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Noa 『Molt』インタビュー

Noa 『Molt』 インタビュー

「別に大きいステージに立たなくても歌は届けられる。」

「タレントになりたい訳でもスターになりたい訳でもなく、自分の歌う曲に共感してくれる人がいたらいいなっていう。それがすべて。」
 世間の着うた(R)ムーブメントが過ぎても、オリコンウィークリーランキング7位を記録したり、着々と人気を高めている新世代の歌姫代表 Noa。その独自の価値観やスタイルについてぶっちゃける。

人前が苦手~自分も恋愛の曲で助けられたことがある

--自身ではどんな女性だと感じていますか?

Noa:男勝りな女の子だと思ってます。ハハハハハ! 曲とかアーティスト写真のイメージと違うので意外だと思われがちなんですけど、わりとサバサバしてる。

--では、アーティストとしてのNoaは?

Noa:アーティストとしてのNoaは、キャラ的には殻を破れずにいるというか、わりかし素を隠してます。曲の方向性は自分そのものなんですけど、ビジュアルワークだったり、ステージで歌っているときの自分は、素を出してない。まぁライブに関しては、単純に緊張しいで喋れないんです……なので、いつもカッチカチ(笑)。

--演じているとか、そういう格好良い話じゃなく?

Noa:じゃないです!

一同:(笑)

--ライブ経験は結構重ねてるんですよね?

Noa:重ねてるんですけど、馴れないですね。まだ……まだというか、これから馴れることがあるのかどうかも分からない。毎回緊張してる。あったかいお客さんのときは、ちょっとは自分の言葉を喋れたりはしますけど、あんまり反応してくれないお客さんのときは、緊張したまま終わっていきます。

--じゃあ、ライブは苦手?

Noa:はい。人前が苦手。

--素直すぎる(笑)。

Noa:フィーチャリングアーティストとやるライブとかは楽しいんですけど、ひとりっきりだと緊張の方が勝っちゃう。なので、現時点では制作の方が楽しいと思っちゃってますね。

--せっかくなので、今日はこのままぶっちゃけトークで行きましょう。Noaの楽曲は、自らの恋愛経験がそのまま直結している感じ?

Noa:自分で書いている歌詞は、自分の経験から引っ張ってきているものがほとんどです。

--ということは、恋多き女性?

Noa:はいっ!同世代の中でもわりかし多く恋愛をしている方だと思います。

--Noaさんがこんなにも多くの恋の歌、女の子を勇気付ける歌を届け続ける理由って何なんでしょう?

Noa:アーティストになる前、全くシンガー活動はしていなかったんですけど、悲しい曲や切ない曲に浸って泣くのが好きだったんですよ。で、カラオケとか行ったとき、そういう曲を歌ったら友達が泣いてくれたりして。これをもっと大勢の人へ向けて歌ったり、自分で作った歌詞を歌って共感してくれる人がいたら、それはすごく良いことだなと思って。なので、そもそもアーティストになろうと思った理由そのものなんです。私がそういった曲を歌うのは。

--僕がデビュー当時から追いかけている傳田真央というアーティストは、たかが恋、されど恋。ラブソングが人を救うこともあるかもしれないと、10年以上にわたって恋について歌い続けているんですが、Noaさんにもそういう感覚はある?

Noa:あります。誰もが経験できることじゃないですか、恋愛って。必ず一度は恋に落ちる。なので、恋愛がテーマだと自分が曲を作りやすいという側面もあるんですけど、聴いてくれる人も入りやすいと思っていて。自分も恋愛の曲で助けられたことがあるし、そういった曲を変わらずに歌い続けられたらなと思っています。

--自らもラブソングに救われてきたり、力をもらってきたから。という部分もあるんですね。

Noa:そうですね。歌を届ける側になってみて、一番嬉しいのは「この曲を聴いてすごく泣けました」とか、何かしら共感してもらえることなので。あとは、単純にラブソングが一番好きなんです。

--そこを掘り下げる為にも、Noaさんのルーツを辿っていきたいんですが、どんな家庭で生まれ育った女の子だったんでしょう?

