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<コラム>“かわいさとの決別宣言”は今のILLITだからこそ踏み出せる進化 「NOT CUTE ANYMORE」に見る5人の決意



コラム

Text: 紺野真利子
(P)&(C) BELIFT LAB Inc.

 “かわいい”で世界を席巻したILLITが、ついに自らその“看板”を壊した。新曲「NOT CUTE ANYMORE」は、タイトルの通り“かわいさとの決別宣言”。しかしその中身は、ただのイメチェンではない。Z世代の価値観を象徴するような、「自分は誰かに定義されない」という若い世代の自己宣言であり、第5世代ガールグループのトップを走るILLITが、次のフェーズへ踏み出す覚悟を示した作品だ。2025年12月3日公開(集計期間:2025年11月24日~11月30日)のBillboard JAPAN週間シングル・セールス・チャート“Top Singles Sales”では初登場4位、総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”ではK-POPガールグループ最高位となる16位にチャートインした。

 「NOT CUTE ANYMORE」のミュージック・ビデオの冒頭で掲げられた「CUTE IS DEAD」というピンク色の墓碑。そこに立つ5人の表情は、キッチュでユーモラスでありながら、どこか決意に満ちている。バッグに入っているかわいいものたちを捨てながら歩く姿は、まるで“これまでの自分との別れ”を象徴しているようだ。5人が無表情で踊ったりと、確かにこれまでのILLITとは全く違う雰囲気だ。だけど、“かわいさを否定するふりをしても、身体から抜け落ちないかわいさ”。この反転こそが、ILLITの中毒性ではないだろうか。彼女たちは“かわいい自分”を捨てるのではなく、“かわいいだけ”で語られる存在から卒業する。そんな彼女たちの意思表示は、等身大でリアルな10代の心情と重なっているように感じる。


 また今回のコンセプトに説得力を持たせるには、彼女たち自身が本当に“かわいいだけじゃない”というところを見せないと成り立たないが、各メンバーの成長が明確に見える。

 YUNAHはもともとクールビューティーな顔立ちだが、無表情のダンスで“クール×可憐さ”を見事に融合させている。

 MINJUは“圧倒的な華”を持つが、今回の楽曲では“クールな魅力”が加わり、一気に立体的に。彼女の表情管理の進化は、今回のキーファクターではないだろうか。

 MOKAがもともと持っている穏やかで優しい空気感は、“ILLIT流のNOT CUTE”を作り上げた核。一般的なガールクラッシュではなく、5人だからこそ出せる独特の空気感を構築した。

 WONHEEは単独コーラス参加で存在感を証明。幼さを残しつつも、以前より声の芯が強くなり、“音”で魅せる力が増している。

 IROHAは圧倒的なダンススキルで今回もコンセプトを具現化。また、ミニマルな楽曲に寄り添う落ち着いた声色が静かな強さを与え、グループ全体の雰囲気を引き締めている。


YUNAH、MINJU、MOKA、WONHEE、IROHA


 5人それぞれが多彩な魅力を持つILLITは音楽グループの枠を超え、10代・20代のトレンドそのものを象徴する存在になりつつある。コスメ・ファッションブランドのアンバサダー起用、SNSでの拡散力、そしてライブ会場に圧倒的に多い小中学生・高校生たちの姿。彼女たちが今回体現した、“かわいさ”と決別した新しい価値観や“ありのままの強さ” は、これまで以上にZ世代の支持と憧れの対象となりそうだ。こうした多様なコンセプトを着こなせる“コンセプト消化力”も、ILLITが若い世代に刺さる理由なのだと思う。

 また2024から2025年にかけて、ILLITが打ち立てた快挙の数々は彼女たちが単なる“人気グループ”ではなく、確かな実力で時代を動かしている存在であることを証明している。【第67回日本レコード大賞】では海外アーティストとして唯一〈優秀作品賞〉に選出され、初の日本オリジナル曲での受賞はK-POP史上初という偉業を達成した。さらに『NHK紅白歌合戦』には、昨年に引き続き2年連続で出場。これはK-POP第5世代グループで唯一、K-POPグループ全体でも史上4組目という快挙だ。

 その勢いを生んだ一因が、初の日本オリジナル曲「Almond Chocolate」のロングヒットだ。今年2月にリリースされ、Billboard JAPAN集計でストリーミング7,900万回再生を超えるこの楽曲は、TikTokでも爆発的にバイラルしたことで、日本での存在感を一気に加速させた。またJapan 1stシングル「時よ止まれ」も自己最高初動となる“JAPAN Hot 100” 4位デビューを記録。各音楽番組や大型イベントへの出演を通して確固たる地盤を築いた。こうした実績が揃った今だからこそ、今回の“かわいさとの決別宣言”が、“今のILLITだからこそ踏み出せる進化”として強い説得力と重みを帯びている。

 NOT CUTEを掲げても、彼女たちの根底からにじみ出る魅力は消えない。むしろかわいさだけに頼らない“本物の魅力”が浮かび上がってくる。ILLITはこれからも、私たちへ新しい価値観を提示しながら、次の時代を切り拓く存在であり続けるだろう。

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