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<インタビュー>大園玲(櫻坂46) 本は「自分を濃くしてくれるもの」――読書が育んだ言葉との向き合い方【WITH BOOKS】

Interview & Text:西廣智一
ビルボードジャパンが、2025年11月6日に総合書籍チャート“Billboard JAPAN Book Charts”をローンチした。このチャートは、紙の書籍(書店/EC)と電子書籍の売上、サブスクリプション、図書館での貸し出しやSNSでのリアクションなどを合算した日本初の総合ブックチャートだ。
書籍や文筆と縁深いアーティスト、また音楽と縁深い作家へ、自身の書籍や音楽とのかかわりについて訊くインタビュー企画【WITH BOOKS】。今回は、櫻坂46の中でも唯一無二の文章表現力を持ち、日頃から読書もよくしているという、二期生の大園玲が登場。読書は彼女の語彙力や表現力にどのような影響を与えたのか、そして自身にとって読書とはどんな存在なのか。印象的なエピソードを交えながら語ってもらった。
本を手に取る動機は
「もっと自分の語彙を増やしたい」
――大園さんは普段、どんなジャンルの本を読むことが多いですか?
大園玲:普段はミステリー系の小説を読むことが多くて、特にどんでん返しの展開が最後にある小説が好きです。ネット通販でそういう作品を1冊買うと、よく「あなたへのおすすめ」として関連作品が出てくるじゃないですか。そこから気になったものを、どんどん購入して読んでいくことが多いです。
――ミステリー作品はいつ頃から読むようになったんですか?
大園:小学生のときに『ミルキー杉山のあなたも名探偵』シリーズを図書館で借りて、そこでハマったのがミステリー作品を読むようになったきっかけで。自分が推理した犯人とは違っていることも多くて、その裏をかかれる感じが面白かったんです。
――なるほど。それ以外のジャンルの作品も読んだりしますか?
大園:大学生の日常を綴ったような作品も読んだりしますし、作家さんが日常生活で思ったことを書いたエッセイも好きです。私自身、自分が思っていることや感じたことをブログなどで発信したり、こうやってお話ししたりする機会も増えたことで、もっと自分の語彙を増やしたいと思って、いろいろ読むようにしています。
――これまでに読んだ本の中で、「特に心に残っている1冊」や「自分の中の大切にしている1冊」はありますか?
大園:一度結末を知ってしまったら、なかなか読み返すということは今までなかったんですけど、初めてそれをしたのがFさんのエッセイ集『20代で得た知見』で。言葉遣いや句読点の付け方とかが自分的に読み進めやすいリズムで、読んでいてすごく心地よかったんです。しかも、ひとつの経験が1ページ~見開き2ページという読みやすさで。よくブログを書く前に、目を閉じてその本をパッと開いて、開いたページを読むことでブログを書くモチベーションを高めたりしていて、読む機会が結構多いです。
――大園さんのブログは、書き始めの文章がすごく詩的で特徴的ですが、そのインスピレーションの源が『20代で得た知見』という本だったんですね。
大園:そうなんです。昔は(ブログは)出来事を思い出として記していくものだと思っていて、「最近こういうイベントがあって、こう思いました」とだけ書いていたこともあったんですけど、ファンの方からいただいた反響の中に「なんだかレポートみたいだね」という声があったんです。その方はどういう意図でおっしゃったのかわかりませんが、そこで「そうか、レポートじゃいけないかもな」と感じて。ただ出来事を書き留めるというよりは、自分がどう感じたかをより深く書くほうがいいのかな、そういう文章を書けるようになりたいなと思うようになったんです。いろいろ試行錯誤していく中で『20代で得た知見』と出会って、今はブログを書く前にその本を開いて読むことで、自分の考えを整えたりしています。
――そうだったんですね。『20代で得た知見』の中で、印象に残った言葉やエピソードはありますか?
