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<インタビュー>「グッとくる感覚を持ってもらえたら」――夢のステージを前に、大橋トリオがジャズを語る

Interview & Text: Task Watanabe
Photo: Kenta Sawada
Hair & Make-up: Ena Honjo
シンガー・ソングライターでありマルチ・プレイヤー、そしてプロデューサー、コンポーザー、アレンジャーとして多彩な音楽を紡ぎ出し続ける大橋トリオ。11月、東京・大阪・横浜のビルボードライブを巡るのは〈ジャズ〉をテーマにした【TRIO Sextet Billboard Live Tour】。そのステージを前に“大橋トリオのジャズ”を語ってくれた。
※本記事は、2025年10月発行のフリーペーパー『bbl MAGAZINE vol.212(11月号)』(東京&横浜版)内の特集を転載しております。
大橋トリオにとってライブとは
「ライブをやるからには、前とは違う、いいものをやりたいと毎回思っています。ルーティン的に同じことを繰り返すことは考えていませんね」
大橋トリオにとってライブとは、という質問にこんな答えが返ってきた。その言葉通り、2025年の大橋トリオは、ビッグバンド編成でのニューイヤー・ライブにはじまり、バンドセットでの全国ホール・ツアー、そのアフター・パーティーとして開催されたアコースティック編成のビルボードライブ公演、そして各地のフェスへの出演でもそれぞれ形態を変えるなど、多彩なスタイルのステージを披露してきた。
このインタビュー当日は、池上本門寺でのフェス【Slow LIVE】に出演。「今日は3人編成で、僕はほぼベース・ボーカルです」というスタイル。マルチ・プレイヤーとしての魅力を活かしながら“ここにしかないライブ”を実現している。

「(9月後半の)高崎音楽祭ではギターをプレイする割合が増える予定ですし、同じ曲を演るのでも楽器を変えたり、アレンジを変えたり、そんな工夫はいつも考えています。何度も足を運んでくれる方もいらっしゃいますし、それぞれのステージをちゃんと持って帰ってもらいたい、それは常に心がけていますね」
「そういう意味もあって、今年のツアーではメンバーと一緒にいろんな演出を考えました。今までもメンバー全員が1本のマイクに集まってボーカルとアンサンブルを聴かせる〈1本マイク〉というコーナーがあって、それは今年『MONO-POLY』というミニ・アルバムになったんですけど、そのコーナーの好評に甘えていてはいけないなって(笑)」
大事なのはグッとくる感覚
大橋トリオとしてのデビューは2007年。20年近い歳月の中で“出発点と現在地”はどのように変わってきたのだろうか。
「曲作り、レコーディングという意味では、大橋トリオとしてはじめた頃は“こういう音、こういう曲が作りたい”という、自分の中にあるゴールを目指すような感覚がありました。キャリアを重ねてきて、常に新しくありたいと思ってきた中で、そこから“(今まで)ないものを探している”ような感覚になりましたね。ゼロからのスタートと言うか。だから生みの苦しみは大きいですよ(笑)」

「あえて言えば、僕にはいわゆるヒット曲がないですから。それがある種の“型”になってないのかもしれないですね。ポップ・ヒットですか? それはしてみたいです(笑)。まあ、ちょっと特殊なことをやっているという自覚もありますし、声質とかボーカルのキーとか、ポップな音楽に向いていないのかもしれないですけど、もし、このままでヒットすることがあったら、きっと楽しいんじゃないかなって(笑)。それは本望だなって思ってますね」
曲作りでの生みの苦しみを体感しながら、制作でもライブでも“今までとは違う”ものを探す姿勢を崩さない大橋トリオ。そこにはやはり“聴いてくれる人”への思いがある。
「僕自身が音楽に触れるとき、“グッとくる”という感覚があるんです。大橋トリオを聴いてくれる人にも、そんなグッとくる感覚を持ってもらえたらって。それは若い頃から変わらないモチベーションですね」
大橋トリオ×ジャズの最新体験
11月、東京・大阪・横浜のビルボードライブに大橋トリオのツアーがやってくる。今回のスタイルはジャズ。ホーンも交えたセクステット編成で“大橋トリオのジャズ”が秋のビルボードライブのステージを彩ってくれる。そんなジャズも、もちろん幼い頃から“グッときた”音楽のひとつだ。
「最初は父親の持っていたジャズのレコードを聴いたところから。それからはずっと聴き続けてますね。ジャズ(だけが)大好きっていう風にはならなかったんですけど、そのエッセンスを取り入れた自分の音楽をやりたいっていう思いは、いつも変わらずありました」

「昔から、ジャズメンがポップスを演奏するときの間合いの取り方とか、独特のポップ感とか、音選びの感覚とか、それがすごく好きで。これまでも大橋トリオの音楽の中にその感覚はあるんですけど、このツアーでは、初めてはっきりとジャズって言わせてもらっていますから、ポップ感というよりはよりジャズ感を前に出していきたいと考えてますね。メンバーもジャズをしっかり演奏してきたメンバーが揃いました。もしかしたらスタンダードも演奏しますし、自分の曲の中でもジャズっぽい曲を選んで、ジャズっぽいアレンジをする予定です。僕自身は、ボーカルとギターになると思います」
ビッグバンドを除けば、大橋トリオにとって初のジャズ・ステージ。それがライブ&レストランというビルボードライブであることにも意味がありそうだ。
「僕の若い頃、まだビルボードライブはありませんでしたけど、海外のジャズ・ミュージシャンがやってきて、おいしい食事とおいしいお酒がある、そんなスタイルでのライブを体験して、いや、これは極上だなって。若い僕のお財布にはちょっと厳しい面もありましたけど(笑)、そんなことは超越する、特別中の特別。それ以来、いまだに変わらない夢のステージなんです。おいしいお酒と一緒にいつもとはちょっと違う大橋トリオを楽しんでもらう。僕にとっては最新の夢のステージを一緒に味わえたらと思っています」
大橋トリオのMY FAVORITE JAZZ -Musician-
Oscar Peterson
George Benson
Phineas Newborn Jr.
Brad Mehldau
Herbie Hancock
Harvey Mason
あげていけばキリがないですが、今、思いついたミュージシャンです。中でもオスカー・ピーターソンの『We Get Requests』とジョージ・ベンソンの『In Flight』は、生涯で最も聴いたといえるアルバム。大好きですね。ハービー・ハンコックは、特にエレクトロニックな時代の作品にグッときます。そのハービー・ハンコック・グループのメンバーでもあるドラマー、ハーヴィー・メイソンもフェイバリット。
公演情報
【大橋トリオ TRIO Sextet Billboard Live Tour】
2025年11月9日(日)
東京・ビルボードライブ東京
1st stage open 15:00 start 16:00
2nd stage open 18:00 start 19:00
公演詳細>>
2025年11月14日(金)
大阪・ビルボードライブ大阪
1st stage open 17:00 start 18:00
2nd stage open 20:00 start 21:00
公演詳細>>
2025年11月23日(日)
神奈川・ビルボードライブ横浜
1st stage open 15:00 start 16:00
2nd stage open 18:00 start 19:00
公演詳細>>
※全公演SOLD OUT
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