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<インタビュー>世界を舞台に躍進するAwichの現在地と、最新アルバムを構築するもの――今年のバースデーライブはビルボードライブ東京にて開催

インタビューバナー

Interview & Text: Shiho Watanabe
Photo: Katsuhide Morimoto

 初めてビルボードライブのステージを踏むことが決まったAwich。【Awich Birthday Fan Meeting 2025】と題して彼女のバースデーを祝うプレミアムなライブを予定している。日本を代表するラッパーとして文字通り世界を股にかけながら精力的に活動する彼女。ニューヨーク生まれの伝説的なヒップホップ・ユニット、ウータン・クランのプロデューサーとして知られるRZAが全面プロデュースを手がける新アルバムのリリースを目前に控えた彼女に、じっくりと話を聞いた。

 ※本記事は、2025年11月4日発行のフリーペーパー『bbl MAGAZINE vol.213(12月号)』(東京&横浜版)内の特集を転載しております。


日本人女性として海外での活動で得たもの

――ファンにとっては毎年恒例となるバースデーイベントですが、今回はどんなライブになりそうですか?

Awich:初めてのビルボードライブということで、バンドセットで挑みます。今をときめくミュージシャンたちに集まってもらったんですけど、最初はどうなるかな? と心配なところもあった。でも、みんな最高でばっちりハマってます。超グッドミュージックになると思うし、贅沢なライブになると思います。


――今年はより海外での活動へも焦点を当てた年だったと思います。プロデューサーのRZAが指揮を執り、ファーグやルーペ・フィアスコといったアメリカのラッパーらとの共演も相次ぎました。どんな手応えを感じていますか?

Awich:Awichの名前が、海外でも知られるようになった気がします。「Butcher Shop」や「Wax On Wax Off」といったシングルを聴いて、T.I.やネリー、スヌープ・ドッグ、エリカ・バドゥといった大御所たちからDMやお褒めの言葉をもらったりして。次のアルバムを出したら、もっと拡がるんじゃないかと思って頑張っているところです。






――9月にはニューヨークのセントラルパークで【Japan Champloo in the Park】と銘打ってフリーライブを行ったことも話題になりました。日本からはJP THE WAVYやOZworldらも参加していましたよね。

Awich:まさに“連帯”という雰囲気のイベントになりました。ニューヨーク以外のところから観に来てくれる方もいたし、アジア人の方たちも集まって、そういう意味でも連帯感を示すことができたとも思います。他にも、観客の中にはただ音楽が好きという現地の方たちもいっぱいいて、本当に“チャンプルー(ごちゃ混ぜ)”な空間でした。全員ブチ上がっていたし、一緒に歌ってくれた人もいた。日本人として、そしてアジア人として、大きな景色を見せる、そして自信を共有するということも実現できたと思うし、アメリカの人たちに「何じゃこりゃ!?」って思わせることもできたと思っています。ステージのプロダクションや演出に対しても、すごく拘って作り上げたライブになりましたし。私は沖縄のグローバル・アンバサダーも務めているんですけど、今回は沖縄からもニューヨークのライブに合わせてツアーを組んでくれたんです。そうした観点からも、沖縄のみんなと一体になって“ゆいまーる(助け合い)”な雰囲気を感じることができたと思っています。


――アメリカにおいて、日本人の女性としてヒップホップをレプリゼントしていく、ということに関してはどのように考えていますか?

Awich:女性であること、そしてアジア人であることに関しては、いいところもある反面、課題に感じている部分もあると思うんです。アジア人というだけで、下に見られているところもまだまだある。ニューヨークのステージでも、みんながそれぞれ能力を持っているのに、(人種の)グループとしてみんながそうした経験をしてしまう理由がない。そういった偏見をなくすために頑張ろう、という話をしたんです。なので、そう思っている人たちが私に共感してくれている、と感じています。もちろん私の音楽を好きでいてくれる人もいるんですけど、Awichという一人の人間として応援してくれるというか。こういう出来事がリアルに繋がりを作っていくと思っているので、アジア人として、みんなで手を取り合って行くのがいいと思うし、(人種的)マイノリティという点で、黒人やラテン系の人たちも、自分たちの地位に対してまだまだ課題を感じている部分があると思うんです。なので、そこも連帯していく、という気持ちでやっています。そういう気持ちを反映した曲が、今回のアルバムに入っている「Fear Us」という曲で、RZAとジョーイ・バッドアスの3人で作ったものなんです。



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人格を形成するもの全てを詰め込んだアルバム

――次のアルバムは全曲をRZAが手掛けており、ファーグやジョーイ・バッドアスらニューヨークのラッパーらも参加しています。Awichさんにとって、どんな意味を持つ作品になりそうですか?

Awich:私の人格を形成するもの全てを詰め込んだアルバムにする、と決めています。ニューヨークは亡くなった私のパートナーが育った場所でもあるんです。彼がニューヨークで培った5パーセンターズの思想や、私のルーツでもある沖縄や今の生活の拠点でもある東京、そして平和や団結の想い、そうしたものを反映した内容になっています。ヒップホップに対して感謝と尊敬を示すものを作らないと、ラッパーとしてここから先に行けないような気がしたんです。制作中、完成までに何度も心が折れそうになったけど、すごく成長できたと思います。


――今年は日本でもヒップホップの大きなイベントがさらに相次ぎ、個々のアーティストが大きなステージでライブを行うことも増え、より日本におけるヒップホップの存在感が増したのではと感じています。Awichさんの目にはどのように映っていますか?

Awich:いやもう、凄すぎます。私は自分のアルバムを仕上げるのに苦戦していて、その間にみんなが大きなイベントをボンボンやっていて……嬉しい反面、切磋琢磨しているな、という感じもあります。ラッパーのみんなとは、本当に“仲良しライバル”みたいな感じなんです。「これでもか!」「もうやめてください!」と言いながらお互いにやり合う、みたいな(笑)。みんなが色んなことに挑戦している姿を見ると「いいなあ」と思って私もやりたくなっちゃう。でも、自分の立ち位置を忘れて色んなところに引っ張られてしまったら意味がない。みんなの引力が凄すぎる、と思いつつ、自分もブレないようにアルバム制作にフォーカスしています。今はそれぞれがみんな、自分のことに集中してやっている時期だと思います。




――年末も迫っていますが、年内の動きは?

Awich:この後、アルバムのプロモーションでアメリカに行ったり、グラミー賞のイベントでエジプトに行ったり、そのあとはヨーロッパで制作したり、と予定が詰まっているんですよ。

――Awichさんにとって、ビルボードライブでの個人的な思い出はありますか?

Awich:2017年にエリカ・バドゥの来日公演を観に行ったのが印象的ですね。少しだけお話しさせてもらって。エリカは先日(ビルボードライブに)来日した時にもライブに遊びに行ったんですけど、そこでさらに仲良くなって、ジ・アルケミストと制作中の音源も聴かせてもらったんです。

――最後に、今年のバースデーライブを楽しみにしているファンたちに一言メッセージをお願いします。

Awich:私の誕生日はいつもよりさらに無礼講というか、何が起こるか分からないイベントになっているんですけど、今回はバンドセットで超ジャジー&ファンキーに自由に音楽を楽しめるイベントになると思います。「音楽っていいなあ」って改めて感じてもらえる日になると思うので、泣いて笑って、踊ってほしい。あと、お酒もいっぱい飲むつもりで来てください!



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