当時、一緒にいたジュンジュンとリンリンが思い浮かぶんです

▲中孝介feat.高橋愛「雨の降らない星では愛せないだろう？」MV

－－中孝介×高橋愛によるデュエット、PV撮影、そしてこの対談。情報解禁前である今日（2013年6月18日）の時点では誰も想像できない組み合わせですよね？

一同：（笑）

高橋愛：これまでもゲストみたいな形でアーティストさんとコラボレーションさせて頂いたことはあるんですけど、今回は自分たち（モーニング娘。）の曲を中孝介さんにカバーして頂いて、それに自分も参加するというので不思議な感覚ではあります。

－－実際に共演してみたお互いの印象を教えてもらえますか？

中孝介：今回のレコーディングで初めてお会いしたんですけど、想像と全然違ってました。すごく気さくでいろいろ話してくれて……

▲MV撮影風景　中孝介×高橋愛（ex.モーニング娘。）

－－それまではどんなイメージだったんですか？

中孝介：僕がやってる音楽のジャンル的に、なかなかモーニング娘。さんと御一緒させて頂く機会はなかったので、なんかちょっと「自分がそばにいてもいいんだろうか？ ファンの人に怒られちゃうんじゃ？」みたいな（笑）。でも全然壁を作らずに接してくれて、すごく嬉しかったです。

高橋愛：いやいや、私は自分からガッて行けるタイプじゃないんです。でも中さんが方言の話をしてくれたりしたので（笑）、多分私も喋れたんじゃないかなって思います。

中孝介：福井（高橋愛の故郷）の方言と、奄美（中孝介の故郷）の訛りが似てるっていう話をして。何回か福井に行ったことがあって、福井の人の喋り方を聞いて似てるなって思ってたんですよ。そしたら高橋さんが福井県出身って言ってたので、似てると思うか聞いてみようと思って（笑）。そしたら「似てる！」って。

高橋愛：似てたんですよ！

▲高橋愛（ex.モーニング娘。）

－－訛りがふたりの距離を縮めたんですね。

高橋愛：そうですね（笑）。なかなかそんなことないんですけど！

－－中孝介さんに対してはどんなイメージを持たれていました？

高橋愛：こんなに喋りやすいと思ってなかったです。表情とかも凛としているので、無口なイメージだったんですよ。でも意外と砕け……

中孝介：よく言われます（笑）。砕けすぎと、たまにスタッフに怒られます。

－－そんな2人が奇跡の邂逅を果たした、そもそものきっかけ。『もっと日本。』プロジェクトがどんなものなのか、教えてもらってもいいですか？

▲中孝介

中孝介：僕は日本に生まれた訳ですけど、奄美のことですら知っているようで知らないことがたくさんあるし、日本各地にそこでしか見られないものがたくさんあると思うんです。例えば、奄美には大きい川がないので、土手がないんですけど、こっちとかで土手を見ると、見たことがない景色のはずなのに「懐かしいな」って思ったり、すごく郷愁を感じたりする。それは日本の歌にも通ずると思っていて、初めて聴いた曲でも、小さい頃の記憶が甦ってきたとか。そういう音楽がいっぱいあるんだってことを、今回はアルバム『ベストカバーズ～もっと日本。～』で表現できたらなって思ったんです。

－－今作『ベストカバーズ～もっと日本。～』の収録曲は、中さんにカバーしてほしい曲を一般からリクエストされたものがベースになってるんですよね？

中孝介：そうです。

－－そこにモーニング娘。「雨の降らない星では愛せないだろう？」を歌ってほしいというリクエストも多数あったということですよね？

中孝介：そうなんですよ、実は。

高橋愛：ビックリしました。しかもこの曲を選んでくれたっていうのが、すごく嬉しくて。私たちも大事にしていた曲だったし、当時は中国人のメンバー（ジュンジュン、リンリン）がいて、この曲で橋渡しじゃないですけど、国は違えど、歌で繋がっていられる。それを表現したくて、逆に私たちが歌詞を中国語にして歌ったり、アジアツアーをやったときにも必ずセットリストに入れていた大切な曲で。だからカバーして頂けることになってすごく嬉しくて。大事にしてきてよかったなって思うし、つんく♂さんもすごく嬉しいと思います。

