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<インタビュー>“作品”としての存在感は、アニメや映像を超えたところにある――内田彩が進化する『アイマリンプロジェクト++』を語る

Interview & Text:小町碧音
SANYOが展開するメディアミックスコンテンツ『アイマリンプロジェクト』が、今年10周年を迎えた。本プロジェクトは“海物語”のキャラクターである「マリンちゃん」の新たな可能性を広げる為に生まれたもの。メインキャラクター・アイマリン役を務める内田彩は、4月27日に千葉・幕張メッセで開催された『ニコニコ超会議2025』、SANYOブース内の『アイマリンプロジェクトステージ』に登場し、イチカゼロ役の佐伯伊織とともに今後の展望を語った。さらに初お披露目となった新キャラクター・イサナ役の砂田理子、オルカ役の松岡洋平も登壇し、4人揃ってプロジェクトの新たな幕開けを彩った。
新章としての火蓋を切った『アイマリンプロジェクト++(アイマリンプロジェクトプラス)』による嬉しいニュースが次々と飛び込んできたが、とりわけ印象的だったのは、とにかく作品に対して前のめりで、各プログラムを楽しむキャスト4人の姿だ。10年という年月の中で、アイマリンのCVを担当する内田彩が掴んだ確かな手応えがどのようなものだったのか。そういった感覚的な部分を含めた今後の展開への期待を、イベント後、本人に訊いた。
現時点では、デジタル×フィジカルを行き来する複雑な構造をしたプロジェクトとして映っている『アイマリンプロジェクト』。実は、複雑化だけで終わらない“ある何か”が、今日に至るまでのプロジェクトの深化に密接に関わっている。そこに気付いた途端、今回新キャラクターとして発表されたオルカ、イサナが率いる反体制組織「自由機甲楽団」のファンクラブ化は、当然の成り行きとさえ思えた。
キャスト自身が作品や楽曲を好きでいることは大事だなと改めて感じた
――『アイマリンプロジェクトステージ』は、いかがでしたか?
内田彩:直接ステージに上がったのは、2023年のニコ超以来だったんですけれども、やっぱり目の前にお客さんがいて、生の反応が返ってくるのは、すごく楽しいなと思いました。
新キャラクターのイサナとオルカがついに登場ということで、頼もしい2人が加わったことが今回のイベントで一番嬉しかったポイントですね。にぎやかでしたし、仲間が増えたことで「ここからさらなる盛り上がりを見せるぞ」という気持ちになれました。私たちキャストとしても、ようやく4人揃った初舞台だったので、なおさら楽しかったです。皆さんすごく素敵な方々で、個性もそれぞれで。その空気感が印象的でした。
―イチカ役の佐伯伊織さんとは、2021年6月に公開された「Wave the Remember」からご一緒されていました。ステージでも息がぴったりでしたね。
内田彩:約5年前に、新章アイマリンプロジェクトがスタートしてから、ずっと一緒にお仕事をしてきて。最近は別の現場でも一緒だったこともあって、いろんなお話をするようになりました。お互いに、のんびりしたタイプなんですけど(笑)、今回はそんな2人の間に盛り上げ上手な新メンバーが入ってくれたので、すごくバランスが良くなったなと思いました。
――ステージ上で特に印象に残ったシーンはありますか?
内田彩:ステージが始まる前、皆で裏にいて、「爽快奪回Sunlight」を作曲してくださったYASUHIRO(康寛)さんのDJステージを観させてもらっていたんです。イチカとアイマリンは新章アイマリンプロジェクトがスタートした2020年以降の楽曲を、頭からほぼ2人で歌ってきているので、「この曲ここで繋げるんだ」とか「この曲いいね」とか、盛り上がっていました(笑)。イサナ役の砂田ちゃんも「かっこいいですね!」と言っていて、すごく楽しそうでした。
――皆さん、本当にアイマリン楽曲が好きなんですね。
内田彩:もちろん! やっぱり、キャスト自身が作品や楽曲を好きでいることは大事だなと改めて感じました。

――2015年に『アイマリンプロジェクト』が始動して、2020年に新章アイマリンプロジェクト、そして2025年にはさらに“アイマリンプロジェクト++”としての新たな展開が始まろうとしています。この10年の変遷を振り返ってみて、どんな印象ですか?
内田彩:『アイマリンプロジェクト』自体は今年で10周年なんですが、私は第3弾の「Dive to Blue」から参加させていただいています。それまでは歌い手の鹿乃さんが担当されていて、私が担当するようになった第3弾は、全編アニメーションのMV。「君の街にもアイマリンがいるよ」みたいな世界観のメッセージ性が強い作品だったので、声優としての私が選ばれたのかなと思っています。
そこからは毎年違うクリエイターさんと組んで、映像や世界観もどんどん変わっていったんです。第4弾では海物語のキャラクターたちが登場するセリフ込みのアニメーションMVになって、佐倉綾音ちゃんや内田真礼ちゃんもキャストに加わった。海物語の世界観をアニメと歌詞に落とし込むスタイルに変化していった感じで。
――「DEEP BLUE TOWNへおいでよ」ですね。アニメで始まり、曲を挟んで再びアニメで締めくくられるというミックス感のあるストーリー仕立ての作品だったと思います。
内田彩:そうなんです。第5弾では、竹達彩奈ちゃん、三森すずこちゃんと一緒にユニットを組んで、おしゃれで大人っぽい雰囲気のDIVAスタイルをやらせていただいたり。その頃にはもう完全にアニメ要素はなくなって、より歌モノとしてのプロジェクトに寄っていた印象でした。
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今後は皆で『アイマリンプロジェクト++』の世界観を作っていくことになる

