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<インタビュー>中島健人 “ハテナ”が導く未来へ――挑戦し続けるエンターテイナーの現在地、念願のアニメ主題歌『MONTAGE』
Interview & Text:高橋梓
Photo:Shintaro Oki(fort)
独自の路線を貫き、アーティストとして確固たるポジションを築いている中島健人。2024年12月25日に1stアルバム『N / bias』でソロデビューを果たし、話題になったことは記憶に新しい。そんな中島が、5月21日に1stシングル『MONTAGE』をリリース。澤野弘之が作曲を手掛けた表題曲は、アニメ『謎解きはディナーのあとで』(フジテレビ系 “ノイタミナ”)のオープニング・テーマに起用されており、以前語っていた「アニメの主題歌をやりたい」という目標を有言実行した形となった。お馴染みの“ケンティー節”がありつつもまた新しい一面を見せている同作について、本人にじっくり語ってもらった。
ホールツアーで感じている手応え
――昨年末にアルバム『N / bias』をリリースし、今年の年始には東京・有明アリーナで【KENTO NAKAJIMA 1st Live 2025 N / bias】を開催されました。反響はいかがでしたか?
中島健人:めちゃくちゃ良かったです。有明アリーナ公演は自分にとって忘れられない時間になりました。とにかく全力を尽くした、青春の始まりのようなライブでしたね。今までやってきたライブの中でも特に熱を感じましたし、僕だけではなくU:nity(中島のファンの呼称)も腹の底から声を出している感じがして、熱いライブができたと思います。
――現在も全国ツアー【KENTO NAKAJIMA 1st Tour 2025 "N / bias" 巡】の真っ最中ですが、昨年末の有明アリーナ公演との違いを感じられていますか?
中島:有明アリーナは演出や機構を多用した“THEアリーナ仕様のライブ”でしたが、今回はホールなので使える機構は限られています。だからこそ、フィジカルが求められるんです。しかもお客さんとの距離も近いので、ごまかしが一切効かないんですよね。もちろんアリーナ公演を雑にやったつもりはありませんが、今回はより一層、粗を削る努力をしました。
――ホールならでは、ですね。
中島:そうなんです。アリーナの場合会場が広い分、レスポンスに多少のディレイが発生しますが、ホールはすぐに返ってくるんですよ。まさに、お客さんと一緒にホールライブの作り方を学んでいる感じがしています。だから、今回のツアーで「ケンティーのライブって体育会系だな」と思った人もいると思いますよ(笑)。

――中島さんがスパルタになっている想像がつきます(笑)。
中島:実際そうかもしれません。ライブって、他人事じゃいけないんですよね。僕もお客さんもライブに参加している意識が高ければ高いほど、熱いライブになりますから。少し前に、お客さんの声がすごく出ているライブを観に行ったんです。僕は最初スンッとして観ていたのですが、1時間半くらい経ったころには声を出して踊っていました(笑)。自分のライブもそれくらい熱狂している自信があります。実際、MCで常々「レベルの高いことをみんなでやっていこうぜ」と話していて。機構や演出が多用できないホールは、皆さんの歓声が最強の演出なんです。
――しかも、ホール規模でライブをされるのはかなり久しぶりじゃないですか?
中島:10年以上ぶりかな。だから最初は全然慣れませんでしたし、自分のパフォーマンスをどう見せたらいいかちょっと迷ったりもしたんです。でもステージに立つと、お客さんの肌のキメがわかるくらい近い距離感でライブができる場所で、盛り上がりの波も目に見えて。今ではもう、どのツボを突けばお客さんが反応するかもわかるようになりました。
――さすがです。
中島:逆に、お客さんもそうだと思いますよ。「こういうリアクションをすればケンティーは必ず出てくる」ってわかっていると思います。会話って、相槌がないとつまらないじゃないですか。それと同じですよね。僕が本気を出してパフォーマンスをしている分、みんなも本気を出して叫んでほしいんです。それが楽しくて、僕、今回はかなり身体をさらけ出しています。お客さんも遠慮している暇があったら、全力で僕に向き合ってほしいですね。