大園:私は本を読むとき、特に印象に残った言葉をスマホにメモするんですけど、その中でも「明日くたばるかもしれない、だからこそ生き急がねばならない」という言葉はすごく響きました。「生き急いでいる」って言葉は自分を落ち着かせるため、冷静になるために使うものだと思っていたんですけど、そこに「明日くたばるかもしれない」という「自分たちには時間がないんだ」という言葉を付け加えることで、受け取り方が大きく変わるなと感じて。私は今25歳ですけど、あっという間に25歳になったなと思うと、改めて「人生って短いな」って実感させられた言葉でした。
――そういえば、以前『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京)の中で、後輩の村山美羽さんが「大園さんから詩集をプレゼントされた」とおっしゃっていたことがありましたよね。
大園:美羽ちゃんは詩集と言っていたんですけど、実はそれ、『20代で得た知見』のことなんです。彼女の20歳の誕生日にプレゼントしたんです。
――そうだったんですね。よくメンバーや友達に本をプレゼントすることはあるんですか?
大園:いや、美羽ちゃんが初めてです。1対1で話すことも多いですし、特にグループの活動の中で私が味わったことがある経験や、知っている立場に関して、美羽ちゃんと重なるものが多くて。美羽ちゃん自身、お気に入りの本を何回も読み返すタイプで「新しい本を探したり、冒険したりはしない」と言っていたので、これは私が渡さねばと思ったんです。私はこの本と出会ってから考え方がちょっと変わりましたし、美羽ちゃんにとってもこれから生きていく上で、何かヒントになったらいいなと思ってプレゼントしました。
――大園さんはかなり前の『そこ曲がったら、櫻坂?』での「読書の秋 私の人生を作った本プレゼンショー!」企画でも、『世界は救えないけど豚の角煮は作れる』(著:にゃんたこ)というエッセイ集を紹介していましたよね。
大園:そうでしたね。あのときはひとり5冊くらい候補を挙げていて、なるべくほかのメンバーと内容やジャンルが被らないようにした結果、その本が選ばれたんだと思います。
――エッセイのような本はサッと読み進めることができますが、ミステリーなど長編小説だと結末にたどり着くまでにかなり時間を要するかと思います。日々の活動が忙しい中、大園さんはどんなタイミングに読書をすることが多いですか?
大園:よくひとりで読書をしている人とか音楽を聴いている人って、はたから見てもひとりで楽しんでいることが伝わるじゃないですか。私自身、それを空気で伝えたいわけではないですし、必ずしもひとりの時間が欲しいわけではないんですけど、お仕事の空き時間とか待ち時間に電子書籍で読書することが多くて。エッセイだったら区切り区切り読めますけど、長編小説はそうやって空き時間にちょこちょこ読み進めています。
――電子書籍の話題が出ましたが、今は紙の本よりも電子のほうが多いんでしょうか。
大園:最近はだいぶ電子が増えました。もともとは小さい文庫本が好きで、以前はそっちを持ち歩くことが多かったかもしれません。Billboard JAPANさんのブックチャートでも1位になっていた(※文芸書チャート“Hot Bungei Books”/2026年1月8日公開チャートほか)、朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』は単行本の表紙デザインがすごく素敵だったので、先に電子で買ったものの、あとから単行本のほうも購入しました。
自らの経験から得た
「言葉を扱うこと」に対する意識と“共感”力
――僕は大園さんにお話を聞く機会が多いですが、いつも感心していることがあって。それは、櫻坂46の歌詞について独自の分析をしてくれるところなんです。しかも、それが読書をしている人の解釈だなと思うことが多くて。
大園:わあ、嬉しいです!
――櫻坂46の楽曲には考えさせられる言葉や余白のある歌詞が多いと感じますが、大園さんは歌詞を受け取ったときに毎回どのように言葉と向き合っていますか?
