Special
楽園おんがく Vol.4:DJ SASAインタビュー
旅と音楽をこよなく愛する、沖縄在住のライター 栗本 斉による連載企画。Vol.4は、沖縄の各エリア(沖縄本島周辺、慶良間、宮古、八重山、西表)でフィールドレコーディングした自然音と沖縄音楽をミックスした『RYUKYU HEALING MUSIC』シリーズを7月24日に5枚同時リリースしたDJ SASAのスペシャルインタビュー!
▲DJ SASA
大ヒットした『ジブリんちゅ』でお馴染みのレゲエのビートと沖縄民謡的なヴォーカルを組み合わせたカヴァー企画“んちゅ”シリーズなどで、沖縄音楽のエッセンスをポップに聞かせてくれるDJ SASA。
プロデューサーやサウンド・クリエイターとして、現在の沖縄音楽シーンに欠かせない彼が新たに手がけたのは、なんとアンビエント作品。しかもこの『RYUKYU HEALING MUSIC』と題された新シリーズは、5作品一挙リリースという画期的なものだ。
今回は新しい沖縄音楽を知るには欠かせないDJ SASAにフォーカスし、沖縄音楽との関わりや『RYUKYU HEALING MUSIC』のことなどを聞いてみた。
――DJ SASAさんは、沖縄出身ではないんですよね。
DJ SASA(以下、DS):そうなんです。高知出身です。
――なぜ沖縄音楽に興味を持ったのですか?
DS:中学3年でYMOに出会ったんですけど、「Absolute Ego Dance」に沖縄風のお囃子などが入っていて「なんだ、これは?」と思ったのがきっかけです。そこから喜納昌吉&チャンプルーズのファースト・アルバムを手に入れて聴いたりして好きになりました。
――初めて沖縄に行ったのは?
DS:24歳の時に久米島に旅行に行って、ビーチでスタジオ・ワンのオムニバスと東京スカパラダイスオーケストラのファースト・アルバムをディスクマンで聴いて、「なんだ、この気持ち良さは!」って感じたのが、最初の沖縄体験です(笑)。
――DJとして沖縄でイベントも?
DS:会社員時代に沖縄出張があって、その当時スカイメイツというスカのバンドがいたんですよ。それで、「東京でスカのDJをやってる者ですけど、今度沖縄に行くのでご飯でも」と連絡したら、「じゃあ、レコード持ってきてください」って言われてイベント組んでもらったのが最初。それが盛り上がったので、その後は沖縄各地で自分企画のイベントを行うようになりました。
――クリエイターとして関わることになったのは?
DS:ちょうど10年前にポリスターからお話を頂いて、『琉球レアグルーヴ』というコンピを作ったんです。それが好評で、今度はそのリミックス盤を出したりして。で、5年ほど前にスカのリズムに乗せて沖縄風のこぶしを回して歌うJ-POPカヴァー集『SKA LOVERS』を作ってからは、徐々に沖縄関連の仕事が増えて行ったんです。
――大ヒットした『ジブリんちゅ』もその流れですね。
▲2011年作品『ジブリんちゅ』
DS:そうそう、“んちゅ”シリーズももう6枚目です。どんどん沖縄との関わりが深くなって人脈も増えて行きました。だから、今はもう、DJの仕事よりもトラックを作る仕事の方が多いですね。年に2回くらいしかDJやってないし(笑)。
――すごくたくさん仕事をされていますが、ご自身の中でのメインは?
DS:本来はスカやレゲエの仕事が中心だったんですよ。でも、最近は沖縄モノしか企画が通らないくらい(笑)、沖縄関連の仕事がメインですね。
▲RYUKYU HEALING MUSIC
[TRAILER]
――さて本題なんですが、今回の『RYUKYU HEALING MUSIC』は、SASAさんのなかでは異色作だと思います。まず企画のきっかけは?
