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<インタビュー>ソ・イングク、俳優としての華やかなキャリアの裏で手放さずにいた音楽への情熱 プロデュース作品『IRO』で見せる姿とは

インタビューバナー

Text & Interview: Mariko Ikitake
Photos: 興梠真穂

 ソ・イングクが、2025年9月3日にスペシャル・ミニアルバム『IRO』をリリースする。2009年に韓国音楽オーディション番組で優勝、同年に歌手活動を始めた彼は、俳優としてこれまで数多くの作品の主演を飾り、世界的な人気も得た。悪の存在からソウルを守る十二支の守護神のひとりを演じるDisney +『TWELVE トゥエルブ』や、BLACKPINK JISOOと共演するNetflixドラマなど、新作の公開も控えている。

 自身のルーツである音楽面をより見せていきたいという意欲が湧き、昨年はセルフプロデュースしたミニアルバム『SIGnature』をリリース。1年ぶりとなる『IRO』はその掻き立てられた意欲を注ぎ込んだ2作目となる。表現者としての深みを増した今、どんな音楽を届けようとしているのか――夏の気配が色濃くなりはじめた6月中旬、ミュージック・ビデオ撮影のために来日したスターに話を聞いた。

──ミュージック・ビデオの撮影をされたと聞いています。どんな作品に仕上がりそうですか?

ソ・イングク:アルバムのタイトルが『IRO』(色)なので、色を使ったMVを撮りました。屋外での撮影が多かったのですが、思ったより日本がすごく暑くて……。内容にはストーリーテリングの要素もありますが、演技力を見せるというよりは、ナチュラルなカットからイメージを引き出す作品になったと思います。決定的なメインカラーはなかったんですけど、持ってきた衣装や撮影場所の色味を組み合わせて、視覚的に表現しながら、曲が持つときめきや初々しさを表現しようとしました。

言葉で表現するならば、すごく暑い夏、真夏の夕方やご飯を食べ終わった夜6〜7時くらいに、扇風機やエアコンがかかっている涼しい部屋で寝っ転がりながらスイカを食べているような、そんなのんびりとした心地よさがある雰囲気です。


──MVの演出や、曲も含めたアルバム全体をプロデュースされているそうで、本作にはイングクさんの思考やセンスが今まで以上に表れていそうですね。ご自身としては、構想していたものをどのくらい具現化できたと思っていますか?

ソ・イングク:それは僕も期待したいところです。常に悩む部分でもあって、曲を作るときも映像を撮るときも、自分が思い描いているものが完璧に具現化されることはなかったんですね。自分の頭の中にある物にどれだけ近づけているかが勝負でもあり、ディレクションするときの使命でもあります。

自分が表現したいものは確かにあって、でもそれをストレートに、あからさまに出すのではなく隠しておくんです。それをファンの方や見てくださる方々がキャッチしてくださるとすごくうれしいですし、成功したと感じる瞬間でもあります。出しすぎると幼稚に見えてしまうこともあるし、隠し過ぎて見てくれる方に伝わらなかったら意味もない。そのレベルの選定が難しくて、結構ストレスです。それは演技でも一緒。歌にしろ、演技にしろ、演出にしろ、表現の分野では全般的にそういうものなんだと理解しています。悲しい歌を泣きながら歌えば、悲しみが倍増するかと言ったら、そうでもないですよね。どう表現すべきか常に考えています。

──大変な作業だとは思いますが、そのぶん、やりがいもあるのでは? だからこそ、セルフプロデュースにこだわっている印象も受けました。

ソ・イングク:はい、そのためにやっているようなものです。そういった理由もあって、音楽活動をしていますし、やっぱり僕がやっていることをファンの皆さんがすごく喜んでくださるので、続けられているんだとも思います。

──では、ファンの存在も頭の片隅に置きながら、制作を?

ソ・イングク:実はそれも常に僕を悩ませるものでもあるんです。自分が望んでいるものを100%詰め込んだら、ファンの皆さんは喜んでくださるのだろうかと。逆にファンの皆さんやリスナーのことだけを考えて音楽を作ったら、自分が音楽から得る楽しみや醍醐味をすべて削らなくてはいけないのかとも思ってしまって……そういうバランスを見ながら音楽を作っています。僕は日本の歌手の方々のビハインドや制作の裏側をYouTubeなどでよく見るのですが、皆さんも僕と同じ悩みを持っているんだってことを、映像を通して確認しています。

──昨年の音楽活動があったからこそ、『IRO』の作風がこうなったとも思いますか?

ソ・イングク:そうですね。自分の音楽性をもっと見せたいと力を入れ始めたのが去年で、今回はそれから数えて2番目の作品になります。昨年から自分の色について考えるようになり、ソ・イングクという色をもっと打ち出していきたいと思ったので、今回のテーマを色に決めました。

──自身の声の魅力が最も引き立つのがR&Bジャンルだと、作品のイントロダクションに記載されていました。やはりR&Bには思い入れが?

ソ・イングク:幼い頃からR&Bに触れてきましたし、R&Bアーティストからも多大な影響も受けてきました。ずっと好きで練習もしてきたジャンルなので、R&Bに決まるのも自然なことのように思います。

──正直、R&Bを色で表現するのって難しくないですか?

ソ・イングク:確かに簡単ではないですが、例えば「この人にはこんな色が似合う」「この性格にはこんな色」っていうイメージは簡単に出てきますので、そんなに難しくは考えなかったです。

──イングクさんが思う、ご自身に似合う色は?