大園:新曲が届くときの、何も情報がない状態で初めてその歌詞と対面する時間がすごく好きで。本の中の文章も同じなんですけど、書いてくださっている方の実体験がもとになっていることもあるだろうし、中には作者の方が想像で書いていることもあるかもしれないし、本当はどっちなのかは書いたご本人にしかわからないじゃないですか。そういうことを最初に想像するのが楽しいんです。
――歌詞によっては、大園さんの中にある近しい経験と重ねて解釈して、自分の中に取り入れたりすることもあるでしょうし、逆にまったく経験ないことに出会うと「この歌詞をどう解釈すればいいんだろう?」と悩むこともあるかと思います。
大園:ありましたね。特に、10thシングルの「I want tomorrow to come」は主人公が「明日が来てほしい」と願う歌詞だったんですけど、私自身そういうふうに考えたことが一度もなくて。「それってどういう状況なんだろう?」って、いろんな想像をかき立てられた歌詞でした。
I want tomorrow to come / 櫻坂46
――読書をしているときに「この文章、櫻坂46の歌詞と通ずるものがあるな」と感じることはありますか?
大園:歌詞を思い出した経験はないんですけど、物語のシチュエーションや登場人物のキャラクターや言葉から、メンバーのことを思い出すことはよくあります。
――では、櫻坂46の活動を通じて、言葉を扱うことに対する意識の変化を感じた瞬間はいかがですか?
大園:活動期間中に変化したというよりは、自分が言葉を発信する立場になる前……学生時代に、言葉の扱い方について自分の中で決めたルールがあります。明るい話ではないんですけど、私は学生時代に言葉で悲しい気持ちになる経験があって。それが小学校高学年くらいから中学生くらいまで続いたときに、母から「人にしたことは返ってくるし、使った言葉は返ってくるんだよ」と励まされたことがあったんです。たとえば、「嫌い」っていう言葉は使わないほうがいいとか、「嫌いな食べもの」じゃなくて「苦手な食べもの」という言い方にしたほうが、その食べものを好きな人が聞いたときに悲しまないよね、とか。なので、この仕事を始めて7年目に入りましたが、今まで「嫌い」という言葉を使った記憶がないんです。あと、「人にしたことは返ってくるし、使った言葉は返ってくるんだよ」というのは何も悪いことばかりじゃなくて、人にしたいい行いもあとで返ってくるという話だったので、「好き」や「ありがとう」の気持ちをたくさん伝えていれば、いつか返ってくるのかなと信じて言い続けていたこともあります。それも、ファンの方から温かい言葉をたくさんもらっていく中で「ああ、今返ってきてるのかもな」と感じる瞬間がどんどん増えているので、母の言っていたことは間違っていなかったんだなと実感しています。
――確かに、ネガティブな表現をストレートに伝えるよりも、相手にポジティブに受け取ってもらえる言葉のほうがお互い気分がいいですものね。
大園:ですよね。なので、何か発言する際はもちろん、ブログを書く上でもそこは常に意識していて。たとえば、誰かが髪を切ったときに「髪、短い“ほうが”いいよ」と「髪、短い“のも”素敵だね」とでは、受け取り方が変わってきますよね。どっちも褒めてはいるんだけど、「短いほうがいいよ」だと長いときを否定しているようにも感じられるし。自分でも考えすぎかなと思うこともあるんですが、なるべく「自分の発言が何かの評価にならないように」と、誰かと会話するときはすごく気をつけています。
――英語と違って、日本語はひとつの事象を伝えるときにいろんな表現ができる奥ゆかしさがありますものね。では、その表現のヒントも読書の中から得ることがあると。
大園:そうです。むしろ、自分の中の引き出しを増やしたいがために読んでいるような気持ちになるときもあります。
――サスペンス作品だと、たとえば人が殺されるような強い負の感情や描写が含まれていることも多いと思いますが、そうした要素にご自身の日常生活までもが引っ張られることはありませんか?
大園:引っ張られるというよりは、登場人物と日常生活にいる実在の方々が重なったときに、想像で心が重くなったりすることはあります。
――では、読んでいて泣いてしまうことは?
