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<コラム>『Revo’s Halloween Party 2024』Blu-rayで“季節外れのハロウィン”を何度でも――映像に込められた“足し算の美学”、その見どころに迫る



コラム

Text:一条皓太

 季節外れのハロウィンから、早くも1年が経ってしまった。そもそも“季節外れのハロウィン”という存在しないはずの概念から説明が求められそうだが、そのあたりはSound Horizonのファン、もとい敬虔なローラン諸氏に役割を譲りたいと思う。2024年11月23日から2日間にわたり、神奈川・ぴあアリーナMMにて開催された【Revo's Halloween Party 2024】。まさしく季節外れながら、間違いなくあの年、日本一の盛り上がりを見せたハロウィンパーティーはほかに存在しないだろう。そんな当時の光景を思い返すことしばしば。当日の模様を収めたBlu-ray作品が、とうとう2025年10月31日にリリースされるに至った。

 律儀にも、Sound Horizon主宰のRevoがハロウィン当日にリリース日を合わせてくれたにも関わらず、本稿執筆が早々に月を跨いでしまったのは筆者の不徳の致すところだが、それすら忘れ去らせてくれるほど、実際の映像は見どころの目白押しだった。今回は当時執筆したレポート内容にも触れながら、本作の語りどころを抜粋して紹介させてもらいたい。

Sound Horizonに見出す、“足し算の美学”

 本作で楽しめるのは、全26曲。ライブ序盤の軸となり、両日共通だったBeyond Story Maxi『ハロウィンと朝の物語』披露曲は、8曲とも余すことなく収録。加えて、本当に膨大な量の日替わり曲より、23日公演から8曲、翌24日からは10曲と、まさに珠玉の選定がなされている。

 本作を手に入れたとして、1周目はやはり“全編再生”から始めてみてほしい。1曲目「物語」の時点で、“ある予感”を抱くはずである。心なしか、当日の会場で目にしたよりも強めにスモークが炊かれている気がする。あるいは、曲のキメでカメラがやや大きめに揺れる気がする。後者はアクシデントだとして、前者については……。こうした疑問は、決して気のせいや勘違いではない。

 予感が確信に変わるのが、次曲「小生の地獄」。 “kawamikoto”の手のひらから、歌詞にあわせて炎が飛び出すなど、ライブ当日にはなかったさまざまなエフェクトが画面上に施されているのだ。そのまま歌詞同様、地獄の門が一気に開き、業火が燃え盛り……。この後の「あずさ55号」でも、特急が走り抜ける信州の風をCGで再現してくれるなど、歌にシンクロしたイラストが、賑やかに次々と飛び出してくる。無論、前述のスモークやカメラの揺れもCGや演出の一環だった。なんとも大胆なものである。

 映画館で味わえる“4DX”と比較するわけではないが、これはいわば、家庭環境にて楽しめる“3.5DX”。実現できる範囲で、3.5次元に近い表現を追い求めたライブBlu-ray作品という表現が適切だろう。普通のライブ映像であれば、ひょっとすると“やりすぎ”と捉えられるかもしれない。が、これは幻想楽団Sound Horizonが織りなすライブ。演劇調のステージには、打ってつけの演出だ。

 2025年現在でこそ、リリックビデオのカルチャーが多くの作品に影響を与えているなか、さらにその先を目指すような表現が敷き詰められている本作。現代の技術ではどうしても叶わぬところだが、RevoがBlu-rayではなく、当日の会場で本当に見せたかったのも、こうした歌詞とシンクロする演出ありきでの光景だったのかもしれない。となると、いつかVR技術などがもっと発展した先で、そうした演出すら仮想ながら現実のものになるかも? とにかく、あの季節外れのハロウィンは本作リリースをもって本当の意味で完成したのだと思う。身も蓋もないが、だからこそ買って損はない作品だと強く主張したいのだ。

 この話をもう少しだけ深掘りさせてほしい。本作に限らず、この世に存在するあらゆるライブ作品に共通するところだが、映像を通して客席最前列、むしろそれ以上の角度からステージを楽しみ尽くせるのは言わずもがな。今回でいえば、ナレーションを務めるIke Nelsonのネイルや、山崎杏(皐月役)による表情の作り込み。あるいは7曲目「Halloween ジャパネスク ’24」で筆者が胸打たれた、JIMANG演じる板前が皐月を後から見守る際の熱いものを感じるくしゃっとした笑顔など。当時の客席からは追いきれなかったシーンが次々と目に飛び込んでくる。

 いわゆる“情報補完”といえる作業だが、Sound Horizonのように、登場キャスト数と情報量の多いステージだと、映像を何度でも観直して、時にはコマ送りまでして“答え合わせ”をしたくなるもの。そんなライブ映像作品に、CGや演出でまたさらに情報量を重ねてくるのが、RevoがRevoたる所以。勝手な解釈ながらも、Sound Horizonとは“足し算の美学”を見出せる集団なのである。表現の“引き算”こそクールと謳われることが多い世の中。彼らはとにかく足して、足して、足しまくる。

『進撃の巨人』パートなど、注目曲をピックアップ!

