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片平里菜 『夏の夜』インタビュー
「早く抜け出したいですね。
たくさんいる女性シンガーソングライターの枠から」
メジャーデビュー前に大型番組『音楽の日』へ生出演し、テレビ東京『ザ・ミュージック』で特集も。全国ラジオ&CS47局がパワープレイ獲得し、ツイッターではベッキー等の著名人も絶賛と、正しく“大型新人”に相応しい状況を生んでいる女性シンガーソングライター 片平里菜だが、その素顔はメジャーデビュー曲「夏の夜」同様、素朴で、健気で、嘘をつけない不器用な女の子である。しかし、その胸には青い炎をいつでも燃やしており、時として「売れないと意味がない」や前述したような大胆発言も放ってみせる。
やがてはYUI、miwaなど先輩シンガーソングライターと肩を並べ、福島県を代表するアーティストになるであろう、今、最も面白いニューカマー。片平里菜のありのまま、ぜひご覧下さい。
やっぱりプロ、お金もらっている以上はプロですもんね!
--ブログ見てたら、山崎まさよしさんに直接ギターを教わったそうで。凄いことだと思うんですけど。
片平里菜:福島テレビの50周年記念イベントで、山崎まさよしさんや元ちとせさんたちと共演することになって、最後にみんなで山崎さんの「セロリ」を歌おうってことになったんです。それで私は別にギターは弾かなくてよかったんですけど、耳コピで「どのコードなんだろう?」みたいな感じで楽屋で弾いていたんですよ。そしたら教えてくれたんですけど、「まずAメロはこう。はい、500円ね。で、Bメロはこう。はい、500円」って受講料が発生していき(笑)。
--本当に払った訳じゃないですよね?
片平里菜:払ってないです(笑)。でも山崎さんにギター教わって、その値段なら全然高くはないですよね。
--片平里菜って先輩ウケいいですよね。自分から甘えなくても、先輩がいろいろ教えてあげたくなるタイプなんでしょうか?
片平里菜:そうかもしれないですね。弾き語りでひとり行動していることが多いから、そうやって構ってもらえないと寂しい。自分からアピールは全くしないんですけど……。でも最近は同世代のアーティストさんとかバンドさんと仲良くなりたいと思い始めてます。
--まだいないんだ?
片平里菜:いるっちゃいるけど、そんなにふざけ合ったりする人はいないんで……近くで仲良くしている人たちを見ると「いいなぁ」って(笑)。
--誰かと仲良くなれるといいですね。
片平里菜:そうですね。でも自分が自分の殻を破けてないんです、まだ。仲良くなりたい人と同じ場所にいても喋れない。そこをまず変えていかなきゃいけないですね……。
--話す機会があっても、次会うときには「先日はどうも」ぐらいしか言えない。
片平里菜:そうそうそう! そうなんですよ、どうすればいいんですかね~? ……仲良くなりたい。
--他に悩みは?
片平里菜:悩みは……今後の不安とか……
--さ、今日も掘り下げますよー。前回は「始まりに」配信タイミングで、片平里菜、人生初のロングインタビュー(http://bit.ly/YWzJRq)を敢行させて頂きましたが、あれから約半年。メジャーデビューの発表もして、どんな日々を送っていたんでしょうか?
片平里菜:2月にメジャーデビューの発表ライブがあって、そこから単独で弾き語りツアーをして、5月に業界向けコンベンションを行って、7月から夏フェスシーズンが始まって、今に至る感じです。忙しくしています。
--メジャーデビュー発表時は嬉しそうでしたけど、だんだんプレッシャーとか葛藤とか出てきてませんか?
片平里菜:その通りですね(笑)。メジャーデビュー決まったときは嬉しい気持ちが多かったと思うんですけど、今はいろいろ具体的になってきて、自分の名前がどんどん世に出ていく状況に対して、自分の実力がちゃんとついていけるのか。追いつけるのかっていう不安は多少なりともありますね。そこが本当に戦いだなと思いますけど。毎回、作品は納得するモノを出していきたいとも思うし。
--もうすでに「追いつけてない」って思い始めてるの?