ソ・イングク:実は同じような質問を何回か受けているのですが、僕もどの色が一番似合うのかわからないんです。望みを言えば、白が似合う人間でありたいですね。様々なジャンルやカラーを表現できる色ですよね。役者においては、いろんなキャラクターを着せられますし、歌手として今後、いろんな色を見せていきたいので、一番ベーシックな白がいいですね。

──歌詞にもご自身の思いが込められている?

ソ・イングク:今回のアルバムをすべて自分でプロデュースしているので、全曲に僕の思いが詰め込まれていると思っていただいていいです。歌詞やメロディーに情緒が込められていて、歌詞もそんなに難しくないので、僕が伝えたいことはしっかりとキャッチしてもらえると思います。

──昔からそのスタイルですか?

ソ・イングク:日本で歌手デビューして12年ほどになりますが、新人の頃は自分でプロデュースすることはしていませんでした。自分できちんと見るようになって7〜8年になります。ある程度、ノウハウは培われてきたと思います。

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──どんな方々と一緒に音楽制作されているのでしょうか?

ソ・イングク:昔から同じ仲間と作っているんですけど、行き詰まるときもあって、そういうときは別の方とやることもあります。自分の領域を開拓していきたいので、そういう意味でも。どの作業もすごく楽しんでやっています。

──特によくご一緒している方はいるんですか?

ソ・イングク:実はここにいます(と、近くに立っていたプロデューサーのパク・キョンヒョンを指さす)。キョンヒョンさんは前の会社で海外事業をされていて、そのつながりで出会い、音楽を通して仲を深めていきました。今、韓国にいる仲間たちも、音楽活動をしながら出会った人たちです。ひとりで一からすべてをやりたいっていう方もいらっしゃいますが、僕はチームでやるのが好きです。そうすることでいい結果が出せるとも思っています。

──年内にはコンサートを開催するという噂もあるようですが。

ソ・イングク:そうなんです(嬉しそうにパチパチと拍手する)。でも内容はまだ……(日本語で)早いです(笑)。今の段階で言えるのは、僕がたくさん歌うということです。大体の構想はあって、ファンや観客の皆さんにはライブ仕立てのプレイリストをお届けしたいと思っています。これから一生懸命準備します。

──ちなみにイングクさんは楽器を演奏しますか?

ソ・イングク:伴奏程度には弾けるんですけど、皆さんの前で演奏できるほど、そんなにうまくはないです……。

──曲作りは楽器を使って?

ソ・イングク:僕はトップライン(曲の主旋律や歌詞)を使用することが多くて、家で鍵盤やギターを弾きながら、鼻歌でメロディーを作り、そこから作曲家と相談して作っていくスタイルが多いです。

──日本で歌手デビューしてから12年。キャリアは長いほうだと思いますか? それともまだまだ?

ソ・イングク:両方ですね。12という数字だけ見ると長く感じますが、あっという間だった気もするんです。

──歌手デビューしたときに思い描いていた通りに、人生設計できているとも思いますか?

ソ・イングク:そう言えるかどうか判断が難しいですね。思い通りに行くこともあれば、最善を尽くして取り組んでも自分の理想のように行かないこともありました。でも、そういったときに、次に向けて自分を見つめ直し、立て直すことができるかが、その人の能力の見せどころでもあると思うし、めげずにやり続けることが大切だと思います。待っていらっしゃる方たちのことも考えて、努力し続けることが自分のすべきことですね。

──常に評価の対象にされるのは、辛くないですか?

ソ・イングク:評価されることに特に負担はないです。大衆に向けて発信する仕事でもありますから。成功したかどうかは数字でも表れますが、それが果たして作品の素晴らしさとイコールになるかは別の話ですし。さっきも話したように、自分がやりたいものばかりやったら自己満足になってしまうし、それは成功した音楽、作品とは言えないかもしれないですよね。僕は、自分が取り組む作品を見てくださる方の判断に委ねていますし、その結果は当然のこととして受け入れています。

──そういう考えは昔から?

ソ・イングク:そうですね。僕も大衆の中の一人だと思っていて、ほかの人と少し違うことと言えば、音楽を作っている人、評価される対象であることですが、自分にも好みや自分なりのトレンドを持っているので、自然とそういう考えになったと思います。

あまり意味を深く求めるほうではないですね。もちろん、そういう時がないわけではないんですけど。本当に皆さんと変わらないです。

──昔から音楽が好きなイングクさんは、これからも俳優活動と並行して音楽活動も真摯に続けていくと思います。音楽を追求していくモチベーションはどこから来ますか?

ソ・イングク:いろんな要因があると思いますが、やっぱり僕の根本が音楽なので、音楽のない自分は想像できないです。本当に根が音楽でできているくらいなので、自然と探究心が湧いてくるんだとも思います。

音楽性を見せつけたいっていう意欲が、今すごく湧いていて、昨年から最近までやっている作業が本当に楽しくて今も続けています。どんな人にも、何かに没頭するほど楽しめるものに出会うタイミングが来ると思いますし、今のうちにたくさんやって、いい結果にも繋げようと活発に活動しているところです。

──新しい音楽ジャンルにも、今後は挑戦したいですか?

ソ・イングク:急にヘヴィメタルに方向転換することはないと思いますが(笑)、自らを広げられる領域だと確信できるものであれば、挑戦していきたいと思っています。限界を決めずにいろいろトライしたいですね。

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