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<インタビュー>未来を鳴らす天才たち――DJ RENA×THE D SoraKi、ビルボードライブ東京で交わる才能とカルチャー

2025年10月2日、ビルボードライブ東京にて【Billboard Live TOKYO presents SESSION ZERO ~TOKYO Cross Culture~】が行われる。同公演は、ダンス、ジャズ、ヒップホップ、和楽器などの多彩な表現が一堂に会し、ジャンルや文化の垣根を越える革新的なライブイベント。出演者はDJの世界大会『DMC WORLD FINAL』を制したDJ RENA、ダンスバトル『Red Bull Dance Your Style』で注目を集めた世界的ダンサー・THE D SoraKiなど、実力派ばかりだ。一体どんなイベントになるのか、予想がつかないのも同公演の見どころだろう。そこで、Billboard JAPANでは出演者のDJ RENA、THE D SoraKiにインタビューを実施。若き天才たちがDJ、ダンスにどう向き合っているのか、同公演にどう取り組もうとしているのか、じっくり語ってもらった。(Interview & Text:高橋梓/Photo:Yukitaka Amemiya)
音楽とダンスに導かれた幼少期
――Billboard JAPANには初めてご登場いただくので、自己紹介からお願いします。
DJ RENA:DJ RENAです。2017年のDMC世界大会で、12歳、世界最年少で優勝しました。
THE D SoraKi:THE D SoraKiです。湘南生まれで、ダンスを頑張っています。
DJ RENA:僕、ダンスをやっていたんですけど、10歳くらいの時に初めてSoraKiくんを見て。たしか、『DANCEALIVE』の関西予選だったかな。その時はまだひらがなで「そらき」でした。ピンクの服、着ていましたよね。
THE D SoraKi:やめて、やめて(笑)! 恥ずかしい!

――ということは、RENAさんは元々SoraKiさんを知っていたんですね。
DJ RENA:そうですね。うわ、すごい上手い子がいると思って。
THE D SoraKi:え、ダンスはどれくらいやっていたんですか。
DJ RENA:4歳くらいからやっていて、11歳くらいでDJの方に転身しました。
THE D SoraKi:えー、僕と同じくらいからやっていたんですね。なんでDJをやろうと思ったんですか? ダンスきっかけ?
DJ RENA:そうですね。親が音楽好きだったこともあってダンスを習わせてくれていて。そのまま僕もダンスに没頭していたのですが、ダンスのイベントに行った時に、スクラッチをやっている人がいたんです。僕の父親、昔ディスコでDJをやっていたらしくて、家にDJの機材があっって。それを借りてやり始めたのがきっかけですね。とはいえ最初は難しかったので、YouTubeを見て練習していました。僕らの世代って、YouTubeで勉強することが多いと思うんですよね。SoraKiくんもじゃないですか?
THE D SoraKi:たしかに僕もYouTubeばっかり見ていました。でも、コロナ前は海外のダンサーさんも日本にたくさん来てくれていたんです。【World Dance Colosseum】とか。それを観に行っていたので、逆にYouTubeは勉強というよりも娯楽でしたね。だから、YouTubeで勉強するってすごい。
DJ RENA:僕の場合、YouTubeをスロー再生しながら真似していたんですよ。
THE D SoraKi:え、How to動画じゃなくて、自分がかっこいいと思うプレイヤーの動画ってこと?
DJ RENA:そう、そう。世界大会の動画だったかな。だけど最初はスローにしても意味がわからなかったから、適当でしたけどね。

――SoraKiさんはダンスを始めたきっかけはなんだったのですか?
THE D SoraKi:姉の影響ですね。僕が生まれた時にはもう姉がダンスをしていたので、ダンスというものが日常にあって。ちなみに、姉は公園で遊んでいたらダンスに誘われて、習い始めたみたいです。で、僕は衣食住と同じ感じで、音楽とダンスが常にありました。ちゃんと習い始めたのは4歳くらいからですが、もう赤ん坊の頃から自由に踊っていましたね。4歳の時はサッカーもやっていたんですけどね。でも結局ダンス一本に絞って。音楽が好きだったのですが、ラップをしたり音楽作ったりするのではなく、音楽が好きだから踊っているという感じでダンスをしていました。
――そこから今もずっと続けられているわけですが、辞めたいと思ったことはないのでしょうか?
DJ RENA:ありますよ。
THE D SoraKi:全然あります。でも、楽しいから次の日には「またやろう」となっているんですよね。
DJ RENA:1回諦めたつもりでも、頭の中では「どうやったらできるんやろうな」とずっと考えちゃうんです。学校の授業を聞きながら、とか(笑)。
THE D SoraKi:めっちゃわかる!
DJ RENA:本当はちゃんと授業聞かなあかんけど、授業中って考え事をするのに最適なんです。
THE D SoraKi:勉強しろよって話なんだけどね(笑)。