片平里菜:いや、今のところは良い感じです。ただ、今後に対する不安がある。【閃光ライオット2011】で審査員特別賞を受賞してから準備期間を二年ぐらい頂いたので、その間にいっぱい曲も作れたし、自分が何が嫌で何が好きなのかも分かってきたんですけど、要するにそれが通用するのかどうかとか。
--ただ、片平里菜は前回のインタビューで「届けたいものがあるなら、戦わなきゃいけないと思うし、売れなきゃいけないというか、売れないと意味がない」と言いました。
片平里菜:そんなこと言ったかぁ。
--言っちゃいましたし、載せちゃいましたし、結構読まれちゃいました。
片平里菜:見出しが「売れないと意味がない」でしたもんね(笑)。でもその想いは変わってないです。本当に自分がやりたいことをやって、それでちゃんと結果を出せるところまで持っていきたい。やっぱりプロ、お金もらっている以上はプロですもんね! まだまだその意識は薄い方だと思うんですけど、そこはもっと意識して、本当に戦っていかなきゃなって思う。
--新人さんの口から「戦わなきゃいけない」ってあんまり耳にすることないんですけど、片平里菜は言い続けてますよね。その言葉が出てくる要因って何なんですかね?
片平里菜:なんだろう? いろんなしがらみが……
--しがらみって言葉で大丈夫(笑)?
片平里菜:なんて言えばいいんだろう? うーん……世間の反応もそうだし、こうやっていろんな人たちと仕事させて頂いている以上、やっぱり売っていかなきゃいけないじゃないですか。次から次とシングル出して、アルバム出して、ツアーやって、どんどんどんどん次に進んでいかなきゃいけないし、そこでちゃんと自分を持って、自分の意思で表現し続けられるのか。そういったところだと思います。
リリース情報
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Interviewer:平賀哲雄
否定的な意見をひっくり返していくことを考えると楽しい
--「自分を持って、売れないと意味がない」ということですもんね。
片平里菜:音楽活動が充実していくことで、あんまり考えることが少なくなってしまったり、だんだん曲の内容が薄くなっていったりする可能性って低くないと思うんですよ。大体、1stアルバムが一番良かったりするじゃないですか。特に女性シンガーソングライターとかって。でも私はどんどん濃いものにしていきたい気持ちが強いんで、これからもっといろんなこと考えたり感じたりしたい。
--1stアルバム出す前から“1stアルバム超え”というアーティストの命題について考えてるんですね。
片平里菜:嫌なんですよね、だんだん下がっていくのが。だからいろんなことに目を向ける勇気も必要になるだろうし、忙しい中でも福島の人たちとは関わっていきたいと思うし。いろんなところへ行きながらも、原点というか、福島という場所を見つめていきたいとも思います。
--今話してくれた“戦い”ってずっと続くものだと思うんですけど、戦っていけそう?
片平里菜:今はこんなこと言ってますけど、どうですかね(笑)? でもやっぱり音楽活動はずっと続けていきたいし。
--一生歌っていきたい人?
片平里菜:そうですね。今は若くて勢いのあるうちにとことん試したい、っていう気持ちもあるし、でももうちょっと大人になったらゆったりと音楽やっていくのもアリだと思うけど、いずれにしても表現する幅を広げたい。絵を書いたりするのも好きだし……表現することをずっと辞めたくない。
--それは小さい頃からですもんね。
片平里菜:なんか書いてましたよね。外国人が出てくる、結構SFな小説(笑)。(詳細はこちら)
--6月29日にTBSで放送された13時間超の大型番組『音楽の日』へ生出演し、30日にはテレビ東京『ザ・ミュージック』で特集も。どうですか? テレビは。
片平里菜:テレビには元々すごく抵抗があって。自分を作って出なきゃいけないイメージが強かったんですよ。短い枠でどれだけ自分の魅力を引き出せるか、みたいな。それに最初は違和感を覚えていたんですけど、最近はそれもちょっとずつ受け入れられてきたというか、それに抵抗感がある自分のプロ意識のなさにガッカリしたというか。
--その抵抗感が芽生えた要因って何だったんですかね?
片平里菜:ずっとライブハウスで活動してきたし、お客さんにカメラをカシャカシャ向けられたりすると、すごく嫌な気持ちになっていたんですよね。自然になれないから。でも「テレビはテレビ、ライブはライブ」って切り分けて考えるようになったら、テレビでも歌えるようになって、今ではもう楽しんでます。何でも来いって感じ。
--『音楽の日』は、有名な方々がたくさん出演していました。そこに自分がラインナップされてるのは、どんな気分でした?