 ここからは、『ハロウィンと朝の物語』パートを終えた9曲目以降の日替わり曲ゾーンより、少しだけ見どころをピックアップしていきたい。15曲目「神の御業」〜18曲目「13の冬」は、ひと言でまとめれば“進撃パート”。両日で散り散りに披露されていたTVアニメ『進撃の巨人』関連楽曲が、作品中盤に一挙集約されているのである。

 これらの楽曲を並べることで、これまで以上に物語に入り込めるのは言わずもがな。当時初披露だった16曲目「暁の鎮魂歌」でいうと、すずかけ児童合唱団、そしてこの日のゲストボーカルが総出でクワイヤーに入った豪華さもある一方、目立ったCG演出としてはkawamikotoの“心臓”がオレンジ色に鼓動するのみ。その後の「13の冬」では、映像全体に粉雪を降らせつつも、すでに作品自体が持つパワーが確固としているためか、演出は極力、シンプルで控えめにされているように思う。

 “進撃”以外から選んでいくと、筆者が2日間を通して特に印象深く覚えているのが、13曲目「Ark」。栗林みな実の圧倒的な歌唱力が光る同曲では、小道具として主人公の兄を殺める小さなナイフが登場。ナイフを振りかざし、切りつけるシーンでは、切り口のエフェクトが加えられていたほか、曲中盤では物悲しいストーリーにあわせて、映像をモノクロに仕立てたり、あるいはニュース速報のような縁取りをあしらったり。こちらはMV風の演出になっているので、ぜひ自身の目で確認してほしいものだ。また同曲以外にも言えるものの、本ライブにて導入された中央制御型のシンクロライト・リストバンド。あのアイテムが映像美として、特にこの曲でよさを活かしていることを付け加えておきたい。

 ひとつだけ惜しむらくは、本作の収録映像はパフォーマンス特化型。MCパートについては、当時公開のレポートやローラン諸氏によるSNS投稿を参照する算段となっているようである。あのとき、Revoが語った「10年後、20年後にいつか、ハロウィンのコンサートをやるときがあると思う。そういうときは、絶対に来てくれ! 生きてても、死んでてもいい。いいんだ!」「どっかで見てるか、名もなきローラン! 約束だぞ、また来てくれよ」という言葉。よく覚えている……し、たびたび思い出す。これはリップサービスではなく、本当にたびたび思い出すのだ。

 理由はわからない。キャリアを重ねたアーティストが、あそこまで熱を込めてある種の弔いを示した光景を見るのが珍しかったからだろうか。ともあれきっと、自分のなかでRevoをリスペクトする理由が、あの一瞬に詰まっているからだと思う。

参考:<ライブレポート>Revo、20年間という時間の尊さを浴びた【Revo's Halloween Party 2024】2日目

 そんな彼の優しさを、今回の作品パッケージ裏面で見つけたローランも少なくないだろう。「Halloween ジャパネスク ’24」発表時から常に添えられているのと同文のため、もう何度も目にしているのは承知の上で、ここで改めて引用させてもらいたい。

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当楽曲には、金子みすゞの詩「私と小鳥と鈴と」の一節「みんなちがって、みんないい。」から着想した「みんな違ってみんなイイ!」など、様々な作品から着想を得た表現がございます。これは作詞者が生まれ育った文化・風土への愛着と敬意の表明であり、愛と平和を希求する魂の叫びでもあります。ハロウィンというひとつの文化の変遷を題材とした楽曲を通して、同文化圏で生まれ育った方にも、異文化圏で生まれ育った方にも、微力ながら相互理解への一助となれる可能性があるなら、この上ない幸いと存じます。
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 季節外れのハロウィンを終え、今年もまた新しい冬の風が肌に触れて、ハロウィンのことをもっと大切に思えるようになってしまった。それにハロウィンをきっかけにせずとも、もっと周囲の環境や文化にアンテナを張って、自身のなかに取り込んでいきたい。まるで、Sound Horizonの美学といえる“足し算”のようにーー。そんなことを深く考えさせられる映像作品だった。



「Revo’s Halloween Party 2024」Blu-rayダイジェスト/Sound Horizon

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