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<インタビュー>Kroi、アニメ『SAKAMOTO DAYS』とバンドの覚醒――新しいKroiの一面を見せたニューシングル『Method』ができるまで

Interview & Text:天野史彬
Photo:興梠真穂
7月16日にニューシングル『Method』をリリースした、Kroi。TVアニメ『SAKAMOTO DAYS』のオープニング・テーマである表題曲「Method」も、驚きの制作方法を採用したカップリング「Clay」も、どちらもKroiの本質と未来をパッケージングした強力なシングルだ。
今年2月に開催された神奈川・ぴあアリーナMM公演では、派手な装飾のない、剥き出しでプリミティブなKroiを見事にアリーナ会場で響かせたが、そんな今のKroiのナチュラルさ、虚飾のなさは、このシングルに深く通底している。さらに、そのシンプルさを、Kroiの音楽の「この先」を指し示す表現にまで昇華しているのだから最高だ。「自分たちは何者か?」と見つめ直し、掘り下げること――そこに未来がある。まだまだ進化し続けるKroiの現在地を、5人に語ってもらった。
上半期は挑戦、挑戦、挑戦っていう感じ
――Kroiは近年、海外でのライブ活動も積極的に行っていますね。直近で言えば今年5月にイギリス・ブライトンで開催された【THE GREAT ESCAPE】に出演され、昨年の【Unspoil】ツアーでは台北での公演もありました。海外での活動の手応えはいかがですか?
関(Ba.):僕らはあらゆる場所で、あらゆるお客さんに見ていただきたいという気持ちがあって。今まで日本以外だと、台湾、韓国、アメリカ、イギリスでライブをやらせていただいているんですけど、個人的に一番印象的だったのは韓国のお客さんですね。ライブを観るカルチャーが日本と全然違っていて。横断幕を作ってきて、ライブ中に振ってくれているお客さんがいたり、日本ではあり得ない話だけど、自分たちの曲でサークルモッシュみたいなことが起きていたり。ライブは「お祭り騒ぎする場所」という感じで楽しんでいるリスナーが多くて、それはカルチャーショックでした。
――そうした盛り上がりは、演奏にも影響しますか?
関:そうですね、自分たちはお客さんのテンション感を見ながらライブをする傾向があるので。あと、言語的な壁がある以上、ライブは「どれだけ自分たちの熱量を伝えられるか?」という方向になっていきます。
長谷部(Gt.):これはライブの話に限らずですけど、海外に行って現地の人と話していると、「上手い・下手」じゃなくて、「良い・悪い」で判断する瞬間が多々あって。「ミスってるけど、雰囲気がすごくいいから、そのまま採用しちゃう」みたいな。その価値観は刺激的だし、面白いなと思いました。
千葉(Key.):レコーディングでも、国ごとに違う部分はあるんだろうなと思います。それはその土地の生き方や生活リズムの違いが音楽に反映されていく部分もあるんでしょうね。人によってどこがフィットするかっていうのも、それぞれだろうし。僕らがイギリスで使用したスタジオは、布袋寅泰さんも使用されてるスタジオだったんですが、布袋さんはイギリスでめっちゃ録っているらしくて。それは音がいいのもあるだろうし、制作スタイルの心地よさもあるんだろうなと思います。
益田(Dr.):イギリスではプロデューサーも入れてレコーディングもしてきて、日本だとレコーディングは「清書する」みたいな感じだけど、イギリスでは、レコーディングしながら一緒に作曲していくような感覚だったんですよね。それがすごく新鮮で。日本でやるよりも能動的な楽しさがあったので、日本でもそれを生かしたいなという気持ちになりました。
――言語が違う土地で歌うことに対して、内田さんは感じていることはありますか?
内田(Vo./Gt.):より自分が求めているスタイルに近づいていく感じはしますね。もちろんリリックを書くときは言葉の強さを意識していますけど、それよりもっと、自分が中学生の頃に聴いてバンっと食らった洋楽みたいな感覚……ああいうものを目指したいっていう気持ちがあって。言語はわからなくても、音と、バイブスと、グルーヴ感で、言葉が伝わらない人にも伝えるっていう。言葉が通じない国でライブをやると、その感覚に近くなる。それはすごく本質的な気がしますね。「音楽やってる」感が強くなります。歌詞を重視して歌おうとすると、作品のメッセージみたいなものを意識する感じになるけど、言語が通じない場所でライブをすると、「こういうバンドです」っていう自己紹介を音で伝える行動になっていく。それをやるのは面白いです。
――より本質的なコミュニケーションになりますよね。
内田:音楽の強みをモロに感じられますね。「音で繋がれるんだ」っていう感覚。お客さんからウワーッと反応が来たとき、「たぶん、みんなわかっているんだな」と感じるんですよ。何を言っているかはわからなくても、音楽でやり取りができているんだっていう感動が毎回あるんです。

――今年に入ってからのKroiは、まず2月に神奈川・ぴあアリーナMMでの初のアリーナワンマンがありましたよね。あのライブは過去最大キャパのワンマンでありながら、とてもナチュラルで虚飾のないKroiのライブという感じがして、素晴らしかったです。さらに、6月と7月にはアコースティックライブもあって、2025年に入ってからの半年間はすごく健康的にKroiというバンドが動いていた印象もあるんですけど、この半年間はいかがですか?
