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Salley 『その先の景色を』インタビュー

Salley 『その先の景色を』 インタビュー

 アニメ『トリコ』主題歌「赤い靴」でメジャーデビューし、一気に注目を集めた大型新人ユニット Salley。ニューシングル『その先の景色を』リリースタイミングとなる今回のインタビューでは、自分の歌声に自信が持てなかった女の子 うらら(vo)と、そんな彼女を覚醒させることになったミュージシャン 上口浩平(g)の物語。そして2人が見たい“その先の景色”について語ってもらった。

「誰も私の歌なんか聴きたくないんじゃないか」

Salley(サリー) - その先の景色を (short ver.)
▲Salley(サリー) - その先の景色を (short ver.)

--シングル『赤い靴』でのデビューから4か月。PV再生回数が50万回を超えたり、有線ランキング1位になったり、テレビでも特集が組まれたりと、メジャーデビューした感を味わっていると思うんですが、実際のところはどう?

うらら(vo):ファンの方がイベントに来てくれたり、本当にたくさんのスタッフが関わっていることに気付いたりする中で、だんだん事態の大きさが飲み込めてきたというか。最初は訳も分からず、前だけ見てバッと走っていく感じだったんですけど、今は「これだけの人が応援してくれてるんだから、私が一番頑張らなくちゃいけない」って思ったり、そういう責任感や使命感みたいなものはすごく強くなったなって。

--それは重圧ではない?

うらら:むしろ良い刺激!……かな。自分は何もないとだらけちゃう人なので(笑)、きちっと立っておく為にも今ぐらいの感じがいい。

--では、メジャーデビュー直前。『赤い靴』リリース前ってどんな心境だったりしたんですか?

うらら:……どうだったんだろう? 余裕がなかった。撮影もレコーディングも初めて、全部やることがゼロからのスタートだったので。今、当時の写真とか見るとビックリするんですけど、立ち方がすごく汚かったりするんですよ! 「よくその髪型で写真撮ったね?」ってツッコみたくなったり、自分で自分にすごく腹が立つんですよ(笑)。多分、そんなところを気にしなくちゃいけないことも分かってなかったし、意識する暇もなかったっていうか。……なので、これからはちゃんとしようと思います。

--(笑)。それだけ忙しくしているのに、全く騒がれず、シングル1枚で終わっちゃったらどうしよう的な不安はなかった?

うらら:私はあんまり考えないようにしてます。今、自分たちや周りの人たちがどれだけ頑張ったかの結果が出るだけなので。それに自分たちが自信持っているものを、周りの人たちがみんな「良い」と言ってくれてるんだから、今はそこを信じるだけでいいんじゃないかなって。

--実際に『赤い靴』が世に出て、いろんな反響や感想があったと思うんですけど、どんなことを感じたりしました?

うらら:ちゃんと聴いてくれるんだなって思いました。ラジオ局の人とかが「良いね」「ラジオライクだね」って言ってくれたりして。新人アーティストなんてゴマンといると思うし、ましてやラジオで流れる曲数とかって凄いと思うんですよ。その中でちゃんと聴いてくれて、感想を返してくれてる。

上口浩平(g):自分が拘っていた部分とかも、ちゃんとキャッチしてくれていたりして。制作していると、「自分の音楽的範囲と、世の中の範囲がズレてたらどうしよう?」とか考えちゃったりもするんですけど、あの作品は作品で自分が一番気持ち良いと思う状態で仕上げられた楽曲で、それに対して皆さんが細かく感想を言ってくれたり、「ここ聴いてほしいな」っていう部分を捉えてくれたりしたので、「次はこういう曲を作ってみたいな」って創作意欲も湧いてきてます。

--そうした感想を聞いてきた上で、Salleyの魅力ってどんなところにあると思いましたか?

うらら:個人的には「自分の声なんて誰も必要としてない」ってところから始まっているので、全く自信が持てなかったんですよ。だけど、『赤い靴』がリリースされて、周りから「他にないよね」って言われたり、「ちょっと特殊な声だよね」って言われるようになって。そこでようやく「あ、スタッフたちも嘘ついてなかったんだ。おだててるだけじゃなかったんだ」と思えた(笑)。なので、そこもSalleyの魅力になってるのかなって。

--以前は、自分の歌声の独自性に気付いてなかったんですか?

