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<インタビュー>SWAYが仲間たちと一緒に作り上げた珠玉の1枚――3rdアルバム『PSYCHO JUNK』

Interview & Text:小松香里
DOBERMAN INFINITYのMCとしての活動に加え、俳優やデザイナーとしても活躍するSWAY。Def Jam Recordings所属ソロアーティストとして3作目のアルバム『PSYCHO JUNK』を完成させた。タイトルは「サイコなガラクタ」という意味と、SWAYの口癖でもある「最高じゃん」を掛け合わせている。D.O、海沼流星(BALLISTIK BOYZ)、MIYACHI、RUEED、Staxx T、といったゲストが多数参加し、クラブでかかることを想定して制作されたアルバムだけに、仲間との最高のバイブスが溢れた遊び心満載の作品となった。同時に、社会人としての使命感を感じさせる。つまりクラブで遊ぶときは遊び、仲間とハッピーに音楽を制作し、責任感を持って仕事を全うし、家庭人としての責任を果たすという39歳のSWAYのありのままの日常がそのまま描かれている。そんなSWAYにインタビューした。
「サウナへの愛を真面目に歌ったら面白いんじゃないか」
――『PSYCHO JUNK』は2024年年明けから1年以上かけて制作されたそうですが、どういうアルバムを目指そうと思っていたんですか?
SWAY:クラブを周りたいっていう気持ちがあって、クラブでかかるに相応しいサウンドということを重視して作りました。ビートは作り始めている状態だったので、リファレンスを出すというより、その時その時で思った感情を常にメモして、それを踏まえて形にしていくような流れでしたね。
――ほとんどの曲にゲストが参加していますが、その発想はどういう風に生まれていったんでしょう?
SWAY:年明けにスタジオに入った時から次のアルバムは客演を多くしたいって思っていました。曲ができた段階で、サブスクでいろんなアーティストの曲を聞いて、気になったらDMしたりしましたね。先行曲の「Ordinary flow」はできた時にMIYACHIにラップしてほしいなって思ったんですが、会ったことなかったからDMで「ご飯行きませんか?」って誘って、焼肉をご一緒して「一緒に曲やりたいんです」とお伝えしてOKしてもらいました。「くだらねぇ」は、曲の内容的に昔から繋がりのあるゲストじゃないと説得力がないなって思って、地元北海道の後輩で自分が去年から月イチで開催しているHARLEMでのイベントに毎回来てくれたり、今ジブさん(Zeebra)と(青山)テルマと一緒にMCを務めさせてもらってる『フリースタイル日本統一』でフリースタイルでバトルする時には絶対現場にいるRy-laxに声をかけました。あと僕が札幌の服屋で働いている時から憧れていたSIMONくんとは絶対いつか一緒に曲をやりたかったので、「くだらねぇ」で声をかけさせてもらいました。
「くだらねぇ」
――「くだらねぇ」は<99%マジでクソくだらねぇ>っていうラインもありますが、そういう会話が成り立つ関係性の尊さを感じます。
SWAY:そうですね。基本「くだらねえな」って思いながら話しているのが大好きなんですよね(笑)。書きたいこと書けた曲でもあります。「シャンパンよりもテキーラがいい」にはD.Oさんに参加してもらっていますが、D.Oさんが北海道のイベントに来た時に、そのイベントをやっている先輩と北海道を車で回ったこととかあって。車中で身のない話した後、先輩が必ず「くだらねぇ」って言ってたんですよ(笑)。その記憶がすごく残ってて、今回曲できました。
――「シャンパンよりもテキーラがいい」のトラックはクールですけど、リリックのテーマとしてはクラブで遊ぶ日常というか。
SWAY:これもくだらないですよね(笑)。こうやって振り返るとほとんどお酒の曲なんですよね。
――お酒の曲に加えて、「Ordinary flow」や「How Much Degrees」のように社会人の背中を押すような描写が出てくる曲という2軸という印象がありました。
SWAY:そうですよね。社会人として飲んだ次の日はちゃんと仕事しなきゃいけないっていうのはみんな一緒だと思うので(笑)。僕も社会人として真面目に生きなきゃっていう心意気は一応あるんで、誰かの背中を押すというよりは、自分の平日と週末みたいなことを書いたつもりです。「Orginary flow」は僕が平日を書いてMIYACHIが週末を書きました。サビが気持ち良かったんで、このアルバムで唯一僕が歌っぽいアプローチをしていて。今思うとMIYACHIとめっちゃラップしたかったなっていう後悔もありながら、すべてはその時のノリで作ったんで(笑)。
「Ordinary flow」
――「How Much Degrees」はどういう風にできていったんですか?