――ある意味貴重な時間なんですね(笑)。もちろんお二人が世界一のDJとダンサーであることは存じ上げているのですが、それまではどんな活動をされていたのですか?
THE D SoraKi:まだ若すぎて、活動と言えることはやっていなかったと思います。
DJ RENA:そうですね。僕も最初から大会でした。10歳の頃、一番最初は大阪のバトルに出て予選落ちをして。悔しいあまりひたすら練習をして、世界大会で優勝して。そこからキャリアがスタートした感じです。
THE D SoraKi:本当にそう。優勝してから居場所ができた感じがしました。
DJ RENA:DJの大会も仕組み自体はダンスと似ていて、最初ビデオ審査があるんですね。で、ビデオ審査に通過したら予選に出て。その予選を通過したらジャパンファイナル、ジャパンファイナルを通過したら世界予選、次は世界決勝という流れです。
THE D SoraKi:長い! でも、ダンスは運もめちゃくちゃありますから。スキルがあることは前提なので、どんな音楽が流れるかは本当に運。あとは自分のダンススタイルが好きなジャッジがいるか、とか。なので優勝した時は「運が味方についた」という感覚が強いです。
DJ RENA:でも僕が覚えている感じ、SoraKiくんはどんな音楽が流れてもずっとかましつづけていた気がする。ヒップホップをやっている子って、ヒップホップはたしかに得意やけどハウスみたいな速いテンポになると踊りにくそうにしているなと思っていて。ハウスのトラックでもヒップホップを頑張って踊る子っていたじゃないですか。
THE D SoraKi:いたっすね。でも、めっちゃぎこちない。
DJ RENA:でもSoraKiくんは昔からいろんなジャンルに対応していたので、強かったですよね。
THE D SoraKi:たしかにバトルは強かったかも。なんかね、生きる方法がバトルしかなかったんですよ。家庭環境もよくなかったし、バトルに出ることと、学校でふざけることしかやることがなかったから。ダンスがなかったら自分ってどうなっていたんだろうと思うくらいだったので、バトルするしかなかったんですよね。
世界大会優勝がもたらした周囲の変化と本場カルチャーの学び
――そんな中世界大会で優勝をして、周りや自分自身にも変化があったのでは?
THE D SoraKi:めっちゃありました。「SoraKiのスタイルは微妙だ」と言っていた人たちが手のひらをパンパン返してきて(笑)。でも、ウケるなって思っていましたし、すごくいい経験をしたなと今は思っています。
DJ RENA:僕もです。当時は12歳やったから、結構ナメられがちで。「たまたまポンって行ったんやろ」と思われていたけど、やっぱり世界大会で優勝すると一気に態度が変わりました(笑)。
THE D SoraKi:ね。でも、そういう人たちってある意味純粋なのかなって思います。多分「こっちは長年やってるんだよ」という嫉妬やプライドみたいなものがあったとしても、かませば認めてくれるということですもんね。だから純粋なんだろうなって。最近はそれもいカルチャー、いい現場、いい人たちと思うようになりました。
DJ RENA:たしかに。それに本場アメリカのカルチャーに根付いているのかなとも思います。ストリートカルチャーは、「お前やばいな」と才能を認め合いますから。
THE D SoraKi:いいカルチャーですよね。
DJ RENA:上下関係ももちろんあるけど、やからといって上から物を言うだけじゃなくて認め合う。いいものを出せば「やばいな」と言ってくれる。それはいいことだなって。

