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<インタビュー>「イケナイ太陽」令和版MV、TikTokで人気再燃中「おしゃれ番長」――ORANGE RANGEが語る、『ナツい夏★プロジェクト』の戦略と手応え【MONTHLY FEATURE】

Interview: Takuto Ueda
Photo: 興梠真穂
Billboard JAPANが注目するアーティスト・作品をマンスリーでピックアップするシリーズ “MONTHLY FEATURE”。今月は間もなく結成25周年を迎える5人組バンド、ORANGE RANGEのインタビューをお届けする。
2025年7月2日=夏(なつ)の日、バンドの代表曲「イケナイ太陽」の“令和ver. Music Video”が公開。「上海ハニー」の歌詞をネタに取り入れたこともあるお笑いコンビ、マユリカが出演するこのMVでは、72個の“平成あるある”を盛り込んだ内容で、まさに“レンジ世代”とも言える現在の30代、40代を中心に注目を集めた。Billboard JAPANの総合ソング・チャート“JAPAN Hot 100”では、動画再生回数の指標で2週連続トップを達成し、現在も上位をマークし続けている。
さらに、TikTokでは2008年の楽曲「おしゃれ番長 feat.ソイソース」がバイラルヒット。多くのインフルエンサーやアイドルなど、著名人がダンス動画を公開している。ORANGE RANGEが生み出してきた中毒性の高いポップ・ミュージックに、幅広い世代が反応を示している現状は、楽曲の持つパワーはもちろん、再び彼らとタッグを組んだソニーミュージックの戦略が功を奏した結果ともいえる。
2010年7月に自主レーベル〈SUPER((ECHO))LABEL〉を設立し、一度ソニーミュージックから離れ、近年はインディペンデントな活動を続けてきた彼ら。そして2025年5月、約12年ぶりのCDシングル『マジで世界変えちゃう5秒前』でソニー・ミュージックレコーズに再所属し、現在は『ナツい夏★プロジェクト』を掲げ、新曲「裸足のチェッコリー」のリリースなど、令和7年の夏を盛り上げるべく精力的に発信中。一連の動きにおけるメンバーやスタッフの想いについて、話を聞いた。
「イケナイ太陽」のリバイバルヒットは
「素直にうれしい」
――2007年にリリースされた「イケナイ太陽」は、主題歌に起用されたドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』の人気も相まって、ORANGE RANGEの代表曲のひとつとして愛され続けてきた楽曲ですよね。そんな一曲が今、あらためて注目を集めている状況をどんなふうに見ていますか?
RYO:『THE FIRST TAKE』やミュージック・ビデオのコメント欄を見て、たぶん30代くらいの世代が中心だと思うんですけど、これだけの人が自分たちの曲を聴いてくれていたんだな、というのをすごく実感しましたね。それを10~20代の人たちが見て、「昔のORANGE RANGEはこういう人たちが聴いていたんだ」と気づく、みたいなことは今の時代ならではというか。自分たちがデビューした頃にはあまりなかった現象なので、本当にうれしく思っています。
NAOTO:分かりやすい実感がありまして。去年の正月まで一切しゃべってくれなかった親戚の高校生から『「おしゃれ番長 feat.ソイソース」って叔父さんの曲だったんだね」っていきなりLINEが来たんです。あまり根掘り葉掘り聞くのもあれだから「ありがとう」しか返せなかったんですけど(笑)。
YAMATO:素直にうれしいですよ。でも、僕ら的にやっていることはずっと変わっていないというか。流れに乗っかってみて「これがバズるということか」と今ちょうど体感しているところですけど、今後も変わらずやること、やるべきことをやっていくつもりです。
HIROKI:突然の自然発生ではなくて、ちゃんと戦略的な部分もあったとはいえ、ここまでのことになるのは想定外だったし、すごくラッキーだったなと思います。そこは活動を続けてきたことだったり、楽曲の持つパワーだったりがあると思うから、素直に自分たちを褒めたい気持ちもありますね。再注目をしてもらえることで、今後リリースする楽曲が聴いてもらえるチャンスが広がったと思うし、この一連の流れが成功したのはうれしかったです。当然、これがゴールではないので、次の曲をどうするかとか、わくわくしていますね。

――9年間所属していたソニーミュージック内の〈gr8!records〉から離れ、今年5月にはソニー・ミュージックレコーズに再び所属。そうした動きの背景にもバンドとしての戦略的な意図があったわけですよね?