大園:それはありますね。私、涙腺が本当に脆くて、かわいい赤ちゃんの動画が流れてきただけでも泣いちゃうことがあるんです(笑)。あと、一度読んで泣いたことがある小説を、あとで読み返したときに同じところでもう一度泣けるのか、試したことがあって。やっぱり泣けるんですよね。その登場人物のことを想像してしまったり、実在の誰かとリンクしてしまったりして、その登場人物以上に悲しくなったりすることもあります。そういう意味では、日常生活まで引っ張られているのかもしれないです。
本や言葉は
「自分を濃くしてくれるもの」
――大園さんは言葉に対する感度や共感能力がすごく高いんでしょうね。ちなみに、最近読んだ中で印象に残っている作品はありますか?
大園:マンガなんですけど、『SLAM DUNK』ですね。最近Bリーグに関するお仕事がきっかけで、バスケットボールの試合を観る機会が増えているんですけど、その中で周りの皆さんがよく「あの選手は『SLAM DUNK』でいうと○○みたいだね」と例えることが多くて。それを聞いたときに、『SLAM DUNK』のことを知っていればもっと理解が深まるし、会話もより膨らむのかなと思ったんです。あと、Bリーグのお仕事に付いてくださっているマネージャーさんが「『SLAM DUNK』は人生イチ好きなマンガ」とおっしゃっていて。私は誰かのオススメを自分でも試してみることが好きなので、電子書籍で全巻大人買いしてみました(笑)。ちょうど半分くらいまで読み進めたところで、印象的な言葉にもたくさん出会いました。
――『SLAM DUNK』は名言の宝庫ですものね。ちなみに、どんな言葉が印象に残りましたか?
大園:確か6巻だったかな。安西先生が「がんばればいつか きっといい思いができますよ」と言うんですけど(※コミックス6巻 P121)、自分も何かをがんばるときって「いつか何かのためになるかな」と思いながらやることが多いので、本当にその通りだなとめちゃくちゃ響きました。
――話題は変わりますが、Billboard JAPANブックチャートはすでにご覧になっているかと思います。大園さん視点での感想をいただけますか?
大園:読んだことがある作品が結構入っていました。『イン・ザ・メガチャーチ』も入っていましたし、『成瀬は天下を取りにいく』(著:宮島未奈)も……あの強い意志が伝わってくる表紙にすごく惹かれて「読むしかない!」と思って手にした作品です。朝井リョウさんの作品では『正欲』も読んだことがありました。
――『イン・ザ・メガチャーチ』は読んでみていかがでした?
大園:まだ途中なんですけど、細かな設定に鳥肌が立ちっぱなしでした。特に推し活をしている立場の目線のところを読んで、私のファンの方の中にもそういう方がいらっしゃるんだろうなって思うと、イベントで会話する際のCD1枚の重みについて改めて考えさせられましたし、運営に関してのところではいろんな方々がたくさん頭を使って作戦を練って、ファンの方々が夢中になってくださるような仕組みをこうやって作ってくださっているんだろうな、本当に自分たちは恵まれているなと考えるきっかけにもなりました。
――ありがとうございます。最後になりますが、本や言葉というのは人によって「自分を支えるもの」にもなるし、時には「誰かとの繋がりを作るツール」になることもあります。大園さんにとって本や言葉は、今どういった存在でしょうか?
大園:「自分を濃くしてくれるもの」ですかね。本当にその本の結末が知りたくて読み進めている自分もいれば、何か発信するときのヒントを探しているのかなと思う自分もいるので、本を読みながら言葉を集めている感覚に近いのかもしれません。なので、1冊読み終えたときに「読んでよかった」と思わなかったことがないですし、絶対にその本を読む前の自分より言葉の数も増えていますし、人の気持ちを想像する時間も増えているので、読む前の自分よりも濃くなっている気持ちになります。
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