SWAY:SWAYとは何だろうみたいなことを改めて考えたんですよね。普通の家庭で育ってヒップホップを好きになって、全身タトゥーがあるわけでなく、LDHという事務所でヒップホップで何が表現できるかなと思った時、サウナへの愛を真面目に歌ったら面白いんじゃないかと思いました。サウナって他の人の情報が勝手に入ってくるんですが、その中で「みんなも嫌なことってあるよな」って思ったり。
――サウナ愛に加えて、時には時計を見ない時間が必要だよっていうことも描かれていますよね。
SWAY:そうですね。サウナは時計を気にすると長く入れないですし、心を無にしないとちゃんと整えないんですよ。それに裸の付き合いになるので、そういうことを真面目に歌いました。
「How Much Degrees」
- 「小さくて大きな夢ができました」
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「小さくて大きな夢ができました」
――「Lil bit」はミニマルなトラックの曲で、最初SWAYさんの日常を描いた曲かと思いきや、自分の可能性を鼓舞するような曲になっています。
SWAY:Lucas Valentineさんのトラックのイントロから大好きで「絶対やりたいです」って話して作っていきました。ゴールを考えずに作ったんですが、最初に「Lil bit」ってワードがパッと出て、何がLil bitかなって考えていって、いろんなところであと少しのことってたくさんあるなと思ったんです。もう少し頑張らなきゃと思う気持ちだったり。ファーストバースの最後の方は、僕がやっている「BBB」っていうクラブイベントがあって、みんなで楽しく盛り上がっていたらあっという間に5時半とかになって閉店なんだけど、「もう一曲だけいいですか」「しょうがないな」みたいなよくある光景のことを書いて。「ハンパネッ」に通じますが、「縛られているものから飛び出してみたい」っていう気持ちや「過小評価せずにもうちょっと自信を持っていいんじゃないか」っていうLil bitも入れました。
「Lil bit」
――<形ない毎日 型にはめて カタチ無きものに何を学べる?>というラインがありますが、SWAYさんが音楽家として大事にしている部分なのかなと思いました。
SWAY:それはめっちゃあります。型にはまりそうになると「ダメだダメだ!」と思って取っ払いますね。怒られるかもしれないけどそっちの方がいいというか。僕らの仕事はそういうものが必要とされるんじゃないかなって。例えばドーベルでパーティーチューンを作っている時、「もうこんな歳だから」って言い出すメンバーがいたら、「いやいや、いつまでもパーディー野郎でしょ」って思ったりします(笑)。それを言葉にするのじゃなくて、先陣を切って型にはまらない生き方をしてやろうっていう気持ちは常にあるかもしれないです。
――今作の節々にも出てますよね。
SWAY:そうですね。「くだらねぇ」っていう言葉にも通じるのかもしれないです。『IWGP』(池袋ウエストゲートパーク)で長瀬智也さん演じるまこっちゃんが、「ああ、めんどくせぇ!」って言いながら面倒くさいことしてるのがかっこいいっていう。「面倒くさいから行かないわ」じゃなくて「面倒くさい」って言いながら来てくれるのが良いんですよね。天秤にかけるものが出てくると、型にはまっちゃいがちだと思うんですけど、踏み出すことが大事だなって思って生きています。
――「Lil bit」はSWAYさん単独のラップが際立つ曲だからこそ、自分自身の信念がぶわっと出てきている感じがしました。
SWAY:そうですね。「Lil bit」は特に書いてて楽しかったですね。自分で自分を鼓舞できた感じがします。

――アルバムを作る上で前作の『STAY WILD AND YOUNG』からの流れは何か意識したんですか?
SWAY:『STAY WILD AND YOUNG』ではずっと一人でワンマンをやりたかったので、なるべくフィーチャリングを入れずに一人で成立する曲を作ろうと思っていました。今回はずっと自分の声が音に乗っているよりは、 いろんな人の声、フロウが乗っていた方が俺も聞いてて飽きないなって思ったんですよね。自分が飽きないアルバムを作りたい気持ちがあったことが大きかったと思います。
――すごく賑やかなアルバムになったと同時に、30代後半のSWAYさんのまだまだクラブで遊ぶけど、社会人としても家庭人としても義務を果たしている姿が伝わってきて、すごく充実した日々を送っている実感があるんじゃないかと思いました。
SWAY:大分楽しんでいると思います。最後にできあがったのがStaxx Tとの「ちょっと強えエモーション」っていう曲なんですが、制作からレコーディングまでで3回くらい彼の家に行ったんですけど、まず2時間くらいはアイドリングトークが止まらないんです。同い年ですし、共通の先輩の話とかをする中で、「やっぱりイケてる先輩ってちゃんと遊んでるよね」みたいな話をして。しっかり稼いでたり、会社を経営したり。「ああいう人になりたいよね」っていう話で盛り上がったんです。さっきSWAYって何?ってことを改めて考えたって話しましたが、「ちょっと強ぇエモーション」で書いたリリックってその時期にStaxxが俺に言ってくれたことばかりなんです。「SWAYは役者もやってデザイナーもやってて、他にそういう人はいないからどんどんそれを前に出した方が良いよ」って言ってくれたんですが、「俺としてはそのいろいろやってることが逆にコンプレックスにもなっている」って言ったら、「それって「Mr.TPOじゃん」って言ってくれて。Staxxにおかげで自信が持てました。
――「Mr.TPO」ってリリックがありますもんね。
SWAY:はい。「番組の司会もやってさ」みたいな。Staxxの家に行っても子どものお迎えがあるので毎回4時には帰ってたんですけど(笑)。
――人からもらった言葉も含めて自分の生き方を肯定できるアルバムになってますよね。
SWAY:家族も自分の仕事や性格をめっちゃ理解してくれているので、遊ぶ時は遊ぶけど、家のこともやるし平日はちゃんと仕事をしていれば大丈夫だと思っていて。だから遊びはちょっと怒られるぐらい派手に(笑)、仕事は納得してもらえるよう頑張るっていう気持ちで生きています。
――今作を作ったことで見えてきたビジョンはありますか?
SWAY:今回は自分らラップし始めた時みたいなワクワク感で作れたアルバムなんですね。最初に言いましたけど、これを引っ提げて全国のクラブでラップしたいですね。インディーズ時代に呼んでくれた地方のクラブとかも行って、お酒が飲みたいと思ったので、自分から地方のオーガナイザーに声をかけています。あと、これだけのゲストが参加してくれたので、みんなに出てもらってイベントがやれたらいいなっていう小さくて大きな夢ができました(笑)。
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