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<レポート>Crystal Kay、長年の夢がついに実現 北米ツアーLA公演に密着

Text: Tomoya Ogawa / Mariko Ikitake
13歳でデビュー、昨年にはデビュー25周年を迎えたシンガー、Crystal Kayが長年の夢だった北米ツアー【CK25 THE TOUR】をついに実現させた。アメリカ人の父と韓国人の母のもと、1850年代から西洋文化の玄関口として栄えた横浜に生まれた彼女は、幼少期から親しんできたアメリカンミュージックと、プロシンガーとして発信してきたJ-POPを自在に織り交ぜながら、「日米韓の架け橋」として活動を続けてきた。R&B路線で頭角を現していたキャリア初期から一転、2005年に発表した「恋におちたら」でポップスに挑戦し、国民的大ヒットを記録した。その後もJ-POPカバーやジャズ、声優・俳優業(『ハッピーフィート2 踊るペンギンレスキュー隊』、Netflix『アースクエイクバード』)、さらに日本版ミュージカル『ピピン』や日米合作版ミュージカル『RENT』出演と、活動とジャンルの幅を縦横無尽に広げてきた。
デビュー当初から世界を視野に入れていた彼女は、圧倒的な歌声とネイティブ級の英語力を武器に、日本での活動の合間を縫って渡米を重ね、現地のプロデューサーやクリエイターと積極的に音楽制作を続けてきた。タッグを組んだ代表曲が、ジャネット・ジャクソンやマライア・キャリー、アッシャーらの全米No.1ヒットを手がけたジャム&ルイスがプロデュースした、全編英語詞で構成された「Kirakuni」(2006)だ。当時のUSマーケットを席巻していたR&Bダンストラックを本場さながらに日本に持ち込んだ楽曲で、彼女の多くのカタログの中でも屈指の人気を誇る。長らくストリーミング未解禁だったが、今回のツアーに先がけて遂に配信され、海外ファンはもちろん日本のファンをも喜ばせた。
今回のツアーは、Crystal Kayのアルバム『Color Change!』にエンジニアとして参加していたトレメイン・“シックス7”・ウィリアムズ(トレイ)との長年の友情がきっかけで実現したという。マライア・キャリーやブルーノ・マーズ、スウェディッシュ・ハウス・マフィアらのステージマネージャーも務めてきたトレイがアメリカのマネジメント担当、そしてツアーマネージャーとしてCrystal Kayを全面サポートし、さらにマライア・キャリーのツアーメンバーでもあるJ Bake(Dr.)を筆頭に、Montez G(Ba.)、Keith Phelps(Key.)という実力派3ピースバンドがショーに華を添えた。

Crystal Kayがデビュー25周年を記念して行った7都市7公演の北米ツアーのロサンゼルス公演は、ハリウッドやダウンタウンではなく、イングルウッドのThe Miracle Theaterで開催。かつては治安の悪い地域とされていたこの街だが、最近ではNFLの試合や大物アーティストの公演が行われるSoFiスタジアムやNBAロサンゼルス・クリッパーズのホームとなる多目的アリーナ、インテュイット・ドームの開業など再開発が進んでいる。会場周辺にはスポーツバーぐらいしか営業している店はなく閑散としているが、劇場入口には「CRYSTAL KAY CK25 THE TOUR SOLD OUT!」の文字が輝き、中に入ると満員の観客とこれから始まるコンサートへの期待と熱気に包まれていた。

開演予定時刻を5分過ぎると、「hard to say」の演奏と共にステージ下手からCrystal Kayが登場。スパンコールが散りばめられた黒のトップスに黒パンツ、黒のグローブを身に着けたシックで大人な装いで彼女が歌い出すと、観客は総立ちで拍手喝采した。バンドは下手からキーボード、ドラム、キーボード兼ベースのトリオ編成。続いて、アップテンポな「Ex-Boyfriend」、「Girl U Love」を披露した。

