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<インタビュー>ブランデー戦記、今の自分たちを表す1枚が完成――1stアルバム『BRANDY SENKI』

インタビューバナー

Interview & Text:Tatsuya Tanami
Photo:エドソウタ


 ブランデー戦記が、2025年5月14日に1stアルバム『BRANDY SENKI』をリリースした。

 2022年8月に結成した、蓮月(Gt./Vo.)、みのり(Ba.)、ボリ(Dr.)からなるブランデー戦記。2024年には日本テレビ『バズリズム02』の恒例企画「これがバズるぞ!2024」で2位を獲得、2025年1月に開催した初の全国ワンマンツアーや、6月から始まるツアー【BRANDY SENKI 1ST ALBUM RELEASE TOUR】のチケットをソールドアウトさせるなど、今勢いのあるバンドだ。

 メジャーデビューを飾るアルバム『BRANDY SENKI』には、彼らの名を世間に広めたはじまりの曲「Musica」や、NJZのミンジに拡散されて大きなバズを巻き起こした「Coming-of-age Story」、誰もが抱える人間の弱い部分を描写し、ドラマチックに展開する「Fix」をはじめ、珠玉の13曲が収録された集大成となっている。そんな大きな節目であり、新たなステージへと昇る、ブランデー戦記に今の心境を語ってもらった。

“これが今のブランデー戦記”

――まずは、4月下旬に出演したばかりの台湾の音楽フェス【Neon Oasis Fest 2025】について聞かせてください。初の海外公演はどうでしたか?

蓮月:言語は違う国でも、こんなに私たちのことを好きでいてくれているんだなというのが、ステージ上からも伝わってきました。あと、ライブの聴き方が日本で普段感じているのとは少し違って、すごく盛り上がっている人もいれば、ゆっくり揺れている人もいました。それぞれ自由って感じがすごく印象的で、楽しかったです。


――ボリさんも前々から海外でライブをやりたいとおっしゃっていましたよね。

ボリ:そうですね。ライブをやる場所が日本だけじゃなくてもいいし、枠にはまらず、色んな国で出来ても面白いなと思っていました。



蓮月

――ありがとうございます。2020年にバンドを結成して約3年が経とうとしていますが、改めてメジャーデビューするにあたって、今の心境はいかがでしょうか。

蓮月:メジャーデビューについて、前までは全然知らなかったんですけど、今の心境としては、また新たなスタートラインに立たせてもらったような、そんな感覚があります。今まで音楽が届いていなかった人たちにも、きっと届けることが可能になってくるので、それがすごく楽しみであり、頑張りたいなと思っています。

みのり:さらにいろんな人に聴いていただけるきっかけをいただいたと思っているので、頑張りたいなと思います。でも、今までもこれからもいい意味でやっていくことは何も変わらないと思います。

ボリ:メディアに触れる機会が多くなってきたので、今一度、自分が恥をさらしていないかということを、ちゃんと考えたいと思います(笑)。



みのり

――今回のアルバム名が『BRANDY SENKI』と、バンド名になっていますが、どういう想いが込められていますか?

蓮月:アルバムにセルフタイトルを付けるタイミングって、結構限られていると思うんです。このアルバム自体も今まで既にリリースした楽曲が入っていたりするので、“これが今のブランデー戦記ですよ”という意味でも、このタイトルにするのがいいよねという話があって、『BRANDY SENKI』と名付けました。


――13曲収録ということで、曲順も結構悩んだのではないでしょうか?

みのり:まず、リード楽曲の「Fix」の位置を12曲目に決めてから、曲順を考えていきました。


――なるほど。そんな中、ある意味アルバムで1曲目が大事だと思うのですが、今回「The End of the F***ing World」を選んだ理由は何でしょう。

蓮月:初めてブランデー戦記を知らない人が、このアルバムを手に取ったときの感覚を大事にして考えました。1曲目は、“これから何が始まるんだろう?”という、ちょっとわくわくするような曲があるといいなと思って、この曲はぴったりだなと思って決めました。


――この曲はイギリスのドラマ『The End of the F***ing World』の影響で書かれたとのことですが、普段、蓮月さんは小説や映画の影響を受けて、詩や曲を書くことが多いですか?

蓮月:はい、いつも影響を受けています。でも、この「The End of the F***ing World」ぐらい、1作品にしっかりインスパイアを受けて制作したということは珍しいです。





「The End of the F***ing World」ミュージック・ビデオ


――普段は詩と曲、どっちから作っているのでしょう?

蓮月:どっちもあるんですけど、ワンフレーズ思いついてから、どんどん書いていくことが多いです。あと、1単語がすごく頭の中で引っ掛かっていて、そこから広げていくということも多いです。


――そのワンフレーズを作って、お二人に聴かせてという流れになるんですか?