Noa:母親がすごく歌うのが好きで。アーティストをやっていた訳ではなく、趣味で歌うのがすごく好きな人だったんです。それで小さい頃から母の歌を聴いていたので、自ずと自分も歌うのが好きになり、小学生のときに女の子は一回通ると思うんですけど、「歌手になりたい」という夢を持つんです。でも歌が上手い人って星の数ほどいるじゃないですか。私のこんな歌唱力では歌手になれないと思い、その夢は消え、普通に就職して。

--一度挫折してる訳ですね。

Noa:でも「ステージに立って歌ってみたいな」という想いは、どんどん強くなっていて。そんなとき、私の地元は宮城県なんですけど、仙台にNO DOUBT TRACKSっていうプロダクションがあることを知って、そこでオーディションをさせてもらって、拾ってもらったんです。

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--そこに至るまでのストーリー、もうちょっと詳細に聞かせて下さい。初めて買ったCDは?

Noa:アニソンでした。アニメ『NINKU -忍空-』のオープニングテーマとエンディングテーマが入ったCD(鈴木結女)です。ウチは親が厳しくて、CDとか買うような家庭じゃなかったんですよ。でもそれだけは「本当に欲しいんだ!」って頼み込んで(笑)。今聴いてもすごく良い曲だと思えるので、子供なりに惹かれたんだと思う。

--それからどんな音楽を好んで聴いてきたの?

Noa:J-POPです。そのとき、学校の友達の間で流行っている曲。高校卒業するまでは、もっぱらJ-POP畑でした。

--歌うことに目覚め、その道で生きていこうと思った経緯はどんなものだったんでしょう?

Noa:NO DOUBT TRACKSのオーディションを受ける前に「そういう道を歩んでいきたいんだ」と、親には話していて。でも親からしたら不安なので「そんな道で食べていける訳ないでしょ?」みたいな。ただ、オーディションで拾ってもらって、フィーチャリングしてもらってから、そういう道でやっていきたい想いが強くなり、そこからはもう一生懸命、今までやってきてますけど。

--歌詞は?

Noa:歌詞は中学生の頃、遊びでバンドを組んでいたとき、チラッと書いたりはしていましたけど、本格的に書き始めたのはアーティストになってから。

--そのときから自ずと出てくる歌詞は恋愛モノだったの?

Noa:恋愛モノが多かったです。

--当時はどんな恋愛をしていたんですか?

Noa:1stの頃から、自分で書いている歌詞は、そのときの自分と重なっているんですけど、当時は幸せな感じより、どこかしら切ない内容のものの方が多かったですね。なので、そういう恋愛をしていたんでしょうね(笑)。ここ近年です。ようやく凄く幸せな曲とかが書けるようになったのは。

--その理由は?

Noa:今は客観的に歌詞が書けるようになってるんですけど、前は過去の恋愛を引きずっていて、どうしても悲しかったり切なかったりする曲が多かったんだと思います。

--幸せな曲にせよ、切ない曲にせよ、自分の経験から生まれた曲に対して、全く見ず知らずの女の子が共感してくれているのは、どんな気分?

Noa:めちゃくちゃ嬉しいです。「こういうことをみんなも感じているんだな。やっぱり」って確認できるし、アーティストとしてというよりかは、ひとりの女の子として感じることをみんなで共有できたらいいなと思ってるんで、「共感しました」って言われるのはすごく嬉しい。

--そんなNoaの音楽を聴く人が年々増えていく中、気付けばデビューから5年。デビュー当時と今で変わったなと思う部分は?

Noa:自分の芯というか、素の部分はあんまり変わってないんですけど、他はほとんど変わったんじゃないかな。歌唱力も外見も、あと考え方も。昔より周りのことに目を向けられるようになったかなとは思います。

--今、デビュー当時の曲を聴くと……

Noa:聴けないです!