YOH:バンドをロボットに例えるとしたら、最初はメンバーだけの小さいロボットから始まったのが、いろんな人に曲を聴いてもらえるようになった頃には巨大になっていて、武器もどんどん変わっていたような感じで。でも一度、初心に戻るために自分たちだけで動かそうと思って、会社を離れたりして。いかなる環境であっても学べることはたくさんあったし、キャリアも踏んできてはいる。だから、前に使っていためちゃくちゃ攻撃力のある武器とか、防御力の高いシールドをもう一度使う時期を、個人的には虎視眈々と狙っていたというか。ありがたいことにお声がけはずっとしてもらっていたんですけど、自分としては年号が変わったことが大きくて。平成から令和になったとき、また一緒に組めるかもなって。この1、2年で決めた話ではなく、脳裏にはずっとあった。それで結果が出たのはよかったなと思いますし、来年の25周年に向けて、まずは一歩目を踏み出せたのかなと思っています。
――メジャーを離れた当時はどんな葛藤がありましたか?
YOH:階段を駆け上がっていくほどいろんな人があいだに入ってくるから、メンバー間の会話も減るし、何を考えているかも分からなくなってくるし、どんどんバンド内のガスが溜まっていく感じがあって。それが自分にとってはすごくストレスでした。辞めたいと言い始めたのは僕だったんですけど、インディーズに戻ってからは、絶対につながることがなかっただろう人たちの話が聞けたり、いろんな出会いがありましたね。色眼鏡で見られることもあったから、それを一度取っ払うことができたのは大きかったのかな。でも、たぶん一人ひとりあると思いますよ。それらが合わさって今、リンクして良い流れになったんだと感じますね。
RYO:確かに葛藤もあったし、僕の中では走り抜けてきたイメージ。当時はそれが正義だと思っていたんですよね。今はそれぞれ得意分野と不得意分野が分かってきて、一人ひとりに役割があるから、バランスよくできているなと思います。でも、来年25周年だけど、35周年を迎える頃には全員がすべての分野を得意になっていたら最強なんじゃないかなと。
――そうやってタフになった今のORANGE RANGEだからこそ、再びメジャーレーベルと一緒に組んで、現在のような状況を作り出せたという実感もある?
RYO:ありますね。
YOH:対峙していて、個人的には発見も多いですね。当時よりいろんなセクションがあるし、皆さんが深く分析しているので、そういう話を聞くのも面白いです。みんないい大学出てるもん(笑)。さすがだなって。

――『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスはいかがでしたか? 7月18日に「イケナイ太陽」、7月30日に「花」の動画が公開されています。
RYO:緊張しましたね……。
YAMATO:最近の自分のスタンス的に、ちょっと真面目になり過ぎているからなのか、緊張しているふうには映ったかもしれないです。でも、ここ数年は緊張に弱くなっている実感もあります。
――そうなんですか?
YAMATO:やっぱり歳を重ねて、ちょっとずつ体が動かなくなったぶん、頭を使うようになって。今まで勢いで、感覚だけでやってきた人間なので、それを一度辞めて、なるべく考えて取り組むようになってからは、「本来やるべきことをやれていなかったな」とか、いろんなことに気づかされた数年間だったので、自分で自分のプレッシャーを作ってしまうことは増えてきた気がします。それが緊張に見えてしまうことはあったのかなって。
NAOTO:さっきの親戚の高校生の話なんですけど、「『THE FIRST TAKE』も見たよ」ってLINEが来ました。
ORANGE RANGE - イケナイ太陽 / THE FIRST TAKE
――ちゃんと届いてますね! 『THE FIRST TAKE』ならではの意識した部分、こだわった部分などはありますか?
YAMATO:あくまでいつも通りのことをやっていたつもりではあるけど、「ここ、そういえば音源では歌っているけど、ライブでは歌っていないな」と気づいたパートがたくさんあって。「ここは音源に忠実にいってみようか」とか、そういうやり取りはありましたね。もしかしたら今後のライブにも、良いアクセントとして取り入れてもいいかもなって。
――そもそもORANGE RANGEの歌割りってどんなふうに決めているんですか?