片平里菜:なんか……おかしいですよね。おかしい。
--(笑)
片平里菜:「なんで、目の前に中居(正広/SMAP)さんがいるんだろう?」って思って、何を話せばいいか分からなくなっちゃったりして(笑)。でもテレビ出ると、全国で応援してくれてる人からの反応が凄いし、家族とか友達とか知り合いも喜んでたみたいで、「地元のちっちゃいライブハウスで歌ってた片平里菜が、中居さんと安住(紳一郎アナウンサー)さんに挟まれて喋ってるよ!」みたいな。
--ただ、そうやって世に出ていくと、良い意見ばかりでなく、悪い意見。まぁ意見ならまだしも、誹謗中傷みたいなものもあったりして、目や耳にしたくなくても入ってきたりします。そこについてはどんなことを感じていますか?
片平里菜:いくつかありますけど……気にしますよね。でも逆に楽しめるというか。まだその人たちが知らない私もいるし、その意見や印象をひっくり返していくことを考えると楽しい。やっぱりそういうことを言ってくれる人って、無関心な人より……というのはありますよね。「こういう風に見られてるんだ?」って自分も考えさせられるし、明らかに悪意のある言葉だったらイラッとはしますけど。
--では、否定的な意見もウェルカムという。
片平里菜:もうちょっと来てほしいと思いますよ。2ちゃんとか見ていても。
--もっと叩いてくれた方が燃えると(笑)?
片平里菜:燃えますね! ……でもどうだろう? 実際にいっぱい来ちゃったらどうなるんですかね?
--一定のラインを超えたら面白くなると思いますよ。「今度はどんな反応が来るんだろう?」って。
片平里菜:そっか。でもやっぱり傷付いたりもするんですかね?
--傷付いたら「傷付いた」って歌にしちゃえばいいんだよ。表現者なんだから。
片平里菜:逃げ場はいっぱいありますね(笑)。
--そんな片平里菜のデビューシングル『夏の夜』がいよいよリリースされました。まずこの曲を最初のシングルに選んだ理由を教えてください。
片平里菜:弾き語りを始めて間もない頃に作った曲で、地元のライブハウスで始めて歌ったオリジナル曲だったし、【閃光ライオット2011】で審査員特別賞を受賞するきっかけにもなった歌で。初めてたくさんの人に受け入れてもらった曲だったので、メジャーデビューシングルにするのは「夏の夜」しか思い浮かばなかった。
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Interviewer:平賀哲雄
YUIさんが先頭を切ってくれたから私も真っ直ぐ歩ける
--どのような想いや背景があって生まれた曲なの?
片平里菜:本当に歌詞のまんまです。夏の夜、ひとり、ギターを弾いてた……っていう状況で、好きなコードがあって、そこにメロディーが綺麗に乗って、すごく響く言葉のフレーズが出てきて、自然と出来上がった曲。だから自分が何を歌いたくて作った曲かは分からなかったんですけど、今思うと、当時の悶々としてる気持ちとか、誰にも言えない気持ちとかがすごく出てるなって思いますね。あと、何故「今すぐ君に伝えたい」というフレーズを付けたのか、当時は分からなかったんですけど、今は本当に意味があって書いたような歌詞だなって。自分の部屋でひとりギターを弾いてるだけで、想いを伝えるってことも出来なかったし、自分の殻に閉じこもっていたんですけど……でもここから抜け出して、誰かに想いを伝えたいっていう気持ちはすごくあったから。
--当時、自分の殻に閉じこもっていたのには、何か理由があったの?
片平里菜:世間とのギャップを常に感じていたんですよね。学校のみんなと私って違うんだなって。友達の相談に乗ることはあっても、自分の話はしてなくって。多分話しても解決しないし、逆にどんどん絡まっていってしまうというか。だから心を開けなかったし、ちょっと壁を作ってましたね。人といる方が楽しいはずなんですけど、私にとっては居心地が悪かった。逆に孤独を感じてしまったり。ひとりでいるのは寂しいんですけど、その方が居心地は良いし。
--どうしようもない感じですね。
片平里菜:どうしようもない。行き場のない感じ。それを音楽にぶつけていた感じだった。でも歌手になりたいというか、夢があったので、何とかして前を向きたい気持ちは常にありましたね。
--歌手を目指すことが、自分の状況を打破するんじゃないかと思っていた?