挨拶では日本語も交えて「LA、ロサンゼルス……こんばんは! また戻って来られて嬉しいです。ショーへようこそ。みんなのために超楽しい時間を用意しています。歌って、踊って、最高な夜にしましょう」と語り、会場の熱気は一気に高まった。
続いて、12歳の時に歌った思い出の曲である「Eternal Memories」を丁寧に披露。「歌詞をやっと理解できるようになった気がします」と説明したように、一言一言、心を込めて歌い上げ、会場を魅了した。さらに「No Pressure」ではピアノの静かなイントロから中盤のエネルギッシュな展開までを見事に歌い上げ、観客からは歓声が上がった。

トークでは「楽しんでますか? LA、みんなのエネルギーが大好きです」と観客とコミュニケーションを取り、「みんなを過去に連れて行きます」と宣言すると〈君たちの汚れない無邪気さが 世の中変えるぞ もうすぐ〉と歌い出し、「TEENAGE UNIVERSE~Chewing Gum Baby」から「think of U」「Girl’s Night」「What Time Is It?」「Sweet friends」と豪華なメドレーを披露し、会場は一体感に包まれた。

感極まったCrystalは「この25年、そして今や26年にわたって、皆さんの愛とサポートにどれだけ感謝しているか伝えたいです」とファンに語り、「翼を広げて世界中の人とつながりたいと思っていて、今ここに皆さんがいることは夢が叶った瞬間です」と感謝の気持ちを伝えた。
自身を知ってもらえるきっかけになったと本人も述べたアニメ映画のテーマソング「ONE」を披露すると、「Gimme Some」では赤い照明とストロボを使用しラップも披露するパフォーマンスの幅の広さを見せつけ、「横浜からイングルウッドの街まで来たね。最高!」と感想を述べた。

2歳でパフォーマーを志した原点の話からマイケル・ジャクソン「Human Nature」、ジャネット・ジャクソン「I Get Lonely」のカバーも披露した。
「Boyfriend -part II-」では観客にジャンプやコール&リスポンスを求めたり、手でハートマークを作ったりとファンとの掛け合いを引き出す演出も。リリースから19年経過してやっとストリーミング解禁となった「Kirakuni」や「Candy」、「恋におちたら」では会場の盛り上がりは最高潮に達した。さらに「That Girl」ではファン2名をステージに上げてダンス共演を披露し、本編を締めくくった。



アンコール前には観客から「Crystal Kay」コールが沸き起こり、最後の「Motherland」ではスマホライトが会場を彩り、約90分のコンサートは大歓声の中で幕を閉じた。Crystalは「ロサンゼルス、どうもありがとうございます。愛してる。グッドナイト」と感謝を述べ、ステージを後にした。
今回のライブは、これまでのアルバムからまんべんなく楽曲をセレクトし、ヒット曲からカバー曲までを含めたキャリアを総括する内容に凝縮されていた。長年のファンはもちろん、最近彼女を知ったリスナーも楽しめる公演だった。彼女が最初に説明した通り、歌えて、踊れる最高に楽しい時間になった。

会場には日本人ファンもいたが、それ以上に地元のファンや若いオーディエンスが圧倒的に多く、日本の音楽と世界中のリスナーの距離が縮まったことを改めて感じさせた。多くの日本人アーティストが海外公演を行う際、トーク部分で英語の壁にぶつかり、思いをうまく伝えられない場面も見られるが、Crystal Kayの場合は自分の思いやエピソードを正確に伝えられるため、観客との一体感が生まれていた。今後も海外での公演を通してさらにファンを広げ、活躍の幅を広げてほしい。
ツアー情報

【Crystal Kay: CK25 The Tour】
8月17日(日)アトランタ Terminal West
8月19日(火)ワシントンDC Pearl Street Warehouse
8月21日(木)ニューヨーク Racket NYC
8月24日(日)トロント El Mocambo
8月26日(火)シカゴ LiveBash
8月28日(木)ロサンゼルス The Miracle Theater
8月30日(土)ダラス Southside Music Hall
※すべて現地時間、全公演終了
関連リンク
Crystal Kay 公式サイトCrystal Kay レーベルサイト
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