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<インタビュー>グッド・シャーロットのジョエルが明かす、新作『モーテル・ドゥ・キャップ』に7年かかった理由と日本への深い感謝

インタビューバナー

Interview: Haruki Saito
Text: Mariko Ikitake
Photos: 森好弘

 グッド・シャーロットが戻ってきた――愛とやさしさに包まれたサマーアルバムとともに。実に7年ぶりとなるアルバム『モーテル・ドゥ・キャップ』は、まさに4人の復活を象徴する作品だ。その理由は明白。ある出来事をきっかけに活動をストップしていた4人が、生まれ変わったかのようにアルバム制作に取り組み、心血を注いで、あるがままの自分たちを投影させた作品だから。

 8月中旬、バンドを率いる双子兄弟の弟ジョエル・マッデン(Vo.)は、自身のマネジメント会社「MDDN」が擁するバンド、チェイス・アトランティックの初来日および【SUMMER SONIC 2025】出演に合わせて来日。「ロックで成功するには日本で知ってもらうことが重要」という自身の経験と信念を持つ彼は、バンドの晴れ舞台を見届け、会社の代表として、日本の音楽マーケットに彼らを紹介する役割も果たす一方で、久々の新作について語る機会も設けてくれた。

──まずは、7年ぶりとなるアルバム『モーテル・ドゥ・キャップ』のリリースおめでとうございます。

ジョエル・マッデン:ありがとう。長い間、作品を作っていなかったから(リリースすることができて)いい気分。バンドを組んで30年くらい経つし、メンバーはもう家族同然だけど、こうしてまた一緒に活動できるのは最高だし、魂を注いだ作品ができたと思う。

──今回のアルバム制作は、フランスにあるホテル「オテル・ドゥ・キャップ」でプライベートなパフォーマンスを行ったことがきっかけだそうですが、その体験がどのようにアルバム制作へとつながったのか、詳しく教えていただけますか?

ジョエル:俺たちは決して「もうアルバムは作らない」という気持ちではなかったんだけど、「新作を作るならそれなりの理由がないと」とは感じていた。それが果たして、いつになるのかは、自分たちでもわからなかったけど、もしそのときが来たら、絶対的な“何かが”あるとは思っていた。ただ単にアルバムを作ったっていうことには、絶対にならないだろうって。

妻の妹(ニコール・リッチーの17歳年下の妹ソフィア)が婚約して、夫のエリオットとソフィアから南フランスで挙式をすると聞いた。そこがオテル・ドゥ・キャップで、2人から式で演奏してほしいって頼まれたんだ。俺にはノーと言う理由がひとつも見つからなかったけど、グッド・シャーロットとしては5年くらい演奏してなかったから、メンバー全員に電話してみたら、みんなも二つ返事でイエスって言った。だって俺たち、ソフィアが7歳くらい、身長が今の半分くらいしかない幼い頃から知っていたし、今となっては彼女も家族だから。全員集まってショーをしたら、俺たちも満足するような、本当にスペシャルな日になった。

面白いのは、あそこが超高級なことで有名なラグジュアリー・ホテルで、グッド・シャーロットには場違いな場所だってこと。でも、完璧なほどにいいショーになって、終わった後にみんなで少し残って思い出話に花を咲かせていたら、ベンジーから「アルバムを作って、またツアーに出ない?」っていう言葉が出た。俺たちみんな、彼と同意見で、すぐさまアルバム作りに取りかかった。もう、そのことしか考えられないくらい、直進した感じ。話が進むにつれて、ザック・サビーニやジョーダン・フィッシュ(元ブリング・ミー・ザ・ホライズン)も参加する流れになって、いつに間にかスタジオで一緒に制作していた。でも、一気にアルバムを完成させたわけじゃなくて、完成までにトータルで一年以上はかかってるよ。

──アルバムを聴いた印象として、とてもパーソナルな作品だと感じました。「ザ・ドレス・リハーサル」や「ジーシー・フォーエヴァー」はメンバーの人生や経験について歌っており、特に後者ではバンド自体について話している音声も使用されています。これらの曲を書くにあたって、何か特別な出来事があったのでしょうか?

