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「レガシー・レコーディング」シリーズ第二弾 80'S 発売記念特集
数々の名門レーベルを抱えるソニー・ミュージックが、膨大なカタログの中からロック史における不朽の名盤を厳選し、高音質でリリースするという「レガシー・レコーディング」シリーズ。3月には50年代から70年代にかけての傑作100枚を一挙リリースして話題になったが、その第二弾がいよいよ登場。今回は80年代の名盤が40枚セレクトされている。
80年代のロックというと、60年代や70年代の“高度成長期”に比べると、比較的落ち着いた“円熟期”というイメージだろうか。実際、音楽的な成長は70年代後半のパンク・ムーヴメント以降は緩慢になり、それほど大きなトピックはないかもしれない。ただし、楽器の進化やレコーディング技術の発展などが大きく、音楽のスタイルも微妙に変化していった時期でもあり、過去を見つめ直して本質的な音楽の良さを再発見していった時代だとも言い換えられる。
今回リリースされる40タイトルを眺めていると、この一見曖昧な80年代にも、少なからずトレンドや傾向があったことがよくわかる。ここでは、キーワードに沿って80年代のロックを解説していこう。
大ベテランたちの逆襲
▲ 「Can't Fight This Feeling」 / REO Speedwagon
10年以上も活動しているにも関わらず、なかなか陽の目を見ないアーティストがいるのはいつの時代も同じ。しかし、長い下積みが一気に花開くことが多かったのも、80年代の特徴といえるかもしれない。例えば、71年にデビューしたREOスピードワゴンも、一介のローカル・バンドに過ぎなかった。何度も解散の危機を乗り越えているうちに徐々に人気を得て、80年のアルバム『禁じられた夜』が15週連続1位という快挙。85年にはシングル「涙のフィーリング」が3週連続1位と大ヒットを記録した。
▲ 「We Built This City」 / Starship
スターシップも紆余曲折を経てブレイクしたバンドのひとつ。60年代にはジェファーソン・エアプレインとして、サイケデリック・ムーヴメントの代名詞でもあったが、70年代半ばにはジェファーソン・スターシップに改名するも、時代の変化やメンバー・チェンジによって試行錯誤する。そして、85年にスターシップとして再スタートするや、「シスコはロックシティ」が爆発的な大ヒット。この曲は、いまだに80年代ロックを代表する1曲に数えられ、テレビなどでも盛んに使用されている。
▲ 「Danger Zone」 / Kenny Loggins
ケニー・ロギンスも、80年代になってから再ブレイクしたアーティストのひとりだ。70年代にはロギンス&メッシーナとしていくつかのヒットはあるが、どちらかといえばソングライターとしての裏方的なイメージが強かった。しかし、84年の映画『フットルース』の主題歌が映画共々大ヒット。続く86年の映画『トップガン』の主題歌「デンジャー・ソーン」も大ヒットし、一躍トップスターとして君臨することとなった。
オールディーズ再評価
ベテラン・アーティストが続々とヒットを飛ばすのと同時に、60年代のオールディーズ・サウンドが見直されるようになったのも、80年代のトピックのひとつ。なかでも、ダイアナ・ロス&シュープリームスやジャクソン・ファイヴなどに代表されるモータウンのリズム・パターンは、多くのミュージシャンに影響を与え、新しい解釈で生まれ変わっていった。ホール&オーツの82年のシングル「マンイーター」はその代表的な作品。独特のベース・ラインをフィーチャーし、マイナー調ながらも4週連続1位という快挙をもたらした。
▲ 「Tell Her About It」 / Billy Joel
ビリー・ジョエルも、ホール&オーツと同世代だけに古いソウルやポップスに大きな影響を受けている。そのルーツをストレートに反映した83年のアルバム『イノセント・マン』は、サム・クックやフォー・シーズンズといった先達からインスパイアされたサウンドとメロディを惜しげもなくさらけ出し、「あの娘にアタック」、「アップタウン・ガール」、「ロンゲスト・タイム」とシングル・ヒットを連発するモンスター・アルバムとなった。
こういった60年代回帰は、ベテラン・アーティストだけではない。
▲ 「Wake Me Up Before You Go-Go」 / Wham!