――おっしゃる通りです。世界大会優勝後も様々なお仕事をされてきたと思いますが、最近やった仕事の中で印象的だったものを教えてください。
DJ RENA:2カ月くらい前に、カナダのトロントで行なわれた【SKRATCH BASTID】というフェスに出演したのですが、DJ Premier、9th Wonder、A‐Trak、DJ Puffyなどと一緒に3000〜4000人くらいの前でプレイしました。その時はすごく気持ちよかったですね。 9th Wonderがロックで沸かせていたのも面白かったし、 DJ Premierがビートを流してお客さんとコール&レスポンスでボーカルを作っていくというのも楽しかったし、夢みたいなフェスでした。
THE D SoraKi:楽しそう! 僕は阿波おどりですね。8月に徳島の阿波おどりに行ったんです。事前に阿波おどりを高円寺に習いに行って、徳島で踊ってきました。それがシンプルに楽しくて。いつもやっているダンスとはまったく違うので、逆に面白かったです。でも腰が痛かった。阿波おどりって、ずっと腰を出して踊るんですね。普段やらない姿勢なのでそこはキツかったですけど、またやりたいと思うくらい楽しかったです。しかもアフターパーティーもめちゃくちゃ楽しくて。FULLHOUSEがアフターパーティーのメンバーで、阿波おどり中もテクノがずっと流れていたんです。阿波おどりのチャンカチャンカという音とテクノが混ざって頭おかしくなりそうでしたが、それも楽しかった(笑)。
DJ RENA:えー! 面白い!
THE D SoraKi:いいカルチャーですよね。
DJ RENA:新しい体験が出来て楽しかったです。
――日々さまざまな経験をされているお2人ですが、お2人の今のスタイルに、影響を与えた人物や言葉などはあるのでしょうか。
THE D SoraKi:やっぱり師匠のYOSHIEさんの存在は大きいです。YOSHIEさんのおかげで今の自分のスタイルがあると思っているくらい。10歳から20歳までYOSHIEさんに習っていて、世界大会で優勝した後もレッスンに行っていました。その中でだんだん仲良くなって関係性が築けてきて、YOSHIEさんの人柄から学んだことはたくさんありましたね。
DJ RENA:僕も師匠かな。DJ HI-CさんにDJを習い始めてかわいがってもらって、焼き肉を奢ってもらったり、一緒にバンジージャンプを飛んだりして。人柄に触れていろんな学びがありました。その師匠から言われた「全てはグルーヴ」という言葉も大切にしています。ターンテーブリストの会に行くと、みんな技に走りがちなんです。でもどれだけすごい技をやっていても、グルーヴがなかったら意味がない。それを常に意識するようにしています。ダンスもそうじゃないですか?
THE D SoraKi:まったく同じですね。影響があった言葉かぁ……。僕、YOSHIEさんとは何か食べたり、お酒を飲んだりしている記憶しかないんですよね。でもそれが僕にとってはすごく良くて。クラブで一緒に踊っているだけで、「明日も頑張ろう」と思ったりしていました。
DJ RENA:ヒップホップですね!
THE D SoraKi:あはは(笑)。そうなのかも。でもその中からいろんな刺激を受けました。
――そんなお二人が今惹かれるダンススタイル、DJスタイルはどういったものなのでしょうか。
DJ RENA:僕はブラックミュージックのグルーヴがあるスタイルかな。ブラックミュージックのグルーヴ感ってすごいと思っていて。上手い・下手は関係なくて、スキルでは磨かれへんグルーヴみたいなものがあるんです。それに僕は惹かれます。なので、今も学び中。ニューヨークに行ってみんなとセッションして、ひたすら吸収しています。「こんな音まで取ってんねや!」みたいな気づきもありますし、向こうの方々と一緒に過ごすことで勉強をしています。
THE D SoraKi:僕はダンスをやりすぎているので、惹かれるダンススタイルと言われると難しいなぁ。逆にアーティストのノリ方の方が惹かれるかもしれません。例えば、ラップをしているジェスチャーなどに「おぉ!」と思うんですよね。昔、渋谷のマンハッタンレコードのところの階段からD.Oが降りてきた時に、ワケがわからない動きをしていて。その動きを見た時に「すげぇな! 一回大会でやってみようかな」と思ったくらいでした。