ジョエル:うん、とても正直な曲が多い。「ザ・ドレス・リハーサル」は2019年に亡くなった父について歌った曲。俺たちは少々ずっと複雑な関係だったんだ。俺が子どもの頃は、父はいつも怒っていて俺はそれが受け入れられなかったし、彼と自分が似ている部分があって、俺はそれがすごく嫌だった。でも、俺も年を取るにつれて理解し、和解して、父の最後の10年は、友達みたいに関係が良好だったから、父が亡くなった時は本当に立ち上がれなかった。事実、前作『ジェネレーション Rx』を出したのが2018年で、翌年に父が亡くなったんだけど、悲しみが深すぎて、人前でパフォーマンスする気になれなくて、すべてをストップした。あのアルバムは父との関係をテーマにした曲が大半だったし、ファンもそれをすごく愛してくれていたのを知っていたから、ステージで何事もなく本気で歌えるなんて思えなかったんだ。言っている意味わかるかな?

──はい、十分わかります。

ジョエル:再開できる状態に戻るまで、活動を休止することをメンバーも理解してくれた。これが前作から7年かかった大きな理由だよ。なかなか前に進むことはできなかったけど、徐々に父との関係を歌った曲に向き合えるようになった。父は生前、俺が父との関係について書いた曲がすごく好きだって言っていたから、そのことも俺が少しずつ向き合える手助けにもなった。俺たちは彼の自慢の息子で、とても愛してくれていたことも。

4人で話し合ったときに、仮にグッド・シャーロットを過去のものにしたとしても、まったく悔いはないという意見だった。本気になれないなら、ステージに上がるべきではないから。時期が来るまで待とう、その日はいつか来るだろうし、来なくても問題ない、という結論に至ったんだ。俺たちはこれまでに十分なほど多くのものを受け取ったし、今でも俺たちの音楽を愛してくれる人がいるから。

──そういう結論に至ったのにもかかわらず、こうして戻ってきたのには相当な理由があるわけですよね。

ジョエル:家族をきっかけに止まったから、復活するきっかけも家族。本当にそれまで俺は穏やかに過ごしていたけど、結婚式をきっかけに心が動いた。ソフィアたちの依頼がなければ、ウェディングでの素晴らしい体験はできなかったし、依頼には二つ返事で返したけど、心のまま行動すると本当に心が動くんだよね。休んでいる間は一回もアルバムを作る気になれなかったのに、あの後すぐそういう会話になった。「こんな素晴らしい出来事は記録に残すべき、そしてみんなが幸せを感じるショーを届けるべきだ!」って。自分らしくいることが、俺たちの新時代(ニューエラ)のテーマ。「ジーシー・フォーエヴァー」はバンド再開について歌っている。「俺たちは不滅だ」っていうことを証明するアルバムだし、この曲でラストを飾ることでそれを強調できる。ノリのいい、テンションの高い盛り上がるアルバムとまではいかないけど、たくさんの愛と多くの音楽的バリエーションをふんだんに盛り込んだ作品になった。



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日本でライブをやるなら、全員が“これだ”と思える最高のステージを届けたい
今の俺たちなら、それができる

──リードシングルを含むいくつかの曲は、初期の作品を思い出させるような曲ですが、「ボディーズ」「デザーヴ・ユー」「ジーシー・フォーエヴァー」のように新たな領域を切り開くような楽曲もあり、多彩な仕上がりになっています。制作過程で、グッド・シャーロットとして新たなクリエイティブの扉を開いたと感じる曲はありましたか?