長谷部:今までにない体験を2か月ごとにしていた感じだったんですよね。2月にぴあアリーナがあって、その後はロンドンに行くことが決まっていたので、それに向けての準備をしたり。それが終わってからはアコースティックライブがあって。刺激的な半年間でしたね。
千葉:で、それを経てどうなの?っていう質問だと思うんだけど。
長谷部:それは8月からのホールツアーで見れるんじゃないですかね。
関:決まってることしか言わねえ(笑)。
――(笑)。
内田:この半年間で言うと、体調崩しましたね(笑)。結構ガッツリと。
益田:怜央は、上半期ずっと体調悪そうでしたね。
関:そもそも春になると花粉症が襲ってくるんだけど、今年はロンドンに行く1か月前くらいから怜央は体調悪かったよね?
長谷部:千葉さんも、アー写を撮る前の日に風邪を引いてリスケしたんですけど、リスケした日にも千葉さん風邪ひいてて。
千葉:俺は怜央ほどじゃないけど。でも、本当に悪いのは益田さんなんですよ。益田さんがいつも風邪を持ってくるんです。ある日突然、益田さんがライブ終わりに言うんですよ。「風邪ひいたぷー」って。そこからKroiの間で風邪がリレーのように移っていくんです。今回は特に、怜央が風邪をひいたんですよね。
益田:人のせいにするんだ……。ま、いいけどさ。
――(笑)。じゃあ、決して健康的なバンド活動という訳ではなかったんですね……。
内田:それは、バンドと自分と、どっちが健康的かっていう話じゃないですか(笑)。
千葉:でも、ライブはよかったですね。ぴあアリのライブは個人的にもほんとよかった。何がよかったのかと言われたらよくわかんないですけど。やってて楽しかったな。
益田:そもそも武道館が終わった後、レーベルヘッドに「Kroiがアリーナでやるのは想像つかない」と言われていたんです。会場が大きいと、どのくらいグルーヴや伝えたいことがお客さんに伝わるかは未知数だから、そこは挑戦だよねっていう話はみんなでしていて。でも結果的には「Kroiはアリーナでもやっていける」っていうことを確認できたライブだったと思います。あとアコースティックについても、音を削る方向で、どのくらい自分たちの音楽が通用するかっていう挑戦ができたから、上半期は挑戦、挑戦、挑戦っていう感じで。

――素晴らしいですね。
益田:これが後半にも続いていく予感はしていて。8月からはホールツアーなんですけど、本当は「Zeppツアーにしようか、ホールツアーにしようか」という話が出ていたんですよ。でも、やったことのない場所で、新しいことをしたいなと思って。それで俺が「ホールツアーがしたい!」って、ごねたんです。スタッフからは「ホールは機材にお金がかかって全然採算が取れない」と怒られたんですけど、「いやいや、なに言ってんだ、こっちは表現活動してんだぞ!」って(笑)。なので、ホールツアーはめちゃくちゃ頑張っていきたいなと思ってます。
千葉:ホールも楽しみだよなあ。やったことないことをやるのはいいよね。たとえば旅行も、帰りの道より行きの道の方が長く感じるじゃないですか。その理論で、人生が長くなりそうだなって思う。同じことばっかりやってると、一瞬で終わっちゃうから。
長谷部:たしかに、早いなと思うけど、遅いよね、この5年間。
内田:いいねえ。深いわ。
――内田さんは、ぴあアリーナはいかがでしたか?
内田:そうっすね……。「あれを超えるの、めんどくせえな」っていう感じがするライブというか(笑)。武道館ではあんま思わなかったんですけど、ぴあアリは「超えるの、めんどくせえ」と思っちゃったな。そのくらい、あの日は体調もよかったし、燃えてましたね。メラメラしてました。
長谷部:エロい意味じゃなくてですよ?