DS:“んちゅ”シリーズの共同プロデューサーであるDA-HONDAと、「ブライアン・イーノのアンビエント世界を沖縄音階でやると面白いんじゃない」って、飲みながら話していたんですよ。それでデモ・トラックを去年の秋口に作ってみたら好評で、企画が通ったんです。
――5枚同時リリースになったんですが、“OKINAWA”、“KERAMA”、“MIYAKO”、“YAEYAMA”、“IRIOMOTE”と、5つのエリアに別れていますね。
▲『OKINAWA ambient』
DS:なんとなくエリアを考えたら、この5つの区分になったんですよ。でも単にヒーリングだけだと面白くないから、各地のパワースポットに行って音を録ってきました。楽曲にはパワースポットの名前を付け、現地の音を音楽にミックスしています。
――じゃあ、実際にSASAさんが行って録ったんですか?
DS:そうですよ。17泊で、本島、慶良間諸島、宮古島、八重山諸島、西表島を周りました。
――すごい!
DS:しかも、これまでカヴァーばかりやってたから、実は初のオリジナル作品なんです。DJ SASAの単独名義も初めて、アンビエント作品も5枚同時も初めてと、すべて初物でした(笑)。
――作曲はどのような手順で行ったのですか?
DS:フレーズのモチーフなんかはストックもあったんですけど、数小節の短い素材くらいしかないからほぼ新曲。その短い素材などをPC上で組み合わせつつ作曲していきました。
――どのアルバムも6曲入っていて、1曲12分前後ですよね。このサイズに楽曲を膨らませるコツは?
DS:意外にDJのテクニックが有効なんです。DJって、イコライジングでバスドラムを切ってみたり、フィルターをかけてハイハットを高くしたりするんですけど、このシリーズもそういうテクニックを使っています。あとは途中でキーを変えてみたりして、ゆるやかに変化をつけています。
――三線など沖縄らしい音が散りばめられていますね。
DS:三線奏者に弾いてもらった生音をストックしてあって、それをサンプリング音源として使っています。
――それぞれのエリアで、特徴や違いはありますか?
DS:まず西表島にピナイサーラの滝というのがあって、滝の音はそこでしか録れないので、それは一番わかりやすいかも。あと、宮古島で野鳥の声を録ったり、石垣島のビーチでゆるやかな波の音が録れたり。波の音ひとつとっても、どこのビーチも違うんですよ。
――ジャケット写真もきれいですね。
DS:富山義則さんという素晴らしい写真家なんですが、ずいぶん前に写真展で僕の『琉球レアグルーヴ』を流してくれていたんです。その噂を聞いて挨拶に行って以来のお付き合いです。
――いろんなシチュエーションで楽しめそうなアルバムですが、SASAさんならどういうシーンで聴いてみたいですか?
DS:やはり眠るときかな。夜に窓を開けっ放しにして、エアコンを切って扇風機の風だけで、月明かりの下で聴いたら最高じゃないですか。カフェやヨガにも似合いますよ。ぜひいろいろと試してみてください。
栗本 斉 Hitoshi Kurimoto
旅と音楽をこよなく愛する旅人/旅&音楽ライター/選曲家。
2005年1月から2007年1月まで、知られざる音楽を求めて中南米へ。2年間で訪れた国は、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、チリ、ボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、トリニダード・トバゴ、パナマ、メキシコ、キューバの、合計14カ国。
帰国後は旅と音楽にこだわり、ラジオや機内放送の企画構成選曲、音楽&旅ライター、コンピレーションCD企画、ライナーノーツ執筆、講演やトークイベント、ビルボードライブのブッキング・コーディネーターなどで活動中。得意分野はアルゼンチン、ワールドミュージック、和モノ、中南米ラテン旅、世界遺産など。2013年2月より沖縄県糸満市在住。
OKINAWA ambient
2013/07/24 RELEASE
KICW-75 ¥ 1,980(税込)
Disc01
- 01.KUDAKA
- 02.SAIHANOUTAKI
- 03.GANGALA
- 04.SENAGA
- 05.HAMAHIGA
- 06.KATSURENGUSUKU
関連商品