RYO:曲によります。
YOH:最近は作曲者に委ねているかもしれない。NAOTOは音の配置までこだわるから、歌割りの指定も多めだったり。
NAOTO:声が低い人、真ん中の人、高い人っていう、ざっくりベーシックみたいな考えはありますけどね。
RYO:録れたら録って、後から引き算したり。
NAOTO:だから、もしかしたら裏で文句を言われてるかもしれない(笑)。「あそこ使ってないやんけ」みたいな。
YAMATO:ないですよ、全く(笑)。
HIROKI:俺は逆に「ここ、歌ってたっけ?」がよくありますね。レコーディングのときにたくさん録って、ライブでやったときに「なんであそこ歌わないの?」「あれ、自分が歌ってたっけ?」みたいな(笑)。それぐらい、ライブのアレンジでがっつり変わることが多いので、「ライブはライブで別物」という感覚で取り組んでいます。
YAMATO:バランスがわりとはっきりしているので、音源に忠実にやる曲もあれば、ライブのアレンジでやる曲もあるって感じですね。そういう話し合いはしているかも。
RYO:「花」の『THE FIRST TAKE』も音源とは歌い出しが違うけど、ライブではやっていたので、普通に手応えがあります。「イケナイ太陽」とは全く別物のアプローチができていると思うので、いろんなORANGE RANGEの顔をあらためて見せることができるのはうれしいですね。
YAMATO:とはいえ、しばらくやってこなかったバージョンではあったし、「イケナイ太陽」より「花」のほうが音がシンプルなので、収録中はより緊張した気がします。
HIROKI:5、6年前のツアーでやったバージョンなので。
――そのアレンジにしたのは何故ですか?
HIROKI:「このバージョンが聴きたいです」っていう、スタッフさんからのリクエストでしたね。それを「どんな感じだっけ」と見返して……前日とかだよね?
NAOTO:そうだね。急遽決まって。準備って大事じゃないですか。そういう迫りくるプレッシャーもあったので、より一層、緊張感があったのかなと思います。でも、ライブに来てくれていた人には「このバージョンやるんだ!」と思ってもらえるかもしれないし、初めて観る人には「え、このバージョンって何?」って思われるかもしれないし、そういう反響も楽しいですね。
ORANGE RANGE - 花 / THE FIRST TAKE
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令和版MVを盛り上げた
レーベルスタッフ陣の熱量
――『イケナイ太陽 (令和ver. Music Video)』についても聞かせてください。あれはどんな経緯で決まった取り組みだったのでしょうか?
HIROKI:あれも、当然だけど数か月前から仕込んでいて。最初はスタッフさんからの提案だったので、逆に今、取材したいですね。「あれやりましょう、これやりましょう」って一つひとつイメージできていたこともあれば、「これ、どうなんだろう」と思いながら進めていたこともあって、全部の点がつながって今になっていると思うんですけど、どこまで読んでいたのかっていうのは……。
YOH:リモートでミーティングして、いろいろプレゼンしていただいたんですけど、最初はみんな無言。でも「言わんとしていることは理解できるので、ちょっと落とし込む時間は必要になると思う」ってだけ伝えて、とりあえず鋭いアイデアをたくさん出してもらって(笑)。
スタッフ:いろいろな考えはありましたけど、僕だけじゃなくソニーミュージックのスタッフ陣が、またORANGE RANGEと一緒にやれることをすごく喜んでいるというのがいちばん大きいかもしれません。だから(スタッフも)「みんなで盛り上げよう」という熱量がありました。ORANGE RANGEが以前所属していた頃の皆さんの振る舞いだったり、活動に恩を感じている人間が会社にたくさんいるんだなということも実感したし、それをちゃんと引き継いでいかなきゃいけないなという気持ちはありましたね。
――なるほど。
スタッフ:(メンバーへ)最初に「過去の曲に触れたいです」と言ったと思うんですけど、たぶん嫌だろうなっていう気持ちもあったんです。でも、(過去の曲が)すごく輝いて見えたんですよ。それをさらに磨いて、その先に新曲がちゃんと届く瞬間があると思っていたので、そういう話をさせてもらいました。なので、本当にきっかけというか、入り口というイメージなので、ここから一緒に新しいことをしたり、新曲を出していくことが楽しみですね。
ORANGE RANGE – イケナイ太陽 (令和ver. Music Video)
――最新シングル「裸足のチェッコリー」について聞かせてください。もともとどんな構想から制作がスタートしたのでしょう?