謎解きが簡単だったらつまらない
――そんな中、1stシングル『MONTAGE』がリリースされます。以前、アニメ主題歌にもっと挑戦したいとお話いただいていましたが、表題曲は満を持してアニメ『謎解きはディナーのあとで』のオープニング・テーマに起用されています。どんな気持ちでこの曲に向き合ったのでしょうか。
中島:前回はGEMNとしてアニメ『【推しの子】』に携わらせていただいたのですが、今回は中島健人個人で携わることになったので、責任を感じました。アニメのクオリティを損なうわけにはいきませんから。だから全力でアニメに向き合って、作詞にも携わって。作曲に関しても澤野(弘之)さんとディスカッションをしましたし、「MONTAGE」に捧げられることは全部したつもりです。
――作詞はどういう工程を経て書かれたのでしょうか。
中島:僕、歌詞はタイトルから思いつくことが多くて、今回も「MONTAGE」という言葉が最初に出てきました。『謎解きはディナーのあとで』の物語にノーブルな印象があったので、タイトルにはおしゃれな言葉を使いたいな、と。推理ドラマやアニメの事件を解決するタイミングで、よくモンタージュ写真が流れるじゃないですか。そこからヒントを得て、「MONTAGE」という言葉がいちばんしっくり来るなと考えて、まずはタイトルを決めて。そこから歌詞を広げていった印象です。
――なるほど。個人的に「迷宮」というワードにドラマ版へのリスペクトを感じてグッときたのですが、中島さんが自分らしいと思うワード、特にこだわったワードを教えてください。
中島:そうだなぁ。〈Question mark 晴れるまで〉とか。今回、「ハテナ」をテーマにしたかったんですね。実は、今まわっているツアーも「ハテナ」が大きなテーマになっているんです。僕は「ハテナ」=「未知」だと思っていて、「未知」を解き明かすと未来に繋がるじゃないですか。だから「ハテナ」=「未来」。この方程式が謎解きにぴったりだと思ったんです。未知を解き明かすことで未来に進むことができる、という考えから最初に思いついたワードのひとつですね。
――テーマでありつつ、あえて「Question mark」というタイトルにしないのがいいですね。しかも、じっくり聴くと歌詞にいろんなギミックが仕掛けられていて、いろんな計算をして書かれたのかな、と。
中島:そうですね。〈It's just a detective game〉という歌詞の後に〈劈く〉という言葉が続くのですが、めちゃくちゃスタッカート気味に歌っているんです。そこの振りは細かく動く振りになっているのですが、澤野さんからいただいたメロディーラインも細かい音が詰まっていましたし、身体が細かく動く言葉にしたいと思ってこういった歌詞にしてみました。多分、初見の方は歌えないと思います。僕ですらたまに噛みますもん(笑)。
――自分だったら絶対歌えないと思いました(笑)。
中島:だって、謎解きが簡単だったらつまらないでしょ?
――そういうことですか!?
中島:なので、Aメロは難解な歌詞になるように意識して書いていきました。

――さすがです……。ちなみに、作曲を担当した澤野さんとはどんなやり取りをされたのでしょうか。
中島:最初にメロディーラインが入っていないトラックをいただいたのですが、そこで「MONTAGE」という言葉を思いつきました。その後、メロディーが入っているものをいただいて、それをもとに歌詞を入れていきましたね。
――すでにあるトップラインに、スタッカート満載の歌詞をはめ込めるのが素晴らしいというか。
中島:コライトしたcAnON.さんに助けられました。僕もcAnON.さんもアニメをすごく観て研究したので、当てはまる言葉が出てきたんだと思います。〈節穴〉は有名な(作中の)「お嬢様の目は節穴でございますか?」というセリフからインスパイアされたものですし、詩的に見えつつもアニメへのリスペクトを持った歌詞にすることは大切にしました。かつ、澤野さんの音楽がすごく壮大なんですよね。それも活かせるように、力強さも意識して作詞をしました。
――レコーディングには澤野さんもいらっしゃって、アドバイスをもらったそうですね。
中島:はい。〈ディナーのあとで〉という歌詞をどうしても入れたかったのですが、音割り的に入らなかったんです。どうしようかと悩んでいたら、澤野さんが「あまりはっきり発音しなくてもいいかもしれないね」とアドバイスを下さって。結果、「あ」をほとんど発音せず、「ディナーノートで」と聞こえるような歌い方をするようにしました。少し英語的な感覚を意識しています。
――そういったアドバイスしかり、澤野さんとタッグを組んだことで新しい学びもあったのでは?
中島:僕が作るトラックって、イージーリスニングなものが多いんです。でも澤野さんの曲はすごく重厚。聴くには重い扉を開けなくちゃいけない感覚なんですよね。今回はこれでもかというくらい、澤野さんの重みのあるトラックを浴びることができて。壮大さを受け取ることができたので、いつか自分でも重厚な曲を作れるようになったらいいなと思いました。
――楽しみです。そしてミュージックビデオも公開されています。
中島:これは「中島健人のソロだからこそできる、見たことがないMVを撮りたい」というところからスタートしました。個人的にリップ優先のMVよりも、ストーリーに則したMVが好きなんですね。なので、作中の自分が芝居をしているのが今回のMVのこだわり。それを演出できる監督さんである必要もあったので、「ヒトゴト」からお世話になっているYERDさんにお願いしました。
「MONTAGE」Music Video / 中島健人
――「ヒトゴト」の時に、「またYERDさんに撮ってほしい」とおっしゃっていたので、ついに3回目のタッグが来た、と思いながら拝見していました。
中島:そうなんです。ただ、YERDさんってめちゃくちゃテイク重ねるんですよ。澤野さんに引き続いてものすごくヘヴィ。全然OK出ないんだもん(笑)。もちろん僕もこだわりがあるタイプなので、YERDさんのやり方は好きなのですが、「それにしてもOK出ねぇな……」みたいな(笑)。「映画撮ったら?」と言ったほどでした。
――今回も印象に残っていることが多そうですね。
中島:今回は、深夜になってもまだ次のロケ地が控えていた、というのが印象的でしたね。
――何時始まりだったんですか?
中島:朝5時集合でした。で、『めざましテレビ』(フジテレビ系)で軽部(真一)さんが原稿を読んでいる時間にまずはラスサビを撮影して。そこから丸一日撮影して、終わったのが朝の4時半。これが楽しくなかったら最悪でしたが、すごく楽しかったですし、面白い作品ができたのでよかったです。
――この作品の裏にはそんなハードな撮影があったのですね。しかも、ファンの方はMVの内容の意味を考察して楽しんでいらっしゃって。エンタメ作品として、とてもクオリティが高いですよね。
中島:皆さん色々考察してくれていて嬉しいです。個人的に好きな表情が、探偵側の中島健人が最後にベンチに座ってちょっと悲しそうに悔しがる表情なんです。犯人が捕まらなかったからなのか、自分自身が犯人だからなのか。でも、結局答えは視聴者の皆さんそれぞれの答えに任せたいので内緒です。