▲高橋愛,LoVendoЯリリースイベント,中島卓偉バンドライブ,RYOTA,LICKS BOX他(7/12/2013)#22

－－高橋愛リーダー時代のモーニング娘。で大切に歌われてきた曲。それを自らの声で甦らせるってどんな気分でした？

高橋愛：ジュンジュンとリンリンが思い浮かぶんですよ。当時、一緒にいたメンバーが。その頃の想いを思い出す。それが音楽の力だと思うんですけど、私の中で「雨の降らない星では愛せないだろう？」はその2人のイメージがすごく強いので、「リンリンはこういう歌い方だったな」とか「ジュンジュンはこういう表情だったな」って想いながら歌ってました。

（※高橋愛は、ジュンジュンとリンリンを加入時より見守ってきており、言葉が全く通用しない外国で生活する心細さを知りつつも、リーダーとして泣きながら文化の違いを教えたり、怒ったこともある。それでも「モーニング娘。に入って良かった」とついてきてくれた2人の卒業時、彼女は「心に穴が開いた感じ」と話していた。詳細はこちら）

こんなに素晴らしいバラード曲もあるんだって驚きました

▲中孝介×高橋愛
（ex.モーニング娘。）

－－しかも中孝介さんの作品でそれを歌うという。モーニング娘。ファン以外の人にも聴いてもらえるのが素晴らしいですよね。

高橋愛：本当に。本当に有り難いです。

中孝介：いえいえ。

高橋愛：どうしても私たちの歌唱力では表現しきれないところも中さんは表現してくださってるので、物凄く伝わるものがあります。なので、この機会にこの曲の良さをいろんな人に知ってもらいたいです。素晴らしい機会を頂いて、本当にありがとうございます。

－－中さんはこの曲にリクエストが集まり、実際にモーニング娘。のオリジナルを聴かれたと思うんですが、どんな印象を持たれました？

中孝介：とにかく優しくなれる。日常で生活してて、自分の周りにあたりまえにあるものが、実はあたりまえじゃないということを気付かせてもらえる。「もし雨が降らなかったらどうなるんだろう？」って改めて考えさせられたり、歌詞に「故郷には今も 年老いた両親が元気にしてる」とありますけど、両親や友達がいてくれるからこそ自分は元気にやっていけるんだなと思ったり、そういうことに気付かせてもらえた曲です。本当に大きな愛が詰まった曲だと思いましたね。

▲高橋愛（ex.モーニング娘。）

高橋愛：私たちもこの曲をもらったとき、同じように思っていて。つんく♂さんって結構そういう歌詞が多いんですよ。「あ、そうだな」って気付かせてくれるものがある。あと、この曲に関しては、モーニング娘。は故郷がある娘、地方から上京してきたメンバーが多いから、歌詞が沁みるんです。私は実家の福井県で凱旋コンサートしたとき、ちょうどおじいちゃんが亡くなってしまった時期だったんですけど、そこでこの曲を「おじいちゃん、聞いてる？」って想いながら歌ったことがあって。ウルって……というか、もう泣いちゃってたんですけど。それぐらい感情移入しやすい。誰しも両親がいてあたりまえのように生活しているけど、この曲はそれを“雨”に喩えていたりして。

中孝介：比喩表現が素晴らしいですよね。

高橋愛：「凄いなぁ、つんく♂さん」って（笑）。

▲中孝介×高橋愛（ex.モーニング娘。）

－－この曲を初めて聴かれたとき、正直なところ「モーニング娘。ってこんな曲も歌ってるんだ？」的な驚きはありました？

中孝介：そうですね。

高橋愛：イメージ的には、きっとないですもんね。

中孝介：アップテンポでハイテンションな曲のイメージだったので。

－－「LOVEマシーン」とかのイメージですよね。

中孝介：まぁ僕もカラオケで歌ったりするんですけど。

－－それはそれで聴いてみたいです（笑）。

高橋愛：聴きたいっ！ 全部聴いてみたいです！

▲中孝介

－－中孝介、モーニング娘。カバーアルバム。

中孝介：（笑）。なので、こんなに素晴らしいバラード曲もあるんだって驚きました。それで実際に歌ってみたら、自分でも「合うな」って思って。

－－中さんのみならず、スタッフ含めて「これ、めちゃくちゃ良い曲！」となったという話を聞いてます。

中孝介：それは本当で。ホームページでリクエストを募った訳なんですけど、僕の世界観というか、僕が表現したらいいんじゃないか？という世界観をちゃんと理解してくれてるんだとも感じました。

