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<コラム>SixTONES、野田洋次郎との初タッグ作「Stargaze」――今の6人だから歌える“青春”



コラム

Text:蜂須賀ちなみ

 SixTONESが新曲「Stargaze」を7月6日にデジタル・リリースした。日本テレビ系『第45回 全国高等学校クイズ選手権』の応援ソングで、RADWIMPSの野田洋次郎が書き下ろした楽曲である。

 リリースに際して公開された野田のコメントでは、SixTONESへの楽曲提供の話は以前からあったこと、それが今このタイミングで実現したことが明かされた。「自分で作った楽曲でありながら、6人それぞれが自分の内側にある熱や情感をこれでもかと込め、僕の知らない境地にこの曲を昇華させてくれた気がします。聴いてくださる皆さんの背中も、力強く押してくれる楽曲になったら幸せです」という野田の言葉からは、五線譜の上で叶ったSixTONESとの邂逅、楽曲「Stargaze」の誕生への喜びを読み取ることができる。

 SixTONESは今年5月17日に、ストリーミング配信を開始したばかり。「Stargaze」のシングルCDは9月10日にリリースされることが既に発表されているが、CDパッケージに先駆けて新曲をデジタル・リリースしたのは今回が初めてのことだった。彼らは、7月5日に出演した日本テレビ系の音楽番組『THE MUSIC DAY 2025』で同曲を初披露し、その翌日7月6日の0時ちょうどにデジタル・リリースしている。メディア出演直後、かつ七夕前日という、曲のモチーフにも関連する絶好のタイミングでの配信となった。Billboard JAPANチャートにおいても、初登場となった7月9日公開のダウンロード・ソング・チャートでは、日曜リリースの影響で配信当日のみが集計対象ながら3位を記録。初の1週間フル集計となった翌週7月16日公開の同チャートでは2位と、さらに順位を伸ばしている。

 SixTONESは、今年2025年に結成10周年&デビュー5周年のWアニバーサリーを迎えている。そんな節目の年に、野田は『高校生クイズ』とも通ずる「勝負の瞬間」「仲間との大舞台」というテーマを据えて楽曲を制作。完成した「Stargaze」は、SixTONESの泥臭い歩み──楽しいことばかりではなく、時に困難に直面しながらも、グループの可能性を信じて6人でいることを選び続けた歴史──と、「哲学的な悩みから実践的な決断へ」という青春期に共通する心の軌跡を重ね合わせた楽曲となった。野田のストーリーテラーとしての手腕と、受け取った楽曲を「SixTONES自身の歌」として体現したメンバーの表現力が、この力強くも繊細な作品を生み出したのだろう。


Stargaze / SixTONES


 野田はJ-POP界屈指のソングライターであり、ストーリーテリングの名手として知られている。彼の楽曲は、1曲を通じて物語を紡ぐような歌詞構成と、それに合わせた緻密なリズム・メロディ設計が特徴的。特に音節処理に関してはバイリンガル的な感覚を持っていて、英語ラップの手法をJ-POPに自然に融合させる技術に長けている。野田はこの特徴的なフロウをストーリーテリングの手段として巧みに操り、限られた時間で大量の情報を効果的に伝えることを可能にした。「Stargaze」においても、4分弱という短時間でSixTONESの10年の歩みを映し出すことに成功している。

 1番Aメロは、打ち込みとエレキギターのループトラック、そしてSixTONESメンバーのボーカルによって構成されている。ボーカルは2名が1オクターブ違いで歌う構成で、歌割りは4小節ごとに変化。京本大我&ジェシー→京本&松村北斗→髙地優吾&田中樹→髙地&森本慎太郎という展開になっている。京本、ジェシー、松村が歌う前半のフロウは、3連符を基調としている。歌のリズムは等間隔に刻まれているが、〈なりそうな理想がありそうな気がしてんだ〉と強固な内韻を形成している箇所に限り、「16分音符-8分音符-16分音符」に変化。特に〈そう〉の音が当てられた8分音符は、時間が引き伸ばされるような不思議な感覚がリスナーを惹きつけるフックになっている。歌い手にとってはリズムキープ能力、内部クロックが試されるフロウだ(2名で歌っているのだからなおさら難しいだろう)。また、英語的に流して発音し、日本語の音節を圧縮する“野田式”歌唱の難易度も高い。これまで様々なジャンルの楽曲をSixTONES色に染め上げてきたメンバーのボーカリストとしての地力を感じるラインだ。

 髙地、田中、森本が歌う後半では、16分音符を基調とした高密度のリズムに変化する。合わせて、歌詞の内容も進展。前半では〈まぁ今は検討もつかねぇ〉〈理想がありそうな気がしてんだ〉と不確定な表現が多く、漠然とした理想を掲げながらも混沌や模索も抱える主人公像が浮かび上がってきたが、後半では〈俺は「コイツ」で生きていく〉という明確な意思表明や、話し手の体験を踏まえた言葉、〈きっと意味ならついてくる〉という希望的な確信が歌われている。理想を探し求める段階から、自分の内に光を見出して行動する段階へ。そんな青春期の心の動きを詩的かつリズミカルに表現した“野田洋次郎節”と呼べそうなフロウを、SixTONESのメンバーは巧みに歌い上げている。

 〈目にもの見せようか〉と始まるBメロでは、逆境や批判を力に変えて大きな挑戦に立ち向かう意志が歌われており、京本、ジェシーの声色が持つ歪みが適切に活かされている。Aメロでの一人称は〈俺〉だったが、Bメロでは〈俺ら〉という複数形に変化。そこから6名がユニゾンで歌うサビに入る構成は、グループの団結を連想させてドラマティックだ。メンバーの力強い歌唱、Cメジャーキーへの転調によって、楽曲は明るく開放的な雰囲気に。サビの後半はひとりずつ順に歌う構成で、六者六様のボーカルの魅力、繊細なニュアンスを感じ取ることができる。

 主人公の心の動きを丁寧に描いた1番に対し、2番では“俺に賭けてくれるお前ら”の存在や絆について歌うことで、ブラザーフッド感を強調している。また、2番Aメロ→Bメロのあと、もう一度登場するAメロのボーカルはオクターブ違いではなく、2名のユニゾンであるという違いも特筆すべきポイントだろう。楽曲を構成するあらゆる要素が一体となり、「ひとりから複数人へ」「複数人からひとつのチームへ」という物語を描いている。

 そして再びのサビを経て、楽曲のエンディングへ。〈僕らがいた今をいつか 歴史が見て/羨むような 色に染める 確信など何もないけど〉というサビのフレーズ、〈できない 気がしない 気がしない〉と繰り返すラストから読み取れるのは、未来に対する希望だ。改めて立ち返ると、楽曲のタイトルは「Stargaze」。SixTONESと野田洋次郎の邂逅によって誕生したこの曲はまさに、過去の星々に目を細めるように10年の軌跡を慈しみ、星と星を結んで新しい星座を作るように未来への航路を描いている。SixTONESはこれまでも、そしてこれからも、“星を見上げる人”であり続けるのだろう。彼らの音楽が放つ光は、多くの人の心を確かに照らし続けている。


SixTONES「Stargaze」

Stargaze

2025/09/10 RELEASE
SECJ-130

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Disc01
  1. 01.Stargaze
  2. 02.BOYZ -SKA PUNK Rearrange-
  3. 03.Clarity
  4. 04.Tear Train
  5. 05.Stargaze -Instrumental-

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