NAOTO:これもスタッフから、“昔のレンジの夏曲”みたいなリクエストがあって。なかなか自分たちからやろうとは思わないアイデアだったので、そこに乗っかってみた感じですね。だから、何かを新しく作る挑戦というより、昔のORANGE RANGEをセルフオマージュしてみたような感じ。
――実際に昔の曲をリファレンスにしてみたり?
NAOTO:そうです。モチーフにした部分もあります。

――むしろ作業としては新鮮だったのではないかと思いますが、制作過程で発見などはありましたか?
NAOTO:ありました。結果的に新しく新鮮な気持ちにもなれたし、こういうのも確かにありだなと。それは夏曲に限らず。
HIROKI:この数年、自分たちで全部をジャッジして曲を作ってきたから、あえて今回はいろんな人の意見やアイデアを吸収して取り入れてみたっていう、そういう制作のマインドだったかもしれないですね。「上海ハニー」みたいなAメロの掛け合いとか、ああいうノリって近年はあまりなかったので。ワードとかも、ぎりぎりダサい感じというか、まさに「昔はこんな感じだったよね」みたいに思い出しながら作っていきましたね。人って同じことはやりたくないし、違うことをやりたくなるじゃないですか。だから、「これもアリかな」って面白がりながら制作しました。
ORANGE RANGE – 裸足のチェッコリー (Music Video)
ORANGE RANGE – 上海ハニー
――レコーディングはいかがでしたか?
YOH:ひとつ前のシングル「マジで世界変えちゃう5秒前」もそうなんですけど、僕は今回レコーディングではベースを弾いていなくて。音像の構築とか、全体のビジョンはNAOTOが作曲する場合は本人が一人で責任を持ってやりたいタイプだから、そこは任せていて。自分の任務としては、ステージに上がるとき、当然フィジカルな要素が入ってくるので、いかに低音を伝えていくかを考えることですね。今はドラムがサポートで誰が叩くかでも変わるし、そこは合わせていかないといけない。ビジョンを汲み取って、バンドサウンドとして昇華させる。その一端を担うイメージです。
――夏のイベントでこの曲がどんなふうにパフォーマンスされるかも楽しみです。そして、10月には主題歌「トワノヒカリ」を書き下した映画『ストロベリームーン 余命半年の恋』の公開も決まっています。脚本は、「花」が主題歌であった映画『いま、会いにゆきます』も手掛けた岡田惠和さん。これも不思議な巡り合わせを感じますが、どんな曲になっているのでしょう?
RYO:「花」のときは台本や脚本を見ながら作ったんですけど、完成した作品を見てから主題歌を作り始めたのは今回が初めてだったので、すごく入り込みやすかったし、そこまで準備してくれてありがたいと思いました。ゴール地点もみんなでちゃんと共有できたし、向かっていく方向がはっきり見えていたので、そういう意味でもこの曲を作れたのは良かったなと思いますね。
――映画サイドともビジョンを共有できていた?
RYO:そうです。そこも連携できたのはうれしかった。なかなかできないことだったので。環境が良かった。
――映画やアニメの主題歌はスケジュールがタイトになりがちですもんね。具体的にはどんなところがポイントになっていますか?
RYO:歌詞に関しては、曲の場面ごとに物語が進んでいくような感じもあるので、最後はこの映画の出口というか、見終わって映画館を出るときに「こんな気持ちになってほしいな」という想像をしながら作りました。そこが聴きどころですかね。
YAMATO:それこそ巡り合わせだと思うんですけど、たくさんの人たちの力を借りて作り上げた作品だなと思うので、映画はもちろん主題歌もたくさんの人に届いて、それぞれの思い出や記憶に重なったらうれしいです。
――では最後に、これからのORANGE RANGEの展望、野望があればお聞かせください。
HIROKI:「花」の『THE FIRST TAKE』も公開されましたし、ガールズグループのHANAを検索して、間違えてORANGE RANGEの「花」がクリックされて、再生回数が伸びたらいいなと思います。
YAMATO:どっちも出てくるからね。
HIROKI:「花」で検索したときに、うちらが上に表示されたらいいよね(笑)。

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