片平里菜:自分が歌手になったり、音楽で表現できるようになること。その夢が現実逃避になっていたんじゃないかと思います。
--でもそれがあるから進めた訳ですし、この曲が出来たし、もっと言ってしまえば、この曲通りの人生を歩めている訳ですよね?
片平里菜:そうですね。だからこの曲がいろんな人に共感してもらえたことは、すごく感動したというか、そのときにやっとひとりじゃなくなった気がした。
--それから人と喋るのも少しずつラクになっていった?
片平里菜:本当にそうですね。音楽活動を始めてからは解(ほぐ)れていった。ライブハウスっていろんな思想が渦巻いていい場所だし、秩序のない場所だから、私も自由になれたし、居心地がよかった。
--この曲に共感してもらえて感動したと仰ってましたけど、メジャーデビューシングルとして世に放たれる以上は、これまでの非じゃないぐらい多くの人に届く訳ですけど、そこについてはどう思いますか?
片平里菜:これからは人に影響を与えていく立場になる。その自覚はすごく持つようになってきたので……ちょっと感覚が麻痺してきましたね。曲を聴いてもらうこともちょっとずつ当たり前になってきてしまったり、良くも悪くも強くなってしまった気がします。でもそこから立ち返る為の「夏の夜」でもあるっていう。初心を思い出させてくれる曲。
--ちなみに「夏の夜」の「本当の自分は弱くてずるくて 悔しかった…」ってどんなとき思ったの?
片平里菜:夏の夜です。
--それは分かってる(笑)。質問が悪かったね。どんなときに思ったりしますか?
片平里菜:行き場がないと言いながら、どこにも行こうとしない自分にだったり、白黒決められない自分に対してですかね。そういう優柔不断さで人を傷付けてしまったり。
--そういう自分は今も顔を出したりするんですか?
片平里菜:そういう自分はもちろんいるんですけど、今はそれをちゃんと受け入れられているから、周りに迷惑をかけないで済んでる。って断言できるかは分からないんですけど、責任は持てるようになったのかな? …………このフレーズ、よく出てきたなー。
--我ながらよく出てきたなー(笑)?
片平里菜:よく出てきた。
--そんな「夏の夜」、どんな風に響いていってほしい?
片平里菜:当時の自分と同じように、将来に不安を抱いている人とか、何かに葛藤している人によって、ひとつ勇気を持てる1曲になったらいいな。
--片平さんは「夏の夜」でメジャーデビューですけど、2013年は片平里菜のみならず、新人女性シンガーソングライターが次々とデビューしたり、クローズアップされたりしてますけど、気になるもの?
片平里菜:気になってます。「気になってない」と言いながら、YouTubeとかで聴いちゃいます(笑)。でも良い状況ですよね。以前はYUIさんに比較されることに抵抗があったんですけど、YUIさんが先頭を切ってくれたから私もこうやって良い感じで筋道を真っ直ぐ歩けるんですよね。先輩が歩きやすくしてくれた。そう気付いたら、女性シンガーソングライターがいっぱい出てくることは悪くない。なんて言いながら、もしかしたら私が埋もれていってしまうかもしれないんですけど、だからこそ戦えるし、ライバルがいっぱいいるって良いなって。
--その中で、自分はどんなアーティストでいたいなと思いますか?
片平里菜:いろんな女性シンガーソングライターがいますけど、素朴だったり、嘘をつけないところが、もしかしたら自分の個性なのかもしれないし、そういうところを失わずにいたい。それで唯一無二の存在になれたらいいですね。
--僕は片平里菜を紹介するときに「やがてYUIやmiwaのライバルになるであろう……」という書き方をしてるんですけど、「彼女たちと似ている」では、そこに到達できないんですよね。どれだけ片平里菜らしさを絞り出せるか。
片平里菜:絞り出す。そして早く抜け出したいですね。たくさんいる女性シンガーソングライターの枠から。唯一無二の人、aikoさん、YUKIさん、Superflyさん、YUIさん……いろんな人がいますけど、私も早く「片平里菜は片平里菜」って言ってもらえるようになりたい。他の何者でもない人になりたいです。
--では、読者の皆さんにメッセージを。
片平里菜:読者の皆さんへ。メジャーデビューして、たくさん曲出して、ライブもいっぱいしたいと思っているので……ぜひ友達になってください!
--話が最初に戻りました(笑)。
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Interviewer:平賀哲雄
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