82年にデビューしたワム!も、日本ではアイドル的な扱いをされていたが、実際にはソウル・ミュージックに裏打ちされた音楽性豊かなグループだった。とくに84年の大ヒット曲「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」以降の代表曲は、「フリーダム」、「ケアレス・ウィスパー」、「ラスト・クリスマス」など、いずれもオールディーズの影響を受けた良質なポップスばかりだ。
シンセ・サウンドのニューフェイス
単純に楽器の進化という意味においては、80年代はデジタル化されていった時期である。クラフトワークやYMOに代表されるテクノ・ポップが70年代後半に席巻した後、彼らの発展系として新しいシンセサイザー・サウンドが生まれていった。
▲ 「Sweet Dreams (Are Made Of This)」 / Eurythmics
その代表アーティストのひとつが、ユーリズミックスだろう。アニー・レノックスとデイヴ・スチュワートによるデュオは、81年にデビュー。83年に発表した「スイート・ドリームス」が全米1位に輝き、トップスターとなった。「ヒア・カムズ・ザ・レイン・アゲイン」や「ゼア・マスト・ビー・アン・エンジェル」といったエレ・ポップのヒット曲を連発し、80年代をきらびやかに彩った。
▲ 「You Spin Me Round (Like A Record)」 / Dead Or Alive
こういったシンセ・サウンドはディスコ・ミュージックにも影響を与え、ユーロビートへと発展していく。その中から登場したのが、デッド・オア・アライヴだ。もともとはゴシック・ロック的な立ち位置だったが、ストック・エイトキン・ウォーターマンがプロデュースを手がけた「ユー・スピン・ミー・ラウンド」が大ヒット。日本でもマハラジャやキング&クイーンといった黒服系ディスコで、彼らの曲をバックにお立ち台で踊るボディコン姿が多数見られた。
名バラードの誕生
▲ 「Time After Time」 / Cyndi Lauper
テクノロジーが発達したことによって、技術ばかりが先行したわけではない。逆に、音楽の本質的な素晴らしさを再確認していったのが、80年代ならではといってもいいだろう。とくにバラード曲に関しては、80年代には多くのヒットが生まれ、いずれもスタンダードとなっている。その代表的な一曲が、シンディ・ローパーの84年の大ヒット曲「タイム・アフター・タイム」だ。後に無数のカヴァー・ヴァージョンを生む名曲だが、ジャズの巨人マイルス・デイヴィスが取り上げたことでスタンダードの殿堂入りを果たした。
▲ 「Saving All My Love For You」 / Whitney Houston
80年代を代表するバラード歌手といえば、ホイットニー・ヒューストンの名を挙げる人は多いはず。最初の大ヒットである85年の「すべてをあなたに」を筆頭に、「オール・アット・ワンス」、「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」、「恋のアドバイス」、「ブロークン・ハート」など涙無しには聴けない名バラードをいくつも残している。
オーストラリアからの使者
▲ 「All Out Of Love」 / Air Supply
80年代に活躍したのは、英米のアーティストだけではない。南半球のオーストラリアからもチャートを席巻するアーティストが続々と登場した。エア・サプライはその筆頭に挙げたいグループ。80年に「ロスト・イン・ラヴ」がヒットして世界的にブレイク。続いて「オール・アウト・オブ・ラヴ」、「シーサイド・ラヴ」、「さよならロンリー・ラヴ」など続々とヒットを飛ばす。ハイトーン・ヴォイスと爽やかなハーモニーで、日本ではサーファーを中心に人気を博した。
▲ 「Who Can It Be Now?」 / Men At Work
メン・アット・ワークもオーストラリアが生んだ個性的なグループのひとつだ。デビュー・アルバム『ワーク・ソングス』からは、いきなり「ダウン・アンダー」と「ノックは夜中に?」の2曲を全米1位に送り込み、強烈なインパクトを与えた。サックスの音色が特徴的なバンド・サウンドは、いまだに斬新な響きを持っている。