うらら:ないです。上口くんと出逢うまでは「誰も私の歌なんか聴きたくないんじゃないか」ぐらいな感覚になっていたので。例えば、ローリン・ヒルさんとかに憧れがあるんですけど、彼女のようにソウルフルでパワフルな歌声を自分は持っていないし、自分の声なんて……って思っていたので。だからそれが覆ったのは凄いなって思う。デビューが決まった時点でも疑ってましたからね。「本当は私なんて……、本当は誰でもよかったんじゃ?」みたいな。

--どれだけ疑心暗鬼なんですか(笑)。

うらら:私、そういうところがあるんです。全部、妄想で終わるんですけど。だから『赤い靴』がたくさんの人に聴いてもらえて、やっとその疑いは払拭されていったという。

--上口さんは、彼女の声のどんなところに魅了されて、自分の曲を歌わせたいと思ったんでしょう?

上口浩平:すごく平べったい言い方なんですけど、一声聴いて「良いな」と思ったんです。「自分の楽曲にはこういうタイプのボーカルが合うな」ってなんとなく見えたんですよね。

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初のアリーナライブでパニック「違う、違う、なんだっけ!?」

Salley(サリー) - 初のアリーナLIVE映像~その先の景色を~
▲Salley(サリー) - 初のアリーナLIVE映像~その先の景色を~

--ということは、Salleyの音楽によってボーカリストとして覚醒した部分はあるんですかね?

うらら:あります。間違いなくある。先日、昔の自分の声を家で聴いてみたんですけど、力みがあったりとか、とにかく恐ろしい内容でして(笑)。上口くんの作るメロディーラインってすごく難しくて、普通に歌おうとすると綺麗に声が出ないんですよ。ある程度リラックスして、力抜いた状態で歌った方が綺麗に乗る。それに気付けた今の歌声は、自分で聴いても昔より明らかに良くなってるんです。私は自分の声がコンプレックスだったから、自分の音源を聴くのは嫌だったんですけど、Salleyは普通に何回も聴ける。

--Salley=J-POPにアイリッシュサウンドを融合させた音楽スタイルと、現時点では説明できると思うんですけど、上口さんは元々アイリッシュ音楽が好きだったんですか?

上口浩平:自分のバックグラウンドにめちゃくちゃあるか?って言われたら、他のジャンルに比べてないほうだと思うんですけど、とにかく耳に入ってきやすいジャンルだなとは思っていて。アイリッシュのケルト民族とかって、ギターのペンタトニックスケール……ペンタトニックって5音階なんですけど、それを基調として作られている。それってギタリストだったら誰もが通るようなスケールだったりするので、自分にとって取り組みやすいジャンルでもあったんですよね。結果、それがうららの声に一番合っていたので、選択としては良かったなって。

--プロフィールには“和製クランベリーズ”とも称されていると記してありますが、クランベリーズは好きだったんですか?

上口浩平:兄貴がよく聴いてて、その影響でよく耳にはしてました。

--“和製クランベリーズ”という言葉は誰が?

上口浩平:これは多分、大人の……

一同:(爆笑)

--行く末は「ゾンビ」みたいに分かり易くヘヴィな曲も?……と思ったんですけど、そういう訳ではなさそうですね(笑)。ただ、今後もアイリッシュの匂いは残していく?

上口浩平:そうですね。そこに助けられる部分もあるだろうし、苦しめられる部分もあると思うんで、良い付き合い方ができればなと思ってます。

--8月31日に広島グリーンアリーナで行われた【SOUND MARINA’13】へ出演。初のアリーナライブは、実際に体験してみていかがでした?