ジョエル:「ボディーズ」はかなり現代的な仕上がりになったと思っていて、それは一緒に書いたチェイス・アトランティックのミッチェル(・ケイヴ)がモダンなアプローチを持っているからだろうね。「ジーシー・フォーエヴァー」「キャッスル・イン・ザ・サンド」「アイ・ドント・ワーク・ヒア・エニモア」は一歩外に踏み込んだ気もする。「リジェクツ」や「ステッパー」ほどアグレッシブな曲でもないし、俺らっぽさも少ないから。こういうタイプの曲は昔から書いていたんだけど、アルバムに入れないよう自分たちに制限をかけていたように思う。でも今は年齢のことも考えて、もうそんなふうに考えてないし、ただただ好きなものをアルバムに入れている。

──先ほどジョーダン・フィッシュの参加について少し言及されましたが、彼との作業はいかがでしたか?

ジョエル:俺たちはジョーダンとブリング・ミー・ザ・ホライズンの大ファン。ジョーダンはフルタイムでプロデュース業に専念したくてバンドを脱退したんだけど、BMTHのファンの大半はジョーダンのファンでもあるじゃん。俺はMDDNというマネジメント会社を持っていて、チェイス・アトランティックやBad Omens、Architects、Eyedress、Poppyらを担当している。みんな異なるジャンルのアーティストで、アルバムにも参加したプロデューサーのザックもいる。ジョーダンも今ではMDDNが担当しているけど、俺たちは昔から彼の大ファンだったから、彼から一緒に仕事がしたいと電話が来たときは、すごくうれしかった。

このアルバム制作の話が決まったときにザックとジョーダンにチームを組んでアルバムを作ってくれないか尋ねたところ、2人とも快諾してくれた。ザックとジョーダンこそ、モダンロックのトップにいるプロデューサーだと思うから、最高に幸せだよ。1人は大のロックファンで、もう1人は実際にロックミュージックの第一線で活躍してきたミュージシャン。グッド・シャーロットは10年ほどアクティブではなかったけど、ロックや音楽の仕事に溢れた日々を過ごしていたから、これほどまでに素晴らしいプロデューサー2人と仕事ができたと思うし、2人の視点が加わったことで、このアルバムがよりスペシャルなものになったと思う。

──ウィズ・カリファをはじめ、4組のゲストが参加しており、1枚のアルバムとしてはグッド・シャーロット史上最多のゲスト曲数です。これらのコラボレーションはどのように実現したのでしょうか?

ジョエル:実はここまで多くのゲスト参加を考えていなかった。ちょっと自慢っぽく聞こえるかもしれないんだけど、ロサンゼルスにあるMDDNはちょっとした立派な建物で、スタジオが3つあり、新人から著名なバンドまでいろんな人が出入りしている。仕事で来る人もいれば、ふらっと立ち寄っておしゃべりするだけの人もいて、隣の部屋の話が筒抜けになるくらい、訪れた人同士の交流が活発なんだ。誰もが知るような人もいるから、ロックミュージシャンは必ずと言ってもいいほどMDDNに来たがる。ここに行けばプロデューサーもミュージシャンも作家もいるからさ。

当然俺たちもここで制作するから、制作中はいろんな人が覗きに来たし、そういう流れでいろいろな人が参加するようになった。あまり知られていないアーティストが多く参加しているけど、それも俺たちの狙いでもある。発掘したアーティストを世界に届けることが一種の楽しみでもあって、ペッティ・ヘンドリックスもそのうちの1人。ミルウォーキー出身の彼は個性が際立っていて、誰もまだ聴いたことのない新たなロックシンガーだよ。本当にいい音楽を作る。ゼフは俺が見つけた子でベッドルームポップを作るアーティストで、自分ですべてをやれる子なんだけど、かなりの恥ずかしがり屋。彼女の音楽を聴いたらすぐにわかるよ、「あ、この子はすごい」って。マジで。(ゼフが参加する)「ピンク・ギター」には若い女性ボーカルが欲しいと思って、すでに知られているような、わかりやすいゲストは嫌だった。ゼフを提案して、スタッフも彼女の声を聞いた瞬間、「いますぐ彼女にコンタクトを取ろう!」って意見が一致した。ルーク・ボーシェルトも同じような完璧な流れで参加が決まった。彼も俺たちと同じメリーランド出身で、MDDNがマネジメントしているカントリーシンガー。(ルークをフィーチャーした)「デザーヴ・ユー」は「カントリーと言えばカントリー」と呼べるサウンドで、ルークに合うと思ったんだ。音源を送ったら、案の定、完璧な音声が戻ってきた。