――わかってます(笑)。そして7月16日に最新シングル『Method』がリリースされます。表題曲「Method」だけでなく、カップリングの「Clay」もKroiのクリエイティビティの新しい側面を担っている重要な作品という感じがします。まずアニメ『SAKAMOTO DAYS』のオープニング・テーマでもある「Method」についてですが、内田さんは以前、タイアップの場合は、その作品とKroiの表現が重なる部分を見出して曲を作る、というお話をされていましたよね。『SAKAMOTO DAYS』とKroiの間にはどんなシンパシーが見出されましたか?
内田:今回、『SAKAMOTO DAYS』は第2クールの「死刑囚編」で、戦いが激化して、日常シーンと戦闘シーンのコントラストが際立ってくるクールなんです。その中で、朝倉シンっていうキャラクターがいるんですけど、シンが覚醒するシーンがあって。シンは戦いの中で覚醒するんですけど、それを見たとき、俺らもライブをやっている最中とか、曲を書いている最中とか、何かをやっている最中に覚醒して、ゾーンに入っていく感じはあるなと思って。たとえば曲って書いていない期間が長いと書き方を忘れちゃって、そのゾーンにすぐに入れないんですよ。で、「取り合えず、手を動かしとくか」と思って動かしていると、急にガッとゾーンに入って、永遠に書ける状態に入ったりする。ライブも、どれだけちゃんと喉を温めていても、ライブの序盤は自分の頭の上に意識がある感じというか。ちょっと引いてみている感じがあるんです。
──まだ冷静というか、客観的なんですね。
内田:でも、それが知らない間に急に自分の中に意識が戻ってきて、ステージの中に自分が溶け込むような状況になれるときがある。自分たちのそういう感覚と、シンが戦いの中で覚醒していくのは、同じような感じがして。
──なるほど。歌詞の中に<君の目 そらさないからずっと>とありますけど、こういう状態も、その覚醒の中で起こっていることなんですね。
内田:そうですね。<君>は誰でも、なんでもいいんです。『SAKAMOTO DAYS』だったら、主人公の坂本が守っている家族でもいいし、俺だったら、ゾーンに入っている状態の自分に恋焦がれて、「今日もあの状態に入れるように」と思いながら毎回ライブをやっている気持ちとも、この歌詞は重なるし。もう、ダブルミーニングどころじゃないくらい、意味が重なっていけばいいなと思って書いてます。だから、自分が何年か後にこの曲を聴いたら、<君>の意味も変わっていると思うんですよ。時間が経ったときに新たな顔が見えるように、生きものみたいに成長できるように、曲は作っています。
──これまでの曲も、演奏されていく中で意味合いは変わってきていますか?
内田:そうですね。やっぱり、ぴあアリのような大きな会場でやると「この曲ってこういうことだったんだ」と思うことはあります。武道館のときも、インディーの頃の曲をやると、その時のことが回想されたりして。そのときの時間と音が結びついて、リリックの見え方が相対的に変わることはありますね。自分が成長して見え方が変わることもあるし。それが録音芸術の面白さだなと思います。残しておいたものが、時限爆弾的に発動するときがある(笑)。「Method」もそういう曲になったらいいなと思います。
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バンド的に意味のある曲になった

――皆さんも、先ほど内田さんがおっしゃったように、ライブやレコーディング中に覚醒するような感覚になりますか?
長谷部:ありますね。お客さんって、日本国内でも土地ごとに空気感が違うけど、お客さんのテンションとこっちの波長が合った時は「ライブ終りたくないな」と思うくらいになります。
益田:僕は、怜央のMCに引っ張られることが多いですね。たまに怜央が、「これは俺も死ぬ気でやらんとな」と思うようなMCをするんですよ。そういうときはゾーンに入ります。
関:それ、ライブ終盤のMCじゃん!(笑)。
内田:あと2、3曲しかねえ(笑)。
――(笑)。
内田:でも、ミュージシャンがこういう状態になるって知っていると、ライブの見方が変わりますよ。僕らも音楽が好きなのでいろいろなライブを観に行きますけど、「あ、この人の今のアドリブ、ゾーン入ってた!」っていうのを見逃したくないから、一瞬一瞬を大切にするようになる。自分たちが身をもって「ゾーンに入る」という感覚を知ってから、明らかにライブの見方は変わりましたね。Kroiのお客さんも、それを知っているとライブを観るのがより面白いかもしれない。
――「Method」は曲調やサウンドでも、そのゾーンに入っていくような覚醒感を醸し出していますよね。
内田:今回は、あまりバンド以外の音を入れていないのが大きいです。普段は千葉さんが両手でエレピを弾いている上にシンセを重ねていたり、俺のギターのトラックがあった上で、さらにパーカスが鳴っていたり、ホーンが鳴っていたり、実際にそのままライブでやろうと思うと5人だけで収まりきらないアレンジが音源では多かったんですけど、今回はかなりフィジカルっぽい感じで、「みんなで鳴らす音」をすごく意識していますね。トラック数も少ないよね?