蓮月:大体そんな感じです。


――それを聴いてみて、いつもお二人はどう感じてらっしゃいますか?

ボリ:なかなかなホームランを打つなと。そこに、いつもどういうドラムを打ち込むべきかと悩んでいます。

みのり:今の日本のシーンにはあまりないような曲を書いてくれるなと。でも、メロディーがキャッチーな曲を毎回持ってくるから、そのバランス感みたいなものはすごいなと思います。



ボリ

――逆に、蓮月さんから見て縁の下の力持ちのお二人のプレーはどう思っていますか。

蓮月:色んなニュアンスの曲があって、それぞれ違うんですけど、どの曲でも二人らしいフレーズに最終的に仕上げてくるので、そこがすごいなと思っています。


――アルバムの話に戻りまして、お一人ずつ、特に思い入れのある楽曲を紹介していただけますか?

ボリ:自分は「The End of the F***ing World」です。跳ねっぽいビートが全体的に続いていて、上手く叩くのに苦戦しまして…。なので、完成して、聴いたりライブでやったりすると、頑張ってよかったなと思います。


――みのりさんはいかがでしょう。

みのり:私は5曲目の「水鏡」です。初ライブあたりからずっとやっていて、蓮月ちゃんからデモが送られてきて、一番初めにベースラインを付けたのがこの楽曲だったと思います。だから、初めてという意味でも思い入れがある楽曲かなと思っています。


――始まりのベースフレーズもかっこいいですよね。

みのり:そうですよね。すごいシンプルで、弾こうと思ったら案外、簡単なフレーズで。蓮月ちゃんはシンプルで簡単、それでもってかっこいいというものが良いという考えを持っているので。





「水鏡」


――収録するに当たって、アレンジはしたのでしょうか?

みのり:「水鏡」のアレンジは全く変えていなくて、ちょっとギターを重ねたぐらいです。自主企画でも毎回やっていますし、結構、知っているファンも多い楽曲だと思います。だから、昔から私たちのことを知ってくれているファンの皆さんにとっては念願の音源化だと思います。


――蓮月さんはいかがでしょう。

蓮月:たぶん日替わりになるんですけど(笑)。今日の気持ちは3曲目の「春」です。


――春ですもんね。歌詞を見ると、「ビーチ」や「シャツ」、あと海岸沿いを彷彿とさせるような「シチリアの絵画」とか、夏を感じさせるようなワードが出てきますよね。

蓮月:実は、この登場人物たちには春すら来ていないんです。夏ももちろん来ていないので、ビーチに行きたいとかシチリアへの憧れとか、そういう気持ちが中心にある楽曲です。時間だけが進んでいるような空間、部屋の中の話です。





「春」


――<出鱈目なダンスを踊ろう>の後の間奏では、一転してトラップビートが入っています。

蓮月:Cメロみたいな間奏の部分は最後までなかったんですけど、音楽的にちょっと変わった展開にしたいなと思って。それで、この間奏を思いついて、みんなでやってみたら、いい感じで。楽曲全体とマッチしたので入れました。


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  1. 「私たちが当たり前と思って見逃している美しい部分をしっかり捉えて」
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「私たちが当たり前と思って見逃している美しい部分をしっかり捉えて」


――CD初収録となる「ラストライブ」もライブで初期からやられている楽曲ですよね。

みのり:かなり初期からやっていた楽曲で、音源化するに当たって少しアレンジを加えました。


――どこら辺でしょう?

みのり:途中でテンポが変わる、架け橋となる部分です。今はドラムのフィルインがあるんですが、そこが元々なかったんです。

ボリ:そこを作ろうとなって、その部分を軸にアレンジし直しました。

蓮月:どうかっこよくテンポアップできるかという。


――ミュージック・ビデオも拝見しましたが。ローマ字のKawaiiのような世界観で、監督のナタリー・スカーレットさんとはどんなお話がありましたか?