――今のお話に通ずる部分があるかもしれないのですが、お二人とも海外でもご活躍されています。日本のエンターテインメントのレベルはどう見ているのでしょうか。
THE D SoraKi:高くはないんじゃないですかね。
DJ RENA:うーん。海外でスキルを見せつけるのも大事なことやと思うんですけど、人間的な部分の方が海外だと重視されている気がします。
THE D SoraKi:間違いない。
DJ RENA:だから、スキルがあっても活躍できるわけではなくて。
THE D SoraKi:人間関係ですよね。それはマジで大事だと思います。ここ数年は、世界一の日本人ダンサーというような肩書を持っている方が増えていますけど、それは大会がありぎるからだと思うんです。もちろん、日本人のスキルが低いというわけではないのですが、「日本人のダンスが優れているから世界一になっている」というのとも少し違うのかなって。
DJ RENA:DJも一緒。部門が増えたことで、以前と比べてレベルが低くなっている気はしています。それに、誰でも簡単にミックスできる機能が付いた機材が発売されたりもしていて。レコードを触らなくても、ボタンを押せば解決できちゃう、みたいな。機材が進化したことで、テクニック面のレベルは下がってきているのかなと思います。
THE D SoraKi:あとはもう好みみたいな部分もあると思う。日本人のスキルが刺さる人には刺さっていると思いますが、自分にも刺さっているかと言われたらそうではなくて。なので、海外の刺さる人に向けてパフォーマンスをしているのであれば、「日本人のスキルは高い」と言われるんじゃないかな、と。
DJ RENA:まったくその通り!
化学反応が生む“瞬間のアート”
――お二人とも見方が似ていらっしゃいますね。そんなお二人は交流はあったのですか?
THE D SoraKi:1〜2年前くらいに、林修さんがやっている『日曜日の初耳学』(MBS)で共演して。そこで一緒にセッションしたくらいですかね。
DJ RENA:たしか、SoraKiくんがBPM170とか180くらいの超ハイテンポな曲で踊っていて。「すげぇ!」と思っていました。
THE D SoraKi:BPM170で踊ることなんてないですからね。あまりに疲れすぎて死ぬかと思いました(笑)。「もうテレビ出るのやめようかな」と思ったくらい。でもコラボ自体は最高だったんです。すごく楽しくて、音楽も最高だったし。
DJ RENA:ね。面白かった。みんなでライブをやっているというか、みんなで作り上げているというか、そういう感覚があって楽しかったです。
THE D SoraKi:しかも、自分の周りからも「よかったよ」と言ってもらえて。やっている側の自己満足で「楽しかった」、「よかった」と思うのもいいんですけど、他の人から言われるのも大事。それを言ってもらえたのは嬉しかったです。
――となると、今回の公演は久々の共演ということなんですね。
DJ RENA:そうですね。
THE D SoraKi:今日1日話していると、感覚も近い感じがしました。

――ビルボードライブ公演ではどんな表現をしたいと考えていますか?
DJ RENA:世界に誇る日本人アーティストの集結で、しかも僕、SoraKiくん、Monday満ちるさん、DABOさん、箏奏者の明日佳さん……など誰も見たことがない組み合わせじゃないですか。なので、はっきりイメージがついていないんです。その場で何が起きるのかをお客さんには見届けてほしいですね。
THE D SoraKi:瞬間のアートになると思います。
DJ RENA:そう、それ! ライブの締めはSoraKiくんに任せようかな(笑)。
――このメンバーだからこその化学反応もありそうですね。
THE D SoraKi:そうですね。とりあえず「見に来い!」ですね(笑)。僕たちも何が起きるのかわからないので。
DJ RENA:本当に。でも打ち合わせはもうやっていて、セットリストも作ってあります。それぞれが曲をやりつつ、有名な曲をカバーしたりと1つのジャンルに留まらない内容になると思います。かといって、綿密に計画を練っているわけではなくて、僕もフリースタイル、アドリブでやることがほとんどですし、SoraKiくんや他の方々もフリースタイルでやるので、どうなるかはやってみないとわからないという。
THE D SoraKi:タイトルが「SESSION ZERO」ですからね。その場でセッションしながら作り上げる部分も大きいと思います。
DJ RENA:さっき移動中のタクシーの中で、「あの有名なやつが出るかもよ?」みたいな話もしましたよね。

――楽しみです! ちなみに、ビルボードライブという場所だから出来そうなことなどはあるのでしょうか。
THE D SoraKi:やること自体は変わらないかも。でも、気持ち的には何かしら違いがあるかもしれませんね。衣装はちょっとだけビシッとしてシャツを着ていこうかな。
DJ RENA:ハットとかも似合いそう。僕もきちんとしていこうかなと思っています。
THE D SoraKi:場所がきちんとしてるからね。かといって、自分たちが本番どういう気持ちでプレイをしているかはわからないので、まずは衣装を決めようと思います。
DJ RENA:ね。本番の衣装を決めたら、あとはやることをやって楽しむだけ!
――では最後に、公演に向けての意気込みをお願いします!
THE D SoraKi:楽しみます!
DJ RENA:瞬間的なアートで化学反応を起こせるように、気合を入れつつ楽しみます!

公演情報

【Billboard Live TOKYO presents SESSION ZERO ~TOKYO Cross Culture~】
2025年10月2日(木)
東京・ビルボードライブ東京
1st stage open 16:30 start 17:30
2nd stage open 19:30 start 20:30
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