千葉:うん、普段の曲に比べるとめっちゃ少ないと思う。レコーディングでも、音数が少ない分、タイトな曲だから、余計なことはしないようにしましたね。
内田:なので、今回はかなり「生身に近い状態のKroiをレコーディングしよう」っていう感じでした。アニメタイアップにも慣れてきたので、音で強化せず、詞と曲とアレンジでいかにアニメオープニングという、観てくれた人に印象を残さなきゃいけない作曲を乗りこなせるかっていうことに挑戦していますね。Kroiの地力で表現していくこと、自分の力でゾーンに入るっていうことが、音で表現されていると思います。
――昨年のシングル「Jewel」もそうでしたし、ぴあアリのライブもそうでしたけど、装飾が剥がれ落ちて、剥き出しでナチュラルなKroiが表れていますよね。「Method」は、アニメサイズだと聴けない部分かもしれないですけど、間奏部分のオルガンとクラップが絡むところも、とても魅力的でした。
千葉:あの部分は、アニメの尺には入っていないんですけど、ソウルやファンクを語るうえで、オルガンって外せないものじゃないですか。そういうものを今、令和の時代にフィーチャーして、しかもアニソンでJ-POPでやっているのはお洒落だなって自分でも思いました。
Kroi-Method[Music Video]
――そしてカップリングの「Clay」ですが、この曲も素晴らしくかっこいいです。Kroiは「この5人がいる」という時間のパッケージングを音楽でやっている気がするんですけど、この曲は、その最先端という感じがします。歌詞も、書かれ方が他の楽曲とは違ってかなり自然な筆致で、今の内田さんの心象やKroiの立つ場所が綴られているように感じました。この曲のアイディアはどのように生まれたものだったんですか?
内田:ここのところタイアップが多かったんですけど、この曲は久々にKroiのオリジナルな世界観で作れるっていうことで、意気込んでいたんですよ。それで、俺がデモを何曲か作ったんですけど、なんか「これじゃねえな」となって。久々にKroiだけの世界観で曲を作るとなったとき、「今みんながやりたいことってなんだろう?」って、わからなくなっちゃったんですよね。「じゃあ、みんなで作ってみよう」と思って。それでZoomを繋げっぱなしで、各々がそれぞれの制作環境で録った音やビートをバーッとSlackに上げていって、その上で「これいいね」「これ使えそうだね」みたいな相談をしながら1曲を作ってみるっていう、新しい試みをしてみたんです。
益田:Slackっていうのがいいですよね。IT企業みたいで。
――たしかに(笑)。
内田:制作の雰囲気が面白かったんですよ(笑)。ものを作っているんだけど、ZoomとSlackを使っているからか、変な雰囲気というか……いつもより砕けた雰囲気になりづらい、みたいな感じで(笑)。
益田:リモートワークさせられてる、みたいな。
関:横文字言いたくなる空気感だった。「タスクが~」みたいな。
内田:そうそう(笑)。そういう雰囲気で曲を作ることができたのは面白かったですね。
――リモート環境で、各々からアイディアが出てくるという感じだったんですね。
内田:そうですね。最初のコンセプトになったのは益田さんの案で。ヒップホップのブーンバップの上に、ブルースのスライドギターが乗ったビートを作ってみたいっていう案が、前から益田さんの中にあったみたいで。「それをやってみよう」という話になったんです。それで益田さんが最初にドラムパターンを送ってくれたんですけど、スライドのギターがどうビートに乗っかるのかわからないので、それも益田さんに弾いてもらって、その素材を使ってビートを組みながら作っていきました。
――ぴあアリでも益田さんはギターを弾いていましたもんね。皆さんは「Clay」のレコーディングはいかがでした?