――そして、2020年には2.8次元アイドルをコンセプトとした“新章アイマリンプロジェクト”へ。
内田彩:ここで物語としての深みが一気に増したんです。「ストーリーがあって、世界観があって、設定がある」。それを楽曲で表現していくという、新しい挑戦が始まりました。
WEB小説が用意されて、水晶宮という舞台もVRChat上に作られて。“メディアミックス”どころか、いろんな次元を超えた融合を目指す作品になりました。ひとつの作品をキャストの皆さんと監督とともに広げていった先に今回の『アイマリンプロジェクト++』があります。
――ストーリーをもとに世界観を固めていったこの5年間は、“実験”の連続でもあったんですね。
内田彩:このプロジェクトは、リアル空間だけではなくて、デジタル空間と交わっていくメディアミックスだったので、すべてが新しいことの挑戦でした。ちょうどVTuber文化が広がってきた時期とも重なって、時代の最先端を体験している感覚が、本当に面白くて。
――今回のようなデジタル×フィジカルの融合プロジェクトは、演じる側からすると難しさもあるのでは?
内田彩:ありますね。私は今まで声優としてフィジカルの部分をたくさんやってきたので、フィジカルには自信があるんですけど、デジタルでの活動はまだ手探りで。例えば、今活躍されているVTuberさんたちはそれぞれにキャラクターとしての設定がありつつも、めちゃくちゃ自由に喋っていますよね(笑)。おめがシスターズさんとコラボさせてもらったことがあるんですけど、すごく自由で面白くて。
でもアイマリンは、ちゃんと小説の中での設定があるキャラクターだから、変なことを話しちゃうとその世界観が崩れちゃうんじゃないかと思っていて、本当は、「今日ラーメン食べてきた!」と言いたくても、先に「あの世界にラーメンはないかもしれない」という考えが頭をよぎったりする。どうしても“役者脳”で行動してしまう自分がいるんです(笑)。
――世界観がしっかりしている分、フラットな振る舞いができるVTuberさんたちとはまた違う立ち位置にいるというか。
内田彩:でも最近、少しずつその意識が変わりつつもあるんです。実は佐伯ちゃんがVRイベント内で会話している最中の発言がきっかけで自然と決まっていったキャラクターの設定もあったりするんですよ。例えば、「イチカは食いしん坊」とか(笑)。それがリアルからフィジカルへと取り込まれていく様子に気付いたときからは、「気負わずに話してもいいんだな」と思えるようになりました。『アイマリンプロジェクト』はストーリーの世界観の設定こそ決まっているけど、意外とキャラクターの設定は少し曖昧なところがあるというか。今回発表された「自由機甲楽団」というファンクラブの団員も含めて、今後は皆で『アイマリンプロジェクト++』の世界観を作っていくことになるんだろうなと思います。
――ステージ上で初公開された新曲「M.A.D.」では、ヒップホップという新たなジャンルに挑戦されましたね。
内田彩:今、アイドルの方たちでもすごくかっこいいヒップホップをやっていらっしゃるじゃないですか。そういった楽曲を普段から聴いていたので、「ついにアイマリンでもこのジャンルをやれるんだ!」という嬉しさもありました。
『アイマリンプロジェクト』の“作品”としての存在感は、アニメや映像を超えたところにあると思っているので、「この曲なら戦える!」と感じられるかっこいい歌声を披露したい気持ちが強かったです。
――キャラクターソングというより、もっと一歩踏み込んだ“音楽”としてのクオリティが求められている、と。ストーリーに合わせて曲の持つ意味も深くなっている気がしますね。
内田彩:今回からガラッと変わって、ストリート感のあるダークな印象になりましたし。泥臭く生きていく中での強い気持ちとか、絶望の中にある光を歌っている。そういう人間味のある表現が好きです。
――不思議と、デジタルが舞台の世界観だけど、妙に“人間らしさ”が伝わってきます。泥臭く生きる中での反骨精神など、人間より人間らしいというか。
内田彩:まさに。アイマリンとイチカはAIで、他のメンバーも、もともと人間だった人たちがAI化されているという設定なんですよ。人間じゃないけど、だからこそ、どこか“今の自分”の自然体に近い感覚で歌える。熱いものを表現できる。そこがすごく好きですし、やりがいを感じているところかもしれません。
――キャストの皆さんが、MVの公開中、あるキャラクターのダンスパフォーマンスを絶賛していましたが、印象に残っているのは、やはり?
内田彩:イサナのブレイクダンス ですね(笑)。私も過去に2曲ほど、モーションキャプチャーでキャラクターの動きを表現させていただいたことがあるので、動きのすごさとか難しさがわかるんです。あのブレイクダンス、実際にはダンサーさんが、モーションキャプチャーで実演していて。まさか、あんなに激しいブレイクダンスまでが取り込めるなんて! とすごすぎる技術の力に驚くばかりでした(笑)。
それから、フードを被った群衆の存在もあって、「我々は一人じゃない」というテーマが全体を通して際立っていているのも良かったです。今までは我々が作った世界を見てもらう形だったんですけど、今回からは皆が「自由機甲楽団」の視点で没入できるようになっていて。
いつもプロジェクトが先端を行きすぎているんですけど、それでも毎回ちゃんと形になっていくのがすごい。だからこそ、乗り遅れないように、これからもついていかないとって思っています。
「M.A.D.」Official Music Video「アイマリンプロジェクト++」vol.1
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