蓮月:ミュージック・ビデオは、一つ目のアイデアの時点から、ほとんどナタリーに考えてもらいました。私たちにとっては秋葉原やローラースケート場で撮影するのが新鮮で。こんなにいい画になるんだという、さすがナタリーだなと思いました。

みのり:ナタリーはブランデー戦記のことを大好きで愛してくれていて。蓮月ちゃんが書いた楽曲をすごい深く理解してくれていて嬉しかったです。ナタリーがオーストラリアの方なので、“外から見える日本”というか、私たちが当たり前と思って見逃している美しい部分をしっかり捉えて、気付いて描ける人という、その視点が素晴らしいなと思っています。私たちには思いつかない面白いミュージック・ビデオを作ってくれるなといつも思っています。





「ラストライブ」ミュージック・ビデオ


――ありがとうございます。ボリさんはミュージック・ビデオの思い出はありますか。

ボリ::実はあれ、ゲリラ撮影だったんですよ…。トラックの中でドラムセットを組み立てていたんですが、普通に観光客の方々に写真を撮られたりして。それがいつものミュージック・ビデオ撮影とは違って刺激的でした。


――そしてリード曲「Fix」。英単語では色んな意味がありますよね。

蓮月:この単語は色んな意味で使えて、面白いなと思って付けました。これで“固定する”だったり、“修正する”とか“修復する”っていう意味もあったりして。ここでは“人間関係”や“自分と相手”、“一対一の人間関係”が“修復できるかもしれない”とか、色々な意味を含んでいます。





「Fix」ミュージック・ビデオ


――後、完全に新曲だと「メメント・ワルツ」もですよね。タイトルはシンプルに“このワルツを忘れるな”という意味でしょうか。

蓮月:そうですね。ワルツというか、三拍子の曲を作りたかったので、そこからスタートしました。


――ストリングスも入っていますよね。「悪夢のような – Acoustic」以来でしょうか?

みのり:「悪夢のような – Acoustic」にもストリングスが入っていましたが、生で弾いてもらったのは今回が初です。アルバムでは、「メメント・ワルツ」と「Untitled」の2曲にストリングスを入れてもらいました。





「メメント・ワルツ」


――そんな「Untitled」は、アコースティックの弾き語りになっています。こちらはいつ頃できた楽曲でしょうか。

蓮月:もう1年以上前にできた楽曲です。これはこのアルバムの中で唯一と言っていいぐらい純粋な恋の歌だと思っています。





「Untitled」


――6月からツアー【BRANDY SENKI 1ST ALBUM RELEASE TOUR】、11月から東阪ツアー【BRANDY SENKI TOUR 2025 AUTUMN】が始まりますね。

みのり:どちらのツアーも過去最大キャパシティーとなるワンマンです。ワンマンは今年1月のツアーで初めてやってみて、特別感や良さをすごく感じたツアーになりました。なので、さらにキャパが増えて、ライブができるのはすごく嬉しいです。お客さんはみんな“ブランデー戦記のこと好き“って思っていいってことですし、わくわくも同時にあります。


――先ほど、海外の方は自由に聞いている感じとおっしゃっていましたが、日本の方の反応はどうですか?

みのり:確かに各地でちょっと違いがありますね。すごいうわーって熱狂的に盛り上がる場所もあれば、結構、ちゃんと聴くときは聴く、盛り上がるときは盛り上がる場所、音楽を聴くという姿勢で楽しむというような場所もあったりして。各地、お客さんの違いが見えるというか。ちょっと面白いなと思います。

蓮月:前回、初めてワンマンをやってみて、すごく楽しかったんですけど、今回も絶対楽しいものになると思います。それまでに準備をしっかりして、完璧なものを見せられるようにしたいなと思います。その上で、しっかり楽しくやれたらいいなと思います。

ボリ:全国各地、色々楽しみにしてくれている人がいると思うので、お互い、体調万全で会えたらなと思っています。どうか皆さんお元気で!



――最後に、そんな皆さんが最近新しいことに挑戦していることや、これから挑戦したいことはありますか?

みのり:私は電車に乗って遠出するのが好きなんですけど、丸1日空いていないとなかなかできないことなので、自分の時間をしっかり作って日本各地の電車の知識を増やしていきたいです。

ボリ:自分はある意味、ドラムに挑戦しています。これは、バンドを始めた時からずっとやっていることなんですが、色んなビートを知って、自分の中に落とし込んでいます。今はさらに、ドラムがそもそもどういう楽器なのか? と見直したり、どうやったらいい音が作れるのかとか、どういうフォームが良いのかなど、ドラムの知識を増やしているところです。


――ありがとうございます。蓮月さんは?

蓮月:まずは、次の楽曲を作るために頑張っていきたいです。

ブランデー戦記「BRANDY SENKI」

BRANDY SENKI

2025/05/14 RELEASE
UMCK-1794

詳細・購入はこちら

Disc01
  1. 01.The End of the F***ing World
  2. 02.Coming-of-age Story
  3. 03.春
  4. 04.ラストライブ
  5. 05.水鏡
  6. 06.悪夢のような
  7. 07.27:00
  8. 08.メメント・ワルツ
  9. 09.Kids
  10. 10.Musica
  11. 11.ストックホルムの箱
  12. 12.Fix
  13. 13.Untitled

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