ウィズ・カリファとは長い付き合いで、去年彼のステージに出たりして、ずっと交流があって、その度に一緒に曲を書こうっていう話をしていたから、今回遂に実現させた。「ライフ・イズ・グレート」っていう曲で、聴いたら90年代に流行ったロックとヒップホップの組み合わせを思い出すよ。この相手にウィズを誘ったら、いい出来になった。どれもが自然な成り行きで完成していって、どうしたら売れるかといったマーケティング戦略は何も考えなかった。思うままにやって完成した作品が完璧なほどいい出来になって、すごく満足している。

──アルバムから3曲ほどライブ演奏されていますが、オーディエンスの反応はいかがでしたか?

ジョエル:驚くほどいい感じ。新作を披露するときはいつも群衆が喜んでくれるか気になるけど、「ステッパー」のライブ演奏は受けがよかったし、「ボディーズ」はまだやっていないけど、気に入ってもらえる気がする。一番驚いたのは「アイ・ドント・ワーク・ヒア・エニモア」。このライブ演奏が思った以上にめちゃくちゃよかった。今年はフェスにいくつか出るだけで、ツアーは来年から。ワールドツアーをする予定で、誰もが聞きたい昔の曲から、今の俺たちが誇りに思う新しい曲まで、全部をやるつもりだよ。

──日本での公演は2017年が最後で、もうすぐ8年が経ちます。近い将来、日本公演が実現する可能性はありますか?

ジョエル:もちろんだよ。オーストラリア公演が決まっているし、呼んでくれたら日本もツアーの日程を組むよ。俺たちはいつだって日本でやる気でいるし、日本の興行主はどこだって関係ない。呼んでくれさえすれば、最高のステージを見せるのは約束できる。これまでもずっとそうだったし。

──うれしい言葉です。最後に日本のファンにメッセージをいただけますか?

ジョエル:かれこれ30年近く、俺たちの音楽を聞いてくれている皆さんに感謝します。道で見かけたら声をかけてくれる方、今でも新作をチェックしてくれる方、熱心に応援してくれる方……皆さんはかけがえのない存在です。どの国よりも熱い応援をしてくれたのが日本で、初めて日本に来た2000年代初めから今日まで固く結ばれた俺たちの絆は、いい関係作りができていることを証明しているし、皆さんには本当に恩義を感じている。映画『Good Charlotte: Fast Future Generation』(2006)を覚えてる? あのドキュメンタリーは日本での活動を追ったものだけど、日本での経験が今の俺たちを形成したと言っても過言ではないくらい、皆さんから多大な影響を受けている。音楽や生き方、物事の見方もそう。間違いなく、俺たちの音楽を愛し、ライブに参加してくれた皆さんのおかげで、今の俺たちがいる。大きな影響を与えてくれた皆さんに、いつも恩返ししようと努力しているんだよ。ああ、言葉が尽きなくて、メッセージにしては長過ぎだな。それでも、声を大にして言いたいのは、日本に大きな影響を受けて、今の俺たちがいるっていうこと。本当に大きな評価をもらってるからこそ、日本でライブをやるなら、全員が“これだ”と思える最高のステージを届けたいし、今の俺たちなら、それができる。いつも本当にありがとう。

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