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新しい層にリーチした
【JAPAN JAM】でのパフォーマンス
――そうなると、それぞれの考察が捗りますね。さらにMVのコメント欄では、【JAPAN JAM】で中島さんのパフォーマンスを見てMVを見に来たという方もいらっしゃいました。
中島:【JAPAN JAM】、楽しすぎました。個人としてフェスに出演させていただくのは2回目だったのですが、やっぱり“お邪魔させていただいている”気持ちが強いんですね。なので、最初は人見知りをしていたんですが、結局はステージで本性が出ちゃって(笑)。人見知りしている時間がもったいないと思って、最初からアクセル全開。でも、お客さんは最初からアクセルを踏めないじゃないですか。「僕のことを初めて見た人?」と聞いたら、半数以上手が挙がっていましたし。でも、前方エリアに今やっているホールツアーで鍛えられているU:nityたちがいてくれて、めちゃくちゃコールをしてくれたんですよ。その熱狂が派生していって、最終的には何万人ものお客さんが全員盛り上がってくれて。しっかり自分を発揮できたのかなと思いました。
――女性だけでなく、男性もメロメロになっているコメントやXのポストも見かけました。
中島:僕、メンズのツボみたいです(笑)。「MONTAGE」も重くてかっこいいサウンドなので、男性の心もキャッチできたのかなって。しかも、セットリストのギャップもよかったんでしょうね。「MONTAGE」でかっこよく決めて、最後は「CANDY ~Can U be my BABY~」の〈LOVE KENTY!〉コールで締めるという(笑)。
――アツい!
中島:それに、パフォーマーのみんなが楽しんでくれていたのも嬉しかったです。僕がいないところで「楽しかった!」って叫んでいるのを見てしまったんですが、それがすごく嬉しかったです。
――もうひとつ、アニメのテーマソング繋がりでお聞きしたいことがあって。GEMNの「ファタール」と「MONTAGE」、クリエイティブ面で大きく異なることはあったのでしょうか。
中島:GEMNはキタニ(タツヤ)くんが下地を作って、僕が味付けをしていくという役割分担がはっきりしていたんです。今回に関しては共通のコンセプトのもと、僕と澤野さん、cAnON.さんの3軸で作っていった感覚ですね。曲によっては100%自分でやらないと気がすまない時もありますが、「MONTAGE」に関してはすごくいいフォーメーションでできたと思います。