高橋愛：そこでモーニング娘。の曲が結び付いたのが嬉しいです。

－－モーニング娘。サイドからしたら、もうちょっとした事件ですよね（笑）。

高橋愛：すごい化学反応が起きた（笑）。

－－実際に歌ってみて、そして仕上がりを聴いてどんな印象を？

中孝介：本当に良い作品と出逢えたので、かなり練習してレコーディングに挑んだこともあり、曲に感情がスーッと入っていきましたし、出来上がったものを聴いても「良いものが出来たな」って思いましたね。高橋さんもコラボレーションしてくれましたし、もう曲のパワーとしては物凄く強いものになったと思います。

▲MV撮影風景 高橋愛
（ex.モーニング娘。）

－－モーニング娘。の曲をカバーするだけでなく、高橋愛と一緒に歌おうと思った経緯はどんなものだったんですか？

中孝介：まずカバーアルバムを出すことが決まって、ご本人にも実際に参加してもらいたいなって思ったんです。他の曲で言うと、河口恭吾さん、ニコニコ動画で大人気の歌い手 伊東歌詞太郎さん、ボカロPのdoriko（ドリコ）さん、カサリンチュに参加してもらってるんですけど、ご本人の声で曲によりパワーを持たせることが出来たらなって思ったんです。

高橋愛：いろんなメンバーがいるモーニング娘。の中で、私を選んでくれたのは嬉しかったですね。最初、「なんで私？」って思いましたもん（笑）。

－－この曲は、当時のモーニング娘。のリーダーが歌うから意味深いんだと思いますよ。

高橋愛：光栄です。私もモーニング娘。を卒業してからまさかこの曲を、こういった形でカバーできるとは思ってもみなかったんで、すごく見直すこともできたし……なんか、自画自賛じゃないけど、すごく気に入ってたんですよ！この曲。元々はシングル候補の曲だったんですね。で、最初はメンバーにシングルとして渡されて「久しぶりにバラードが来た！」と思って、モーニング娘。のシングルでバラードって少ないから嬉しくて、みんなで「良い曲だ」って言っていたんですけど、いつの間にかシングルじゃなくなっちゃって（笑）。でもアルバム曲になっても大事にしてて、ツアーでは絶対歌う大切な存在になって。卒業してから歌う機会はなくなっちゃったけど、今回こんな有り難い機会を頂いて「やっぱりこの曲って良い曲だったんだな」って再認識できたし、「良い曲だ」って言ってくださることもすごく嬉しくって。

▲中孝介×高橋愛（ex.モーニング娘。）

－－高橋愛のストーリーとしてもドラマティックですよね。今、この曲を再び歌うというのは。

高橋愛：そうですね。だからいろんな想いが出てきてます。

－－あと、掲載時には放送されていると思うんですけど、テレビの歌番組でも、中さんは「雨の降らない星では愛せないだろう？」歌われているんですよね。数ある名曲の中でこちらを選んだのは？

中孝介：こうやって高橋さんも参加してくれましたし、やっぱり多くの人に聴いてほしい曲だと思ったんですよね。その場で歌うことでまた新たに聴く人たちが「あ、すごく良い曲だな」って思ってくれたらなって。僕の声というフィルターを通してですけど、もっともっといろんな人に聴いてほしい。

高橋愛：凄い。嬉しい。

何にも無駄じゃなかった。……だからすごく有り難いです。

▲中孝介×高橋愛（ex.モーニング娘。）

－－今作ってどのカバーも有意義なものだと思うんですが、この曲に関してはモーニング娘。ファンしか知らなかった曲じゃないですか。ある意味、最もマニアックなカバーだと思うんです。でもちゃんと曲の素晴らしさを理解した上でクローズアップし、ジャンルを超えてすべての人々に届けていくって物凄く意味深いなと。自身ではどう思われますか？

中孝介：良いものは良いですからね。それはいろんな人に伝わってほしいと思います。

高橋愛：本当に嬉しいです。

－－多分、愛ちゃんは今回の件の意味深さを誰よりも感じてますよね。

高橋愛：その当時、苦しかったこともいっぱいあったし、藻掻いていた時期だったので。でもそのときの曲が数年後に改めて「良い」とされている。頑張っててよかったなってすごく思います。当時も「もっと知ってもらいたい」とは思っていましたけど、なかなかそういう機会がなくて……本当にメンバー全員で悩んでいた時期だったんです。でもこうして「雨の降らない星では愛せないだろう？」がいろんな人に聴いてもらえる機会を頂けたことで、ジュンジュンとリンリンにも胸張って報告することができるし、2人ともすごく頑張ってくれてたんですよ！ それは何にも無駄じゃなかった。……だからすごく有り難いです。