うらら:めちゃめちゃ気持ち良かったです。私、人生で初めて観に行ったコンサートがMISIAさんの大阪城ホールだったんですけど、自分の中で最大級のライブってそこだなと思ってて。私、すごく遠い席だったけど、ちゃんとMISIAさんの歌が響いたんですよ。で、自分も大きいステージで歌うってなったときに、今の自分でどこまでの距離の人に歌を届けられるのか、すごく考えたんです。ちょっと胃が痛くなるぐらい考えたんですけど、いざステージに立ったら考えていたことが全部どこかへ行ってしまって。緊張で一回真っ白になって、「こんにちは」って言うところで「ありがとうございました」って言いそうになったり、「違う、違う、なんだっけ!?」ってパニックになっちゃって。

--(笑)

うらら:自分、すごく緊張してるんだなって思ったんですけど、2曲目に「green」やったとき、オープニングアクトなのにみんなが手をすごく叩いてくれたんです。「こんなにたくさんの人がSalleyの楽曲で手を叩いてる!」って思ったらテンションが上がってしまって、最終的にただただ気持ち良くライブしちゃったんですよ。

--ただ、うららさんはライブ後も手が震えていたそうで。

うらら:終わった後にもう一回緊張が戻ってきちゃったんです(笑)。元々そんなにライブをしていた訳ではないので、ほとんど下積み時代なしでいきなりあそこに立った感じだったんですよ。で、自分が憧れたMISIAさんのステージみたいな大きなところにいるっていうのが……なんだろう? とにかく凄かったんですよね。今、思い出しても。

--でもうららさんは、前回のインタビューで「小さなライブハウスより大きい会場で歌えるようになりたいって昔から思っていたので、そうなれるように頑張りたいです」と仰っていて、早々に夢を叶えてしまった訳ですが。

うらら:アハハハ! ただ、リハやったときはすごく気持ち良くて「3曲しかできないんですか?」とか調子に乗って言ってて、いざやってみたら3曲でも凄い疲労感だったんですよ。緊張とか興奮で。「私はまだここは3曲だ」って身に染みて分かって。だからここで長時間、自分のライブをできるようになりたいなって思いました。向上心に火が着きました。

--上口さんはいかがでした?

上口浩平:Salleyの楽曲が大きいところでもちゃんと残るようにしたいなって思いました。僕らの後に華原朋美さんが出られていて、歌もすごく良かったんですけど、曲にちゃんと小室さん特有の存在感があって。「あ、こういう存在感のある曲を作れるようになりたいな」って思いました。大きいハコだからこそ響く曲を作りたいなって。

--ちなみに上口さんの「高層マンションで……冷蔵庫開けたら、全部バドワイザー」という夢は、叶いそうな気配を見せていますか?

上口浩平:今のところまだ……。この前、引っ越しのこと考えていたんですけど、まだ高層マンションは早いなって。

一同:(笑)

上口浩平:ギリでバドワイザーは行けるかどうか(笑)。

--その夢を叶える為にも、アリーナでワンマンやりたいですよね。

うらら:妄想は得意なので、大きいところでライブするイメージは常にしていて。大きい車から練習したら、小さい車はラクに運転できるみたいな。

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この道に迷いが生まれたとき、この曲はきっと戒めになる

--それを現実化する為には、何をするべきだと思いますか?

うらら:えーっと、地道な努力(笑)。

--それも大切です(笑)。

うらら:私、結構コツコツ派なんですよ。でも妄想は絶対やめない。

上口浩平:あと、時間が経っても色褪せない楽曲を作っていく。そのときそのときの流行とかは把握しなきゃいけないし、勉強しなきゃいけないし、能動的に聴いてはいるんですけど、自分的には残る曲を作っていきたいなって。

--では、今に残るJ-POPで「これは凄いな」って思う曲を教えてもらえますか?

上口浩平:小室さんの曲も凄いなと思ったんですけど、やっぱり「上を向いて歩こう」は本当に素晴らしい曲だと思います。歌詞も良いですし、アレンジ云々の前にメロディーラインだけで泣けてしまう。

うらら:私は本当にJ-POPで育ってきたので、選び切れないんですけど……例えば、Mr.Children「CROSS ROAD」、スピッツ「空も飛べるはず」、宇多田ヒカルさんの曲とか、aikoさんの曲とか、子供の頃に耳にしていた曲が浮かんでくるんですけど、どれもちゃんとその人の色が出ている。聴けば誰の曲なのかすぐ分かるし、たくさんの人に受け入れられているんだけど、個性がある。凄いJ-POPってそういうことなのかなって思います。

--Salleyが目指しているのもそういう音楽ですよね?