一同:(笑)

Noa:去年、ベストアルバムを出したんですけど、そこにはやっぱり1stの曲も入れる訳じゃないですか。で、それを聴いたとき「うわぁ~!」ってなっちゃって!最初の頃は自分の歌い方が定着してなかったので、今聴くとすごく恥ずかしくなるんですよ。こういう風に歌いたいとか、こういう風に表情を付けたいとか、全くない真っさらな状態だったので、未熟だな~って思っちゃう。

--ちなみにNoaさんはLGYankeesプロデュースで世に出てきた訳ですが、そもそもどういう経緯で出逢ったんですか?

Noa:LGYankeesのHIROさんが、NO DOUBT TRACKSの社長なので、オーディションして頂いたのが最初の出逢いです。

--そこでNoaさんのどんな部分に魅力を感じてもらえたんだと思います?

Noa:多分、当時、LGYankeesの周りにいないようなキャラクターだったんじゃないですか。LGYankeesはヒップホップとしてクラブ回りしていましたけど、私はジャンル的にヒップホップと掛け離れたところにいたので。クラブとかもあんまり行かない人だったので、それが新鮮だったのかもしれないですね。

--シンガーとして様々な表情を持てるようになったのも、LGYankeesとの出逢いが大きいと思うんですけど、今、自分はどんなシンガーになっていると感じていますか?

Noa:今もLGYankeesにプロデュースはしてもらってるんですけど、自分のやりたいことをちゃんと見つけられるようにはなってきているのかなと。自分の伝えたいこと、例えば「これがやりたいです!」って言えるシンガーにはなってきてると思います。最初の頃は「こういう曲を作りたいです」という意見すらなく、そこからプロデュースしてもらっていたので。流れに身を任せるしかなかった。でも今はいろいろ吸収して、自分の中で考えて、噛み砕いた上で「これがやりたいです!」と意思表示できるようになったので、新しいアルバムは物凄く色濃いです。

--Noaさんがデビューした頃って着うた(R)ムーブメントが起きてましたよね。で、今、あの現象によって脚光を浴びた女性アーティストのほとんどが影を潜めています。その中で、Noaさんがオリコンウィークリーランキング7位を記録したり、着々と人気を高められている要因って何だと思いますか?

Noa:なんでしょうね? 周りの協力がすごく大きいとは思いますけどね。LGYankeesとかにフィーチャリングしてもらうこともそうですけど、世の中に知らしめようとしている人たちの力なのかなって。

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大きいステージに立たなくても歌は届けられる

--個人的には、歌詞はもちろんですけど、その歌詞ひとつひとつの世界に寄り添える声を持っていることが大きいのかなと。簡単に言うと、嘘くさくない。自分ではどう思いますか?

Noa:そういう風に思ってもらえたらいいなと思って、詞を書いていたりするので、もしそうなら本望です。声色ひとつひとつに表情を付けられるようになったのも最近の話なんですけど、悲しいところはより悲しく伝わるように、楽しいところはすごく楽しく伝わるように。映像ではないので、声だけ聴いて感情が伝わるようにしようと、表情をガッチリ付ける努力はしてますね。

--それは、1年7ヶ月ぶりのオリジナルアルバム『Molt』を聴きながら感じました。自身ではどんな作品になったと感じていますか?

Noa:今作は思い入れの強い曲が多いので、声の表情とかもリアルに感じられるようになってると思います。昨年発表したベストアルバムまでの流れとはちょっと違う……今までのNoaもありつつですけど、大人になったから書けたものや、今だからこそ過去を振り返って書けたものとかが、今回いっぱい入っているので、新しい感じで聴ける一枚にはなったんじゃないかな。

--アルバムタイトルを『Molt』にしたのは、実際、羽が生まれ変わる感覚があって?