▲高橋愛
（ex.モーニング娘。）

－－高橋愛リーダー時代のモーニング娘。って、今になって物凄く再評価されてるじゃないですか。そういう流れがある中で今回の「雨の降らない星では愛せないだろう？」カバーって見事すぎますよね。

高橋愛：ドンピシャなんですよ！

－－奇跡的ですよ。そこにはイヤらしさとか全くなくて、中さんが純粋に良い曲と思って歌っている。愛ちゃんも一緒に歌っている。これ、当時のメンバーが知ったら喜ぶでしょうね。

高橋愛：かなり！ 早く渡したいです！ 亀井絵里ちゃんとジュンジュンとリンリンに！ もちろん当時のメンバー全員に配りたいんですけど、その3人には真っ先に渡したい。

－－その3人が卒業してから歌ってないんですよね？ この曲は。

高橋愛：歌ってないです。

▲中孝介×高橋愛（ex.モーニング娘。）

－－モーニング娘。としては、3人の卒業公演が「雨の降らない星では愛せないだろう？」を最後に歌ったステージ。

高橋愛：プラチナ期と呼ばれている時代です（照れ笑い）。

－－今、愛ちゃんは女優業に専念されていますけど、歌手としての活動もこれを機に増やしていきたい気持ちってあったりしますか？

高橋愛：自分の中で“表現してる”っていう意味では、モーニング娘。時代も今も一緒なんですよ。歌手としてうたうことも表現だし、自分で作っている曲じゃない分、やっぱり何処かで演じている部分があったりして。「雨の降らない星では愛せないだろう？」も主人公がいる訳で、その主人公になって歌っているんです。なので、自分の中ではお芝居することも歌うこともジャンル分けしていなくて、お芝居でも歌でも、与えられたものがどんなものであっても、私は私なりに表現していきたいなって思ってます。

中孝介：僕も台湾の映画に出たりしてますけど、歌も演技なんですよね。5分間なら5分間の演技という解釈で、僕もいつも歌を表現しているので。それに対して聴いてくれる人たちが、自分の人生や思い出を重ねてくれることによって共感が生まれたらいいなって思ってるんです。それは高橋さんと多分同じだと思う。

▲中孝介×高橋愛
（ex.モーニング娘。）

－－そんな2人が、また何かする機会があったとしたら、どんなコラボレーションを実現させたいと思いますか？

中孝介：今回はカバーという形で、高橋さんにとってもセルフカバーになった訳ですけど、またご一緒する機会があったならオリジナル。ぜひぜひ。

－－どんな曲がいいですかね？

中孝介：今回バラードだったので……

－－ふたりでアッパーチューン？

高橋愛：「うぉ！？」って驚かれるような。

中孝介：ちょっと歌謡曲チックにしてみたりしてね。

－－ぜひ聴いてみたいです。あとは、2人による「雨の降らない星では愛せないだろう？」を生で聴きたいです。どうにかなりませんか？

一同：（笑）

中孝介：そうですよね。

高橋愛：まだ一緒に歌えてないですからね。ハモってみたいです。

－－何なら当時のモーニング娘。メンバーも全員呼んで頂いて。

中孝介：アハハハ！

高橋愛：それが一番良い！ 中さんと当時のメンバーで。そのときはジュンジュンとリンリンも呼びますよ！

▲中孝介×高橋愛（ex.モーニング娘。）

－－伝説になりますよ（笑）。

高橋愛：本当ですか！？

－－それでスベったら俺が責任取ってもいいぐらいです。そんな夢も見たくなってしまう今回の「雨の降らない星では愛せないだろう？」。どんな風に世に響いていってほしいですか？

高橋愛：この曲をファンの方がリクエストしてくれたことも感謝ですし、収録曲に選んで頂いたことも感謝ですし、モーニング娘。のこの曲に繋げてくれた人たちすべてに「ありがとうございます」って言いたいぐらい……

－－ある意味、報われた感じがありますよね。この曲も、あの時代のモーニング娘。も愛ちゃんも。

高橋愛：そうですね。あと、今ってきっと良い世の中ではないから、その分だけメッセージ性の強い曲が響いたりすると思うんですね。なので、この曲がいろんな人の心に響けばなって思います。

中孝介：僕、デビューしてからずっとツアーやライブをやらせてもらってるんですけど、来てくれるお客さんは本当に老若男女で。幅広い世代の人たちが来てくれているので、この曲も子供からおじいちゃん、おばあちゃんまで届いてくれたらって思いますね。この曲に込められた想いが届いてほしい。