひとつの事柄について、いくつもの言い方や表現があったり、色彩も豊かだったり…その微妙なニュアンスは、英語詞のうえでは、とってもシンプルでストレートな歌詞になりますよね。なので、自分としては、少しテンションを変えて歌うようにしたいなと思っています。
カヴァーは、歌い手としての表現力が試される、
求められるものでもありますよね
――今回、「50年前の曲を未来へ繋ぐ」というコンセプトですが、福原さんは50~60年代のR&B/SOULをよく聴かれるそうですね。音楽リスナーとして、どのようにしてそれらに辿り着いたんですか?
福原美穂:私が育ったのは90年代なので、最初に誰かのカヴァーを耳にして、そこからオリジナルに辿り着く、っていうことが多かったですね。例えば、マライア・キャリーがカヴァーしている曲を好きになって、じゃあ原曲も聴いてみようっていう感じで。それで実際に原曲を聴いたりするうちに、50~60年代の音楽ならではの「生音」に魅了されたんです。今みたいに技術が進んでいないからこそ、感情がリアルに音に表れていたりとか、ピアノが片方のチャンネルからしか聴こえないとか…そういうアナログな部分も含めて好きになって。そこから古い音楽を聴き漁るようになったんです。
――福原さんはそういった曲をライブで披露することもありますよね。
福原美穂:そうですね。いい曲はもちろん誰が歌ってもいい曲なのですが、カヴァーは、歌い手としての表現力が試される、求められるものでもありますよね。エルヴィス・プレスリー、ビリー・ホリデー、ニーナ・シモンのように、表現力に幅がある歌い手だからこそ、いろいろなカヴァー曲をチョイスすることができる。私もそういう歌い手になりたいですね。
――実際に福原さんが女性の曲も男性の曲も歌いこなせるのは、広い音域と表現力あってこそだと思います。個人的に、福原さんの歌声は中~低音もすごく魅力的だなと感じていて。
福原美穂:それは嬉しいです。実は小さい頃から、あまり高音が好きではなくて…高音ヴォーカルが主流の90年代J-POPをリアルタイムで聴いていても、なんだか耳が痛いなあって感じていたんですよね。自分としては、今はまだ全然下(低音)が足りていないんですけど、ただ広い音域の歌声を持っているだけじゃなく、マライア(・キャリー)のように低音がきちんと出る、っていうのを目指しているんですよね。
――ライブで披露するカヴァー曲の選曲基準は?
福原美穂:私は、もし自分がリスナーだったらっていうのをまず考えるんです。そのシチュエーションで聴いたら楽しいだろうなとか、盛り上がるだろうな、とか。それはカヴァーに限られたことじゃなく、自分の曲を選ぶ時も同じ。なるべく客観的になって、色々と妄想しながらセットリストを決めるようにしていますね。
――妄想?
福原美穂:リスナーのイメージを自分の中で膨らませるんです。私、ライブの当日も一度お客さんと同じルートで会場の入口からステージの前まで歩いてみるんですね。みんながどういう気持ちでここまで来てくれるんだろうっていうのを、実際に自分で体験してみて、それからステージに立つようにしてるんですよ。
春が来たらちゃんと緑が育つように、
まずは種を撒く時間を持ちたい
――ステージにかける熱い思いがあるからこそ、そこまで徹底されているんでしょうね。
福原美穂:今年、トニー・ベネットやポール・マッカートニーのライブを観て、長く歌い続けられる人になりたい、長く愛される曲を作る人になりたいって、心から思ったんです。87歳のトニー・ベネットの歌声を聴きながら、同じシンガーとして、自分も80歳を過ぎてもステージに立ちたい、その世界を体験をしてみたいって思いましたし、先日のポール・マッカートニー公演は、父と姉と一緒に観に行ったんですけど…改めて世代を超えて愛され続ける音楽の素晴らしさを感じましたよね。
――私もポール・マッカートニー公演は家族全員で観に行きました。
福原美穂:それってスゴイことじゃないですか。例えばレディー・ガガのライブに家族で行こうって言っても、お父さんは「行かない」っていうだろうし(笑)。家族が一緒に観られるライブってなかなかありませんよね。ポール・マッカートニーのライブには、リアルタイム世代から若い子まで、全ての世代がたくさん観に来ていて…それは、ずっと歌い継がれる曲をたくさん生み出したからこそ。その偉大さを感じましたね。それに今聴いてもすごく新鮮だし、まったく飽きない。だからこそ愛され続けているんでしょうね。
――福原さんにとって2013年はどんな1年になりましたか?
福原美穂:5周年のアニバーサリーイヤーだったので、人と触れ合う時間をたくさん作りたいっていう思いが一番にあったんです。震災以降、東北にも何度か足を運ばせていただいたんですけど、私が今やれること、できることは、やっぱり直接人に会って、歌を届けることなんだなって痛感して。だから今年はツアーを2回、それにゴスペル・クワイヤとのクラシック・コンサートにフェス出演と、とにかくライブをたくさんやらせていただいて、本当に充実していましたね。
――バンドセットからクワイヤとの共演、そしてピアノデュオと、ライブのスタイルもとにかく幅広いですね。共演者も350人から1人までという(笑)。
福原美穂:そうですね。今年は「七変化」以上だったかもしれないです(笑)。でも、目標に向かって日々考えて、行動して…無駄な日を1日も過ごさなかったって、胸を張って言える1年でしたね。
――さらに今年は、フジロックやアラバキなどフェスにも精力的に参加されていましたね。
福原美穂:そうなんです。今年はかなりたくさんフェスにも出演させていただいて。自分の名義だけではなく、Charさんのステージでセッションしたり、佐藤タイジさんやSOIL&“PIMP” SESSIONSと共演したり…とにかく色んなところに色んな形で出没しましたね、イメージを変えて。
――まさに「七変化」ですね(笑)。そんな怒涛の1年を終え、来年2月のクラシック・コンサートをもって当面のあいだ充電期間に入られるそうですね。
福原美穂:5周年アニバーサリーイヤーをとにかく全力突っ走ってきて、多くの人からパワーもたくさんもらったと同時に、自分自身のパワーもたくさん使ったんですよね。だから、この1年で自分の持っているものをすべて出し切ったな、燃やしきったな、っていう気持ちがあって。全部アウトプットできたからこそ、次のステップとして、また新たに色々なことをインプットしていきたい。今回、歌わせていただく英語詞のなかに、「Spring will come soon, greens awaiting to grow (じきに春が来るだろう、緑が育つのを待っている)」っていうフレーズがあるんですけど、春が来たらちゃんと緑が育つように、まずは種を撒く時間を持ちたいなって思っているんです。
番組情報
『Billboard JAPAN Music Awards 2013』2013年12月14日(土)16時よりTXN系列6局ネット(テレビ北海道、テレビ東京、テレビ愛知、テレビ大阪、テレビせとうち、TVQ九州放送)にて放送
関連リンク
ライジング・ハート/BEYOND
2013/06/05 RELEASE
SRCL-8275 ¥ 1,282(税込)
Disc01
- 01.ライジング・ハート
- 02.BEYOND
- 03.Surely Someday
- 04.ライジング・ハート -Sing with Miho and Gospel version-
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