“生みの苦しみ”をも抱いて描いていくのが青春
――ありがとうございます。では2曲目の「碧暦」についてもお伺いさせてください。Instagramで「青の暦を描きたくて名付けました」とおっしゃっていましたが、その思考に至ったのはどういう経緯があったのでしょうか。
中島:「碧暦」は企画展【HOKUSAI : ANOTHER STORY】とのコラボレーション楽曲なのですが、最初は何を表現すればいいか迷っていました。最初にできた曲は日本から海外への広がりを意識した「言葉」や「旅」というようなテーマだったんですね。でも、もう少し自分の考えを提示したいなと思って、1回「Endless Blue」と名付けたんです。葛飾北斎は90歳まで浮世絵を作り続けていて、終わらない青春を過ごしていたはず。僕も今31歳で、終わらない青春を走り続けている。しかも、Sexy Zoneの12年間でいちばん大切にしていた色が(メンバーカラーの)青だったんですね。青はこれからも大切にしていきたいのですが、未来に“青”を連れて行くには深みも欲しいと思って。宝石のような重さが欲しくて「碧」が出てきました。北斎も中島健人も終わらない青春、青のような人生を過ごしている、それって“青の暦”だよね、と。そこから造語で「碧暦」という言葉が生まれました。
――なるほど。サウンド感も素敵ですよね。
中島:そうですね。今回、岡嶋かな多さんやMONJOEさんも入ってくださっています。僕、昔からかな多さんと仲が良くて、今回もたくさんディスカッションをしながら制作しました。なので、最初のデモからはだいぶ変わりましたね。今のサビになる前は、まったく別のメロディーだったんですよ。正直僕は「このままで良くない? 変えるのもったいないんだけど」と思って反対していたんです。でも、「1回こっちのサビで歌詞を書いてみてください」と言われて。その時、すごく忙しくて体力的に限界だったんです。そんな状況からか、〈渇ききった哀〉という言葉が出てきました。きっと北斎も悩み苦しんだと思いますし、悩んでいる間に絵の具って乾くじゃないですか。そういった“生みの苦しみ”をも抱いて描いていくのが青春だよね、と。僕も意識が朦朧としながらも「色んな人に音楽を聴いてもらいたい」「世界をまわりたい」と思いながら歌詞を書いていたから出てきた言葉だと思います。そいて、最後に〈終われない〉に帰結するという。
――当時の中島さんの心境も詰め込まれているんですね。そして、他の3曲もめちゃくちゃ気になっていまして。まずは、「JUST KENTY☆」。
中島:ジャスケンは遊園地みたいな曲。“LOVE KENTY”が進化したのが「JUST KENTY☆」なんです。「JUST KENTY」は「ただ、ケンティー」という意味なのですが、これを聴いた皆さんにはケンティーしてほしいんですよ。
――ケンティー……してほしい……?
中島:自分の中で幸せを感じたり、エンジョイしているなという状態が「ケンティーしてる」なんです。そういう意味を込めて作っているので、ぜひケンティーしながら聴いていただきたいです。サウンドもめちゃくちゃオシャレで、一緒に踊れるし、歌えるのが“ジャスケン”。ライブで披露するのを楽しみにしていてください。

――今から楽しみです! 続いては「SUPERNOVA」。
中島:「SUPERNOVA」は、このシングルで唯一デモの中から選んだ曲。僕の強みはファルセットなのですが、そのファルセットと親和性がある楽曲なんですよね。特にサビ、〈Supernova〉の「nova」の部分では自分のファルセットをしっかり活かせたと思います。ぜひ、僕のファルセットを楽しんでほしいです。そして宇宙を表した神秘的な歌なので、ファルセットによって壮大さも伝えつつ、Aメロ~Bメロで人間的な色気も伝わったらいいなと思っています。
――最後の「Jasmine Tea」は、有明アリーナ公演ですでに披露されている楽曲です。
中島:これは2023年の9月くらいに書いた楽曲。東方神起先輩にプライベートでお会いして、帰りの飛行機で作詞したのを覚えています。最初は自分の心情を趣味の領域で表現していたのですが、有明アリーナという大きなステージで歌えたことで、僕だけではなく「Jasmine Tea」という曲も喜んでいる気がします。それに、チルな曲を作れたらいいなと思ってトラックを作ったので、心を無にしてリラックスしたい時に聴いて癒やされてほしいです。ちなみに、僕の家で宅録した音源をそのままリリースします。
――なんと!
中島:冷房の音や、RECをスタートする時のエンターキーを押す音など、もしかしたら生活音が聞こえるかもしれませんね。
――そういう部分も含めて聴くと、より曲に没入できるかもしれませんね。では最後に、「MONTAGE」=「構成」という意味にかけて、最近の中島さんを構成しているものをひとつ教えてください。
中島:ライブ! ライブが生きがいです。なのでぜひ色んな人に観ていただきたいです。興味が沸いた方はぜひファンクラブに入ってください!(笑)

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