渋谷系の夜明け
▲ 「Hey Manhattan!」 / Prefab Sprout
メガ・ヒットに隠れてそれほど目立つわけではないが、80年代にはギター・ポップやネオ・アコと呼ばれるようなパンクやニューウェイヴ以降の新しいムーヴメントが生まれ始めていた。これらは後に渋谷系と呼ばれることになる日本のポップ・アーティストへ、大きな影響を与えていくことになる。プリファブ・スプラウトもその流れにいたグループの代表格。稀代のメロディメイカーであるバディ・マクアルーンの楽曲は、ロックやソウルといったアレンジに惑わされず、芯の強いポップ・チューンとして今なお君臨している。
▲ 「Perfect」 / Fairground Attraction
エディ・リーダーが在籍したフェアーグラウンド・アトラクションも同様。アコースティック・ギターを中心に据えたシンプルでスインギーなアレンジと溌剌としたヴォーカルが印象深い「パーフェクト」が88年に大ヒット。この曲を含むアルバム『ファースト・キッス』も大ヒットし、ネオアコの人気を決定付けた。
リリース記念イベント情報
LEGACY RECORDINGS 80'S発売記念
Live Freely by Jack Daniel's 80'S NIGHT
日時:2013年8月5日(月)
17:30~23:00(L.O.22:30)
会場:ビルボードライブ東京 入場無料
出演:
DJ OSSHY
Live 中沢ノブヨシ
ビルボードライブ東京が一晩限定でエントランス・フリーのミュージック・ラウンジと化すイベント【Live Freely By Jack Daniel’s】が、レガシー・レコーディング80’s発売を記念し80’S NIGHTとして特別開催!70~80'Sディスコ・ムーブメントのパイオニア DJ OSSHYと、洋楽カバー・フルアルバムをリリースしたシンガー・ソングライター 中沢ノブヨシをゲストに迎え、洋楽80’Sにたっぷりと浸る真夏の一夜。
また、当日は“大人の夏休み”をテーマに、会場内にミニ縁日コーナーが設けられるほか、ジャックダニエルを使用したかき氷など限定メニューも登場予定!浴衣来場者にはスペシャルサービスも。
MORE INFO>>> ビルボードライブ東京
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Text: 栗本斉
ナンバーワン・エイティーズ 2
2013/07/24 RELEASE
SIBP-232 ¥ 5,170(税込)
Disc01
- 01.BAD (ショート・ヴァージョン)
- 02.ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン
- 03.アップタウン・ガール
- 04.マンイーター
- 05.渚の誓い
- 06.レッツ・グルーヴ (モノラル音声)
- 07.シスコはロック・シティ
- 08.ドント・トーク・トゥ・ストレンジャー
- 09.ホールド・ミー・ナウ
- 10.スムース・オペレーター
- 11.ドント・アンサー・ミー
- 12.ロックバルーンは99
- 13.アイ・ライク・ショパン
- 14.ヒーロー
- 15.アイム・フリー
- 16.ブロウクン・ウィングス
- 17.マニック・マンデー
- 18.ウォーク・ディス・ウェイ
- 19.バーニング・ハート
- 20.ステイ・ウィズ・ミー
- 21.グレイテスト・ラヴ・オブ・オール
- 22.ザ・ウェイ・イット・イズ
- 23.ドリームタイム
- 24.ギヴ・ユー・アップ
- 25.キャリー
- 26.ワン・モア・トライ
- 27.パーフェクト
- 28.ヘヴン
- 29.ディス・ワンズ・フォー・ザ・チルドレン
- 30.ラスト・クリスマス
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