益田:いびつっすよね。変なものができたなって思います。「Clay」っていう言葉通り、ゴチャゴチャなものができたなと思う。だからこそ、1本筋の通った綺麗なものを作るっていう、いつも怜央がやっていることの凄さも改めて感じましたね。
長谷部:最初、益田さんから出てきたコンセプトが「スライドギター」だったので、僕も自分なりにヒップホップビートのブルースロックっぽいものを作ってみたんですけど、最終的には益田さんが弾いたフレーズを採用して、怜央がそれを組み上げてくれたっていう流れでした。この曲は、益田さんが昔から持っていたリゾネーターギターっていうギターを使っていて、そのギターのサウンドが曲の肝になっているんです。チューニングも普通のギターと違うし、自分にも経験値がなかったので、益田さんにそのリゾネーターギターを借りて結構、練習しましたね。新しいことができて嬉しかったです。なかなかKroiで変則チューニングをやることはないし、新しいKroiの一面だと思います。
関:この曲、サビでメロディを歌うわけでもなく、全編、怜央の歌はラップだけなんですよね。そこがすごく新鮮だなと思います。
――たしかに、それゆえのパワフルさがありますね。
関:ベースに関しては特段、変わったことをしているつもりはないんですけど、自分が弾いたデータをエンジニアさんに送ったとき、間違えて1小節目がズレたデータを送っちゃったんですよ。でも、それが意外とかっこよくて、そのまま採用しました。

――千葉さんは「Clay」の制作はいかがでしたか?
千葉:僕は「1日中Zoomをしててもな」と思って、デモを2曲投げて、奥さんと飯を食いに行ったんですよ。で、帰ってきたら曲ができてて、「ラッキー」って(笑)。
益田:千葉さんの画面だけ真っ暗になってた(笑)。
関:でも、割としっかり作り上げたデモを2個出してから飯行ってるから、俺らもなんも言えないっていう(笑)。
――そうなんですね(笑)。
千葉:でも、ミックスのときも新鮮でしたよ。ミックスのとき、益田さんは体調崩して休みやがったんですけど(笑)、遠隔で益田さんに聴いてもらいつつ、現場にいる悠生の意見も踏まえてギターを理想の音に近づけていったのは、これまでの制作と違う感じがしましたね。大体、エレキギターの音だと俺と怜央で「曲的にこれが合うな」って判断して進めたりするんですけど、今回は益田さんと悠生の中に正解の音があったから、ふたりの意見をかなり参考にしたんです。そう思うと、メンバー個人の1曲に対する関与度が高いし、普段、怜央がある程度まで作ってきてくれるデモよりも、それぞれの思いが詰まっている曲だと思いますね。
――お話を聞いていて、今、この制作スタイルをやったことにはもの凄く大きな価値があったんだろうなと思いました。
関:そうですね、普段はなかなかできないところまで意見交換できたし、いつも怜央がどんなことを考えて曲を作っているか、若干だけど聞かせてもらって、伝わった部分もあったし。怜央が自分たちに「どういう曲を作りたいか?」をヒアリングしてくれたうえで、それをどう曲に反映しているのか?っていう部分も、ちょっと見えたような気がして。よりKroiの絆は深まった感じがしますね。もちろん、いつもいい曲を作るつもりではいるけど、「Clay」は「いい曲を作ろう」っていう気持ちのプライオリティは実はそこまで高くなくて。それより、お互いに意見交換をして作り上げることに意味があったなと思います。
益田:「今後どうしていこうか?」を試行するための曲作りだった気がするね。
内田:うん。実験的な曲ではあるよね。バンドが意識共有をするために、曲を作るという行為をして、それで生まれた曲っていう。現代アートみたいなもんです(笑)。
――歌詞はすごく真っ直ぐに、内田さんの心象やKroiの今と未来について綴られているという印象もあります。
内田:歌詞は書きとめっていう感じですね。
――この歌詞も含めて、すごく重要な曲だと感じます。
内田:「Clay」は、バンド的に意味のある曲になったなと思っていて。作りながらみんなの好きなものが垣間見える瞬間もあったし、こういう擦り合わせは今後もやっていきたい。「Clay」は、パレットみたいな曲なんですよね。すごい画家のパレットって、それ自体が作品になったりするじゃないですか。そんな感じで、Kroiが曲を作るための色を一旦グチャグチャグチャってパレットに出して、その状態をリリースしてみたっていう(笑)。だからこそ次に繋がっていく曲だと思うんですよね。それは、この曲の音楽性どうこうというより、Kroiのいろんなものがごちゃ混ぜになったこの曲から、この先拾い上げていくものがたくさんあるんじゃないかっていう気がするから。期待ができる曲なんですよね。
――「Clay」には、Kroiの未来が内包されているんですね。
内田:そうですね。そんな曲を残せているのが、すげえいいなって感じがします。

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