Noa:ベストアルバムを経て一段落して、またちょっと違う自分を見せたいなと思ったので。最初“脱皮する”っていう意味の言葉を探してたんですけど、そのときに『Molt』って出てきて。

--いわゆるベストアルバム出した後のオリジナルって、しかも良い結果を出したベストの後にリリースって、結構重圧もあったと思うんですが。

Noa:もちろん重圧はありましたけど、これまでのアルバムより「自分でこういう曲をやりたい」という意思が明確だったので、余計なことは考えずに制作に専念できたんですよね。制作が終わった後も、これだけ色濃いアルバムを作れた喜びの方が大きい。

--リード曲「幸せの鍵」では、多幸感に溢れた恋人の世界を描いていたりして、新境地への到達を感じたりもしていたんですけど、自分的にはどうですか?

Noa:今までのリード曲は、わりと悲しかったり切なかったりする曲が多かったんですけど、今回は新たな一面を出せたのかなって。

--さっきまで喧嘩していたカップルを一瞬で仲直りさせる力持ってますよ、この曲。詞もサウンドもただハッピーなんじゃなく、大切な人と共に生きていくことの重要性を説いてるじゃないですか。

Noa:例えば、付き合っている男女がいて、そこは人対人なのでぶつかることは確実にあると思うんです。その中で、相手が隣にいる幸せとか、その大切さにどれだけ気付けるかとか、そういうことを今回は書きたくて。数年前の自分では書けなかったリリックだし、今の年齢だからこそ気付けることを歌ってる。ずっと一緒にいると粗(あら)も見えてくるけど、そこを如何に思いやれるか。デビューしてから5年間の中で、恋愛面において一番学んだところだと思ってるんで、曲に反映したかったんですよね。

--その思いやりを持てず、痛い目に遭ったことも……

Noa:もちろんあります(笑)。若いときの恋愛は“自分が、自分が”になっちゃうことが多かったので。でもこの年齢になって「あ、相手はこうだから、自分はこうした方がいいんだな」とか、ようやく冷静に考えられるようになったので、そういうことにまだ気付いていない人たちに「幸せの鍵」は聴いてもらいたい。

--あと“今だからこそ過去を振り返って書けたもの”ってどの曲になるんでしょうか?

Noa:大半そうなんですが(笑)、一番は「Soldier feat. PURPLE REVEL」。この仕事をしていく中で、本当に辛かったときも大変だったときもあったんですけど、手を伸ばしたらすぐ近くに助けてくれる人がいた!みたいな。そういう今になって分かったことを伝えたくて。今、誰にも何も言えずに悩んでいる人たちってすっごいいっぱいいると思うんで、そういう人たちに「ちょっと話すだけでもラクになるし、ちょっと自分から歩み寄ったら助けてくれる人はいる」って気付いてもらえたらなって。なので、今までにないぐらいハードな言葉遣いになってる。

--今作『Molt』、どんな風に世に響いていったらいいなと思いますか?

Noa:12曲のうち1曲でも自分と重ねて聴ける部分があったらいいですね。そこから広げてもらえたら、なお嬉しいです(笑)。

--自分にとっては、どんなアルバムになりました?

Noa:新しい自分を見出せた作品。あと、自信を付けられる一枚になっていったらいいなと思います。

--ここからNoaはどうなっていくんでしょう? 羽が生まれ変わって。

Noa:こうなりたいとか、そういうことはあんまり考えてないんですけど、そのときどきのリアル、思っていることを書いて、等身大の自分を伝えていくことができて、それに共感してくれる人たちがいたら、最高に幸せだなって思います。共感してもらえることが一番の目標。

--大きいステージに立ちたいとか、そういう派手な目標は?

Noa:あ、そういうのは特に。

一同:(笑)

Noa:よく「おかしい」って言われるんですけど(笑)、別に大きいステージに立たなくても歌は届けられるから。部屋の中で聴いて感じるものがあるなら、それで全然良いと思うんですよ。タレントになりたい訳でもスターになりたい訳でもなく、自分の歌う曲に共感してくれる人がいたらいいなっていう。それがすべて。

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