上口浩平:多分、そこしか目指せないタイプというか、器用にちょっとした微調整とかできないから、自分が良いと思ったものを形にするのが一番合ってる。

--新曲「その先の景色を」もその中のひとつだと思うんですが、自分たちでは仕上がりにどんな印象を?

うらら:これ、作ったのも2人が出逢ってから一番最初で、歌もすごく初期に録ったものなんですよ。「メジャーデビュー決まったんだ!?」っていうワクワク感の中で、どうしていいか分からず「熱意だけはあります、私」みたいなときの声なので、今聴くと歌い方は荒いんですけど、それが逆に今聴いても良いなって思わせる。瑞々しいというか……別に今すごく老けてる訳じゃないんですけど!

--(笑)

うらら:そういうキラキラした感じが残ってるなって。

上口浩平:この曲は、自分が音楽生活に迷いがあった時期に生まれたもので。なかなか自分がやりたい音楽を作れてなくて、それ以前に自分が作った曲を歌ってくれる人もいなくて、すごくフラストレーションが溜まっている時期だったんですよ。なんかそういう自分のモヤモヤしている部分とかをバーン!って壊しちゃえるような明るい楽曲が作りたかったんですよね。

--そこへうららさんの歌と歌詞が乗ることになった訳ですが、これは音楽で生きていくという意思表明でもあるの?

うらら:本当に一作目だったので、まず上口くんに自分がどんな歌詞を書く人なのか、お知らせする曲でもあったんです。だから自分に対しても、上口くんに対しても、やる気があるんだっていうことを表明したいと思っていて。それを書いておくと、後から自分に言い訳が効かないじゃないですか。あと、音楽の道を選んで、いろんなものを捨てて東京へ出てくるときに引き止めてくれたり、心配してくれたり、寂しいから行かないでって言ってくれた人たちへ対しても「行かせてほしい」っていう決意を伝えたかったし、その瞬間の熱意を置いておきたいなって思ったんです。自分がこの道にどこか迷いとか生まれたときに、この曲はきっと戒めになるので。

--では、最後に「その先の景色を」にちなんだベタな質問を。Salleyでの活動の先に見たい景色は、

どんな景色ですか?

うらら:やっぱり大きい空間で歌っている景色。たくさんの人の前で歌うっていうのは、ずっと夢だったので。あと、私、誰かのライブを観に行くときでも、ライブを観ている人の顔を見ちゃうクセがあって、みんなが同じところで手を挙げたりしている瞬間も好き。盆踊りも好きなんですけど、知らない人同士がみんな同じ動きをしている。それにすごく感動するんです。その中心が自分たちで、みんなが私たちを見て、同じ気持ちで盛り上がるっていうところへは行きたいなって思います。

--上口さんは?

上口浩平:ここでまた高層マンションって言うとアレですよね?

--それしかないんですか?

一同:(笑)

上口浩平:でも僕も大きいところではやりたいです。武道館とか、どんな感じなのか知りたいですし。

うらら:あと、大阪だったら大阪城ホール。ただ、その前にひとつずつのライブを大事にしていかないといけないし、まずは『その先の景色を』を引っ提げたフリーライブツアー。今まで2回ほどフリーライブツアーはやらせて頂いたんですけど、回を重ねる毎に来てくれる方が増えたりとか、何度も来てくれる方がいらっしゃったりとか、サイン会で直接触れ合える機会があったりとか、そういう実感ができるライブも好きで。なので、今回も堪能したいし、『赤い靴』のときから来てくれている人たちには「うらら、大きくなったな」って思ってもらえるように絶対したいなって思います。

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Salley「その先の景色を」

その先の景色を

2013/10/02 RELEASE
VICL-36834 ¥ 1,100(税込)

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Disc01
  1. 01.その先の景色を
  2. 02.fragile
  3. 03.green (acoustic studio session)
  4. 04.その先の景色を (instrumental)

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